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粗末な「リヤカー」の上に
1m四方ぐらいの、立方体の木箱が載っている。

箱には、
3cmx15cmぐらいの細長い穴が、
数か所に開いていて、
その穴に
子どもたちが、むらがっている。

箱の中は、まだ、真っ暗だ。

子どもたちは、
必死に、その穴を覗き込みながら
叫び声をあげる。


「はやく、始めろよっ!」

「おれは、笑えるやつがいい」


そう言われて
このリヤカーの持ち主の少年は、
リヤカーに取り付けられた
自転車のペダルのようなものを掴み(つかみ)、
それを、手で、ぐるぐる回す。
必死に回す。

すると、
立方体の箱の中で
「何か」が光を発し、動きだす。

その何か、とは・・


映写機だった。


フィルムがまわり
箱の中の、白い小さなスクリーンに
映画が、うつしだされる。

今日は
「チャップリン」が、現れた。

おーーっ!

穴を覗く子どもたちが、歓声をあげる。


観客が、必至にチャップリンを見ている間、
リヤカーの持ち主の少年は、
手でペダルを回しながらも
眼は、かなたの、ある一点を見つめていた。


窓、だった。


そこは、ある少女が住むアパートの一室で、
本当は、
この少女のためにこそ
この「移動式映画館」は存在する。


しかし、この少年の願いを、
激動の時代は許してくれない。

ここ、アフガニスタンでは。


・・・
・・・

先週末、お茶の水女子大学に呼ばれて、映画を見た後、対談をした。
ライターの大竹昭子さんと、
アフガニスタンで作られた映画について、話をする企画だった。

文化庁が支援している企画で
「アフガニスタン映画祭」というイベント。

で、
まず、3本の映画を見たのだが
そのうちの1本が、上記の映画
「カブール・シネマ」
だった。

ミラウィス監督作品。2003年制作。

・・・
・・・


リヤカーを引きずって、
好きな少女の家の近くまでいき
箱の中で、映画の上映会をやる。

近所の子どもたちが集まってくるのだが
本当に見せたいのは
窓の中の、あの子。

でも、
あの子は、来てくれない。
お父さんが、厳しいからだ。

タリバーン政権時代のアフガニスタンでは
(時期と場所によっては)
欧米の映画を見ることが、禁止されていた。

上映することは禁止だし、
それを見た場合、見た人の方も、罰せられる。

このため、
少女の父親も、
この移動映画館を見ることを、許さなかった。

自分の娘が、タリバーンにつかまらないために。

・・・


ほのかな少年の恋心を背景に
リヤカーに載った移動式映画館が
ガタガタと、アフガニスタンの舗装されていない道を進んでゆく。


砂埃が舞う地面の色は、黄土色で、
その上にある、空の色も、心なしかくすんでいた。


なんともせつない、映画だった。




・・・
補足;
上記の作品が見られるわけではないが
他の、アフガニスタン映画が見られる情報

第3回アフガニスタン映画祭
巨匠アーマディ・ラティフの作品「The Root」など、4作品を上映。

3月22日(土)
JR蒲田駅前
日本工学院専門学校・蒲田キャンパス
デジタルシネマシアター3号館

主催:NPO法人・クロスアーツ

販売:アップリンク
「アフガン・ドキュメント」
http://www.uplink.co.jp