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パッチ: 何が見えるかい?

モニカ: ・・・鼻

パッチ: 鼻の生えた(はえた)病院だ。
     無料の病院。

モニカ: 無料の病院?
     ああ、わかったわ。
     あなたの夢の話しね。
     もう、眠いわ。続きは後にして。

パッチ: 頼むよ。アイデアを聞いてくれ。
     世界最初の楽しい病院だ。

     建物自体も楽しい。
     すべり台も、(子ども用の)秘密の抜け道もある。

     「笑い」で、病人の苦痛を癒すんだ。

     医者と患者は対等。
     肩書きなんて必要ない。
     世界中からボランティアがやってくる。

     楽しく医療を学び、その中で医療を学ぶ。
     愛が究極の目的。

     そんな、「夢の病院」だ。

     メモった?

モニカ: あなたは、イカれてるわ。

パッチ: ・・だから、君の力が、必要なんだ。


・・・
・・・

鼻に、丸いボンボンをつけ、
ピエロのような井出達(いでたち)になり
患者を笑わせる「医者」がいる、という。

うちの団体(宇宙船地球号)のボランティアの一人である
「ずんこ」から、そう聞いた。
もう、5年も前になる。

どうも、いくつかの部分が、私と似ているらしい。
「ずんこ」は、
パッチ・アダムスのボランティア団体(?)にも入っているそうで
そのうち、なんとかして彼と私を会わせようと
計画しているとのこと。

で、
ともかく、
彼の映画を見ることになった。


ストーリーは、
最初、精神病院から始まる。

パッチ・アダムスは、もともと
自殺癖のある、精神的に弱い人物だったようだ。

そのため、自分で志願して精神病院に入院した。

ところが、ドクターの対応は、非常に冷淡で
彼の病状が良くなることはなかった。


が、
彼を救ってくれたものが、二つあった。

一つは、
同じ患者から聞かされた人生の考え方、
物の見方の話。

もう一つは、
自分と同じ精神的な病(やまい)を持つ患者を
「助けようと彼が行動している瞬間」だった。

つまり、
人を助けようと行動している瞬間だけは
彼は、自分の悩みを忘れられる・・

ということに気づいたのだ。

・・・
・・・


目をつぶらせたまま、恋人を郊外につれだし、
車から、おろして、数歩、歩く。


パッチ: 目を開けてごらん。

モニカ: ・・・美しいわ。

パッチ: 42万平方メートルの自然林だ。
     小川が7つ、滝が2つ。

     ここに、病院を作る。

モニカ: 本気なの?

・・・
・・・

パッチ・アダムスは、
なんと医学生のころから、貧しい人のために
無料診療所を作り、そこで人々を助けていた。

同級生も、彼の恋人も、いつのまにか彼に共感し
この無料診療所を手伝うことになる。


もちろん、これは法律的には許されないことだったろうが
彼の作った診療所は、
病院というよりは、「家」であり
パッチの「家」にやってきた「友人」に対して
彼が、「もてなし」をする、
という形で医療行為をした。

「笑い」などの癒しが、その中心であったようだ。

そののち、この一件は、裁判(?)にもなったようだが、
無料でおこなっていたことや、
彼の高い情熱により、結局、有罪にはならなかったようだ。

(この件、事実は確認していないが、映画では上記の表現だった。)


また、
彼は、医学生のころから、
彼が通う大学病院の、入院病棟へ通い、
極力、患者さんと会おうとした。

「人間」と会おうとしたのだ。

医学を机上の空論ではなく、人間を扱うものに
改革していくために。


そしてさらに、「笑い」を治療に取り入れようとした。

病室にあった、
肛門に刺す、浣腸用の丸い茶色の器具(ボンボン)を
はさみで切って、鼻に付け、
道化を演じた。

ベッドの上で、用をたすための平たい便座を両足に履き、
入院患者から笑いをとった。

こうした彼の行為は、もちろん、
指導教官から、目くじらを立てられる。

・・・
・・・

教授:  そこで何をしているのかね?

