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あるところに、赤い鬼、青い鬼、緑の鬼が住んでいました。

ケンカばかりしていました。


ある時、赤い鬼の中に、「ムテキン」という名前の

とても強い鬼が生まれました。

ムテキンは、赤い鬼たちの親分になりました。


赤い鬼たちは、ムテキンを親分にして

青い鬼たちと緑の鬼たちと、ケンカをしました。


ケンカは、赤い鬼たちが勝って

青い鬼たちと緑の鬼たちは、ムテキンを親分と呼ぶことにしました。


もちろん、青い鬼たちと緑の鬼たちの中には

ムテキンを好きでない鬼たちも多かったです。

恨んでいる鬼たちもいました。


でも、鬼たちの村では、もうケンカは、なくなりました。

鬼たちは、平和に暮らすように、なりました。


・・・


その頃、近くにあった白い鬼の村で

「桃太郎」という鬼が生まれました。


桃太郎は、ジャンケンで、ものごとを決めるのが

好きな鬼でした。


なんでもジャンケンで決めれば、

人々はケンカをしなくなる、

世の中、平和になる、と信じていました。


桃太郎は、赤・青・緑鬼たちの村では

ジャンケンをしていない

ということを知りました。


桃太郎は、それは良くない、と思いました。

ジャンケンは素晴らしいことだから

すべての鬼がするべきだ、と思いました。


桃太郎のまわりには、

イヌ鬼、サル鬼、キジ鬼、と呼ばれる

強い鬼たちがいました。


桃太郎は、

そうした鬼たちと、白い鬼たちを全てしたがえて

赤・青・緑鬼たちの村へ、せめていきました。


ムテキンは、がんばりましたが、

最後には、桃太郎たちに、負けました。

ムテキンは、死んでしまいました。


・・・


赤・青・緑鬼たちの村では

ジャンケンをすることになりました。


でも、

桃太郎のいた白い鬼の村と違って

赤・青・緑鬼たちの村では、

ジャンケンでは、みんな、仲良く、できませんでした。


どうしても、うまくいきませんでした。

ムテキンも、もういません。


赤・青・緑鬼たちの村では、

また、昔のように、ケンカが始まりました。

昔より、もっとひどいケンカが、始まりました。

もう、ずっと、永遠に、ケンカは おさまりそうもありません。


桃太郎と白い鬼たちは

あきらめて、帰っていきました。


・・・


桃太郎と、イヌ鬼・サル鬼・キジ鬼たちは

とても強かったので

まわりにある、他のいろいろな鬼たちの村にも攻めていき

ジャンケンを使うように、言いました。


黄色の鬼たちも、紫の鬼たちも、黒い鬼たちも、

みんな、強い桃太郎たちに従うことに しました。


みんな、みんな、従いました。

こうして、世界中に、ジャンケンが広がっていきました。


・・・


もちろん、ジャンケンをすることに、賛成しなかった鬼たちもいます。

桃太郎のことを、嫌いな鬼たちもいます。


桃太郎は、

桃太郎に従う鬼たちと、従わない鬼たちを区別するために、

鬼たちの呼び方を、変えることにしました。


桃太郎に従い、ジャンケンを使う鬼たちのことを

「人間」と呼ぶことにしました。



一方、

桃太郎に従わず、ジャンケンを使わない鬼たちを

次のように呼ぶことにしました。


「悪の枢軸(あくのすうじく)」と。



・・・
・・・

補足1

悪の枢軸とは

2002年に、アメリカ合衆国のブッシュ大統領が、
北朝鮮、イラン、イラクの3ヶ国を名指しし
「悪の枢軸 (axis of evil)」と呼んだ。

アメリカに対するテロを起こしそうな国は
「悪の枢軸」であり、
そうした国々に対して、アメリカは先制攻撃をかけても良い、
という主旨の内容だった。

国連を始め、各国がこの発言に対し、反発した。

そんな論理が通用するのであれば、
「あの国は、うちの国を攻撃しそうだから、先に攻撃する」
という論調が世界に広がり、
世界は、戦争(先制攻撃)だらけになってしまう可能性が高いからだ。

ところが、現在、アメリカは、さらにこの論理を拡大し、
悪の枢軸と呼ばれている国は増えており、それは以下である。

イラン・北朝鮮・キューバ・ミャンマー・ベラルーシ・ジンバブエ。

イラクは、2003年の軍事侵攻で、アメリカに破れ、
(上述の赤鬼「ムテキン」こと)フセイン大統領は、拘束され、
先日(形ばかりの裁判の後)処刑された。

イラクは、もともと多民族国家であり、
イスラム教スンニ派、イスラム教シーア派、クルド人、など
多数の民族と宗教が混在する、複雑な地域であった。

それぞれが石油の利権などを主張し、相争い(あいあらそい)、
統治するのが難しい地域であった。

このため、強い軍事力を持つ、フセイン政権でなければ
国を統一できなかった、という側面もある。

(フセインは、クルド人の虐殺なども行っており、
 悪いことも、相当していたことも事実だが、
 一方、フセインがいなければ、
 三つの集団(スンニ・シーア・クルド)は、
 ずっと、内戦を続けていて、
 数え切れないほどの人が死んでいたかもしれない。
 それを考えると、フセイン政権が、
 一方的に「悪」であったかどうかは、難しい。
 少なくとも、無法地帯の内戦状態になってしまうよりは、
 軍事政権のほうが、まだましだったのではないだろうか?)

なんでもかんでも、(アメリカ型の)民主主義による運営がよく、
いつでもどこでも、軍事政権が悪い、かどうかは、わからない。

実際、2007年現在、
アメリカによるイラクの戦後の統治は、完全に失敗し、
イラクは、内戦状態に陥っている。

三つの民族(スンニ・シーア・クルド)は、
石油の利権や政権をめぐって、再び相争い、
もはや、お互いに聞く耳をもたず、自爆テロや、戦争が
今も続いている。

・・・

補足2
なお、文中に登場した
イヌ鬼・サル鬼・キジ鬼
という桃太郎(アメリカ)を支持した三つの鬼たちは、
以下の二つの可能性がある。

一つは、イギリス、スペイン、日本、というアメリカを支持した国々。

もう一つは、軍需産業、石油産業、IT産業、という経済界。
これらは、アメリカがイラクを攻撃すると、儲かる(もうかる)。

(最近、アメリカ軍のIT化が進んでおり、例えば、
 人工衛星を使った長距離誘導ミサイルなどは、IT技術の塊である。)

実際、この戦争のおかげで、アメリカ経済界は、
軍需バブル、ITバブルが引き続いて起こり、
現在は、石油の価格が高騰して、石油産業は、もうかっている。

もしかすると、一番うまくいったと思っているのは、
桃太郎ではなく、
(それをあやつっていた)
イヌ鬼・サル鬼・キジ鬼たちだったのかもしれない。


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・・・

さて、最後に話を戻そう。

ともかく、現在イラクでは、
赤い鬼、青い鬼、緑の鬼が、再び戦争を始めた。

しかし、彼らの「鬼」の部分を産み出したのは、
いったい誰だったのだろうか?


「鬼」を産み出すのは、やはり「鬼」なのではないのか?


本当の「鬼」は、だれだったのだろうか?




もしかすると、

人間という存在は、鬼そのものではないのか?