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国際協力において
まったく異なる、二つの段階がある。

一つは、緊急援助
もう一つは、開発援助

緊急援助とは、
戦争や内戦をしている最中の国
または
地震などの自然災害が起こった直後の国
へ行き、
今すぐ援助をしないと死んでしまうような人々へ
食料・水・住居・医療などを届けること。

開発援助とは、
戦争や内戦が完全に終了し、政府が確立し、
数年経ってから
その国の政府・地方自治体・地域コミュニティー
などに協力して、未来に残るような援助をすること。

・・・

この二つの長所と欠点を、
わかりやすいように、やや極端に最初に書いておく。

緊急援助の長所は、

1.最も困っている人々へ支援をしている。
2.一般の人からみてわかり易いので、募金などが集りやすい。
3.マスコミも来るので、報道されやすい。


緊急援助の短所は、

1.もらった食料や水は、食べると無くなるので、一時的。
  次の日も、その次の日も、援助を続けなければならず、
  根本的な解決になっていない。
  (持続可能ではない。未来に残っていかない。)
  よって、「ばらまき型の援助」と揶揄(やゆ)される。

2.援助を受ける側の人が、「援助慣れ」してしまい、
  自立しようとしなくなる。
  外国の援助団体からの食料などを期待し
  いつまでも働きだそうとしなくなる。
  これを「援助漬け」という。

3.基本的に、危険な地域で行うので、
  援助する側のスタッフも、生命の危険に遭うことも多い。

・・

開発援助の長所は、

1.その国や地方自治体、地域コミュニティーなどと協力して行うので
  作り上げた建物、人材、システムが、その国に残りやすい。
  持続可能な形が残り、未来に残りやすい。

2.国際機関や政府機関が行うことが多いので、
  ODA(政府開発援助)などの莫大な資金を使える。
  相手国の政府が協力してくれるので、
  その国全体を動かす大きなプロジェクトが実施できる。

3.安全な地域で行うので、スタッフの危険が少ない。


開発援助の短所は、

1.その国の政府や地方自治体を通して活動することが多いので
  途上国側の悪徳政治家の利権獲得に利用されやすい。
  しかし、そうとわかっていても
  現地政治家の言うことをきかないと、
  その国でプロジェクトをやらせてもらえないので
  言うことをきくしかない。

2.計画の実施が遅く、計画を作っているだけで
  1年以上かかることが多い。
  その間に、現地の状況は、変化してしまう。
  (もはや、必要ないプロジェクトの計画を作っていることもある)

3.作り上げた大規模なプロジェクトのための
  大規模な予算を、財務省などから捻出してもらったため
  実際現地の状況が既に変化してしまっていても
  その予算を、「消費」しなければならない。
  仮に、もう、必要なくても、使わねばならない。
  このため、ますます現地の悪徳政治家のもとへ
  援助の費用が入っていってしまう。

4.そもそも、その国の政府が安定してから
  援助を開始することが多いので、
  緊急援助に比べると、
  世界で最も援助の必要な場所
  を支援しているわけではない。

・・・

と、いうように、
緊急援助と開発援助は、
まったく逆の長所と短所をもっており
それぞれ大きな問題をもっていた。

簡単にいうと
(わかり易いように、あえて極論すると)

緊急援助は、基本的に、
緊急援助型の、国際NGOしか
行っていなかった。

(政府のJICAは、危険な地域には来ない。)

(国連の中で、緊急援助を行っているのは
 UNHCRと、WFPだけ。
 しかも、常任理事国と中の悪い国には来ない。)


で、
緊急援助型のNGOは、
食料を配り、医療活動をしたが、
きりが無い。
食料は、食べれば終わりだからだ。
翌日、食べ物は、また必要になる。
医療を続けても、病気がゼロになることはない。

このため、
資金がなくなった段階で、NGOは、撤退する。

撤退する時に、
その国の政府または
開発援助型の援助団体(JICAなど)に
活動の引継ぎをするのが理想なのだが
実は、この「引継ぎ」が
うまくいかないことが非常に多いのだ。

途上国の政府には国家予算が乏しく、
あっても悪徳政治家が抱え込み、
貧しい人のためには、使われない。
JICAは、動き出すのが遅く、
5年ぐらいしないと来ない。

というわけで、
緊急援助型のNGOがやったことは
実は(引継ぎの時に)無駄になり
(病院も学校も消滅してしまい)
紛争地帯の人たちは、
ひどい目に遭うことが多かった。


これを改善しようということで
緊急援助と、開発援助の間に、
復興、というステージを入れて考えるようになり、

現在、例えば、
難民を救済する時に、

1.
難民に、食事と医療と住居を(一時的に)配るだけでなく、

2.
同時に、国に帰る方法(道路、車など)も検討し、

3.
帰国後も
新しい住居の提供、新しい仕事の提供、
そのための職業訓練、当面の(数ヶ月の)生活費、
などの支給を行い、
その後の開発援助に、つなげていく、という考え方だ。

で、
一応、こうした流れが、現在主流になっており、
国連も、JICAも、NGOも、
緊急援助の団体も、開発援助の団体も、

今までの欠点を反省し、
緊急・復興・開発
の三つの段階を包括的に考えなければならない
ということになり
国際協力の世界は、以前より、少し、ましになってきている。

・・・

ということなのだが、
もちろん、これは、綺麗ごとである。

根本的な問題は、全然解決していない。


国連が、常任理事国五カ国や
その地域での国連加盟国の意向を優遇し
国連に入っていない国や民族を迫害する傾向があること。

ODAやJICAは、出足が遅く、
緊急援助は、事実上、
(自然災害を除いて)できないこと。

NGOは、予算に限りがあり
上記のような、包括的な援助など
できるはずもないこと。


で、
一応、現状での中庸案(妥協案)としては
緊急援助型のNGOが、
国連のある機関や、日本の外務省から資金をもらい、
緊急援助から復興までを行い、
なんとか開発援助が始まるまでもちこたえる、
というのが、現状だ。


補足1:
日本の外務省は、お金を出すのが遅かったので
日本最大の緊急援助型NGOの一つ、
ピースウィンズジャパン(PWJ)の代表である
大西健丞さんが、
外務省からてっとりばやく、
NGOに金を出させるシステムを作った。

それが、
ジャパン・プラットホーム(JP)である。
この功績は、かなり大きい。
大西さんの功績は、殊勲賞ものだ。


補足2:
元・国連難民高等弁務官(UNHCR)にいた
緒方貞子さんが、
日本政府の機関・JICAの理事長になった。

上述した、難民に援助を行う時に、
その帰国もサポートし、さらに、帰国してから
自分の村で自立していくまでをフォローすることを
「緒方イニシアチブ」
と呼ぶが、こうした考え方も、彼女が有名にした。

(この概念は、もともとは
 現場の難民の人々に近いNGO側から出た視点ではあったが
 とりあえず有名な人が、キャッチコピーを使って
 その概念を普及していく、ということも
 この世界には、必要だ。)


ともかく、いろいろな人が、いろいろな所でがんばっており
世界は、少しずつ良くなっている、と信じたい。