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将来、国際協力をやってみたい、という人の中で
「まずは現場を経験したい」、というタイプの人がいる。

そういう人たちには、
私は基本的に、青年海外協力隊を勧めている。

青年海外協力隊には、様々な問題点もあるが、
それを上回るメリットがあるため
やはり、第一選択として推している。

いくつかのインターネット上のサイトで
かなり酷評されているようだが、
まあ、それも一つの側面としてはそうなのだが、
総合的に判断すると
少なくとも、他の選択肢よりは数段勝る、と思う。

以下、その理由を列挙していこう。
もちろん、長所も、短所も、公平に記載してゆく。

・・・

長所

1.日本政府のODA(政府開発援助)のお金を使っている
  JICA(国際協力機構)の一事業として
  行われているので、信頼性が高い。

  (民間のNGOには、怪しいところも多り、
   それらよりは、数段信頼性が高い。)

2.給料のようなものが毎月合計十数万円もらえる。
  正確にいうと、再就職準備金という名前のお金が
  毎月日本にある銀行口座に9万円前後振り込まれ、
  それとは別に、現地で生活費が数万円もらえる。
  さらに家賃手当てとして、数万円もらえる場合もある。
  以上から、合計十数万円がもらえる。

  (NGOのボランティアで派遣された場合、
   無給、よくて薄給(数万円)、
   下手をすると持ち出し(自腹で交通費も捻出)である。
   加えて
   NGOのインターンの場合、お金をもらうどころか
   お金を払う場合が多い。)

3.2.のお金のお陰で、2年間の派遣後、帰国すると
  自分の銀行口座に200万円前後が貯まっているため
  それをもとに、次にどのような選択肢をとろうか、
  将来のことを、ゆっくり考えることができる。

4.青年海外協力隊を2年経験していれば、
  将来、国際協力を続けたい場合、様々な魅力的な選択肢が増える。
  例えば、
  ジュニア専門員制度、国内長期派遣制度、海外長期派遣制度、など。
  順に解説すると
  ジュニア専門員制度は、将来のJICA専門家養成システムだ。
  国内長期派遣制度は、FASIDなどの国内の大学院等へ行くための
  奨学金制度だ。
  海外長期派遣制度は、海外の開発系大学院へ行くための
  奨学金制度だ。
  要するに、将来、国際協力を続けていくためには、なんらかの専門性
  が必要になるのだが、そのためには大学院修士をとる必要があり
  その入学および授業料を補填する奨学金の支給制度がある。
  もちろん倍率は高いが、青年海外協力隊出身者は、やや優遇される。

5.国連職員などの国際公務員や、JICA専門家、
  開発コンサルタント会社職員など、いわゆる本当の国際協力のプロ
  になるためには、以下の3条件が必要な場合が多い。
  それらは、英語力、大学院修士、2年間の海外勤務経験、である。
  青年海外協力隊にいけば、最後の、2年間の海外勤務経験、を
  自動的に取得でき、上記に就職できる可能性が増えることになる。

6.ある程度、安全な開発途上国に行くので
  死んだりする危険性が少ない。
  もともと健康な人が選ばれ、派遣中も、数度の健康診断がある。
  少しでも、具合が悪いと、日本へ送還される。
  要するに、戦争に巻き込まれたりする心配が、ほぼなく、
  病気になった時のケアも、ほぼ万全である。

  (NGOなどに行ったら、国際大型NGOを除き、
   なんの保障もないことが多い。)

7.現地でいろいろな人と知り合うことが多く、国際協力の世界が広がる。
  特に、日本大使館やJICA事務所周辺で動いている
  様々な国際協力のプロジェクトを知ることができ、
  同時に、それらに関わる人々を知ることができる。
  将来使えるコネや、人脈を得られる可能性も高い。

8.帰国後も、青年海外協力隊のOB会のようなものもあり、
  そうした団体(?)からのサポートが一応ある。
  また、帰国直後に、JICAオフィスで、
  将来の就職先の相談にのるシステムも一応ある。
  例えば、各地方自治体に派遣される、国際協力推進員、
  福島や長野の協力隊訓練施設の職員、
  協力隊OBが作ったNGO、NPO、開発コンサルタント会社、
  果ては、一般企業などもあり、そうした就職先も検討される。

9.現地では、ある程度、自由である。
  要請された案件のためにがんばろうと思えば、
  自主的にいくらでも、がんばれる。
  さぼっていようと思えば、いくらでも、さぼれる。

