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「企業の社会的責任」とは何か、を以下に説明する。
まず、英語では、CSRという。

Corporate Social Responsibility : CSR

一言で言えば、

「持続可能な社会を作っていくために、
 企業が行わなければならない様々な仕事の総称」

である。

もう少しわかりやすく言えば、

「企業の経済活動(金儲け)の側面と、
 環境問題(地球の持続可能性)へ配慮する側面、
 そして
 社会責任(説明責任・法令順守・社会貢献等)の側面。

 以上の三つの側面のバランスをとりながら、
 企業を運営していくこと」

である。

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この三つの側面を、「トリプル・ボトム・ライン」という。
1997年に、ジョン・エルキントンという人が提唱した概念で、

「企業は環境・経済・社会の三つの側面を考慮した経営を
 行うべきである。」

と説いた。

この三つの側面の中身を、さらに細かく分類していき、
企業が行っている活動を客観的に評価しよう、という試みが、
「企業の社会的責任」(CSR)という概念である。

・・・

簡単に、CSRの歴史を概説する。


2000年に、グローバルインクという組織が
国家のGDPと企業のGDP(売上高)を比較した。
なんとその結果、
上位100位のうち、
53が企業で、47が国家でした。

企業たちのほうが、世界を動かす力は
既に強い時代になっているのです。

具体的に、大企業で上位に入ってくるのは、
エクソンモービル(石油会社)、
ウォルマート(スーパーマーケット)、
ジェネラルモーターズ(自動車)、
三菱商事(総合商社)、
トヨタ自動車、
などで、もはやそうした企業たちの力は、
平均的な国家の力を、大きくしのぐほどになった。

このため、企業たちも、社会的な責任を担うべきだ、
という機運が、欧米を中心に大きくなり、
世界中でのCSRブームに発展していく。


実際のCSRの内容としては、
UNEP(国連環境計画)と、セリーズというNGOが合同で作成した
CSRのためのガイドラインがある。
これを、GRIという。

Global Reporting Initiative

1997年にこの策定が始まった当初は、
「環境報告書」を各社が作成するためのガイドラインを目指したが、
その後、いろいろあって、現在は、
「持続可能性報告書」( sustainability report )
すなわち、環境だけでなく、広範な領域にわたる
ガイドラインを策定している。

このGRIの素晴らしいところは、
もともとのUNEPとセリーズだけでなく、
現在数十以上の国際機関・政府機関・民間組織が絡んでおり、
それらが一体となってガイドラインを作っているところだ。

要するに、偏りが少なく、比較的中庸を得ている点を
私は評価している。


参考:

GRI日本フォーラム
http://www.gri-fj.org/

・・・

CSRの具体的な内容の中には、
一般の人には、馴染み(なじみ)のない、
難しいカタカナが並んでしまっている。

このため、一般の人は、理解しずらい。

よって、そのカタカナたちを、一つ一つ解説していく。

わかりやすく書くので、
めげずに最後まで読むように。

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1.ガバナンス(企業の統治)

企業の意思(方針)決定の過程が、明快で客観的であること。

これを行うために、一般的に行われていることは、
企業の意思を決定する「取締役会(とりしまりやくかい)」に、
会社の外から、第三者を呼ぶことである。

(通常、他社の責任者や知識人などが呼ばれることが多い。)

(日産自動車のカルロス・ゴーン社長を、
 ソニーが社外取締役として呼ぶ、など)

これにより、自社の中で、
これまで「なあなあ」で行われている体制が指摘され、
改善されることがある。

・・・

2.コンプライアンス(法令の遵守)

日本の国の様々な法律を守るだけではなく、
法律に書いてなくとも、
社会における常識的な倫理を守っていこうという精神を言う。

このコンプライアンスを社員に行うために、
現在、かなりの会社が、
インターネットなどを使った教育を行っている。

「あなたが今行っている仕事は、
 社会に対して恥ずかしくありませんか?

