.
東京と変わらない近代的な都市と、
そのすぐ横にある貧民のスラム街。
これがフィリピンの首都の光景だ。

そして中でも強烈なインパクトを持つのが、
「スモーキー・マウンテン」の異名を持つ、
ゴミの山の風景だ。

目に見える光景よりも、
その臭いの醜悪さに、思わず顔をしかめる。

足元の「大地」も、もはや大地とは言えず、
汚泥のようなドロドロとした「底なし沼」の様相を呈しており、
長靴を履いた両足が、うっかりするとどんどん大地にめりこんでいく。

そのまま埋まってしまい、死亡してしまう人も、
年間何人もいるそうだ。

様々な国際援助団体などから批判があいついだだめ、
何回か引越し(移転)が行われたが、
その引越し先でまた同じような状況になるのだから、意味がない。

近代的な大都会と、貧民の住むスラム街。
この二つの地域の両方で、
「お絵描きイベント」というものを行ってきた。


「あなたのたいせつなものはなんですか?」ときかれた時、
あなたは、すぐ、答えられるだろうか?

世界中の子供達にこの質問をして、絵を描いてもらう、
というイベントを当法人・「宇宙船地球号」は行っている。

世界には約二百の国があるが、
その全ての国からそれぞれ数百人の子供達にお願いをして、
絵を描いてもらっているのだ。

また、子供に絵を描いてもらうだけではなく、
その後、必ずその子の家を訪れ、
様々なインタビューを行っている。

どんな家に住んでいて、どんな家族と暮らしていて、
お父さんの仕事が何で、お母さんの作る料理がどんなものか。

その他、歴史・宗教・政治体系なども取材し、
それらを全てまとめた書籍や映像作品を作っていく、
というのがその活動内容である。

要するに、これこれこういう社会背景の中で暮らしていると、
子供はこういうものを大切だと思う、
というその流れを紹介しようという企画だ。


さて、フィリピンでは、
近代的なお金持ちの子供が多い地域と、
貧乏な子供が多い地域で行った。

大切なものとして描かれたものは、
家族、学校(教育)、
キリスト教の教会(フィリピンはカソリックの国)、
自然、平和などが多かった。


その後、絵を描いた子供たちの家を
家庭訪問をした。

フィリピンのお金持ちの家は、
日本の平均的な家庭よりも、
はるかに大きく豪華な造りをしており、
召使いもいたりして、その豊かさに目を見張った。

一方、貧乏な子供が住んでいた所は、
トタン屋根で作られた、
床が傾いて踏むとベコベコ音のする家だった。


ところが、
お金持ちの家で何の家事もせずに暮らしている奥様よりも、
下町のスラム街で数人の「おばちゃんたち」が集まって、
井戸端会議(いどばたかいぎ)をしている様子、
その笑顔のほうが、
なんとなく幸せそうに見えた。



・・人間の幸せとは、いったいなんだろうか?



 あなたのたいせつなものは、なんだろうか?




「世界の街角から」(婦人の友2006年4月号)への寄稿原稿を再掲