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このブログは、前々回と前回の続きですので、
まだ、それらを読んでいない方は、下記から読んで下さい。

善意の井戸で悲劇1、カンボジアのヒ素中毒
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65228868.html

善意の井戸で悲劇2、カンボジアのヒ素中毒
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65228869.html

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まず、なんで、3回もかけて、この「善意の井戸で悲劇」の話を
書こうと思ったのかを解説する。

番組の放映が終わった後、インターネットで番組名を検索し、
視聴者の反応を調べたところ、
「井戸堀りのボランティアで、かえってヒ素中毒が起き、死人がでている!」
ということに
多くの人は、びっくりしてしまい、
そこで、思考を停止させてしまった人が多かったようだ。

(本当に大事なことは)
こうした事件に対して、これから具体的に、どのように改善していけばよいのか、
という「後半の部分」のほうなのだが、
それに関し、(自分のブログなどに)記述している人は、ほとんどいなかった。

やはり、テレビというメディアでは、
衝撃的なインパクトのある映像(ボロボロになった患者の様子など)を
視聴者に提供することはできるが、
ある程度、学問的な「説明的な」内容を伝えるのは
向いていないのかもしれないな・・と思った。

よって、今回、ここで「文章化」すれば
読む人が、自分のペースで、考えながら読み進められるので、
「本当に意味のある国際協力とは、どうすればいいんだろう?」
ということについて
考えてくれる可能性が高くなるのではないか、と思ったからだ。

以下、時間の都合で、オンエアー(放送された内容)に収録されなかった
私のコメントを、以下に追加しておく。

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さらに、
(最初にちょっと、言い訳、をすると)
今回のコメントは、私としては、複雑な心境だった。

なんでかというと、以下の理由による。

私は、基本的に、
世界のために活動する人材を増やす活動を行っている。

同時に、
本当に意味のある国際協力を行うことの難しさを説(と)き、
それを解説する書籍等を出版している。

で、
今回のような「ちょいボラ」(軽い気持ちのちょっとしたボランティア)により
現地の人に、かえって問題を起こしてしまうケースは、
実は、(国際協力の世界で)多々、存在する。

(他にも、いくらでも似たような事例がある。)

しかし、その「ちょいボラ」を、私が完全に否定してしまうと
国際協力の世界に、そもそも入ってこようとする人を
減らしてしまう可能性が高い。

なんでかというと、
(現在、立派な国際協力を行っている人々でも)
最初は、ちょいボラ、をやっている、普通の青年(若造?)であった
ことが多いからだ。

つまり、最終的に優秀な人材を、国際協力の世界に生み出すために
ちょいボラの時期も、必要なのだ、という側面もある。

しかし、
いい加減な国際協力を行い、しかも、現地の人を
死にまでおいやることを、行っていいことには、やはりならない。

よって、
この二つの「板ばさみ」になってしまい、
私は、番組の中で、「歯切れの悪い」コメントをいうしかなかった。


と、いうわけで、ここで、以下に、
なるべく正確な情報をお伝えしておく。

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まず、井戸水によるヒ素中毒は、カンボジアだけでなく、
バングラディッシュ、インド、ケニア、南アなどでも深刻な問題となっている。
(WHOが明記している。)

特にバングラデシュで有名になっており、
興味のある方は、下記のウェブサイトなどをお読み頂きたい。

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WHOの水質ガイドライン(英語)
http://www.who.int/water_sanitation_health/dwq/guidelines/en/index.html

特定非営利活動法人 アジア砒素ネットワーク
http://www.asia-arsenic.jp/jp/

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こうした井戸水の中のヒ素の問題は、
以前から知られていたため、
ちゃんとした国際協力団体は、
(それが、民間のNGOであれ、政府機関であれ、国際機関であれ、
 ちゃんとした団体であれば)
同時に、「砒素除去フィルター」
を配布するのが、通例になっていた。

また、そもそも、
井戸を作った時に、ヒ素があるかないかを検出するための
簡易検出キットも(一応)あり(後述)、そうした水質検査を行ってから
一般の人に使って頂くのが、適切な処置、ということになっている。


