.
私が代表をやっている団体、
NPO法人・宇宙船地球号は、
「企業の社会的責任」(CSR)のランキングを
付けている。

参考:
CSR: Corporate Social Responsibility
企業の社会的責任
以下の三つのバランスを保ちながら
企業を運営することを言う。
1.経済(利益の追求)
2.環境(社会の持続可能性)
3.社会(法律と倫理の順守)

で、
うちの団体のCSRランキングは
大手の新聞がつけているものとは異なり、
その企業が、第三者機関の監査を入れているかどうか、
というところだけを
特化して見ているところに、その特徴がある。

だから
一般に調べることになっている
その企業の財務状況などなどは、
全然みていないので、
そちらが知りたい人は、
日経新聞なり読売新聞なりが行っている
普通のCSR調査をみてください、

(うちの団体のCSRランキングの)
横に書いておいた。

・・・

ところが、
先日、次のような批判が来た。

「そちらのCSRランキングは、
 軍需産業で儲け(もうけ)ている企業も
 高いランクが付いているから、ダメだ」

という趣旨の内容であった。

うちの団体は、
基本的に、左翼でも右翼でもないので
その企業が、軍需産業に組しているかどうかを
調べる気は(はじめから)ないので
上記の批判を受けるには、あたらないのだが、
まあ、
世の中には、そういう部分を
特に気にする人もいるか、と思って
一応、調べてみることにした。

・・・

で、インターネットやら、新聞やら、書籍やらで
調べたのだが、
困った。

こういうことに興味を持つ人は、
極端な左(左翼)か、極端な右(右翼)の人が多く、
偏った情報が提供されていることが多い。

このため、
正確な情報を集めるのに、苦労した。

うちの団体は、
あくまでも中立路線を選んでおり、
かつ、現実的に、社会に適応できる方法を推奨しているため、
極端に偏った情報を
みなさんに与えたくないからだ。

・・・

で、まず、
今の若い人(20歳代前後の人)は、
知らないかもしれないので、
調べた結果を公表する前に、
日本の(戦争の)歴史と、
企業の発展について、
ざっと、ふりかえっておく。


簡単にいうと、
明治維新以来、日本が「富国強兵」をうちだしてから
企業たちは、国のこの政策にのって
ひと儲け(ひともうけ)しようと考え、
兵器をつくり、それを商品として国に売ることを
行ってきた。

いわゆる、財閥系企業、と呼ばれるものは
ほとんど、この方法で、一気に発展してきたのである。

(まあ、特に有名なのは、
 戦闘機などを作っていた、某財閥、である。
 このブログの後半に登場する。


このような軍需産業による企業の大発展は、
第二次世界大戦で日本が負けるまで、続いた。



・・・

次に言わなければならないのが、
朝鮮戦争、である。

1950年前後に、
朝鮮半島が分裂するような戦争が起こった。

南側(韓国側)についたのが、アメリカ、イギリスなど、
北側(朝鮮側)についたのが、中国、ソ連など、
だった。

で、
日本は、アメリカと軍事同盟を結んでいる国なので
当然、南側についた。

この時、
アメリカの(朝鮮半島での)戦争を手伝うために、
多数の企業が、アメリカに軍需物資を売った。

それも、かなり大量に。


(注: これを「朝鮮戦争特需」という)


何を売ったかというと、いろいろ売ったのだが、
一番有名なのが、車、である。
トラックである。

戦争というものは、
人間やら、武器やら、
食糧やら、弾やら、燃料やら、

運ぶために、大量の、トラックが必要になるのである。

(これを、ロジスティック(兵站学、へいたんがく)という)

このために、
アメリカに、大量のトラックなどを売った会社があった。
それが、
日本の大手自動車メーカーたちである。

(現在、日本のエース企業として、君臨している会社たちだ。)


また
もちろん、売っていたのは、
自動車だけではなく、その燃料も、食糧も、
兵器の部品に使う電子機器部品(半導体など)も、
戦闘機や戦車に塗る塗料(化学物質等)も、
すべて
日本の、ありとあらゆる企業が、
アメリカに兵器やら、その部品やらを売って
莫大な金を得ていたのである。