10.英語などの語学力が比較的低い人でも、採用される。
  派遣前に2〜3ヶ月の合宿が、福島または長野であり、
  そこで英語または現地で使える言語を
  徹底的に勉強させられる。
  この語学を含めた合宿は、無料である。
  英会話スクールで同様の時間数の授業を受けた場合、
  100万円から150万円相当となる。
  これを国が負担してくれて、無料である。
  こんな美味しい話は、他にない。
  
・・・

短所

1.思うような活動が、なかなかできない。
  自分が思ったような活動ができた、と言うケースは
  全体の1割程度。
  8割りは、なかなか思うような仕事ができず
  悩みながら、もがき苦しみながら、ともかく2年間、
  現地でがんばった、というケースが多い。
  最後の1割りは、行って早々に、がんばることを諦め(あきらめ)
  2年間、ずっと遊んでいる人々もいる。

  (最後のケースが、ネット上で有名になっているため、
   税金の無駄遣いと酷評されることも多い。
   が、それも、事実である。)

2.行ってみると、話が違って、仕事がない。仕事が違う。
  例えば、アフリカのある国に行き、ある学校で、
  これこれこういう教育をする、という教師の仕事の
  要請があったとする。
  ところが、行ってみると、話しが違って、そんな仕事はない。
  (することが、何もない。必要とされていない。)
  または、まったく違う仕事をさせられることがある。
  このケースも、かなり多い。

  このケースが生じる理由は、以下のため。
  青年海外協力隊のその国での派遣数を、維持し、かつ増やすために
  JICAの現地事務局は、現地政府や地方自治体に
  以下のようなお願いをする。
  「日本は、これこれこういう援助をして差し上げますから
   代わりに、青年海外協力隊、というボランティアを
   あなたの国の教育などの部署に、置かせてもらえませんかね?」

  要するに、別に現地では必要とされていないのに
  JICA現地事務所が、(派遣実績を維持するために)ある意味努力して、
  青年海外協力隊が派遣される枠を、確保しようとしているのだ。
  が、実際は現地では必要ではないことも多く、
  行ってみたら、仕事がない、ということも多い。

3.日本のプレゼンス(日本という国の存在)を示すだけ。

  分かり易いように、やや極端に書くと、
  青年海外協力隊は、派遣期間中、その実績を求められない。
  仕事の成果を、出す必要がない。
  (悪く言えば、遊んでいてもいい)

  一般の日本政府の国際協力は、ODAのお金を使う。
  これは、財務省からお金をもらい、
  外務省経由で、技術協力が専門の、JICAにお金がまわってくる。

  (当然、このお金は、財務省からも、外務省からも、
   どのように使って、どのような効果があったのかを、提出することを
   求められる。)

  で、通常は、
  JICA職員やJICA専門家などの人々が、
  開発途上国から依頼されてきた「案件」に対し、それを実行する。
  通常、3年、5年、10年などという期間の締め切りをもって
  そこまでに数字で結果を出す。(定めた指標を改善する)
  対費用効果 ( cost-effectiveness ) を最大にするよう、配慮する。

  これが、プロの国際協力である。

  青年海外協力隊は、アマチュアの国際協力とみなされている。
  もっとはっきり言えば、国際協力ではなく、国際交流である。

  仮に、国際協力を、きちんと、期間内に、数字で結果を出すもの、
  (しかも、経過を定期的にモニタリング(監視)されながら行うもの)
  と定義するのであれば、
  期間内に数字で結果を出すことを要求されず、
  しかも、定期的にモニタリングおよびフィードバックもされない
  青年海外協力隊、というシステムは、
  国際協力ではない。
  現地に行ったときに知り合った、周りの人々と仲良くしているだけ、
  すなわち、国際交流である、と考えたほうが、しっくりする。

  繰り返し書いておくが、
  青年海外協力隊の活動は、
  通常の国際協力では設定されるはずの
  数値目標をもたず、それを達成する締め切りもなく、
  途中に監査されるシステムもない。
  (5回のレポート提出はあるが、感想文のレベルであり、
   かつそれに対して有効なフィードバックもない)

  これでは、本人が考えた、自己満足の活動になってしまう可能性が高い。
  (逆に言えば、本人の自主性が重んじられている、とも言える。)

