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現在、ビジネスの世界では
コーチングというのが、ブームになっている。

コーチングとは、
簡単にいうと、
まあ、ある種のカウンセリングであり、

その人に、アドバイスのようなものをして、
その人自身に自分の将来を考えるきっかけを与え、
その人の可能性を引き出していくこと、である。

この、コーチングには、もちろん、
長所と短所があるのだが
それを明確にしさえすれば、

国際協力の分野やCSR(企業の社会的責任)への応用が
可能であろうと思うので、
以下に紹介しておく。

開発途上国における人材育成などにも
応用することが可能だと思うからだ。

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以下、コーチングの簡単な説明である。

1.まず、コーチングの原則
2.仲良くなり、信頼される方法
3.GROWモデル
4.フォローアップ

とりあえず、大枠で、上記の通り。

では、スタートする。

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1.まず、コーチングの原則

「コーチングとは、その人の潜在能力を解放することであり、
 その人に教えるのではなく、その人に気づきを与えて、
 自身の将来を開拓していくことを、助けることである。」
・・と、いうのが、一応の建前だ。

ともかく、カウンセリングとの最大の違いは、
その人の欠点を直そう、というのではなく、
その人の長所を伸ばして、将来につなげよう、ということ。

カウンセリングとのもう一つの違いは、
カウンセリングは、その人の過去にさかのぼり、
その人の感情問題に対するケアをしようとする。

これに対してコーチングは、
現在から未来にむかっていく「行動」を重視しており、
感情うんぬんよりも、今後の具体的行動を導いていく手法だ。

また、問題を解決する能力は、その人自身がもっており
他人から与えられるものではない、ということ。

で、その人が、何かを(自発的に)やろうと思ったら、
コーチの立場の人は、それに対し、100%味方をする、
というのが原則だ。

そして最終的には、
その人自身に、目標(ゴール)を立ててもらい、
その目標と、現実とのギャップを埋めるための
「行動」を起こしてもらうことが、
コーチングの根本をなしている。

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2.仲良くなり、信頼される方法

(1)聴くスキル

 当たり前のことだが、相手が話している時は、
 それを遮らない(さえぎらない)こと。
 相手の言いたいことを、じっと待って聴く。

(2)承認のスキル

 相手の話が終わったら、その考えを認めて、支持する。
 仮に、自分と違う意見があっても、とりあえず、賛同する。
 後で、否定する場合も、「AはBではない」というのではなく、
 「私は、AはBではないかもしれない、と
  考える人もいるかもしれないと思います。」と言う。
 絶対に、あなたは間違っている、とは言ってはいけない。

(3)質問のスキル

 相手の中にある答えを、導きだすように、質問する。
 簡単にいうと、答えがYES、またはNOである質問を
 クローズドクエスチョン、という。これはあまり良くない。
 そこで、話が終わってしまうから。

 5W1H(いつ、どこで、だれが、なにを、どのように、なぜ)
 のような、質問をして、その人に、いっぱい話しをしてもらう。

 このような質問を、オープンクエスチョンといい、
 コーチングでは、頻用する。

(4)座る場所

 相手の真正面ではなく、90度でもなく、120度が良いとされる。
 目線の位置も、相手とほぼ同じが良いとされる。
 距離も、適切な距離が良いとされるが、その(距離の)数字は諸説あり。
 (アメリカ人と日本人で、違うらしい。)

(5)ペーシング

  a. 相手の話すスピードをまねる。話し方もまねる。
  b. 声の大きさ、明るさ・暗さのトーンもまねる。
  c. 相手の動作も、少しだけまねる。(ミラーリング)

(6)ラポール

 以上のスキルを全て使って、相手に安心感と、共感状態(仲間意識)を作る。
 この「お互いの意思が通じ合っている」と
 お互いが思い込んでいる状態を、ラポール、という。

 これをまず作る、ことが大切だ。

(7)リーディング

 ラポールが出来たところで、会話の主導権を握り、
 次のGROWモデルに進んでいく。

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3.GROWモデル

(1)目標の確認

 自分で、目標を、設定してもらう。
 目標は、いくつあるのか?
 その中の優先順位は?
 どの程度、本気でやりたいのか?
 (犠牲にしてもよいものは?)

(2)資源(資質)と、現実

 自分が持つ資源と資質を、列挙してもらう。
 その人が持つ長所はなにか?

 学生時代の得意科目(教科)、スポーツ、クラブは?
 好きな本は? 好きな映画は? 好きな有名人は?
 持っている資格は?
 過去の経歴で役立つものはなにか?
 家族や友達、職場の同僚などの人脈は?
 インターネットはどの程度使っている?

 その後、現実問題として、どのような制約があるか?
 経済的問題、家族の問題、結婚の問題、など。

(3)選択肢

 以上を踏まえた上で、いくつかの選択肢を
 自分で考えて捻出してもらう。
 優先順位と、実行する順番を決めていく。

(4)強い意志に基づく行動

 そうしたら、今日、このコーチングが終わった瞬間から
 すぐに、何をするか?

