.
このブログは、前回の続きです。
まず、昨日のコラムを、読んで下さい。
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65246269.html

・・・

さて、
今回、ようやく本論である。


まず、
4月18日の
パキスタン・フレンズ(パキスタン友好国閣僚会議)で決まったことは、

31カ国と、18の国際機関が出席した結果、
総額で、52億8000万ドル(約5250億円)が
パキスタンへの支援として、拠出されることが
決まったことだ。

これは、事前の予想では、
40億ドルぐらいであろう、と
主催した日本政府は思っていたのだが、

それよりも、ずいぶん増えたため、
日本政府は、(アメリカへの義理などをはたすために)
喜んだ、というところだと思う。

具体的には、
サウジアラビアと、イランが、
新たに支援を表明したことなどが、
金額としては、大きかった。


・・・

その後、帝国ホテルで行われたフォーラムでは
前述の、
米国のホルブルック特使と、緒方貞子JICA理事長が
講演などを行った。

以下、その二人の話の一部である。

(ノートパソコンを持ち込んで、その場でメモしたので、読みにくいかも)


・・・

リチャード・ホルブルック氏

略歴:
米国の、アフガニスタン・パキスタン担当特別代表。
米国外交官として国連大使などの要職を務めた後、
現在、オバマ政権で
アフガニスタン・パキスタン問題を担当。


ホルブルック氏の話:

世界銀行の発表によると、本日、
パキスタンのために、53億ドルも集まった。
日本も、サウジアラビアも、高額の金を出した。

今回、このような閣僚会議を主宰し、
パキスタン支援、ひいては、テロ対策において
日本がリーダーシップをとったことは、評価に値する。
日本は、
国連安保理の常任理事国入りに、近づいたと言えるだろう。


パキスタンへの支援が、重要な理由は、
他の多くの国々に影響があるからだ。
パキスタン西部の「部族地域」から
多くのテロ組織が生み出され、
問題になっている。

アルカイダを始めとする、国際テロ組織は、
今後も、多くの国に、問題を起こすであろう。

アフガニスタンに良い政府を作るには、
汚職がなく、かつ、麻薬のない国をつくるには、、
パキスタン西部の状態がかわらないと、ダメだ。


今のアフガニスタンの戦争は、
簡単に終わるものではない。
このため、
「終わりのない戦争」という危惧がある。

このため、
「ベトナム戦争との違いは?」
と、問われることがある。

その違いは、
9・11テロである。
これが、あるため、
アメリカは、アフガニスタンを支援し続けていく。


アフガニスタンに、多国籍軍の派兵をすることは、重要だ。
もし、撤退すると、アフガニスタン内に、
テロ組織がどんどん入ってくるから、撤退することはできない。


また、
パキスタンは、現在、世界で最も
核兵器を持っている「その数」が、
急速に増えている国である。

となりの、インドとの対立のためだ。
これも、最大の問題の一つになっており、
脅威、になっている。


非軍事的なイニシアティブ(主導していく意志と方法)としては、
非常に小さな農業プログラムを
アフガニスタンで、
日本とアメリカがやった。

1978,9年のソ連侵略まで
この国は、小麦などの「農業国」だった。

現在は、農業は、崩壊している。
麻薬(ケシの栽培)ばっかりになってしまった。

その対策にアメリカは巨額の金をだしたが、
だめだった。
麻薬の撲滅が、できない。

(麻薬をやめろ、と言って、金を渡しても、
 代わりになる産業がないため、
 人々は、ケシ栽培をやめられず、
 しばらくすると、また始めてしまう。)

