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以下、主に医療系の人へのコラム。

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小見出し1: 途上国で、医者をやりたい

「医師になり、アフリカなどの病院のない地域にいき、
 患者さんを救ってみたい」

そう思って医学部や看護学部に入ってくる人が時々いる。
多くはないが、1〜2割ぐらいは、いるのではないだろうか?

 私はアフリカやアフガニスタンで医療活動を行ってきたため、
「どうやったら山本さんのような活動ができるんですか?」
という質問を、しょっちゅうされる。

で、この質問がきた時に、私は必ず、
以下のように、逆に質問を返すことにしている。


「途上国での医療をやってみたいの? あ、そう。
 
 ちなみにそれは、1週間から1か月ぐらい、
 ちょっとやってみたいの? 

 それとも 半年から2年ぐらい現地に滞在して、
 ある程度本格的にやってみるつもり? 

 あるいは、一生の仕事として
 国際協力をずっと続けていくことも考えているの?」


 この答えのいかんによって、
私はまったく違う回答をすることにしている。

 最初に、簡単にまとめを言ってしまうならば、
国際協力を「ちょっとした遊び(人生の経験)」として行う道もあれば、
ある程度「本格的に(無給の)ボランティア」を行う方法もあれば、
プロとして高額の収入を得ながら、かつ世界の人々を救っていく
「職業としての国際協力」の道もある、ということだ。

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小見出し2: 初心者向けの「ちょいボラ」

 1週間から一か月、国際協力をやってみたい、
という人には、次のようなものを紹介している。

一つはスタディーツアー(またはワークキャンプ)、
もう一つは、インドのマザーテレサの家(またはタイのナンプー寺)だ。

 スタディーツアーとは、国際協力団体が、
自分の団体の行っている活動を一般の人に紹介・広報するために、
一般人が参加できる形で行う
「途上国の医療・教育施設等への視察旅行」である。

通常、2週間ぐらいの長さで行われ、
15万円から25万円ぐらいの料金でツアーが組まれる。

現地で「ちょっとしたボランティア」(通称:ちょいボラ)
をやらせてもらえることが多い。

看護助手のマネごと、学校の先生のマネごと、子どもたちの遊び相手になる、
学校の建物(の一部)を作る、井戸を掘る、遺跡を修復する、などである。

 こうしたスタディーツアーは、
国際協力関係のメールマガジンに登録しておけば、いくらでもその情報が入ってくる。


参考:国際協力マガジン 
http://www.dwml.net/modules/dwmm/


 また、こうしたスタディーツアーを斡旋している仲介業者も多数ある。

参考:NPO法人NICE
http://www.nice1.gr.jp/


2週間ではものたりない、
という人のために一か月ぐらいのものも企画されている。

そこで最も有名な施設が、インドのマザーテレサの家である。
ここは、孤児院の家、死を待つ人の家(ホスピス)、ハンセン病(らい病)患者の家、
などいろいろな施設があり、
そのいずれかの施設で患者さんの世話をする作業を行う。

食事を与える、体を洗ってあげる、洗濯をする、などである。
これらの情報も上記したURLをみてみてると良い。

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小見出し3: 中級者向けの「本格的ボランティア」

 本格的ボランティアとして最も有名なのは、
2年間、開発途上国に派遣される「青年海外協力隊」である。


参考: 青年海外協力隊
http://www.jica.go.jp/activities/jocv/


これは日本政府の外務省の1機関であった
「国際協力機構」(JICA)が行っている事業であり、
国が直接行っているので、信頼性が高い。

よって、看護師・助産師・保健師・栄養士の国家資格を持つ人は、
まよわず、これに応募することを勧める。

 給料が毎月13万円前後支給され、
健康診断なども定期的に行われ、安全管理対策の講習もあるなど、
NGO(民間の非政府組織)でボランティアをしにいくより、
よほど条件が良い。

