.
2004年10月17日、WHO(世界保健機関)の事務局長、
Dr.Lee (李鍾郁 LEE Jong-wook)が、ジュネーブでの講演で
次のように「断言」した。


「新型インフルエンザのパンデミック(世界的大流行)は、
 明日にでも、起こりうる。」


その後、
ベトナム、トルコ、インドネシア、香港などで
たびたび、その発生と拡大が危惧されたが、
なんとか
WHO及びその国の省庁等は、抑え込むことに成功した。

(動物から人への感染(フェイズ3)の段階で、
 それ以上、広がらないように対処した。

 具体的には、
 その地域にいる鳥や豚などの動物を
 一気に全て処分し、かつ
 その地域から他の地域への人の移動を制限(禁止)する、
 などの方法で、その広がりを防いだ。)


しかし・・



2009年4月27日夜(日本時間では28日朝)、
WHOが
インフルエンザの警戒度を
フェイズ4にあげた。

(動物から人への感染だけではなく、
 突然変異をおこし、
 人から人へ感染できるウィルスが発生してしまい、
 かつ、その感染が広がり続けていること。)

現在、
メキシコ、アメリカ、カナダ、イギリス、スペイン、
ニュージーランド、イスラエル、コスタリカ、の8カ国で感染を確認。
オーストラリア、韓国などでも、疑い例がある。

疑い例を含んで政府が把握している感染者数は、
現在、約2000〜3000人だが、
実際の感染者数は、
少なくともその10倍、もしかすると、100倍とも言われている。


これにともない
4月28日、日本は、
「新型インフルエンザが発生した」

舛添要一厚生労働大臣が宣言をした。

このため
各省庁は、「既に取り決めておいた」ガイドラインに沿って
様々な対策を始めた。


・・・

私のブログは、
国際協力に関心のある方が読んでいると思うが、

今後の国際協力の中で
最も重要な課題の一つが
「新興(しんこう)感染症」のコントロール、である。

なんでかというと、
昔と違い、現在、航空機を使えば、
24時間以内に、
中南米からでも、アフリカからでも、
東京やロンドンなどの世界中の大都市に
移動することができる。

このため、
24時間以内に
世界中に、あっというまに
感染症が広がってしまう危険性があるのだ。

(しかも、その患者が、潜伏期である
 症状をまったく発症していない、三日間程度の間に。)


昔、
1918年、スペイン風邪、という名前の
インフルエンザが世界で流行した時、
(当時の人口は、20億人ぐらいだったが)
4000万人が死亡した、とされる。

2009年、
(現在の人口は、68億人ぐらいだが)
人間の数が3倍以上になっていることと、
航空機等による世界中への人の移動が激しくなったことから
被害は、もっと甚大になる可能性がある。

単純に3倍するとしても、
(ほおっておいた場合)

1億人以上が、死亡する可能性がある、
ということになる。


つまり、
「世界中の、たくさんの人を救いたい。そんな仕事がしたい」
と思うのであれば、

こうした「新興感染症」への対策を行う人
になることも
選択肢の一つだ、ということになる。

(だって、1億人を救う仕事、など
 他に、そんなにない、はずだ。)


要するに、予防対策、というか
リスクマネージメント(危機管理)の方法を提案・策定し、

それを国際機関で公布し、
各国の政府に参考にしてもらい、

その国の現状に合う形で法律にしてもらい、
地方自治体でそれを実際に施行させる、

という「総合的なシステム」を作ること、が
一つの大きな仕事になるのである。

これは、
国際機関に入ってやる方法も
政府機関に入ってやる方法も
地方自治体の職員になる方法も
大学の教授や、感染症研究所の職員などになる方法も
企業で新薬やワクチンの開発・生産をする方法も
あり、
すべて、重要な仕事である。

産官学、一体になって行う国際協力。

それが、
新興感染症への対策、という仕事なのだ。


・・・

フェイズ4になったため
具体的に日本は、
以下のような対策をとっている。

1.水際対策(みずぎわたいさく)
2.感染予防方法の国民への啓発
3.医療の確保
4.ワクチン
5.社会経済機能の維持

具体的には、以下。


・・・

1.水際対策

航空機や船で、感染国から入国(帰国)する人を
管理すること。

具体的には、
発熱などの症状がある人を見つけ出し、
感染の疑いがある場合、
空港近郊のホテルなどの宿泊施設に
10日間程度、隔離する、ことになる。

(この件は、次回、詳述する。)

また、
現在、外国にいる日本人に対して
(仮に、その外国が、まだ
 新型インフルエンザが発生していなくても)
早期、帰国するよう、警告する。

すでに
感染が起こった外国にいる日本人に対しては
(すでに、その日本人が感染している可能性もあるため)
帰国させるかどうか、問題になる場合もあるので、
(国内にウィルスを持ち込ませないために)
日本政府は、現地(その外国)の医療機関を紹介する、
ことになる場合もある。