だから、農業を発展させ、
麻薬の栽培をしなくても、
生活できるようにしなければならない。

とにかく、「農業」に重点をおくことが、重要。
日本、アメリカ、インドが
アフガニスタンの農業の再建に貢献する。


もう一つは、
「刑務所」の問題がある。
アフガニスタンの刑務所は、は、
タリバーンの隠れ家、だった。

この中で、
タリバーンが、囚人たちを「洗脳」していた。

テロのための、強力な「兵隊」を、洗脳して作っていた。
この状況をなんとかしないといけない。


この、農業の問題と、刑務所の問題が、
現在、もっとも重要な二つのポイントだ。


アルカイダは、会見して、交渉をしても、ダメだ。
世界を破壊したい、
人々の人間性をかえたいと、考えている。

圧力をかけないとダメ。
オサマビンラディンのイデオロギー(政治的・哲学的な理念)がなくなるまで
我々は、圧力をかける。

油断をあたえると
アフガニスタンは、テロ行動の本拠地になるので、
それを許してはならない。


最近、
タリバーンの勢力が、ますます強くなってる。
その背景は、
国民の生活が、
現在の政権でよくなっていないためだ。

(このため、現在の政府や、それを作ったアメリカなどに
 疑念をもっている。)

なぜ、農業なのか?

それを改善するためだ。

政府が無能で、あるいは腐敗していて
生活が改善しなければ、
タリバーンが、それを利用してしまう。

(ほおら、アメリカに作られた現在の政権は、無能だろう。
 だから、新しい国を作るために、我々タリバーンに協力してくれ、
 という論法が、通ってしまう。)


また、
(アフガニスタンでは)警察によって、虐待されている、と
市民が思っており、
それもまた、タリバーンが利用し、勢力を拡大している。


アメリカとNATO(北大西洋条約機構)の同盟国が
彼らの土地を占領している、と
洗脳されている。

すべての状況が、タリバーンに、利用されている。

このためには
人々の、すべての生活を改善しないといけない。


8月20日に
2回目の選挙がある。

カルザイ氏が一回目の選挙で勝った。
二回目も、彼は、立候補する。

しかし、700以上の人が立候補している(?)

日本は、(公正な)選挙のための資金を提供した。
日米が、最大の拠出をしたのだ。


・・・

緒方貞子氏

略歴:

国連難民高等弁務官などの要職を経て、
2001年に「アフガニスタン支援総理特別代表」に就任。
2003年からは現職、国際協力機構(JICA)理事長。


緒方貞子氏の話:

日本は軍事大国ではない。
テロに対して、何ができるか?

外交努力と、開発。
これらを、かなりやってる。

どんな分野で協力できるか?

アフガニスタンの
600万の難民が、パキスタンとイランにいた。
私は、それを助けようとした。
しかし、国際社会が、これらの難民への対策に疲れてしまった。

私は、タリバーンとも交渉した。
しかし、その後、
9.11同時多発テロ後は、
タリバーンやアルカイダと
あからさまに、(国際社会は)対立すようになってしまった。

2002年から2005年まで
日本政府の代表として、やっていた。

(注:2001年から、アフガニスタン支援政府特別代表)
(注:2003年から、 国際協力機構 (JICA)理事長)

2006、7年の動きの中で、
(アフガニスタン内の)
安全保障上の脅威が、
てにおえなくなってしまった。

治安がわるい。
特に、国境付近がだめ。
アフガニスタンとパキスタンの境い目のあたり。


米国の新しい政府に期待する。
アフガニスタンとパキスタンを
同時に考えないとだめだから。

「あの地域全体」、として、考えないと、ダメ。


支援国会合が、今日、おこなわれ、
直接、パキスタンを支援することになった。

パキスタンの
国内問題、国境地域の問題。

(事実上の自治権をもってしまっている)
反乱軍に対抗することができるのかどうか?