余談であるが、
井戸を作った時に、上記のヒ素以外にも、
大腸菌を検出するキット、
(人の糞尿の混入ないかを知るための)尿素検出キット、
などで、水質の検査をすることができる。
   
また、こうした検査をするためには、
(ある程度の)専門性と経験が必要なため、
やったことがない人が自分で行うのではなく、
日本(または他の先進国)から
技術者を呼んで、やって頂くのが妥当、
であるが、
民間のNGOの場合、予算の都合でできない場合がある。
        
・・・

また、NGOには、
国連に議席を持つような大型NGOから、
学生や主婦が数人で集まってつくっている
弱小団体もあり、
どちらも、NGOであるため、
NGOは、「玉石混合」
(非常に良いものも、非常に悪いものもあること)
である、と言える。

特に、弱小団体が問題になるのは、
(例えば、井戸を掘る時に、ヒ素に注意して下さい、
 少なくとも「WHOの水質ガイドライン」を読んで下さい、
 などの情報を伝えたくても)
その連絡先(住所・電話場号等)さえ
調べようがないため、伝えることができないことが
多いことだ。

日本では、NPO法人法(特定非営利活動法人法)
というものが、1998年にでき、
現在、大型のNGOのほとんどが、
この法人格を取得している。

法人格を取得する過程で
都道府県(または内閣府)の認証が必要なので
それらの官公庁が、その(NPO法人格をとった)NGOの
連絡先を、知ることができる。

(NPO法人は、毎年、事業報告書を提出することが
 義務づけられているため、井戸を掘っているNGOを
 特定することもできる)

(よって、そうした活動を行っているNPO法人に対し、
 勧告などを出すことも可能だ。)


しかし、弱小NGOたちは、NPO法人格を取得したりなど
しないため、その存在すらわからず、
連絡先も、わからないため、
情報を提供できない、実態もつかめない、
という最悪の状況になっている。

(現在、カンボジアでは、学生などの間で、
 安易な気持ちで、学校を作ったり、
 井戸を掘ったりする活動が増えているが、
 どちらも、大きな問題となっている。)

NGOは、小さいものも数えると
日本に、少なくとも数十万、あると言われているが
このうち、NPO法人格を取得している団体は、
10分の1以下の、3万5千、という状況だ。

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以下、ヒ素の具体的な測定方法について、述べる。
(かなり、専門的なので、興味のある人だけ、どうぞ。)

(以下、地方自治体の、水質管理を担当する専門の職員から聞いた情報)


まず、概略

1.
現場で簡易なキットを使う方法が
あることはあるが、
(やや)信頼性が低いので、(実は、あまり)お勧めできない。

よって、
日本に持ち帰るなどして
専用の大型機械で測定しないと
信用できる結果にならない。

このため、
NGOでそれを行うことは難しいため、
日本政府の国際協力機構(JICA)などが
NGOが井戸を掘った場合に
その水の中の有害化学物質を
総合的に測定してあげるシステムを
構築することが必要。

2.
一方、測定の結果、ヒ素があった場合、
それを除去する機械もあるにはあるが、
日本にあるのは、大型の機械で
とても途上国にはもっていけない。

途上国の田舎の、一般家庭レベルで
それを行うのであれば、
砂と、砂利を何層かに敷いて、
その間に、「活性アルミナ」(後述)という物質を
はさみこむことで、それに
ヒ素を吸着させる方法がある。

で、
これももちろん、専門の業者が必要で
何もしらないNGOが、
まねをしてそれを作っても
ヒ素の除去はできない、と思う。

よって、こちらも、
日本政府のJICAか、
国連のWHOなどが
ガイドラインを作り、
井戸をつくったら
これこれこういう検査をし、
もし、異常値がでたら
それを使わないか、使う場合は、
このような対処法がある、という
指導をする必要がある、と思う。

・・・

以下、さらに、上記の詳細

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1.
ヒ素を測定する安価で簡易な測定キットは
あったのだが、
先日、発売を中止した。

