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先日、プロテスタント系の教会で
講演を行った。

私は、
大人向けの講演の場合、
講演の後半で、
「人口増加問題」
(地球上の人間の数が急速に増えていること)

現在の世界の最大の問題の一つであること

強調することにしている。

・・・

簡単にいうと
イエス・キリストさんが生まれた
約2千年前は、約3億人だった。

その後、わりと横ばいだったのだが、

1800年ぐらいに10億人を突破したと
思ったら
2009年現在、人口は68億まで増えた。

以下にグラフを掲載する。(クリックすると大きくなります)

Population03as






このままだと
2050年には100億人ぐらいになる。
人口が増えすぎると、
地球全部を農地にかえても穀物生産が
足りなくなることがわかっている。

「安全な水」はすでに足りず、
現在でも、何割かの人は困っているのに
これ以上増えてどうするのか?

中国、インドなどの人口10億を超える国々が、
日本なみの発展を始めたため、
石油などの資源は急速になくなり、
大量のCO2が排出され
地球温暖化などの環境問題が悪化する。

以上のような理由になり、
(はっきり言うと)
まず、人口増加を止めないと
他の国際協力活動の何をやっても
「焼け石に水」になるくらい
決定的な問題が
人類の人口増加問題なのである。


・・・

国際協力を、長期間行っているほとんどの人は
私と同じように
「人類最大の問題」の一つが
この
「人口増加問題」であることに
気付いており
その対策に、頭を悩ませている。

(特に、
 国連人口基金(UNFPA)は
 けっこうがんばっている。)


ところが、
いくつかの理由があり
この人口増加を抑制するためのプロジェクトには
予算があつまりにくい状況になっている。

これには
たくさんの理由があるのだが、
それらについては
また別のブログで触れる。

で、
今回、とりあげるのは、その理由の一つである
キリスト教系の団体が、
そのプロジェクトに、
お金をくれないこと、である。

・・・

背景としては、
実は、国際協力を行っている団体(特にNGO)に対し
寄付金(または募金)をくれる最大の組織は
通常、キリスト教系の団体なのだ。


(日本と異なり、欧米では、
 キリスト教を信じている人が、7割ぐらいで、
 個人や企業が、貧しい人に寄付をする文化が
 発達している。

 毎週日曜に、ホームレスの方に、
 パンやミルクを配ることなども
 日常的に行われている。

 このため、国際協力団体の募金をしてくれる
 人の数も、その金額の量も、日本の数十倍、
 という状況だ。

 要するに、キリスト教系の団体は、
 国際協力の世界の、「ドル箱」
 (もっともお金をくれる人や組織)なのだ。)


ところが、
キリスト教系の団体の中の
カトリック系(のほぼすべて)と
プロテスタント系(の約半分?)は
人口増加を抑制するプロジェクトに反対しており、
よって
そういう活動を行っている国際協力団体に
寄付金(募金)が集まらない状況となっている。

・・・

で、
なんで、(一般に)キリスト教は、
人口増加の抑制プロジェクトに反対するのか、
講演を主催された、牧師さんに聞いてみた。


山本 「なんで、人口増加の抑制に
    キリスト教は反対するんでしょうね?」

牧師 「いえ。
    わたしは、プロテスタントなので
    一概に反対はしていません。

    プロテスタントにも、たくさんの教派があり、
    いくつかの団体は反対していますが、
    いくつかの団体は容認しているようです。

    カトリック系は、概ね(おおむね)、
    (人間が、コンドームなどを使って)
    避妊をすることにすら、反対ですから、
    それを推進しようとする、
    家族計画などのプロジェクトに
    反対する立場をとっています。

    コンドームなどを使うのは、
    自然の摂理に反する、
    神の意思に反する、と考える人も
    (キリスト教の中には)多いようです。」

山本 「うーーん。
    具体的に、
    避妊をしてはいけない、と
    聖書に書いてあるんですかね?」

牧師 「いえ。
    避妊をしてはいけない、とは書いていません。

    しかし、逆のことが書いてあるんです。」

山音 「と、いうと?」

牧師 「聖書の最初のほうに、
    次の、非常に有名なフレーズがあるんです。
    ”産めよ、増えよ、地に満ちよ”
    という一節です。」

山本 「ははあ、なるほど。
    聖書に、産めよ、増えよ、と書いてあるのだから、
    人間の数を増やすことは、良いことだ、と
    キリスト教系の人は考えがちだ、
    ということですね。」

