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先日の、東京新聞の記事を解説をしたブログの反響が
かなり大きかったため、
以下、その背景を補足しておく。


参考:
前回の記事をまだ読んでいない方は、
まず、以下へどうぞ。

「国際協力士」の国家資格の創設を、外務省とJICAが検討
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65074625.html


必ず、上記を読んでから、以下を読んで欲しい。

上記は、やや肯定的にコメントしており、
下記は、やや否定的にコメントしている。

両方読んでもらうことが、必要だからだ。

・・・

最初に、ことわっておくば、
この「国際協力士」が国家資格になることは
(たとえ、その内容に、少々の問題点があったとしても)
基本的に、私は、「朗報」と考えている。

しかし、まあ、
今回のこの話が浮上した背景を考えると
どうしても
その問題点を、指摘せざるを得ない。

よって、以下に、わかりやすいように、整理しておく。

・・・

さて、まず、
私は、国際協力を、ある程度、本格的にやってみたい人に対して
その「とばくち」として
青年海外協力隊への参加、を勧めている。

その理由は、多数あるが、主なものは以下である。

1.2年間の海外勤務経験が得られるため、
  その後、国連JPO試験などを受ける時に有利に働くこと
  JICA内にも、ジュニア専門員制度、海外長期派遣制度などもあり
  将来のJICA専門家への道が、一応、示されていること

2.政府機関によって運営されているため、ある程度、信頼できること

3.毎月、総額で十数万円のお金がもらえること
  (日本の銀行に9万円、現地で数万円、さらに家賃手当)

等々があり、NGOで海外にいくよりも、
はるかに条件がいいからだ。

(NGOの場合、給料はゼロで、旅費は自己負担のことが多い。)

・・・

よって私は、青年海外協力隊を、大筋で応援しているのだが
この「システム」には、重大な問題点がある。

それに関しては、以下に詳しく書いた。

青年海外協力隊の良し悪し
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/51901806.html


と、書いても、
上記を面倒くさくて読まない人が多いようだから、
あえて、再度、解説する。


要するに、
青年海外協力隊の最大の問題点は、

1.帰国後、国際協力を続ける人が、1割もおらず、

2.それどころか、日本の社会にすら復帰できず、
  「ニート」や、良くて「フリーター」になっている人が多いことだ。

この数は、ものすごく多く、社会問題にすらなっている。
青年海外協力隊OBのブログなどを検索して、読んでみて欲しい。


この理由は、いろいろある。

1.に関しては、

帰国後、国際協力を続けようと思っても
国連職員になるには、大学院修士が(事実上)必須。
でも、もっていない。
(また、今更、大学院にいくのは、面倒くさい・・)

JICA職員になるための就職試験を受けても、
倍率が20倍以上で、まず受からない。


2.に関しては

良くも悪くも、青年海外協力隊は、
毎年9万円前後が、日本の銀行口座に振り込まれるため、
2年間で200万円以上たまる。
「再就職準備金」という名目で、もらえる。

このため、
この金があるので、帰国後、半年から1年ぐらい
ぼーっとして、自宅でニートになっているケースが多い。

半年後から、社会復帰してくれれば、それで良いのだが、
実際は、
途上国の、のんびりムードとは、あまりにかけはなれた
日本の、せかせかした生活、管理社会、組織の厳しさ、
についていけず、会社員などになれず、
社会復帰、職場復帰ができなくなってしまっている人が
(残念ながら)多いのである。

また、
会社側や、社会の風潮にも、問題があり、
(欧米と違って)
日本では、開発途上国でボランティアをしてくる活動を
企業があまり評価しない傾向がある。
(一部、例外はあるが)


このため、
会社の就職試験の面接で、

「青年海外協力隊?
 ああ、大学卒業後、海外で2年間、好きなことをやって、
 遊んできたんだね?
 お山の大将に、なっちゃってない? 協調性は、あるの?
 日本の社会で、組織の中で、きちんと働ける自信はあるの?
 ま、それはともかく、何ができるの?
 営業とか、できる? 
 経理とか、できる?
 うちの会社で役に立つ、なにか専門的な技術はもっているの?
 資格かなんか、もってるの?」

