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「お、おかーさーん。ペンギンさんが、道を歩いてるよー」

「うふふ。かわいいわね。」

「写真とっていい?」

「いいわよ。でもフラッシュ使っちゃダメよ。
 ペンギンさんが、目を傷めるから。」

「わかったー」


北海道の旭川市に、旭山動物園というのがある。
規模としては小さい動物園だが、
展示の仕方がユニークで、好評を博している。

ペンギンは、一般の人と同じ道を歩き、
また
水中トンネルから、ペンギンの泳ぐ姿も見られる。

アザラシは、円柱形をした奇妙な筒(つつ)の中を
縦に泳ぎ、まさに人間と「同居している」ような感覚で
のん気に泳いでいる。
(説明できないので、一度、現地に行って見て欲しい。)


ホッキョクグマは、元気に動き回り、
水中ダイビングをして水しぶきをあげ、
シロフクロウは、雪と同化し、目だけが見える。


北の果ての動物園に、わざわざ来たかいがあった
と思わせてくれた。

・・・

ペンギンの水中遊泳が見れる水中トンネルの横に
こんな紙が貼ってあった。


「ペンギンは
 5500万年前、白亜紀の頃、誕生しました。
 ラテン語で、太っている、という意味です。」


「南極に住むペンギンのうち
 アデリーペンギンは、過去100年で
 3万つがい(夫婦)から、1万つがいへ減少しました。」

「これは地球温暖化のためです。
 過去100年で、0.6度C地球の気温は上昇しましたが
 南極では、5度C上昇してしまいました。」


「南アフリカの ケープペンギンは
 17世紀には数千万羽いましたが
 1940年 300万羽に減っていることが
 確認されました。
 このままでは、50年後には絶滅すると言われています。」

「2000年の6月に
 トレジャー号事件というのがありました。
 船が事故に遭い、1300万トンの重油が流出しました。
 南アフリカのケープタウン沿岸沖で起こったため
 ケープペンギンは、住処(すみか)を奪われ
 絶滅の危機に瀕しています。」

「このケープペンギンを救うため、
 20カ国以上の人々、合計4万人以上が集まり、
 ペンギンを洗ってから移動する活動が行われました。
 南アフリカ沿岸鳥類保護財団からの報告です。」

・・・

アザラシの縦型円柱水槽の横には、
次のような紙が、いっぱい貼ってある。


「日本にいるアザラシの仲間は
 ゼニガタアザラシ、ゴマフアザラシ、などです。」

「アザラシは、しゃけなどの魚を食べるため
 漁師さんから見ると、害獣です。」

「一方、アザラシが
 漁師の設置した魚をとるための定置網に引っかかり、
 死んでしまうこともあるため、
 アザラシがかわいそうだ、という人もいます。」

「NPO法人・北の海の動物センターの人たちは
 死んだアザラシの数と種類や
 アザラシの被害にあった、しゃけの数などを調べ、
 またアザラシがひっかかりにくい魚網を開発し、
 漁業とアザラシの折り合いをつける方法を模索しています。

「現在、地球温暖化のため、流氷は年々薄くなっています。
 子どもアザラシは、流氷の隙間で育てられるため
 このまま流氷が減っていくと、アザラシは絶滅してしまいます。」

・・・

この旭山動物園には、「モグモグタイム」というのがあり
各動物が食事をしているところを、見ることができる。

どの動物のモグモグタイムも大人気だが
特に人気のあるコーナーは、ホッキョクグマ・コーナーだ。

雄のイワンと、雌のルル。

北極出身のホッキョクグマたちは
日本の暑い夏よりも、寒い冬のほうがお気に入りだ。
雪がつもった大地の上を、ドシドシと元気に歩きまわる。

そこへ、係員が、エサとなる魚を投げ込むと
ホッキョクグマ二匹は、競って水の中へ飛び込む。

ザッバーン!

