.
「会社で人間関係に疲れたから
 ここへ来た。なんてやつはダメ。
 人間関係のない職場など、
 どこにも存在しないんだよ。」

「環境問題に関わる仕事がしたい、
 なんて甘いこと言ってるやつは、続かねーべさ」

・・・

最近は、Iターン(アイターン)などと言って、
自分の故郷(ふるさと)とは関係ない田舎(地方)へ行き、
農業や漁業、林業などに従事したい、という人が
増えている。

で、
農業・漁業・林業へ転職したいと考えている人への
ガイドブックのようなものを立ち読みしてみた。

そうしたら、
その内容は、国際協力をしたいと思っている人への
アドバイスにも使えるようなことが書いてあったので
以下に紹介しておく。


(以下の、それぞれの文章を、
 国際協力の場合に、置き換えて、考えてみて欲しい。)


・・・

農業就職アドバイザー: 田村与太郎(たむらよたろう)さん(仮名)

「人の言うことを、素直に聞けるかどうか、だね。
 自分の信念や情熱は、もちろん重要だが、
 それだけに固執して
 人に心を開かないようでは、やっていけない。」

「人と接するのが苦手だから農業がいい、
 と考えるのは、大きな間違い。
 農業も含め、人と付き合わずにすむ職場は
 存在しない。」

「よくあるのは、
 思うように、就農先や農地が見つからないことを
 他人のせいにするケース。」

「持っている車を、普通乗用車ではなく、
 軽トラ(軽トラック)に変えるなどの、態度、も重要。
 周囲の人に、わかりやすく、
 自分のやる気を見せることも必要。
 すると、協力者が、まわりに現れやすい。」

「体力がないことを心配する人もいるが、
 体力は、やっているうちについてくる。
 精神的な、忍耐力のほうが重要。」

「親や家族と、きちんと話し合いをしているかどうか
 も大切。
 特に妻(夫)との関係が鍵になる。」

「夢を負う夫(妻)についてきて、いざ始めてみたところ、
 体と心に無理がたたり、就農5年目で
 妻(夫)が病気になってしまった、というケースもある。
 これも多い。」

「ある段階で、自分の農地が欲しくなり、
 また、いい機械などが欲しくて設備投資をしたくなる。
 すると、リスクが高くなる。
 例えば、
 ある野菜の大規模な栽培をするために
 広い農地を購入し、設備投資を大量に行った、とする。
 そうしたら、
 同年のうちに、その野菜の輸入が解禁になり、
 (途上国から安い野菜が入ってくるようになり)
 価格が暴落してしまい、
 設備投資のためにした借金が、返せなくなってしまった、
 なんてことも、よくある。
 このように、「リスク分散」の方策も
 考えておくことが重要。」

「だから、農業は、専業では難しく、
 半農半商、半農半会社員、などの、
 収入をいくつかに分ける生き方がいいと思う。」

「有機農業をしたい、と言っている人が、
 虫が多いから、嫌になった、
 と言うのでは、お話にならない(笑)。
 農業を始めたら、
 近くに、コンビニも、銀行もないのは、
 当たり前。
 理想と現実のギャップを
 事前に、まったく想像できない人が多い。」

「なぜ、どんな農業をやりたいのか、を
 明確にしておく必要がある。
 現在の生活からの逃避だったら、やめたほうがいい。
 自然の中で暮らしたいなら、
 農業でなくてもいいかもしれない。」

「どこかの社員になるなら、
 なにかに特化した能力があればいいが、
 自分で独立するとなると、
 技術以外に、経済力や経営のノウハウ、
 そして精神的な強さも必要になる。」

「農業をやるにあたって、もっとも重要な能力は
 継続する能力だ。」


・・・

林業就職アドバイザー: 林原刈兵衛(はやしばらかるべえ)さん(仮名)

「いくらやる気があっても、
 環境保護などへの思いいれが強い人は、採用しない。
 なぜなら、例えば、
 なぜ広葉樹を植えないのか?
 などと、反発してくる人もいるが、
 そこまでいうなら、
 林業のことを、もっとしっかり勉強せい!、と言いたい。」

 (注: 住宅の建材は、ほとんどが、杉などの針葉樹。)

「地球温暖化の役に立ちたい、と
 大上段に構えている人は、この業界には向かない。」


・・・

漁業就職アドバイザー: 大平洋二郎(おおひらようじろう)さん(仮名)

「行けばなんとかなる、の一心では、続かない。」

「船頭(せんどう)は、60歳代以上の高齢者が多く、
 田舎の、方言、がきつい。
 だから、(船の上で、声をかけられても)
 何を言っているか、わからない。
 その言葉で、怒鳴られる。
 理解できないので、もたもたしていると、
 余計、怒られる。
 すると、萎縮してしまい、
 気が付けば自分の殻(から)に閉じ困ってしまう・・
 という悪循環が始まる。」

「借金しないと漁師は、できない、という人もある。
 それくらい、 最初にお金がかかる。
 具体的には、
 漁船、漁具、運転資金、漁協の組合に入るためのお金、など、
 最低でも、数百万円以上かかる。
 組合や銀行など、最初に
 お金を貸してくれるところがあるかどうか?」 