日本は
二つのイニシアティブが、とれると思う。

日本としてできることを、
地域全体のコンテクスト(社会のつながり)の中で考えてみる。

これまで、日本は、
道路建設などを、中央アジアで進めているが、
(アフガニスタンの西側にある)
イランでも、200万のアフガン難民を受け入れた。
だから、
イランと、アフガニスタンとの間の関係も
(パキスタンとの関係と同様に)
考えないといけない。

(アフガニスタン、パキスタン、イラン、中央アジアを
 セットとして、地域として考えるべきた。)

和平と、経済的な安全保障、
それらが、ともに重要だ。


なお、この地域に多くの
(アフガン難民のための?)住宅を建設する必要がある。
地域全体が、発展しないとダメ。


これまでJICAは、
インフラ(道路など)と
社会経済的な基盤の設置をやってきた。
(学校、病院など)


これからは、農業だ。

アフガンはもともと農業国だった。

農業試験場を、日本がアフガニスタンでやっている。
米、小麦の研究をしている。
ジャララバード(という都市)にある。

この実験結果を、北の州にうつそうと考えている。
北部は、これまで、あまり開発がされてこなかった。

復活したタリバーンが、まだ
ここ(北部)までは、侵攻していない。

(これから、タリバーンは、まちがいなく北部にも侵攻してくるだろう。)

だから、彼らが来る前に
この農業開発をおこないたい。

肥沃な農業があれば
ケシの栽培を、やめさせることもできる。


アフガニスタンにJICA専門家(技術協力専門家)を
私は連れていく予定だ。


それ以外には、
例えば、首都カブールの開発を考えている。

資本を投入し、都市開発を行う。

カブールの人口は、現在、400万人。
水のニーズ(必要性)、下水道、土地利用などが問題になっている。

カブールの南のほうに、新しい都市を建設したい。

高速道路と、上水道もつくる。
10年のプロジェクトになるだろう。

インフラが整ってから、都市開発。


すなわち、アフガニスタンでの開発は、

一方で、農業開発。
他方で、都市開発。


率直にいって、
今の、アフガニスタンの治安は、
はっきりいって、ひどい。


現在、日本から派遣されているJICA専門家は
50〜70名、いる。

セキュリティーの問題がある。
私は、彼らを非常に心配している。

セキュリティーの管理が
なによりも重要だ。


もうすぐ、選挙が行われる。
その前後の、治安の悪化が
問題になるだろう。



・・・・・・
・・・・・・


以上が、フォーラムの内容だった。

(以下、山本の私見。)


要するに、
アフガニスタンや、パキスタン西部の
人々の生活が改善されないと、
人々が、政府に不満を持つため、
その感情を
テロ組織に利用され、
勢力を増大されてしまう。

よって、
時間は、かかるが、
農業や、教育、医療などの
国際協力やら開発やらを行い、
人々の生活を
根本的に改善しない限り
このテロの問題は、
永久に解決しない、ということだ。

で、
その中でも
二人とも、農業の重要性を
もっとも強調していた。

理由は、
アフガニスタンは、もともと農業国だったのに
それが現在崩壊してしまったから、
と、
農業の振興は、間接的に
麻薬(ケシ栽培)の撲滅にもつながるから、である。

(農業ができないと、
 他に、収入を得る手段がないので、
 人々は、ケシ栽培を、永久にやめられないのだ。)

(ちなみにアフガニスタンは、世界最大の麻薬の生産地の一つ。)


ただし、
これらのプロジェクトは、
そうそう、うまくはいかないだろう。

理由は、
なんらかの開発をおこなっても、
その結果、
人々の生活が、改善する、までには
通常、10年ぐらいかかるのが
普通である。

すぐには、改善しない。
(すぐには、結果はでない。)


ところが、
この両国の政府は、不安定であり、
日本政府の、国際協力機構(JICA)などが
長期的な、10年規模の援助計画を
行おうとしても、
政権が、(最悪)崩壊してしまったり、
省庁や、地方自治体が、機能しなくなったりすると、
とたんに、開発は、頓挫してしまう・・
ということになる。


安全管理の問題もある。
赤十字国際委員会(ICRC)や、
国境なき医師団(MSF)のようなNGO(非政府組織)は、
どんな、危険な地域にも入っていくが、

基本的に、JICAなどの政府系機関は、
職員の生命を、(良くも悪くも)非常に重要視するため、
紛争地帯には、入っていかない。


アフガニスタン(カブール周辺以外)と
パキスタン(西部の部族地域)は、
あきらかに
紛争地帯である。

よって、JICAなどは、入っていかない。
入っていけない。

やるとしたら、
その「危険な」地域に
すでに配属されている、
現地の、地方自治体の職員か、国家公務員(官僚)などを介して、
活動をする、という形になる。

(自分は首都にいて、
 こういうことをやりなさい、と指示を出したり、
 首都に呼んできて、いろいろな研修を受けさせ、地元に返す、など。)