牧師 「教派にもよりますが、
    一般には、そうかもしれません。

    また、この有名なフレーズは、
    最初のほうに一回だけでてくるわけではなく、
    聖書の中で、その後も、
    何度も何度も引用されて出てくるのです。

    神は、”産めよ、増えよ、地に満ちよ”と言った。
    だから、なになにである、という感じで
    何度も引用されているのです。

    このため、最も有名なフレーズの一つ、
    になっています。」

山本 「なるほど。謎が解けました。
    ありがとうございました。

・・・

最後に、その有名な一節の全文を
以下に引用する。

・・・


旧約聖書 創世記 1−27 〜 1−28


神は御自分にかたどって人を創造された。
神にかたどって創造された。
男と女に創造された。


神は彼らを祝福して言われた。


「産めよ、増えよ、地に満ちよ。
 地を這うものを従わせよ。

 海の魚、空の鳥、
 地の上を這う生き物すべてを支配せよ。」



・・・

上記のフレーズを、そのまま読む限り、
人間は、
(神に似せて作られた)地上の支配者なのだから
何をしてもよい、
どんどん増えて、地上を支配せよ、
という意味にとれる。


上述の牧師に聞いたところ

牧師 「いえ。そんなことは、ありません。
    他の生き物と、共存をしなさい、
    という意味です。」

と、フォロー(解釈)されていたが
文字を読むだけにおいては、
とても、そうはとれない。

(ほとんどのキリスト教の信者は、
 聖書を読んで、
 その書いてあることを、そのまま
 真(ま)に受けるであろうから)

これでは、
キリスト教系が、
人口増加の抑制に反対するのは
しかたがない状況かと言える。


なお、
聖書に記載されている表現は、
隠喩(暗喩)が多く、
何を意味しているのかわからないことが多いため、
「注解書」というものがあり、
その解説が書かれているという。

ところが、
各教派によって
その解釈は異なっており、
(その時代によっても変化してゆくため)
統一見解は、ない、とのこと。


と、いうわけで、
人類最大の問題である
「人口増加問題」に対しては、
宗教が壁になって、
なかなかその対策が
たてられない、のである。




・・・・


注1:
キリスト教の中でも
カトリック系の聖職者は、
司祭(priest)といい、
結婚してはいけないことになっている。
一方、
プロテスタント系の聖職者は
牧師(ministerなど)といい、
結婚してもよい。


注2:
で、繰り返すが、
カトリック系は、
世界中で、その教義が
ほぼ統一されており、
避妊や家族計画に対し
反対、の姿勢をとっている。

プロテスタント系は、
その中の(無数にある)教派によって
避妊や家族計画に
反対するか賛成するかは
まちまちである。


注3:
産めよ、増えよ、地に満ちよ、
の一節は、
旧約聖書の部分にあるので
キリスト教だけでなく
(起源を同じくする)
ユダヤ教、イスラム教の
聖典にも、含まれている。

つまり
イスラム教なども、
避妊や家族計画に
反対する姿勢をとることが多い。

このため、
国連や世界銀行が
避妊や家族計画に関する
国際的なプロジェクトを行おうとしても

敬虔(けいけん)なイスラム教の国や
キリスト教カトリックの国の代表者は、
それに反対することが多い。

具体的には
「女性の権利」条約の一つとして

女性は、
(ピルを飲んだり、ペッサリーを使ったり、
 男性にコンドームを使うよう要求し)
避妊をして
「妊娠するかどうかを選ぶ権利」
があり、
「出産するかどうかを選ぶ権利」
があるべきだ、
という国際法を作ろうとしても
反対される、という状況だ。



参考: 過去のブログ

人口増加と国際協力そして最後は国際法 8,092字
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/51144821.html