「昨年(2008年)などは、原油高騰で、漁船の燃料の費用が高くなり
 漁にでればでるほど、(漁船の)燃費がかさみ、赤字になってしまう・・
 というとんでもない事態に。」

「憧(あこが)れの宮古島にきてみたら、
 離党特有の流通事情で
 魚価(魚の値段)が低く、売上が伸びない。
 さらに、
 冬場は海が荒れて、漁(りょう)ができない。
 だから、
 最初の借金を返すどころか、
 漁業だけでは、自分一人の生計を立てることすら難しい。
 結婚して家庭をもつなど、夢のまた夢。」

「もっとも重要なことは、
 自分と、自分の家族が生活していくことを想定し、
 周辺の環境について知ること、も大切。
 入居できる住居があるのか?
 奥さん(旦那さん)が働く職場はあるか?
 子どもの幼稚園、学校はあるか?
 自分や家族が病気になったときの病院は?
 商業施設や娯楽施設がまわりにあるか?
 こうしたことも、確認しておいたほうがいいでしょう。」

「リタイアの最大の理由は、
 仕事自体の、つらさではなく、
 地域の同業者(漁業者)との人間関係が悪化し、
 精神的なストレスがたまってしまった、というケースです。」


・・・

以上である。

まあ、ほとんどのコメントが
国際協力の場合にも、多かれ少なかれ、合致すると思う。

まとめるとすれば、

1.人間関係をこなすコミュニケーション能力が何よりも重要。
  これは、どこの職場でも、同じ。
  海外にいけば、さらに重要になる。
  このため私は
  大学卒業後、いきなり国際協力を始めるのではなく、
  まず、日本の企業などに入り、
  日本の社会人としての、常識的なコミュニケーション能力を
  身に付けることを、お勧めしている。

2.日本の社会が合わないから、海外にいく、などという
  甘い考えでは、絶対に成功しない。

3.国際協力師になるために、まず、
  大学院に行くにしても、NGOのインターンで海外に行くにしても、
  まずは、お金が必要。
  その予算をどうするか?

 注: 青年海外協力隊のような、経済的に恵まれるケースは稀。
    協力隊に合格する倍率は5倍以上。
    よって、8割以上の人は、NGOで始めることが多い。

3.家族の理解がないと、継続していくことは難しい。
  親、妻(夫)、恋人など。

4.理想としているイメージと、実際の職場は、大きく異なる。
  また、
  そういう状況に直面した時に、
  現場でやりたいことができないことなどを、
  他人のせいにするようでは、もうダメ。

  例えば、青年海外協力隊で派遣された国(途上国)で
  事前に、日本にいる時に言われていた(自分の)業務内容と、
  (行ってみたら)
  その地域の現状も仕事の内容も、まるで違う、
  などということは、ざらにある。
  (半分以上のケースで起こっている。)

  そうした時に、他人や組織のせいにせず、
  与えられた2年という任期の中で、
  自分になにができるかを、一から考えだす
  プロジェクト提起と、その管理(マネージメント)の能力が必要。
  (事前に、私の本やブログなどを読み、徹底的に勉強しておくこと。)

5.リスク分散の考え方も、重要。
  国際協力を行いたい場合、最初のネックになるのが、
  その「有給の職場」が少ないこと。

  国連職員への登竜門、AE/JPO試験の倍率は、15倍ぐらい。
  JICA職員の倍率も、20倍ぐらい。
  (だから、この二つには、なりたくてもなれない可能性のほうが高い。)

  開発コンサルタント会社は、不況で、むしろリストラ傾向。
  NGO職員は、給料がゼロか、あっても10万円以下。

  よって、国際協力を行いたい場合、
  将来の就職先として、
  国連系(世銀なども含む)と、JICA系(開発コンサルも含む)だけを
  ターゲットにするのは、「危険(リスク)」が高い。

  例えば、月曜から金曜まで、普通の会社員として働き、
  土日や平日の夜を、NGOなどで国際協力活動を行う、
  という選択肢も、頭の中においておいた方が、現実的だ。

  また、
  そもそも、普通の会社に就職するにしても、

  企業の社会的責任(CSR)をがんばっている企業、
  環境問題をがんばっている企業、
  など、
  その企業で働くことが、社会や世界に貢献できるケースもある。

  地方自治体や国家公務員(官僚)になり、
  その上で、社会に貢献できることはないか、なども選択肢の一つ。
 
  まずは、
  自分の地域社会において
  自分のため、社会のために、どういう選択(行動)をすれば良いかを
  考えてみることが、最も現実的であり、
  かつ、あなた自身のためにもなると思う。
 
 
  以上を踏まえた上で、
  もう一度、上の、農業・漁業・林業のアドバイザーの言(げん)を
  読んでみて欲しい。

  彼らの言っていることは、すべて、
  国際協力をやりたい、あなたのために、あるような言葉だからだ。