パッチ: 患者に笑いを、与えています。

     笑いには、次の効果があることが
     科学的に証明されています。

     笑いは鎮痛作用のある物質、
     エンドルフィンの分泌を促進し、

     血液中の酸素量を増し、
     血管の緊張をとり、血圧を下げ、

     循環器疾患によい効果を与え、
     免疫システムの反応を向上させます。

・・・
・・・

驚くべきことに、彼は、
優秀な医学生で、成績は常にトップクラスだったそうだ。

精神的な疾患を持つ人間が、主に理数系の教科において
異常なほど能力が高まることがあることは、
医学的にも確認されている。

が、パッチの場合、さらに、
「笑い」というユーモアのセンスも持っていたことになるので
驚異的な多面性を持っている、ことになる。

・・・

映画が終わった後、DVDの附録の中で、
パッチ・アダムス本人が、次のように語っていた。


パッチ: 私は総合的な治療を行っている。

     演技、絵画、農芸、自然、教育、娯楽、福祉・・
     といった要素を治療の一環に取り入れている。

     その上で、私が求めるのは
     幸福、楽しさ、愛、協力、創造性。

     この5ヶ条は、
     私の病院で働くスタッフにも要求している。

     この5つが満たされた環境では
     いずれ病(やまい)は癒される。



     私にとって、重要な点は、「ユーモア」だ。

     患者を元気にするだけではなく、
     医療スタッフが、患者の看病に疲れ果てる状況を
     防ぐためのユーモアが、必要なのだ。

     ジョークのための、ジョークではない。

     ユーモアは、陽気な雰囲気を作り出せる。
     楽しい職場なら、辛い仕事も苦にならない。

     医療の仕事は、自分の人生を犠牲にするものではなく、

     「歓喜」に満ちたものなんだ。






パッチ・アダムス Patch Adams 
本名は、ハンター・アダムス、1943年生まれ
現在、診療費が無料の「夢の病院」を作るため、活動中。
その他、ロシア、ボスニア、アフガニスタンなどの
途上国でも、様々な活動をしているようだ。


・・・
・・・

補足1:

パッチ・アダムスを説明するには
一般の人には馴染みのない、重要なキーワードがある。

それは、「クラウン」だ。
普通、クラウン、と言えば、王様の冠(かんむり)を刺す。

が、
英語では、クラウンには、二つの意味がある。
clown と crown だ。
前者は、ピエロを指し、後者は、王冠を指す。

このピエロの方の意味が転じて、
「ピエロが鼻に付けてる、丸いボンボン」
のことも、クラウン、というらしい。

・・・

補足2:

病院の患者を、笑いで癒そうという試みは、
歴史的には、パッチ・アダムスよりも、以前からあり、
ホスピタル・クラウン
まはた
ケアリング・クラウン

呼ばれていた。

こうした名前を団体に入れた、NGOやNPO等が
日本にも、世界にも無数にあるらしい。

それぞれ、微妙に理念が違うようだ。
(この件、現在、調査中)

・・・

補足3:

パッチ・アダムス自身は
かなりの、マスコミ嫌いで、
映画やテレビへの出演を
基本的に、拒否している人物のようだ。

(カメラを向けられることも、嫌いらしい。)

実は、上記の映画も、
本人的には、かなり不満だったらしい。

私は医者なので
どこが(彼的に)不満だったのか、見なおしてみたが、
確かに、
医学的(および医療倫理的)にいって、
かなりとんでもないことを
映画のシーンとして(役者は)行っており
仮にも医学的(倫理的)知識のある人間が
行ってはいけないことを、やってしまっている。

おそらく
この映画の編集に
パッチ・アダムス本人は、参加できなかったのだろう。

(私も、似たような目にあったことが過去に数度あるので)
彼が、マスコミ嫌いになってしまったことには
同情を禁じ得ない。

(要するに、パッチや私のような、映像の素材は、
 それが編集される時には、立ち会えないことが、ほとんどなのだ。)


が、
その後、パッチは、
自分で納得する映画を、ついに作ったようだ。

その映画のタイトルは、

Clown in Kabul

アフガニスタンの首都、カブールの診療所で、
クラウン(ピエロ)が子どもたちを癒している・・という内容の映画。

(このDVDは、日本では、売ってないかも)


結局、私もそうなのだが、
自分が納得する映像を作るには
自分で直接編集するしか、ないのだ・・・ね、きっと。



いずれにしても、彼とは、いつか、会うことになりそうだ。

おそらく、カブール付近にある、「夢の病院」で。



http://jp.youtube.com/watch?v=py8QRneBM_Q&feature=related