 自分の胸に聞いてみて下さい。
 仕事の内容を、家族にも友達にも話せますか?」
など。

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3.トップ・コミットメント(社長の意思と約束)

社長の意思が、明確に表明されており、
またその言葉に責任を持つこと。

通常、文書とインターネット上の両方で
表明され、全社に浸透させるていく姿勢を含む。

これにより、なんらかの不祥事があった場合、
責任の所在が明確になる。

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4.ディスクロージャー (透明性)

会社の方針がなんなのか?
社長は、どのような人なのか?

経済的な利益は、どのくらいあったのか?
政府から言われている、CO2削減はやっているのか?
社会貢献は、少しはしているのか?

などなど、
社内だけでなく、社外にも、明確に発表していくこと。

・・・

4.ISO 14001(環境マネージメントシステム)

ISOは、国際標準化機構のことで、
様々な「世界標準となる監査システム」を作っている。

会社が商品などを作るときに、
工場などが、環境に配慮した対策を行うための
システムがある。

これを、ISO14001、と呼ぶ。

環境に配慮することを企業が考え始めた場合、
通常、真っ先に行われるのが、
このISO14001の取得である。


また、環境の側面だけでなく、社会的側面を含めた
総合的なCSRの国際基準も、完成しつつある。

それが、
2008年を目標に策定される予定の
ISO 26000 である。

これが完成すれば
CSRがよりいっそう、社会へ普及していくかもしれない。


参考

ISO 26000
http://www.jsa.or.jp/stdz/sr/sr02_iso.asp

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5.商品のライフサイクル

通常、商品を作って売る場合、

(1)原料・部品の調達
(2)製造
(3)流通
(4)販売

という四つの過程をたどる。

しかし、結局、「売って、仕事は終わり」
という考え方を企業が持ってしまうと、
社会は持続可能でなくなっていく。

具体的には、

(1)原料 どんどん石油などの資源が減少していく。
(2)製造 産業廃棄物を河川に出し、水質汚染など。
(3)流通 自動車で運ぶと、CO2排出量が多い。
(4)販売 消費者がどう使おうが、関知しない。

で、
こういう状態を続けていくと、
やがて地球は、以下のようになってしまう。

資源は、枯渇。
ゴミだらけ。

これではいけない、ということで、
考え出された概念が、商品のライフサイクルである。

(1)原料・部品の調達
(2)製造
(3)流通
(4)販売
(5)廃棄
(6)再資源化

具体的には、以下のような感じ。

(1)原料 石油ではなく代換エネルギー・代換原料を使おう。
(2)製造 産業廃棄物は出さないようにしよう。
(3)流通 列車か船で運ぶとCO2排出量が少ない。
(4)販売 100ワットでなく50ワットで動くテレビを売ろう。
(5)廃棄 地方自治体、自社などで回収システムを作ろう。
(6)再資源化 商品を分解し易くし、再資源化を行おう。

このような、商品の「ライフサイクル」のシステムを作ると、

資源は、枯渇しない。
ゴミだらけにならない。

ということ。

・・・

6.ゼロ・エミッション

企業が、工場などで、商品を作るときに、
産業廃棄物や、汚れた水などを
河川などに出さないこと。

例えば、
一度、工場で使った水を、
再利用(リサイクル)して何度も使おうというのが
その典型である。

・・・

7.モーダル・シフト

商品を運搬するために、
トラックや自動車を使うと、
当然、CO2が出る。

このCO2の発生量を減らすためには
船か列車で運んだほうが良い。

船か列車で運ぶと、
CO2の排出量は、
トラックや自動車を使うよりも
1/6から1/8に減少すると
言われている。

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8.3R (スリー・アール)

Reuse 何回も使おう。

Reduce 少ない資源で商品を作ろう。ゴミも減らそう。

Ricycle 使い終わったものを、また資源にもどそう。


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9.ウイー ( 廃電気電子機器指令)