 一方、医師の場合は、
青年海外協力隊には(医師の要請案件がなぜかないため)応募できず、
NGOで行くしかない。

NGOでいく場合、数か月から1〜2年ほどの長さでいくことが多いが、
給料は毎月数万円程度が多い。
完全なゼロ(円)の場合もある。

NGOは玉石混合であるため、お勧めの団体を挙げることは難しいが、
一応、以下が有名どころである。

ICRC(赤十字国際委員会)
http://www.icrc.org/

MSF(国境なき医師団)
http://www.msf.or.jp/

MDM(世界の医療団)
http://www.mdm.or.jp/

SCUK(セーブ・ザ・チルドレン・イギリス)
http://www.savechildren.or.jp/q_a/index.html

AMDA(アジア医師連絡協議会)
http://amda.or.jp/

日本赤十字社の国際部
http://www.jrc.or.jp/

ケア・インターナショナル
http://www.careintjp.org/

シェア(国際保険協力市民の会)
http://share.or.jp/

JVC(日本国際ボランティアセンター)
http://www.ngo-jvc.net/

HANDS
http://www.hands.or.jp/

HuMA
http://www.huma.or.jp/

MeRU(日本医療救援機構)
http://www.meru.or.jp/

など

各団体がどのような活動を行っているかを知るには、
それぞれの団体のホームページにいくか、
あるいはNGOたちの総元締めともいわれる
JANICが発行している
「NGOダイレクトリー」
がお勧め。
これに日本の有名NGOたちの情報が一覧となって出ている。

参考: JANIC 
http://www.janic.org/

上記をみて、どのような規模の団体で、
どのような活動をしているかを把握し、
自分が参加するNGOを見つけて頂きたい。

なお、このようなNGOに参加する場合、
最低でも以下のような資格等が必要である。

(1) 医師、看護師、助産師、保健師、栄養士等の免許(国家資格)
(2) 日本での社会人としての勤務年数が
     医師で5年以上、
     看護師で3年以上。
(3) 英会話の能力(または派遣国の公用語)

これら三つの条件を満たせば、
ほとんどの団体は登録のOKをしてくれるだろう。


参考: 上記に加え、長崎大学の熱帯医学、3か月研修コースがお勧め
http://www.tm.nagasaki-u.ac.jp/3months/


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小見出し4: お金とやる気がなくなり、続けられない

以上は、ボランティア、である。
ほぼ無給で、とても普通の生活
(結婚をし、家を持ち、子どもを育ててゆく生活)
を行うことはできないような給料で行う活動である。

 実は、国際協力を、
ちょっとやったことのある人はたくさんいるが、
そのほとんどの人たちは、それを続けずやめてしまうのである。

(参考:青年海外協力隊の帰国後、
 国際協力を続けている人の割合は、わずか8%)

その理由は、
お金がなくてとても続けられない、
生活できない、
一度やってみて満足した、
やってみたら思っていたものとなんか違った、
現地で嫌な経験をした、
などである。

 ともかく、ほとんどの人は、
ボランティアとしての国際協力をやめてしまうのだが、
一部の人は国際協力をつづけていく。

大きくわけて、二つの方法がある。

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小見出し5: 上級者の1、ボランティアと医療系派遣会社をサイクルで

 一つは、
あくまでも(無給の)ボランティアで続けていく方法である。
例えば、半年間あるNGOで海外に派遣されそこで医療活動をし、
日本にもどったら半年間フリーの医師として
アルバイトをしまくりお金を貯め、
ある程度たまったらまた海外にいく、
ということを周期的に繰り返す、という方法だ。

日本には医療系の人のための派遣会社が無数にあり、
医師免許か看護師免許をもっていれば、
食いっぱぐれる心配はない。

得に、医師の時給は基本的に(非常勤でも)高額のため、
上記のような生活を続けていくことは十分にできる。

途上国の田舎の(本当の)現場にいき、
医師として、自分が直接患者さんを診たいのであれば、この方法しかない。

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小見出し6: 上級者の2、国連かJICAに就職し、安定収入

 もう一つの方法は、NGOから離れて、
国連のユニセフかWHO、
日本政府のJICA関連プロジェクトで働く方法である。


参考: パートナー (国際協力キャリア総合情報サイト)
http://partner.jica.go.jp/


つまり、国連か政府系の団体に就職するのだ。
途上国の田舎で、NGOで働いていると、
直接患者さんを見られるのはいいのだが、
一方で
「俺がいくらがんばっても、こんなひどい状態の場所は、
この国の中にも外にもたくさんある。
この地域だけで俺が医者をやっていても、
あんまり意味ないんじゃないだろうか?
もっと国全体を、大きく動かすようなプロジェクトをやらないと・・」
と考えだす人が多い。