体重400kgのホッキョクグマが、水に飛び込むと
大量の「あぶく」が水中を満たす。

ホッキョクグマが水に飛び込んだ後の、水中での姿と「あぶく」も
透明なガラス(?)の壁のおかげで
我々は見ることができる。


モグモグタイムが終わると、
雄のイワンと雌のルルは、鼻をこすりあわせて、
仲良くじゃれあう。

・・・

ホッキョクグマの見えるガラスの壁の横には
次のような紙が貼ってある。


「ホッキョクグマは、
 3月に発情期に入り、交尾をします。」

「10月からの冬ごもりのため、
 雪と氷の中に穴を掘って、巣を作ります。
 そして、12月から1月の間に、そこで子どもを産みます。」

「生まれた時、赤ちゃんは、500gぐらいです。
 3月まで、お母さんといっしょにすごし
 10kgまで体重が増えて外に出てきます。」

「さらに2年間、お母さんと一緒に過ごした後、
 一人前になります。
 大人になったホッキョクグマは、400kgぐらいです。
 赤ちゃんの頃の1000倍近い体重になります。」

「ホッキョクグマが住んでいる北極の氷は、
 毎年10%ずつ、減っています。
 このままだと、あと50年で、
 北極の氷は、全部なくなると言われています。
 ホッキョクグマは、絶滅する可能性が、非常に高いです。
 これは、地球温暖化のためです。」

「現在、地球上では、かつてマンモスが絶滅した時よりも
 速いスピードで、地球温暖化が進んでいます。」

・・・

ちょっと話は変わるが、
私は、一般の人々を
「社会や世界のために貢献して頂けるように啓発」
する仕事をしている。

これには、三つの段階が必要であり、それらは
「きっかけ」・・・・・・・感動させること
「最初の一歩」・・・・・・すぐできることの紹介
「よりよい方法へ」・・・・本当に意味のあるものへの考え方の紹介
である、と書いてきた。

で、
このうちの最初の二つである
「きっかけ」から「最初の一歩」まで
を実践しているのが、ここ旭山動物園であると思った。

非常に分かりやすい。
子どもから大人まで楽しみながら、それを知ることができる。
内容が、偏って(かたよって)もいない。

考えてみれば、
動物園という場所は、
自然と人類がある意味で共生している形であり
地球温暖化の影響などを
もっとも説明しやすい場所(またはメディア)であるとも言える。

こうした場所を、是非、有効に活用して頂きたい。
もしも、このブログを、動物園関係者の方が読んでおられたら
是非、この旭山動物園を越える、もっとインパクトのある
「きっかけ」と「最初の一歩」の紹介を
行って頂きたいと思う。

(具体的には、旭山動物園では、環境問題への取り組みなどが
 紙として壁に貼ってあるだけなので
 読まないで素通りする人のほうが多い。
 よって、もうちょっと、係員に喋ってもらうとかなんとか。)

・・・

この旭山動物園では、
上記の、ペンギン、アザラシ、ホッキョクグマの
各コーナーに、様々な説明を書いた紙が貼ってある
だけでなく、
いつくかの環境への取り組みも、実践している。

一つは、「バイオ・トイレ」である。
バイオ・トイレとは、そこで人間が用を足すと
それがそのまま微生物で分解されて
自然に還っていく、というものだ。
畑の肥料などに使う方法もある。

もう一つは、「野生動物保護募金」。
ペンギン型の募金箱にお金を入れると、
絶滅しかかっている様々な動物を救うための活動に
使われるという。

例を挙げれば

「飼育下で繁殖したタンチョウヅルを
 野生復帰させるのに必要な飼育技術の開発」
 主催:釧路市動物園

「希少動物細胞保存事業」
(絶滅しかかっている動物の精子や卵子の保存)
 主催:広島市安佐動物公園

など、である。

・・・

さて、
北極の氷があと50年で全部溶けてしまい、
それに伴い
ホッキョクグマも絶滅する可能性が非常に高い。

アラスカなどに領土を持つアメリカも、
政府としてそれを認めているので
残念ながら、ほぼ確実な見通しである。


そんな中、
旭山動物園のホッキョクグマ・コーナーの一角には
次のような紙が貼ってあった。

飼育係さんのコメントだ。


「飼育係の一番の喜びは
 動物が、この動物園で繁殖してくれることです。
 だって、それは
 ここが安住の地だと
 動物が認めてくれた証(あかし)だからです。」


1974年
旭山動物園は、日本で初めて
ホッキョクグマの繁殖に成功した。