(JICA職員や、JICA専門家は、
 安全な首都の、警察か軍隊に護衛された、ホテルや省庁の庁舎などにおり、
 そこから指示を出す、という形になる。)

が、
これは、直接監視(プロジェクトのモニタリング)ができないため、
やや効率が悪い、と考えられる。

が、
もどかしいが、
こうした方法でやるしか、方法がない、のが現状だ。


で、もどって、
パキスタン・フレンズ(友好国閣僚会議)で
5千億円という巨額のお金が、集まったようだが、
実は、
それだけでは、なんにもならない。

上記の問題になっている地域に
入っていくこともできず、
長期的・持続的な安定した開発もできない、
のであれば、
金だけあっても、なんの意味もない
可能性がある。

下手をすると、
現地の政府や地方自治体の、不正や賄賂に
利用されておわってしまうかもしれない。


と、いうわけで、
綺麗事をいうのであれば、

「テロの根本の原因は、
 貧困にあるのだから、
 それを改善するための
 農業、教育、医療を改善していくのです」


なるのだが、
実際、それをやろうとすると
(対象となる地域が、紛争地帯の場合)
危険な地域には、なかなか入っていけず、
しかも
やれるとしても、長い時間がかかり、
すると
その間に、状況は変化してしまい、
当初、予定していたプロジェクトが、
「時期を失した」ものになってしまう、
ということの
繰り返しになる可能性もある。


参考:
戦争や内戦を、今まさにやっている「紛争地帯」
と、
紛争のない「開発段階」
との
中間にあたる地域を、「復興段階」と呼ぶことになっている。

要するに、

「紛争、復興、開発」

という3段階に、国際協力の分野では、援助の対象地域を
分けて考えているのだ。

で、
JICAはもともと、開発段階の、「完全に安全」な
紛争の全くない地域しか、その援助の対象にしていなかったのだが、
緒形理事長が就任して以来、
緒形さんは、
「復興の段階でもやる!、かぎりなく、紛争に近い復興段階でもやる!」

一人、気を吐いている、というのが、
現在の、JICAの状況なのである。

で、
彼女の気概は、いいのだが、
いままで、完全に安全な、いわば、「平和ボケ」した状況の中でしか
国際協力をした経験がないJICAという組織(及びその人間たち)は、
復興段階や、紛争状態での地域での
「安全管理」(派遣したスタッフに危害がおよばない方法)の
経験もシステムも、ほとんどないため、
基本的に、国連のマネをすることになっているのだが、
(この件も、別のブログで詳細に触れるが)
はっきりいって、あまりうまく機能していない、状態である。

このため、
今回の対象地域のような、アフガニスタンやパキスタン西部の問題で
援助を行うのは、極めて難しい状況だ、という側面もあることを
伝えておく。


この他、
今回は、触れないが、
反政府組織(地方で事実上の、自治権をもつ組織)への
軍事的圧力、経済的圧力(経済制裁)をかけることの是非、
(たとえば、経済制裁をすると、貧困層が余計貧困になる可能性との葛藤)、
その上での交渉、
それを踏まえた上での、開発(お金と技術の供与等)を
すべて包括して検討されるべき問題だ、
ということになる。


様々な圧力をかけ、時に、
「ニンジン(交渉の道具)」としての援助(国際協力)をするのだ、
という考え方もある。

しかも
(援助をする方の)各国にも、それぞれの国の立場と国益の追求があり、
(日本の立場、日本の国益の追求が、国際協力自体より優先されること)
その中で、
なんとか、各国の間で、おとしどころをつけ、プロジェクトをやっていく、
という話になる。



いやはや。

国際協力の道は、果てしなく、けわしい。