そして、日本は、一気に経済大国に
のしあがっていった。

(で、中立を期すために、書いておくが、
 上記は、一つの側面であって、
 もちろん、これだけで
 日本が経済大国になったわけではない。
 が、
 上記のことも、まちがいない事実であり、
 側面の一つとしては重要だ、
 ということである。)

ともかく、
若い皆さんが、
現在、日本で豊かな生活をおくっていられるのは、
日本が、このように
戦争のおかげで発展してきた、
という側面があったことも
頭の隅においておかなければならない。

また
朝鮮半島に住む人々は、
上記のことを知っており、
よって
彼ら・彼女らが、日本のことを恨むのは
それなりの根拠があることも
知っていてほしい。

だって、自分の国の戦争に便乗して、
兵器やら物品やらを売り、
隣りで、かってに、
世界第二位の経済大国になっていったのだから
面白いはずがなかろう。


・・・

以下、本論に入る。

スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が公開している
「SIPRI年鑑」の2008年版によると

世界の軍事費(億ドル)

1.米国 5470
2.英国 597
3.中国 583
4.フランス 536
5.日本 436
6.ドイツ 369
7.ロシア 354
8.サウジアラビア338
9.イタリア 331
10.インド 242

と、いうわけで、
なんと我が国(日本)は、
ロシアよりも、高額の軍事費を使っていることになる。

・・・

次に、世界の軍需産業であるが、

アメリカ、イギリスの企業に
その大手企業が多い。

以下、売上順。

1.ロッキード・マーティン アメリカ
2.ボーイング アメリカ
3.BAEシステムズ イギリス

など多数。


・・・・・・・・・

で、ようやく、日本企業の話になる。

日本は、(上記の統計の中で)
世界の軍需産業、トップ100、の中に
9社が入っている。

その詳細は、
下記を参照。

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)
http://www.sipri.org/


・・・

日本において、
軍需産業にかかわっている企業を調べていたら、
まず、
日本では、
自衛隊が、専守防衛、という思想なので
「防衛産業」と呼ぶのだ、ということがわかった。

で、
この防衛産業を行っている日本企業たちは、
アメリカで軍需産業を行っている企業たちと
会合を定期的に開いている。

それを
「日米安全保障産業フォーラム」(IFSEC)
という。

http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2003/005j.html

基本的には、
軍需産業(または防衛産業)の取引を
円滑におこなおう、という趣旨のようだ。

(円滑に行うための政策提言を、両国政府に行っている。)


これに、日本側から、9つの企業が名前を出しており
それらは、以下である。


三菱重工業(株)
http://www.mhi.co.jp/

石川島播磨重工業(株)
http://www.ihi.co.jp/

川崎重工業(株)
http://www.khi.co.jp/

(株)小松製作所
http://www.komatsu.co.jp/

ダイキン工業(株)
http://www.daikin.co.jp/index.html

日本電気(株)
http://www.nec.co.jp/

日立製作所(株)
http://www.hitachi.co.jp/

富士通(株)
http://jp.fujitsu.com/

三菱電機(株)
http://www.mitsubishielectric.co.jp/


この中でも、上三つに記載されている
三菱重工業(株)、
石川島播磨重工業(株)、
川崎重工業(株)、
という三つの企業たちが
日本において、もっとも有名な軍需(防衛)産業であるようだ。

なお、
このフォーラムの事務局は、
(社)日本経済団体連合会・防衛生産委員会
が、管理運営していうので、
いわゆる「経団連」も支持している、ということになる。

・・・

なお、
軍需産業(防衛産業)に関わっている企業たちは
上記で終わりではない。

伊藤忠商事、丸紅、山田洋行、日本ミライズ
などの、いわゆる商社は、
その商品取引の仲介をしている。

また、
自動車会社たちは、車両関係を、
石油会社たちは、燃料を、
電子機器会社たちは、IT機器を、
食品会社たちは、缶詰などの携帯食糧を、
アメリカの軍隊や日本の自衛隊に売っている。