さらに
本当に事態が深刻になった場合、
感染国からの全ての人の入国禁止や、
航空機の入国も制限される。


・・・

2.感染予防方法の国民への啓発

外出の自粛、集会の自粛、
学校の休業の要請、企業の休業の要請、
不要不急の業務縮小の養成。

これをみればわかるように、
企業の活動も、制限されるため、
経済被害も、甚大となる。
(GNP等も、下がる)

しかし、
これを行わなかった場合、
感染は、とどまることをしらず広がり続けるので、
経済被害は、その10倍以上になるので、
上記の対策を行うことになる。

(この、経済被害の計算については、後日、また触れる。)

ともかく、
企業、学校、家庭、地方自治体などが、それぞれの場所で、
上記の、外出等の制限をすることが
本当に必要だ、という啓発活動をすることが
なによりも重要だ、ということになる。

また、
予防方法としては、繰り返すが、
第一に、外出しないこと、
(満員電車等に乗らない、人混みの中に行かないこと)、
第二に、帰宅後の手洗い、マスク、など、
である。

さらに、
感染してしまい、発熱などの症状がでてしまった場合は、
まず、

自分の住む地方自治体の保健所(等)の中にある

「発熱相談センター」に電話し、
「発熱外来」を行っている
「感染症指定医療機関」になっている病院

紹介してもらい、そこを受診することになる。

(この詳細は、既に、以前のブログに書いた。)


個人でできる新型インフルエンザ対策その1 4507字
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65232371.html

個人でできる新型インフルエンザ対策その2 3402字
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65232637.html


・・・

3.医療の確保

インフルエンザに効く薬、タミフルなどを
政府は、2400万人分、備蓄している。

その他、タミフルに耐性化を起こした場合のために
リレンザの備蓄、新薬の開発なども行っている。


医療機関に関しては、
初期は、上述の
感染症指定医療機関(という特定の病院)
にいってもらい、

国内の患者数が100人を超えた時点から
(もう、患者の発生を少数におさえこめない、と判断し)
すべての医療機関を患者が受診するように変更する。

さらに
爆発的に患者が増えた場合、
重傷者は入院させるが
軽傷者は自宅で療養させる、

という、段階的な対策を考えている。


医療従事者の確保、については
大きな問題が残っており、
簡単にいえば、

新型インフルエンザにかかると
(医療従事者本人が、病院で患者から感染してしまい、その結果)
死亡する可能性があるため
病院への出勤をいやがり、
欠勤する、という事態が
憂慮(ゆうりょ)されている。

つまり、
自分が感染したくない
(自分が死にたくない)から、
医師も看護師も、病院にいかず、
患者が病院にいっても
病院が機能していない、という事態になることが
考えられる。

これに対する対策は、
現在、まだない。

各都道府県の知事が、その地域に住む
医師や看護師に、「強制出勤命令」、を
だせるようにする、という案もでたが、
「人権侵害」になる、という意見もあり
難しいところ。


・・・

4.ワクチン

プレパンデミック・ワクチン(事前に予想して作っておくワクチン)
として
鳥インフルエンザ(H5N1)を
政府は用意していたが、

今回、はやったのは
豚インフルエンザ(H1N1)だったので
プレパンデミックワクチンは、
やくにたたない、ことがわかった。

よって、
パンデミック・ワクチン(大流行時に緊急で作るワクチン)を
今、あせって製造しているはずだが、
最速で製造しても、
3か月かかるはず。

その3か月で作られるワクチンは、
あまり数がないため、
政府要人、交通機関職員、警察、軍隊、
電気・水道・ガスなどのライフラインで働く人、
医療従事者などへ
最初に配れる、

国民全員の分の数がそろうには
1年半かかると言われており
その頃には、新型インフルエンザは、
流石に、収束していると思うので

要するに、まにあわない、のだ。


・・・

5.社会経済機能の維持

フェイズ4がでた時点で
関係省庁が集まり、
対策本部を設置することになっていた。

で、実際、それが行われた。

上述のような
感染に対する、様々な対策を講じるだけでなく、

一般の業務に関しても
重要業務のしぼりこみ、
が行われ、
不急の業務を後回しにする、
という、
日常の業務のふるいわけ、
(重要度の選別、プライオリティーの選別)

今、まさに行われているはずだ。


地方自治体の対応に関しては
地域によって、非常にムラがあり、
おおざっぱにいうと

全国の市町村等のうち、
3分の2ぐらいは、
フェイズ4になった場合の
ガイドラインを(まじめに)作ったのだが、

3分の1ぐらいは、
なんにも作っていない、
状況である。

つまり
あなたの住む町の地方自治体が
さぼっていた場合、
上述の、
保健所内(等)に設置されるはずの
発熱相談センターすら、
まだ、ない、可能性がある。

このブログを読んだら
是非、
あなたの最寄の保健所(等)に
設置されたかどうか、確認したほうが
いいかもしれない。


参考: 全国の保健所
http://idsc.nih.go.jp/hcl/index.html

(電話が殺到するのは、まずいので
 ホームページで確認して下さい。)