理由は、その(検査される)水の中に、同時に
リン酸が入っていると
測定値が高くなってしまう現象が
確認されたから。

また、それ以外の重金属でも
測定値に影響がでる可能性がある
とのこと。

ちなみにこのキットの名前は、
共立理化学研究所の、パックテス
http://kyoritsu-lab.co.jp/

現在、すでに発売も生産も中止。

(要するに、簡易なキットで使用する
 「比色法」で、色を付けて検出する方法では
 他の物質も感知してしまう可能性がある、
 ということ。)


2.
現在、他にも、いろいろなキットがあることは、ある。

ジーエルサイエンス株式会社・ヒ素測定セット
http://www.gls.co.jp/product/catalog-29/01/102.html

エアブラウン社・ヒ素測定セット
http://www.arb-ls.com/products/arsenic_test/

が、いずれも、その検査をする前に
事前に、その水から、他のいろいろな化学物質(?)を
除去する必要があり、
このキットだけを持っていっても、正確な値は、測定できない模様。

(しかし、他の化学物質を除去するには、
 大型の装置が必要になる。)

よって、結局、簡単なキットで
途上国の田舎の井戸を検査することは、難しい
といってよいかと思う。

(要するに、先進国まで運んで、専門の人に、
 専門の施設で、専門の大きな機械で測定してもらわないと、ダメ。)

3.
ヒ素を除去する方法は、
一般に、「凝集沈澱ろ過」である。

いろいろなメーカーがこれを作っているが、いずれも、大型。

ちなみに
水道機工という会社の、大がかりなプラントは、以下。
http://www.suiki.co.jp/products/1e-06.htm

これを、途上国の田舎に
いちいち作るのは、現実的に考えて、不可能。

4.
よって、途上国でヒ素を除去する場合、
各家庭ごとか、各村ごとに
以下のような簡易除去設備を
作ることになると思う。

それは
砂と砂利を何層にも敷き詰め、
その濾過器に、ヒ素を吸着する
「活性アルミナ」
を、組み込む、という方法。

活性アルミナ、に関しては、以下などを参照

http://www.ekouhou.net/disp-A,H11-19506.html

ただ、問題となるのは、
この方法は、少なくとも2年に1回、活性アルミナをとりかえなければならず、
また、水酸化ナトリウムなども使用するため
大量の廃棄物が出る。

(要するに、この方法をつかって、ヒ素を除去できたところで、
 今度は、途上国の現地において、大量の廃棄物問題が起こってしまう可能性がある)

と、言うわけで、要するに、なかなか簡便な方法がないのが現状だ。

(番組中に登場した、素焼きの窯(かま)で、
 ヒ素が除去できるかどうかに関しては
 私が調べた範囲では、確認できなかった。)

また、
上記の廃棄物の処理にも、かなりのお金がかかるため
予算の乏しいNGOで、それを実施することは
難しいと考えられる。

(政府系団体や国際機関などからの援助が必要だ)

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で、
この状況で、開発されてきたのが
「砒素除去フィルター」等である。

現在、いくつかの情報がある。

インド、西ベンガルで開発された「砒素除去フィルター」(英語)
http://www.irc.nl/page/40477

これらを応用し、
政府機関と民間NGOの共同事業が、多数、行われるようになった。

JICA(国際協力機構) バングラデシュ 持続的砒素汚染対策プロジェクト
http://www.jica.go.jp/project/bangladesh/0515032E0/07/01.html

JICAとAAN(アジア砒素ネットワーク)の共同事業
http://www.asia-arsenic.jp/jp/modules/icontent/index.php?page=56

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現在、上記のように、
政府機関(または国際機関)と、
国際NGO(日本のNGOも含む)や
ローカルNGO(途上国の地元にある市民のNGO)が協力をして、
(特に、バングラデシュにおいて)
包括的な活動を行うケースが増えている。


カンボジアのヒ素問題に関しても
同様のプロジェクトが、将来、構築されていくことを望む。