と、言われたときに、
答えようがないため、なかなか就職できない、というのが
現状なのである。

・・・

で、私のブログを読んでいる人の中に、

1.これから青年海外協力隊に挑戦しようと思っている人
2.青年海外協力隊の試験に既に合格し、その訓練所にいる人
3.現在、任地国へ派遣中の人
4.青年海外協力隊から帰ってきたOBの人たち

が、多くいることを、私は知っている。

(それどころか、うちの団体のボランティアスタッフの中にも
 上記の人々は総計で百人以上いるため、
 状況はかなり正確に把握しているつもりだ。)

で、
これまでの記述は、別に
(青年海外協力隊でがんばりたいという)
「あなたたちの意気をくじこう」
と思って書いているわけではない。

ただ、残念ながら、それが現実だ、ということだ。

あなたたちを
応援する気持ちがあるからこそ、本当のことを書き、
それを知った上で、冷静に対策を立てて欲しい。

・・・

で、今回の「国際協力士」の国家資格化の検討は、
上記の「帰国後の、就職問題」を、なんとかしようということで
検討されてきた。

この問題は、もちろん、
「青年海外協力協会」の方々も把握しており、
その理事長の方が、10年前ごろから、

「青年海外協力隊に派遣されて、帰国した人に
 国際協力士、という資格を与えては、どうか?」

ということを、発案した。
国会で、一応、発言した。(実現しなかったが)

http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000514519990730012.htm#p_top


この狙いは、

1.帰国後、
  「青年海外協力隊に行った、というだけでなく、
  国家資格である「国際協力士」という資格を持っている人物ならば
  「それなりの活動をしてきたようだから、我が社に、就職させてあげよう」
  と、日本の企業が、思ってくれる(かもしれない)こと、である。

  つまり、帰国後、就職に困っている青年海外協力隊OBの人たちの
  救済策として提案されたのが、
  「国際協力士」の国家資格化、だということである。

  この側面が、一番強い。

2.で、上記の企画が、以前からあったにも関わらず、
  なかなか法案として通らなかったので、
  今回、「新生JICA]ができる時期に
  ある意味、便乗して、
  「国際協力士」の国家資格化を、再び提案してみよう、
  という感じである。


参考:
「新生JICA」とは、以下。

 これまでのJICAは、「技術協力」という分野だけを担当していた。
 そこに、外務省の行っていた「無償資金援助」と、
 国際協力銀行(JBIC)の行っていた「有償資金援助(円借款)」も
 JICAが引き受け、一括した援助を行えるようになったこと。


3.で、3番目の目的として、やっと出てくるのが、
  日本における国際協力を行う人の育成に、貢献しよう
  という、
  とって付けた理由・・・というところなのだ。


・・・

で、この制度が、できあがってしまう前に
先回りして、私が問題点を書いておこう。

が、
ちょっと、長くなりすぎるので、
今回は、その項目だけを書いておく。


1.青年海外協力隊のOBのみに
 国際協力士の受験資格を与えるのは、
 どうかんがえても不公平なので
 国連JPO、民間NGO,NPO、開発コンサルタント職員などで
 海外で2年以上勤務経験のある人にも
 その受験資格を与えるべきだ、という点。

2.青年海外協力隊のOBが、
 帰国後、日本の会社に就職する時に
 国家資格「国際協力士」があれば
 (以前より)就職しやすくなるのでは?
 と考えているようだが、はたして本当か?
 私見では、そんなにかわらないと思う。
 そんな理由では、企業は人を雇わないのではないか。
 (各企業にアンケート調査の必要あり)

3.一方、国家資格「国際協力士」を、
 日本(または海外)で国際協力に携わる人たちを増やすための
 モーティベーション(動機付け)に
 使おうというのは、賛成だが、
 しかし、
 現実問題として、
 日本政府のODA(政府開発援助)は、
 1兆円だったのが、どんどん減っており、
 産業(または就職先)としての国際協力(または開発)の分野は
 「斜陽産業」と言われているのである。
 つまり
 国際協力士をとったところで、財源(ODA)が減っているため、
 JICA関係、開発コンサルタント関係の業務において
 就職先(および一人当たりの給料)は、減っていっているため、、
 根本的な(経済的な)理由により、
 日本で国際協力に携わる人材を増やせることには、
 ならないのではないか、と考える。