一方、優秀な地方自治体では、
産官学の連携体制をとっており、
上記の、発熱外来等の医療機関の連携だけでなく、
企業や大学をまきこんだ対策をとっている。

具体的には、
タミフル及びリレンザという薬の、両者への耐性化を起こした
ウィルスが発生した場合のために、
新薬の開発が、急務である。

企業と、大学と、地方自治体や国の予算
(科学研究費、通称、科研費)
を、連携させる取り組みが行われている。

具体的には、以下の3薬を開発中だ。

・・・

T-705    富山化学工業 ウィルスのRNAポリメラーゼを抑制
          人間にはないので、副作用がほぼない

CS-8958   第一三共製薬 1回吸入しただけで効く長時間作用型
             一回吸っただけで治る、驚異の薬?

Peramivir  米国BioCryst製薬 タミフル耐性株にも有効なのを確認済み

・・・

上記の3剤は、それぞれ、どれも非常に期待されている。

もし、あなたが、医者でも、研究者でもなくても
会社員(もしくは、公務員)の立場から
上記のような研究ができるように

国や自治体の予算と、企業と、大学の研究所の三つを
連携し開発させる、という
コーディネートをし、
それらを「結びつける場所を作る」ことも
最も重要な国際協力の方法の一つ、だ。


・・・

ところで、
今回、WHOがフェイズ4に上げるにあたり、
いくつかの議論があった。

一つは、
もう既に、フェイズ5ではないのか?
という議論だった。

フェイズ4、という場合、
ある狭い、一つの地域に
人から人への感染がある、場合を言う。
(しかも、通常は、25人以下、の小さい集団。)

今回、すでに、8カ国で感染が確認しており、
メキシコの中だけでも
2000人以上が感染しているのだから、
狭い地域に限局しているわけではない。

だから、医学的・公衆衛生学的に考えると
どう考えても、すでに、フェイズ5、なのだ。

(この件は、前々回のブログに書いた。)


しかし、いくつかの国(特にメキシコ)が、WHOの会議で
フェイズ5にすると
経済的な風評被害が甚大になるので
頼むから、フェイズ4にしておいてくれ、と
言ったらしい。

メキシコでは、
現在、インフルエンザが猛威をふるっており
企業活動は、ほとんど停止し、
毎日、数億円以上の経済被害がでていることも
側面の一つになっている。

このため、
他の国々も、自分の国の経済状況が
そうなってしまっては困る、ということで
WHOがフェイズを上げるのを警戒しており、
会議で、賛成しなかった。

(このため、フェイズ4に上げるのが、遅れた。)


しかし、
メキシコがこのような姿勢だったため、
(3月下旬から既に流行していたにも関わらず)
WHOへの連絡がおくれ、
すでに、少なくとも8カ国に感染が広がるまで、
「ないしょ」にしていたことは、
国際倫理上、非常に問題である、
という側面もある。


WHOは、国連の機関であり、
各国の代表からなる組織であるため
様々な意見が飛び交(か)い、
まとめるのが容易ではない。

が、
なんとか各国の間での調整をはかり、
一つのまとまった考えを
公布するのが、WHOの役目である。

(頭の痛くなる仕事だ、とも言える。)


・・・

以上が、現在の概況だ。


2007年1月1日のブログで
私は、
新型インフルエンザがもうすぐ流行る、という警告を出した。

鳥インフルエンザ、世界的大流行の予兆 5,797字
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/51353678.html

それから、2年ちょっと。
来るべきものが、ついに来た、という感じだ。


なお、
鳥インフルエンザではなく、
豚インフルエンザじゃないか、
と思う人がいるかもしれないが、
この二つは、本質的な意味で、おんなじ、である。

理由は、
すべてのインフルエンザは、
鳥の、水禽(すいきん)類の、
特に「鴨(カモ)」から発生することが
遺伝子の分析から、わかっている。

で、
通常、鳥インフルエンザは、
鳥にしか感染できないのだが、

豚は、
ある理由で
鳥インフルエンザが感染することができる。

(この件、解説すると長くなるので、また後日)

で、
鳥インフルエンザが、豚に感染し、
その中で変異をおこし、
人間に感染する、という流れになっている。

また
鳥から豚にいき、
さらに、また
豚から鳥にもどり、
で、
人に感染する、というケースもある。
(これも多い。)

というわけで、
インフルエンザは、
鳥、豚、人、の中を行ったり来たりし、
必要な遺伝子の組み換えを行い、
変異し、進化しながら、増殖を続けてゆく、

「究極の生物兵器」

であるとも言えるウィルスなのだ。



あなたがもし、国際協力師になりたい場合、
この究極の化け物、と戦う戦士になる、
という道も、あるかもしれない。