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1月7日、フジテレビ系列にて放映された
「あるある大辞典」の中で
「納豆を食べるとそれだけで体重が減り ダイエットできる」
という主旨の内容の放送があった。

人気番組である同放送を見た視聴者が
食品スーパーやコンビニへ殺到し
納豆を買いまくった。

この結果、業界全体で、しばらく納豆は
品薄となり、社会的な現象となった。

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1月20日、フジテレビ系列で
同放送の製作にあたった関西放送は
番組で使用した
「納豆でやせる」
ということを証明するために使われたデータが
ウソだった、やらせだった、捏造だった
という主旨の内容を発表した。

実際の製作は、関西放送から製作依頼された
日本テレワークなどの「番組制作会社たち」だった、
と関西放送は説明した。

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番組で紹介された
納豆でやせる、という根拠は
「納豆の中には、イソフラボンが入っており、
 それが、DHEAというホルモンの原料になる。
 DHEAには、やせる効果がある。」
というものだった。

同番組の中で、8人の人々に納豆を食べてもらい
2週間後に最大3kg以上やせた
という実験が行われていた。
採血までされており、その科学的根拠を証明しようとしたが
採血がされただけで、実際はなんの検査もされておらず、
いわゆる「やらせ・捏造」だった。

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以上が、昨今放映された、
「納豆でダイエット事件」だ。

が、この放送が「やらせ・捏造・ウソ」だったことはともかく、
このことは
社会にある本質的な問題を暗示している。

それは
この番組に限らず、以下のような内容の番組が
やたら多いことだ。


「なになにを食べると、健康に良い」

「なになにを食べると、ガンにならない」

「なになにを食べると、老化を防ぐ」

「なになにを食べると、肌が美しくなる」


「なになにを食べると、やせる」


そして、そうした番組を放映すれば
多くの視聴者がそれを見て、視聴率がとれる、という事実。

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で、
医師であり、医学博士である私が
知識およびその経験から判断する限りにおいて
上記のような情報の
ほとんどが、ウソ または 誇張
であると思う。

理由は、以下である。

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1.食品には、数百種類以上の化学物質が入っていること

納豆に入っている、ある成分が
仮に、本当に、ダイエット効果があるとしても、
納豆というものは、その中に


たくさんの種類の タンパク質
たくさんの種類の 脂質
たくさんの種類の 炭水化物

たくさんの種類の アミノ酸
たくさんの種類の 脂肪酸
たくさんの種類の ブドウ糖などの糖類

たくさんの種類の 微量元素(鉄、亜鉛、など)
たくさんの種類の イオン(ナトリウム、カリウム、など)
たくさんの種類の 食物繊維(消化吸収されない部分)

たくさんの種類の 納豆菌や他の細菌


が、入っている。
合計、数百種類以上の様々な化学物質が入っているのだ。

この中の、ほんの一つが、仮に本当に
「ダイエット効果」があった、としも、
それ以外の物質には、
「肥満になる効果」のあるものが入ってるかもしれない。

(というか、ほとんどの物質は、カロリーがあるので基本的に肥満になる)

要するに、数百種類含まれている化学物質の
すべてを調べて、しかも、それらの量も調べて、
総合的に、
ダイエット効果があるか?
ということを検証しなければならない。

が、
今回問題になった番組に限らず、
すべてのこうした類(たぐい)の番組において
上記のことを検証した番組は、一つもない。


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2.化学物質の相互作用

仮に、ある化学物質に、ダイエット効果があったとしても、
通常、それが、一つだけ、
で存在している状態で、実験が行われる。

それ以外の物質と混ざった状態で
その効果にどんな変化が現われるか、
検証されていることは、少ない。

簡単にいうと、
ダイエット効果のある物質があっても
それを強固にくっつける作用のあるタンパク質が
そのそばにあれば、効果は、発現しない。

(タンパク質にくっついていると、一般に化学物質は
 作用を発現できないことが多い。)

また
ダイエット効果のある物質と反応しやすい物質もあり
それがそばにあると
ダイエット効果のある物質は
すぐ、他の物質に変わってしまう。
化学物質というのは
安定して存在しているのではなく、
(常に、周りの化学物質と反応をし続けており)
すぐに、他の物質に変わってしまうのだ。
よって、
その一つ、だけである状態を論じても、ほぼ意味はない。

・・・

3.血液中は、さらに多くの化学物質と酵素

食べものを食べて、
納豆の中に含まれるダイエット効果のある物質が
無事、腸から体内に吸収されたとしよう。

仮に、
腸で、消化酵素で分解されず、
腸の中に無数にいる大腸菌などの細菌による影響を
まったく受けなかったとしよう。
(そんなことは、ちょっと考えにくいが。)

で、まあ、体内に入り、無事、血液に入ったとする。

すると、血液中には、これまた
納豆とは別の、数百種類の化学物質があり、
ダイエット効果のある物質と、様々な反応をする。

アルブミンというタンパク質が、
外からやってきた化学物質を
自分の体にくっつけて、離さないことも多い。

(すると、効果は、発現できない)

血液中にある様々な酵素が、
速やかに、ダイエット効果のある物質を
分解したり、他の物質に変えることも多い。

よって、
血液中で、効果を発現できるかは、疑問だ。

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4.統計学はいい加減なので、再現性


仮に、上記の難しい「化学」のことに、すべて
めをつぶったとしよう。

人間に納豆を食べさせてやせれば、
それで証明できるじゃないか?
と思うかもしれない。

が、ほとんどの場合、そうした実験は
いい加減である。

ある特定の結果を狙っている場合、
そうした結論をみちびきだすことは
事実上、可能である。
簡単である。

たとえば、
100人の人に納豆を食べさせたとする。
すると、20人はやせ、20人は太ったとする。

しかし、
100人の中にいた、
やせた20人の人だけを抽出し、
もともと、
この20人だけで、実験を行った、
と主張すれば
視聴者には、わからないわけだ。

よって、
人間に食べさせて、
納豆は、ダイエット効果がある
という類(たぐい)の実験はすべて
基本的に、ウソである可能性が極めて高い。


もしも、それでもこれを証明しようというのであれば
再現性、が必要である。

再現性とは、
それがもしも、本当に真実であるならば
何回やっても、また同じ結果になるはずだ、
というもの。

再現性には、以下の三つがある。

「時間的再現性」
「空間的再現性」
「異なる人間による再現性」

時間(日時)を変えてやっても、同じ結果になる。
東京でやっても、大阪でやっても、同じ結果になる。
私がやっても、あなたがやっても、同じ結果になる。

以上の三つが証明された場合、信用してもいいかな、
ということになる。

(要するに、そのテレビ局と利害関係のない
 どのような第三者が実験を行っても、同じ結果になるはずだ。)


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と、いうわけで、
「ある食品が、なになにという効果がある」
ということを証明するためには、以上の四つが
最低でも必要である。

1.その食品に入っている数百種類のすべての化学物質の分析
2.化学物質同士の相互作用
3.生体内(血液中など)でも効果が同じようにあること
4.人間で実験をしたら、再現性の確認


わたしの知る限り
この種のテレビ番組で、上記のすべてを確認した番組は
一つも、ない。


一つも、ない。


よって、この種のテレビ番組からの情報は
信用するに、足りない。