Waste Electrical and Electronic Ezuipment : WEEE

商品のライフサイクルのところで述べたように、
これからは、
使用が終わった商品は、
地方自治体または会社が自分で回収しなければならない。

普通に考えると、地方自治体が行うべきなのだが、
実際は、適切に行われていない。

具体的には、
みなさんは、ゴミを捨てる時に、
燃えるゴミと燃えないゴミを分別して捨てていると思うが、
かなりの数の地方自治体は、
なんと、集めた後、また混ぜてしまい、
燃えるゴミも、燃えないゴミも、いっしょにして燃やしているのだ。

理由は、
「最近の焼却炉は、非常に高性能で、高温で焼いているので、
 ダイオキシンなどの発生も少なく、問題ないから」
ということらしい。

まず、これが本当かどうか、かなり怪しいものだが、
仮にそれが本当だとしても、
ゴミはでないかもしれないが、資源が枯渇していくことは、かわりがない。

商品のリサイクルを促すためには、
ゴミとして燃やす量を減らし、
再資源化できるプロセスを作らねばならない。

が、今のところ、日本でも、海外でも、なかなかできていない。

これに業(ごう)を煮やしたヨーロッパの(CSRをやっている)企業たちが
作った連合体が、ウィー(WEEE)である。
電子製品に関しては、企業の連合体が合同で回収システムを持ち、
分解するコストを分け合い、資源までもどし、
それを共用する体制を作った。


日本でも、コピー会社などで、同様のシステムが誕生しつつある。


参考:

CSRアーカイブズ
http://www.csrjapan.jp/


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10.ステークホルダー(広い意味での利害関係者)

CSRの基本は、間違いなく、社会に住む一般の人々への
説明責任である。

どのような目的で、どのような活動をしているのか。
どのような利益があり、それをどのように使っているのか。

それを、第三者である一般の消費者たちが見ても
わかるようにする必要がある。

日本の国家予算の内訳が、新聞などに公表されるように、
もはや国を超えるGNPを持つ大企業たちは、
当然、その活動の内訳を、公表しなければならない。

これを行わない企業は、
(はっきり言えば)
影でどんな悪いことをしているか、わかったものではない。

よって、この「説明責任」を果たしていない企業の商品は、
買うべきでないかもしれない。

こうしたことが起きないように、
企業たちは、ステークホルダーと呼ばれる、
広い意味での利害関係者たちへ、説明を行う義務がある。

(1)株主
(2)社員(自分の会社の社員)
(3)一般市民(消費者、お客様)

(4)地域社会(事務所や、工場のある地域)
(5)国(税金を納める部署、法律を作る部署、等)
(6)国際社会(多国籍企業の場合、国際法、WTO、等)

(7)NGO,NPO,市民団体
(8)教育機関(大学、シンクタンク、等)
(9)環境(人間だけじゃなく他の生物。その持続性)
(10)未来の子どもたち

とりあえず、10個書いたが、各社によって
ステークホルダーたちの内容は、様々だ。
以下、簡単に説明していく。

・・・

(1)株主

もともと企業というものは、
株主の利益を増やすために存在した。

(株式会社の「持ち主」は、社長ではない。株主である。
 法律上も、そうなっている。)

よって、その株主の利益を増やすことが
基本的な会社の存在意義である。


(2)社員(自分の会社の社員)

しかし、
「株主たちの利益のために、自分たちは働かされているのか」
と、社員たちが思ってしまうのは、モチベーション(目的意識)上、
あまりよろしくない。
このため、このCSRに関する評価を行い、
その報告書(CSRリポート)を作る。
CSRリポートを作る最大の目的の一つは、
その会社の社員に読んで欲しい、ということである。

自分の会社が行っている活動は、何なのか?
良いことも、悪いことも含めて、それに共感できるか?