 すなわち、NGOとして、国際協力を始めた人でも、
続けていくうちに、やはり途上国の国全体をよくしたい、
と思うようになり、
それには日本政府の正規の援助団体であるJICAに入るか、
国連にはいってその国の医療政策に影響しなければならない、
ということに気づいていくのである。

 こうして、日本政府のJICA専門家(技術協力専門家)か、
国連のユニセフ(あるいはWHO)職員などになった人たちは、
給料は日本人の平均年収よりもずっと高く、
大学病院の勤務医の平均年収よりも高額の給与をもらえることが多い。

 ただし、仕事内容は、途上国の政府(厚生省や保健省)をあいてに、
その国の医療政策・公衆衛生の政策全般の
コーディネートをすることになるため、
いわゆる自分で患者さんを直接みるような
「せまい意味での医療」
を行うことは、事実上ほとんどなくなる。

しかし、その国全体の医療や公衆衛生を、まとめて改善し、
(裏方として)多くの人々が健康であることに貢献する仕事である、
ともいえる。

国連などで働く場合、世界の国々を相手にするため、
話はもっと広がっていき、もはや
「人間を直す医師」だったはずが、
「地球を直す医師」として、仕事をするようになるのである。

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小見出し7: 国際協力師の国家資格化の動き

 このような、世界をまたにかけて活動し、
国連やJICAなどから安定した給料をもらい、
プロとして国際協力を続ける人たちのことを、
「国際協力師」と呼ぶことを私は提唱してきた。

2004年ごろからNHKと毎日新聞で広報し、
2006年からは文部科学省との共同事業で
小中学校で「国際協力師」の概念を教える授業を開始、
2008年の6月には、
外務省が「国際協力士」の国家資格化を検討しだした。


参考: 「国際協力士」の国家資格の創設を、外務省とJICAが検討 2008/06/04
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65074625.html


その後、朝日新聞、産経新聞などで取り上げられ、
「国際協力師」という言葉は、日本に定着しつつあるようだ。

 この国際協力師になるためには、もちろん条件がある。
はっきり言って敷居は高い。
中級者向けの本格的ボランティアに必要な、
国家資格、経験年数、英語力等に加えて、さらに、
大学院修士(または博士)が必要になる。

欧米の大学院で、
公衆衛生学修士か、熱帯医学修士
を取得するのが通例。

だが最近は日本でも、
長崎大学・熱帯医学研究所等で
これらが1年間で取得できるようになった。

参考: 長崎大学・熱帯医学研究所・修士課程
http://www.tm.nagasaki-u.ac.jp/mtm/

参考: 東京大学・公衆衛生学修士
http://www.m.u-tokyo.ac.jp/sph/exp.html

参考: ジョンホプキンズ大学・公衆衛生学修士
http://www.jhu.edu/

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小見出し8: あなたのお好みは?

 以上が、ちょいボラから、本格的ボランティア、
そしてプロの国際協力師、
という三つの国際協力の形の概説である。

どれが心に引っかかっただろうか?このコラムを読むのは、
高校三年生から医学生、そして研修医ごろまでだと聞いている。

そのころは、
医者は患者さんを直接みるものだと思っているだろうから、
その現場から離れる「プロの国際協力師」
という仕事を魅力的には思わないかもしれない。
しかしながら、よーく考えてみて欲しい。

本当に途上国を救うには、どうすればよいのか? 
本当に世界をよくしていくには、どうしたらいいのか? 

是非、「地球をなおす医師」という職業があることも、
あなたの頭の片隅に置いておいて頂きたい。




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以上は、体験派医療人マガジン「ラティス」(Lattice)に
投稿した原稿です。

(他にも、有用な記事が満載です!)

2009年3月20日発売。

東京は、紀伊国屋書店新宿本店などのような
大型の書店でのみ販売されています。

大阪は、紀伊國屋書店梅田本店。
名古屋は、紀伊國屋書店名古屋名鉄店。

(要問合せ)

http://www.lattice.ne.jp/