 今日、何をするか?
 今夜、何をするか?
 明日、何をするか?
 1週間以内に、何をするか?
 一ヶ月以内に、何をするか?
 などを決めてもらう。

 何よりも、もう一度、コーチ(コーチングをしている人)に会い、
 その行動の結果を
 報告してもらう日時を、明確にする。

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4.フォローアップ

 よって、当然、約束をした日に、再会し、
 どのような現状になったかを、フォローアップしていく。

 もちろん、なかなかうまくはいかないが、
 そこを責めたりせず、あくまでも、
 ちょっとでもできた部分を褒める(ほめる)、
 そして、長所を伸ばす、という方針を貫く。

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以上が、まあ、概略である。

が、ここで、「コーチングの欠点」についても
触れておく。

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1.商業主義。マルチ商法。

まず、現在、あまりにも、流行り(はやり)すぎである。
一見、素晴らしい手法のように思えるため
ちょっと良いことをしたい人が、すぐ飛びつく。
「私もやりたい、みんなに紹介したい」
と、なる。

で、これを利用したマルチ商法まがいが、はびこっている。

プロのコーチになるには、50万円が必要だから、
その講習を受けなさい。
え、それが終わりましたか。
では、次の1ランク上の講習をうけて下さい。
これも50万円です。
それが終わったら、
認定試験のようなものがあります。
その受験料が、10万円です。
それが終わったら、次は・・・

と、いうわけで、際限がない。
おまけに、自分の友人に勧めたり、
プロのコーチになって、商売をすることを勧められる。
するとあなたは、いつのまにか、コーチングの啓蒙者に
なっている。

すると、芋づる式に、会員(?)は増えていくことになり
マルチ商法と、なんら変わらないことになる。

と、いう状況が、現在、既に一部で、はびこっている。

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2.ちょっと宗教っぽい。

あんまり言うと(コーチングをやっている人に)
怒られるので、ほどほどにするが、

「その人に、無限の可能性が眠っていてー、
 あなたには、それを引き出す、能力があるんだー」

というようなことを聞くと
(コーチをする側が)
本気になる人もいて、心酔してしまう場合がある。

「私には、どんな人の潜在能力も引き出せる
 素晴らしい能力があるんだわ」

と思ってしまう妄信的な人も、けっこういる。
(本当に、けっこう、いっぱい、いる。)


これは、ある意味、危険である。
ここまでいくと、ある意味、新興宗教と変わらない。

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3.その人が、目的を達成できる能力を既に持っている、と
  コーチをする側が決め付けている。

その人が、その人の目標を達成できるかどうかは、
やってみなければ、わからない。

実際には、当然、達成できないこともある。
というか、達成できないことのほうが、多いはずだ。

しかも、やる前から、かなり高い確率で
それが予想されている場合もある。

よって、なんでもかんでもその人の潜在能力に期待するのは
限界がある。

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4.即効性がない。

カウンセリングや、ティーチングと違って、
その人の欠点や問題点を指摘し、
それの改善策を提案する、ということをしない。

長所にしか、触れない。
これでは、広い意味で、その人のためにならない場合がある。

また、核心となる問題点をつかないので、即効性がない。

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5.対人関係のグローバリゼーション

ペーシングなどの技術を書いたが、
人と仲良くなっていくための方法というのは、
その人の人間性そのものであり、
本に書いてあることをマネするような類(たぐい)の
しろものではない。

自分の好きな方法で、その人に接し、
仲良くなったり、信頼されればいいのだ。

うまくいかないこともあるだろうが、
それも含めて、「人間」である。

他人と仲良くなるための話し方や、動作まで指示を受けたのでは、
ある意味、思想のグローバリゼーションのようなことになってしまい
大変危険である。

価値観の均一化が進み、世界全体の多様性の維持にとって、
あまりよろしくない。

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後半、批判的なことを書いたが、
基本的に、私はコーチングの一部の技術を普段から使っている。
人にアドバイスをすることが多い私は、
GROWモデルの部分は、使用している。

医師として患者さんに接するときも、
開発途上国で現地スタッフ(カウンターパート)の育成をするときも、
将来、国際協力師になりたい人にアドバイスするときも、
時々、
コーチングの技術を一部、使っている。

特に、途上国においてスタッフを育成することは
未来に残る意味のある国際協力を行う上で
もっとも重要な部分でもある。

なんでかというと、
私が途上国にいって、医師として働いても、
私はやがて日本に帰ってしまうので、(結局)未来に残らない。

だから
私が帰るまでの間に、
途上国のスタッフを、必要なレベルまでに
育てあげなければならない。

この時に、
コーチング、カウンセリング、ティーチング、
などの様々な技法を併用することによって、
高い教育・研修効果を得ることができる、と考えている。


参考:
ティーチング:その人が知らないことを教える。通常、集団で行う。
カウンセリング:過去の(感情的な)原因を見つけ、それを解決する。
アドバイス:あなたはこうしたほうがよい、という立場で客観的に行う。
コンサルティング:ある専門分野に対してだけ、その専門家が意見を言う。
コーチング:その人の可能性を引き出す「きっかけ」を与え、行動させる。


と、いうわけで、
欠点に十分な配慮をすれば、
非常に有用な方法論の一つである
この、「コーチング」というものを
皆様にも、是非、参考にして頂きたい。

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最後に、
コーチングの語源を、書いておく。

もともとは、「馬車」を意味する単語だった。

それが転じて、


「大切な人を、その人の望むところまで、送り届けること」