そうした、当たり前の責任感を、もってもらうことも
CSRの意義の一つである。


(3)一般市民(消費者、お客様)

そしてステークホルダーの3番目に入ってくるのが、
一般市民である。
最近、「持続可能性」を提唱する団体たちは、
「消費者」という言葉を使わなくなった。

理由は、消費者、というと、
その商品を使った後、(消費して)ゴミにして捨ててしまう(悪い)人、
というイメージがあるからだ。

消費者という言葉には、人間というよりは、
金を持っていて、商品を買ってくれて、その後消費して、ゴミを出す、
ある種の(深い考えのない)生物、という意味合いが感じ取れる。

ある意味で、馬鹿にしている。

このため、もう消費者のことは消費者とは呼ばず、
一般市民(または単に市民)と呼ぼう、という動きが強い。

一般市民は、
お金をもっていて、ただ買うのではなく、
まず自分で考え、環境に配慮し、説明責任を果たしている企業の商品だけを
選んで買う。
買った後も、消費するのではなく、必ず分別して再資源化し、
地方自治体や企業独自の回収システムに送って、リサイクルを行う
「意識」を持つ人たちだ。

たんに金をもっていて、消費をする、生物ではない。
よって、こうした商品を「選んで」買っていただく一般市民の方々には
当然、説明を十分にすることが必要であり、
その結果、
「当社の製品を、選んで、購入していただく」
という流れとなる。

ちなみに、
このように、CSRが普及した、結果、
それと表裏一体の関係にある一般市民たちの上記のような
意識改革を、
「市民の社会的責任」
と呼ぶ。

Citizen Social Responsibility

これも、もう一つの、CSRである。


(4)地域社会(事務所や、工場のある地域)
(5)国(税金を納める部署、法律を作る部署、等)
(6)国際社会(多国籍企業の場合、国際法、WTO、等)

企業たちは、自社の工場が(地域の)大気や河川の汚染をしないこと、
自国の法律を守り、国際社会のルールを守ること、も当然必要だ。


(7)NGO,NPO,市民団体
(8)教育機関(大学、シンクタンク、等)

企業活動を行うときに、
商品を作る過程や、そのために生じる公害に対して、
市民団体が文句を言ったり、大学の教授などがコメントを言う。

こうした側面も、企業の社会的活動には必要だ。
このために、この苦言を(あえて)受けるために、
まず説明責任を果たして頂く。


(9)環境(人間だけじゃなく他の生物。その持続性)

ステークホルダーたちの中には、
言葉を言わない利害関係者たちもいる。

動物たちも、植物たちも、絶滅してしまった種も、
文句を言わない。
このため、そうした「迫害されている命」を守るため
誰かが「代弁者」となって、立ち上がらなければならない。
それは、環境系のNGOや、NPOであることが多いが、UNEPなどもがんばっている。


(10)未来の子どもたち

そしてもちろん、もの言わぬ大切な存在は、もう一つある。
それは、
「遠い将来に生まれてくる、未来の子どもたち」
である。

彼ら、彼女らのために、私たちは、今、がんばらなければならない。
遠い将来まで、綺麗な地球、資源のある地球を、残しておくために。

・・・

以上が、CSRの概略である。

これらのことを、各企業が行っていくようになれば、
地球は、社会は、持続可能になりうるかもしれない。

もちろん、経済的な「利益優先主義」とは
相容れない(あいいれない)部分もあるが、
それを越えて、
CSRが、社会に普及していくことを、私は願っている。


とりあえず、私は、本を書き、
また、教育機関でも、企業でも、CSRを普及するための講演を行っている。

最近、文部科学省と連携し、
小中学校の生徒たちに対して、
CSRの初歩のような「授業」を始めた。

将来大人になった時に、CSRを行う会社員となってくれるように。

一般の市民となった時も、責任をもって買い物をし、
CSRを行う企業を支持してくれるように。


そんな社会を夢見て、今、これを書いている。