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「国際協力をやってみたいんですが
 どうしたらいいか、わからないんです。」

「何をやりたいの?」

「教育関係の仕事をしていたので、やっぱり教育を。」

「ちょっとやりたいの、それとも、ずっとやりたいの?」

「山本さんの本を読んでいたら、
 ずっとやっていく、プロの国際協力師になりたいと思いました。」

「じゃあ、最終的に、三つの条件が経歴(や資格)として必要だよ。
 英語力と、大学院修士と、2年間の海外勤務経験だ。
 この三つを、どれが先でもいいから獲得していく必要があるよ。」

「それが・・。何から始めたらいいのか・・」

「とりあえず、現場に行きたければ、
 青年海外協力隊か、国連ボランティアか、NGOのボランティアだし、
 なんらかの専門性を持ちたければ、大学院に行って修士をとる。
 英語が弱ければ、TOEICで860点、TOEFLのCBTで210点をめざして
 英語の勉強をする。

 そうした大学院や英会話学校に行く、お金がないんであれば、
 まずは会社に入って貯金をするか、奨学金を申請する。
 と、いうわけで、極めて単純だよ。

 三つのどれかを始めるか、そのためのお金がなければ、
 バイトをするか正社員になって会社で働く。それだけ。」

「でも、どうもそれを始める「ふんぎり」がつかないんです。」

「なんで?」

「友達とかみてると、会社でけっこういい給料もらってる子もいるし。
 国際協力の世界に入っても、将来、つづけていける自信もないし。
 ・・・生活費の点でも、モチベーションの点でも・・。
 あと、もうすぐ結婚するっていう子も近くにいて、
 そういうのを見ていると、不安で」

「ふうん。じゃあ、まあ、やめちゃえば?」

「えっ?」

「別に、迷うくらいなら、国際協力師なんて、
 目指さなくても、別にいいと思うけど。

 社会のために貢献したいと思うのであれば、
 会社に入って、CSR(企業の社会的責任)を果たしてもいいし、
 一般の消費者として、環境に配慮された商品を買うことを
 地道にやっていくことでもいい。

 また、
 国際協力をする目的が、社会への貢献という目的ではなく、
 自分の夢をつかむため、ということであれば、
 別に、なんでもいいわけだから、他の夢を探せばいい。
 かっこいい彼氏と結婚することでも、
 外資系企業のOLになって、かっこよく働くことでも、
 お金持ちになることでも、それはそれで「あり」
 だと思うよ。」

「・・はい」

「なんで、国際協力、やりたいの?」

「昔、テレビで、アフリカの貧しい国の、映像があって・・
 それが、心に残っていて・・」

「ふうん」

「だから、やってみたいんですけど、
 友達とかから、いろいろ話をきいていると・・」

「宇宙船地球号の補足ページにある、
 国際協力師になるための、いろんな情報は、みた?」

「はい、見ました。」

「俺の本「世界と恋するおしごと 国際協力のトビラ」は、読んだ?」

「はい、(一応)読みました。」

「じゃあ、プロの国際協力師になるための、
 いろいろな方法を、だいたい既に知っているわけだ。

 で、あれば、あとは、やることは、一つだよ。
 それは、「友達を切る」、ことだ。」

「えっ!」

「簡単に言うと、情報を減らしていくことが必要だ。

 俺のブログを読めばわかると思うが、
 国際協力の世界は、膨大な内容のある世界で
 その分野の幅の広さも、その道に入る方法も、いくらでもある。

 インターネットなどで調べると、無数の情報があるため、
 どれが本当で、どれがウソなのか、
 どれが(自分にとって)必要で、どれが必要でないのか、
 さえ、わからなくなる。

 よって、
 例えば、今日から1週間、情報を集めまくる、ということをやったら
 次の1週間は、情報を減らしまくる作業が必要だ。

 どの情報が自分にとって必要で、
 どの情報が自分にとって不必要なのか、
 落ち着いて、一人になって、自分で判断していく時間を作ることだ。

 これが、できない人は、いつまでも、迷いの中にいる。

 つまり、情報は、集めることも大切だが、
 それ以上に、減らしていくこと、
 そして、残った重要な情報だけで、自分の人生を設計していくことも
 重要なんだ。

 で、国際協力の世界だけでない、世の中の様々な場所で働いている
 友達が、あなたには、きっと、たくさんいる。

 給料のいい会社で働いている友達、
 音楽とか芸術系の夢を追っている友達、
 彼氏とつきあっていて、もうすぐ結婚する友達、
 主婦で、子育てが大変だ、と愚痴をいう友達、

 ま、いろいろいるわけだ。

 国際協力の世界だけでも、十分すぎるぐらい大量の情報があるのに、
 世の中のそうした情報も入ってくることは
 自分自身が、混乱してしまい、
 いつまでたっても、なんの方針もたたない、ということになる。

 よって、もしもグダグダ悩んでいるんだったら、
 一度、一週間ぐらい、友達との交流を絶って
 情報を減らしていく作業をしたほうが、俺はいいと思うよ。」

「で、でも・・、と、友達を切るのは・・」

「だから、一週間でも、いいって。

 通常の状態で難しいのならば、
 特殊な環境に自分自身を置く、という方法もある。
 外国にいくとか、日本でも、閉じこもる、とか。

 例えば
 俺が昔やったことがあるのは、
 ある英会話スクールに、朝8時から夜10時までずっといて、
 一日中、英語づけにした。一週間、英語漬けにした。

 日本語は、いっさい、見ない。聞かない。夜も。
 読むのは、英字新聞だけ。
 日本語のEメールチェックも、しない。
 携帯の電源も、当然オフにする。

 これを一週間やると、英語力が伸びる点でもいいんだけど、
 それ以上に、いろいろな考えが深まる。
 英語という言語は、主語と述語が明確で、論理的な言語だ。

 しかも、英会話スクールに行くと、必ず先生から、
 あなたはなんで英語を勉強したいんですか?
 と、きかれる。

 これに、英語で論理的に答えないといけない。

 国際協力をしたいから、英語を勉強するのだ。
 それは、途上国で、教育をしたいからだ。
 教育は、うんぬん、という理由で一番たいせつだ。

 などということを喋らないといけない。

 これを頭の中で整理し、話すことを繰り返していると
 自分が本当に国際協力をやりたいのか
 それとも
 あまりたいした理由や動機ではないのか
 が
 明確になっていく。

 その結果、
 国際協力を続けたいと思う気持ちが強くなるかもしれないし、
 逆に、たいした理由がない、と気づくかもしれない。

 その結果、国際協力をやめてしまっても、俺はいいと思う。

 英語を1週間勉強したことは、
 まあ、無駄には多分、ならないであろう。

 仮に、普通の会社に、再就職するとしても。」

「は、はい。」

「昔のことわざに、こういうのがある。


  百術ありといえども、一清にしかず


 お金を儲け(もうけ)たい、成功したい、などと、
 たくさんの策略をめぐらせるよりも、
 心が、澄んでいて美しいことのほうが良い、ということ。

 ぐだぐだ考えるよりも、
 頭の中を掃除して、整理整頓し、
 今、自分にとって大切なものは何か、を
 よく考えていくことも重要だ。


 情報を減らしていき、限定していき、
 最後に残る、たった一つの
 あなたにとって 最も大切なものは何か。


 それが見つかってから、
 国際協力師を目指したほうがいい。

 もちろん、それ以外の道でもいい。


 だって、あなたの人生は、一つ、なのだから。
 

 たった一つ、なのだから」





  百術ありといえども、一清にしかず   吉田松蔭