4.国家資格「国際協力士」を与える時に、
 どんな試験を行うかが、問題となる。
 国際協力の分野は、
 私のブログや本を読んでいる人ならわかるだろうが、
 膨大な分野を含んでいる。
 政治・経済・教育・医療・環境問題。
 さらに、宗教や文化人類学などにも
 ある程度の知識が必要だ。
 この膨大な内容の中で、
 いったい、どこに焦点を置くというのか?
 また、だれがその試験問題をつくるのか?
 もう一ついえば、緊急援助と、開発援助の、
 どちらにより焦点をおくかが、最初のポイントになるはずだ。

5.国際協力士、の最後は、士になっているが、
 基本的に、士は、武士を意味し、男性的な色合いが強い。
 現代は、男女共同参画の時代であり、
 性的に中立のイメージが強い「師」のほうが
 新しく創設する国家資格としては、妥当であると考える。
 (例: 看護師)
 よって、やはり、国際協力師、のほうを、言葉としては
 勧めたいと思う。

・・・

 以上より、まとめてしては、

国家資格「国際協力士」を作るのは、大賛成だが、

政府系団体である
「青年海外協力協会」「JICA」「外務省」

三つの団体で作ってしまうのではなく、

以下の様々な立場の有識者たちを組み入れた
「国家資格・国際協力士を作るための委員会」
を、まず作って頂きたい。

必ず、
国際機関である、国連職員、世界銀行職員、JPO経験者、
民間組織である、NGO職員、NPO職員、開発コンサルタント会社職員、
その他、
大学教授やら、シンクタンクやらからの有識者も必要だし、

もっと必要なのが、
青年海外協力隊OBであり国際協力を続けたいのに、続けられない人、
青年海外協力隊の試験に落ちたが、それでも国際協力をやりたい人、
(協力隊の試験は5〜6倍。よって、落ちる人のほうが圧倒的に多い)
NGOやNPOで、薄給で、がんばっている人が望むこと、
開発コンサルタント会社職員の近年の就職に関する厳しい現状を伝える人、
国際協力/開発系団体の、人事担当者
(国家資格・国際協力士が、どんなものであれば、雇用しようと思うか?)
一般の大学や大学院における進路相談室の担当者
(国家資格・国際協力士が、どんなものであれば、その取得を勧めるか?)
など
上記をあわせると、少なくとも、数十名の人たちによる検討会が必要であろう。


以上を、まずは、提案しておく。


「国際協力士」を立案しようとしている方々の
真摯な対応を期待する。



・・・
・・・

補足:
もしも、日本のODAは削減傾向なのだから、
国家資格「国際協力士」を持つものは
海外の援助機関で、通用するものであるべきだ、
(そうでないと、資格をとっても就職先がない)
と考えるならば、

手前みそだが、
私が提唱してきた「国際協力師」の3条件

1.英語力(TOEFLのCBTで210〜250点以上)
2.2年間の海外勤務経験
3.大学院修士(またはそれと同等の専門性の証明)


満たすものに、国家資格「国際協力師」の
受験資格を与えては、いかがだろうか?

これらを満たす人材であれば、
仮に、今後も、日本のODAが削減傾向を続けても

国際機関である、国連、世界銀行など、
日本以外の政府機関である
アメリカのUSAID、イギリスのDfID、などの職員や専門家、コンサルタントなど
になって
活動できる可能性がある。


それだからこそ、私は、国際協力「師」を提唱してきたのだ。


敷居が高すぎるといわれれば、その通りだが、
これが、国際機関や政府機関で、プロとして働くための現状なのだから、
しかたがない。


で、
大学院修士などを持っていない人のためには
もちろん、別なアプローチを考えている。

それには、
NPOやNGOと
「企業の社会的責任(CSR)」の融合体、などがあるのだが、
それについては、長くなるので、また別に触れる。