  これは、青年海外協力隊の目的が、
  日本のプレゼンスを示すこと(とりあえず、そこにいればいい、ということ)
  と
  日本の青少年の育成
  の
  二つが目的であるからだ。

  きつい言い方をすれば、途上国に対する支援が目的のスキーム(枠組み)では
  ない。

4.青年海外協力隊からの帰国後、就職先が、ない。

  青年海外協力隊から日本に帰ったあと、
  日本で普通の会社などに就職しようとしても
  なかなか就職先が見つからないことが多い。

  ニートのようになって、自宅でボーっとしている人も多い。
  よくて、フリーターである。

  これは、大学を出てすぐ協力隊などにいった場合、
  せっかくの「大学新卒」というワクで企業に就職できる、
  ある意味権利をもっているのに、その権利を
  棒にふることになる。
  2〜3年して帰ってきたときに、
  他人より2〜3年遅れているにも関わらず、
  手になんの職(技術)ももっていない、かつ、社会人経験もない。
  よって、中途採用のワクで就職しようとしても、採用されない。

  また、2年間、途上国で、やりたいことをやり、
  「お山の大将」になっていたため、
  社会適応性が低くなり、自己中心的(わがまま)になり、
  日本の社会ではうまくやっていけない人物になってしまう可能性もある。

  日本の企業のほうは、基本的には、無難な、安全な人材を
  採用しようとするため、
  海外でのボランティア経験のある人を優先してとることは、(まだ)少ない。

5.青年海外協力隊から戻っても、国際協力を続ける人は、1割未満

  長所のところに書いたように、
  青年海外協力隊での2年間の派遣経験があれば
  プロの国際協力になるための三つの条件のほとんどをクリアしやすくなる。
   福島か長野での英語等の合宿(無料)
   2年間の海外派遣経験の(自動的)取得
   帰国後、様々な研修制度による大学院修士取得への優遇
  など、美味しいことばかりだ。
  本気で、将来、プロの国際協力師になりたい人にとっては
  3拍子そろった、こんな美味しい話は、他にない。
  よって、私も、強く、この青年海外協力隊を勧めている。

  ところが、帰国後、国際協力を続ける人は、JICAの公式統計で
  1割もいない、ことがわかっている。

  普通の企業に入るか、入れない場合、フリーターかニートとなる。

  これはまず、帰国後に、燃え尽き症候群となってしまい、また
  200万円の貯金もできたため、しばらく遊んでいる、という側面もある。

  仮に、遊んでいる気がなく、プロの国際協力師になりたくても、
  国連職員になるJPO試験を受けるには、大学院修士がいる
  (でも、持ってない)。
  JICA職員は受験できるが、倍率が25倍以上で、そうは受からない。
  では、どうしよう・・・
  と思っても、何も思い浮かばない。

  いろいろ調べると、ともかく、続けるには、大学院修士が必須とわかるが、
  いまさら大学院にいくのは腰が重く、そこまでして・・・
  と思うと、止めてしまう、というのが、普通の流れである。

6.帰国後の、就職斡旋(しゅうしょくあっせん)制度が、不十分。

  青年海外協力隊から、帰ってきたときに、上記のように
  就職に苦しむ、ということは、非常に有名なことであり、完全な事実である。

  で、ほとんどの青年海外協力隊OBが経験しているため、
  当然そこからJICA事務所へ苦情が多数、いったため、
  最近、多少は、改善された。

  帰国後、新宿のマインズタワーのJICA本部で、二日間程度の
  今後のオリエンテーションが持たれることになっている。
  そこで今後の選択肢の紹介、相談、渋谷の青年海外協力隊OBの
  サポートセンターなども、紹介される。

  が、結論からいうと、申し訳ないが、これらのシステムは
  大変にお役所仕事であり、形骸化しており、ほとんど役に立たない。
  私がここに書いた情報よりも、少ない。

