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唐沢寿明演じる、
新造人間たちの首領ブライキングが言う。

「ただ待つだけでは、生きることがかなわぬのが
 人間の世界だ。
 違うか?

 ただ生きることだけを求めて、
 これまでどれだけ多くの人間が、死んでいったんだ。

 愛するものとの、平穏な暮らしだけを求めて
 いったい、どれだけの人間が、死んでいったのだ!

 生きるために、戦うことが、前提にある世界。
 それが今の、人間の世界だ。

 私はその世界を破壊し、
 生きるためだけの、国を造る。

 楽園だ。」


主人公:キャシャーン

「そのために、
 お前と全く同じ願いを持つ人々が、死んでいるんだ!」


唐沢寿明:ブライキング

「人間は人間である限り、
 人間が幸せに暮らせる世界は生れぬ。

 それを、人間の歴史や宗教が
 明らかにしているではないか!

 お前にとって、善とはなんだ? 悪とは何なのだ?
 私とともに戦え! 私とともにこの世界を作り直すのだ!」

・・・

自分の愛する妻を、病気から救うため、
「新造細胞」と呼ばれる万能細胞(ES細胞?)を作りだした科学者
寺尾聰(てらおあきら)が言う。

「お前は、人を愛する、ということが
 どういうことなのか、知ってるか?」

寺尾聰は、不治の病から妻を救うための研究により、
結果として、
人類を滅亡に導く、新造人間たちを生みだしてしまう。

さらに、
愛する息子を、戦争で失った寺尾は、
新造細胞を使い、息子を
新造人間として、生き返らせる。


息子は、主人公:キャシャーンとして再生するが
人間ひとりひとりの欲望が渦巻く世界で
何が正しいかわからず、
苦悩する。

そして、戦いの果てに、愛する人を持つ人たちも
殺してしまう。

・・・

キャシャーン

「母さん、俺はいったい、
 なんのために 生まれてきたんだろう?

 俺はいったい、なんのために、生まれ変わったんだろう?
 母さん・・」

・・・

物語の終盤、
すべての人が、それぞれの信念に従い、命をかけて戦う。

自分の愛するもののために戦い、
愛する者を奪われた憎しみのために戦う。


そして、すべての人が、滅んでゆく。


ヒロイン:麻生久美子

「これは、わたしじゃ、ない。
 憎しみのすべてを忘れて、やりなおしたい」


キャシャーン:伊勢谷友介

「今、やっとわかったよ。
 僕らは生きているだけで
 何かを傷つけてしまっている、ということを。

 生きるというそのことが
 何かを傷つけるということだったんだ。」


・・・

映画「CASSHERN」(キャシャーン)は

2004年に公開された映画で、
元は、1973年頃に放映されたテレビアニメだった作品だ。

当時の題名は、「新造人間キャシャーン」と言う。

映像作家として名高い、紀里谷和明監督によって
実写化されたが、当時の評判は、すこぶる悪かった。

この年の、ワースト1の映画にあげる批評家も多かったほどだ。

理由は、ストーリーが難解なこと。
展開が付いていけない、メッセージが意味不明、など。


しかし、映像は、究極に近いほど美しい。
すべてのシーンが、それだけで芸術のようである。


また、作品全体を通して伝えているメッセージは
(当時、イラク戦争や、対テロ戦争が問題になっていたこともあり)

表面的には、「反戦」(戦争反対)のように見えるが
実際はそうではなく

「一人の人間が生きることが、誰かを不幸せにしてしまう」

可能性がある、ということを
伝えようとしている作品、だと思う。

監督からのメッセージを、
少なくとも私は、そうとった。


このテーマは、私が中学・高校の頃から、
ずっと考えているテーマのため、
どうしても、強く反応してしまう。

だから、
一般の人の感覚と違うだろうから、
きっと、やっぱり、
この映画は、わかりにくい作品なんだろうな、と思う。

(よって、客観的にいって、この作品は、勧められない。)


ともかく、
私が、中学・高校の頃に考えていたことは
次のようなものだった。


・・・


「誰も傷つけたくない。

 もう、誰も傷つけたくない。


 僕は、決して、善良な人ではないから、
 誰かを傷つけたくないのは、
 きっと、自分が傷つきたくないことの
 裏返しに過ぎないんだろう。

 それは、わかっている。でも、それでもいい。
 誰も、傷つけたくない。

 僕が、何か話をすると、
 仮にそれが、相手を傷つける気がない話題でも
 なんらかの理由で、その人が傷ついてしまうことが、ありえる。

 例えば、親が離婚している人に、知らずに、
 親の仕事は何?、などときいてしまうとか・・。
 他に、いくらでもそういう可能性がある。

 だから、
 誰も、傷つけたくなければ、黙っているしかない。


 行動することも、危険だから、じっとしているしかない。
 どんな行動も、その人を不愉快にしてしまう可能性があるからだ。

 なるべく黙って、なるべくじっとしている、これしか・・・無い。


 それに、
 傷つけたくないのは、人間だけじゃない。
 どんな生物も、だ。

 人間だけが偉いとは、思っていない。
 それは、どう考えても、おかしい。
 全ての生物は、平等のはずだ。

 だとすると・・
 考えてみると、大変だ。

 食べ物は、すべて、元は、なんらかの生物じゃないのか?
 肉を食わず、野菜だけ食べればいいのか?
 いや、
 動物だけじゃなく、植物も生きてるはずだ。

 だから
 菜食主義者になれば、済む問題じゃない。

 すると、何も、食べられない。
 ビタミン剤を飲んでるしか、ないのか??


 あ、それでもダメだ・・

 生物の授業で習った。
 空気中には、チリに混じって、浮遊細菌が浮いているはずだ。
 細菌だって、生物だ。

 僕が、空気を吸うと、空気中の細菌が、何十匹か肺に入り、
 肺にいる白血球が、その細菌を見つけて、きっと殺してしまう。
 つまり、僕は、生きているだけで、呼吸するだけで、
 生物を殺しているんだ・・

 ああ、それでは、やはり、自殺するしか、ないのか?
 そんな、勇気はあるのか?
 それより、本当に、それしか、答えはないのか?

 ・・どうしたらいいのか??


・・・


キャシャーン

「今、やっとわかったよ。
 僕らは生きているだけで
 何かを傷つけてしまっている、ということを。

 生きるというそのことが
 何かを傷つけるということだったんだ。


 僕らは、まず、許しあうべきだったんだ。

 お互いが、この世に存在する、ということを。
 許しあうべきだったんだ・・

 僕らは、ただ存在しているわけじゃない。
 ともに夢みる力を持っているはずだ。

 始まりは、小さなものであるかもしれない。
 不可能に思えるかもしれない。


 でも、僕らはまず、ここから始めるしかないんだ。」





http://www.youtube.com/watch?v=kJVss_WTSFE