・・・

で、
別にわたしが
軍需産業で儲けているかどうかを
うちの団体のCSRランキングの判断基準に
入れる気がない理由は、
どの辺に、「境界線」を引くかが、
難しいからだ。

それは、どういうことかというと、

はっきり戦闘機や戦車を作っていても、
それが
日本の自衛隊の、いわゆる「専守防衛」に使われているならば、
一概に、悪い、とは言えないであろう。

(注: 集団的自衛権の問題には、今回は触れない。)

次に、
アメリカに売っていたら、悪いか、というと、
場合によっては、そうでもなく、

(イラク戦争などの)戦後の治安の安定「だけ」に
使われるケースも(実際に)あるので
これも、一概に悪いとは言えず、
それほど話は、単純ではないのだ。

アメリカ軍などから、いわゆる国連軍である
PKF(国連平和維持軍)にまわされるケースもある。

(注: PKF: Peace Keeping Force)

(つまり、兵器は、戦争にも使われるが、
 逆に、戦後の「平和構築」(その地域の安定化)にも使われている。
 と、いうわけで、
 兵器の存在理由の
 二方向性、というか、パラドックス、に陥る。)


また
戦車や戦闘機(の部品)には、大量の電子機器が使われており、
そのかなりの部分が、日本企業製である。

電子機器だけではなく、
(戦車の)椅子などに使われる皮革製品、ビニール、燃料、
軍服を作るための衣類、繊維、
軍関係者たちが食べる食品、携帯食糧など、

戦争に必要なものというものは
意外にも、
私たちの日常に必要なものと、ほとんど同じなのである。

よって、
これらを作っている企業の名前の中には、
皆さんが日頃からご存じの、
ほとんど全ての(一般の生活に必要な)大手企業が
入ってきてしまうのだ。

(要するに、戦争に必要な部品を作っている企業の製品を
 全部買わない、などと思ったならば、
 はっきりいって、あなたは何も買えない可能性がある、
 くらいの状況だ、ということである。)

で、
ここで一つ問題になるのが、
その部品を売った企業が、
売った先で、
(防衛や平和構築ではなく、侵略のための)兵器の一部に使われることを
知っていたか、知らなかったか、ということだが、
これは
外から見ている我々一般市民には、わかりようがない。

(また、売った企業が、それを本当に知らなかった、
 知る方法すらなかった、ケースも多い。)


よって、
以上のような状況から、
うちの団体としては、
軍需産業にかかわっているかどうかを
CSRランキング(の判断基準)に入れることは
やめようと思ったのだ。


・・・

これ以上のことを知りたいと思う方は、
今回登場した、いくつかのウェブサイトを
ご覧になるのが、よかろうかと思う。

また、
今回、私が伝えたいことは、

過去および現在において
戦争(または防衛)と企業の経済的発展、
というものが、
つねに関係している、という側面があることを
(戦争を知らない)若い人たちに
知っておいて欲しい、ということである。

もう一つは、
本当の「平和」を望むのであるならば、
まず

過去と現在に起こっていることを客観的にみつめ、
戦争にかかわってる企業とその商品を
あたかも「不潔」であるかのように、必要以上に忌み嫌い、
(結果的に)事実から目をそむけてしまう・・
ということをせず、

どうして企業は、そういう選択をした(する)のか、
どのような社会(世界)にすれば、企業はよりよい選択をするようになるのか、

軍需(防衛)産業による企業の(現在まで続く)発展により
その恩恵を受け、豊かな生活を続けている私たちは、
その事実をふまえた上で、どんな行動をしなければならないのか?

その他、
利益の追求、という企業の本質があること、
資本主義社会と、市場経済と、グローバリゼーション、

企業の社会的責任(CSR),社会的責任投資(SRI)、
国際法の制定、核拡散防止条約、国連小型武器行動計画、

など
いろいろな人が、様々な思索の中で生きている世の中で、
この「人間」という困った生き物が
よりよい選択を選ぶようにするためには
どのような社会にすればよいのか、
という
大変難しい命題を、包括的に考え続けていける人物に
育って行って欲しい、
と思う。