  よって、帰国後の道は、自分できりひらいていかねばならない。

7.倍率が、平均で5〜6倍。
  そもそも、青年海外協力隊を受験しても、
  全体の平均倍率で、5〜6倍である。
  そう簡単には、受からない。

  140の職種があるが、基本的に、教師や看護師などの資格があると有利。
  それ以外では、自動車整備、建築、IT関係、スポーツ、音楽、農林水産、等。

  なんの一芸(専門・資格)もないひとは、
  青少年活動、村落開発、エイズの予防教育普及員、などの仕事があるが
  通常、倍率が当然高く、10倍以上のことが多い。

8.本当の途上国にはいかない。

  もともとJICAとう組織は、紛争地帯や、本当に状況の悪い国には行かない。
  ある程度安定している、開発段階と呼ばれる国々で活動する。

  青年海外協力隊の場合、その中でも、特に安全な地域が選ばれる。

  よって、本当に困っている人がいる、どうしようもないくらい
  悪い状況の国に行くわけではない。
  そこそこ悪い、という地域にいくわけだ。

  よって、やや極端な言い方をそれば、
  (世界には、もっとずっとひどい地域があるにもかかわらず)
  青年海外協力隊に行く地域は、ほどほどのところである、ということだ。

  これは、初心者向けにはちょうどいい、ともとれるし、
  逆に、税金の無駄遣いだ、という考えも、あるかもしれない。

・・・
・・・

まあ、大筋で、このような状況である。

長所と短所の両方を、見極めたうえで
青年海外協力隊に応募するかどうか、決めて欲しい。


が、
最後に、やはり、青年海外協力隊への参加を勧めておく。

プロの国際協力師になるための、3条件である
 英語力
 大学院修士
 2年間の海外勤務経験
を自動的に取得または、そのための可能性を
広げることができるのが、この青年海外協力隊、という制度だからだ。

(要するに、青年海外協力隊という制度自体で、
 本物の、プロの国際協力ができることは、ほぼない。
 しかし、
 それでも、将来、プロの国際協力師になりたい人には
 これへの参加を勧める。
 理由は、2年間の海外勤務経験という、「事実」を経歴に加えること。
 また、それにより、大学院への奨学金制度などにも応募しやすくなり
 絶対必要な、国際協力のプロの3条件を
 獲得することが、可能になっていくからだ。
 要するに、そう割り切って参加する、という姿勢のほうが良い場合もある。)

 
また、
将来、プロになる気がなく、ちょっとボランティアを経験したい人にも
お勧めできる。
なんでかというと、
JICAという国の看板をせおっているため、
組織を信頼でき、給料(?)ももらえ、安全管理、健康管理も
ほぼ万全である。
こんないいシステムは、他にない。

よって、総合的に判断して
青年海外協力隊は、お勧めである。

・・・

さらに、もう一つ書いておこう。

青年海外協力隊というスキーム(枠組み・システム)では
意味のある国際協力をすることは難しい、と書いた。

が、
不可能なわけではない。

もしも、あなたが、「本当に意味のある国際協力」を
なんとしても、青年海外協力隊の場で行いたい場合、
事前準備を、万端に行えば、それは可能となる。

具体的には

1.拙著の書籍の中で、以下の3冊を、以下の順番で読む。

 「世界で一番いのちの短い国」(白水社)
 「アフガニスタンに住む彼女からあなたへ」(白水社)
 「世界と恋するおしごと 国際協力のトビラ」(小学館)

2.このブログに書いてある内容をすべて読む。

  または5月出版の新刊「国際協力師への道(仮題)」を読む。

3.さらに、宇宙船地球号のホームページの中の補足サイト
  に書いてある内容を全て読む。

  この補足サイトは、半年以内ぐらいに、改訂され見やすくなる。


以上のすべてを読めば、
本物の国際協力を行うための、最低必要な知識の、ほぼすべてをカバーするように
配慮して構成している。
(現状、まだ補足サイトが不完全のまめ、いろいろ足りないが、
 将来的に、それを目指している。)


青年海外協力隊という場所は
本人の自主性を重んじ、非常に自由度が高い。

よって、遊んでいることもできるが、
やろうと思えば、本当に意味のある国際協力を行うことも、可能である。

(もちろん、いろいろな制約も実際は多いが、
 そういった側面も踏まえた上で活動を行うのが、プロの国際協力である。)


すなわち、
青年海外協力隊という、お金ももらえ、安全も保障された最高の場所を
有効に使うのも、ダメにするのも、
あなた次第だ、ということだ。


日本国民の税金を無駄にしないためにも
貴方の人生を、青年海外協力隊という場所を使って、飛躍させるためにも
是非、
最高の結果を出すことに挑戦して頂きたい。



・・・

参考リンク:

青年海外協力隊 JOCV
http://www.jica.go.jp/volunteer/

国際協力機構 JICA
http://www.jica.go.jp/

青年海外協力隊から国際協力師へ_関係ブログ一覧_2010春
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65406555.html