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2009年4月29日夜、
(日本では4月30日朝)
WHO(世界保健機関)は、
新型インフルエンザの警戒度を
フェイズ5、にあげた。

フェイズ5は、
WHOの管轄する2カ国以上で感染が発生し、
かつ、
その感染が広がり続けている状態を言う。

具体的にいえば、
発生国のメキシコで広がり続けているだけでなく、
メキシコから広がった、
アメリカやヨーロッパなどの他の国々でも、
その
ウィルスを持ち帰った患者が自国内で感染源となり、
まわりの人々に、うつしていることが
確認された場合を言う。

で、
現在、まさにその状態にある、ということだ。


・・・

このフェイズ5になってしまうと
感染をコントロールすることが
極めて難しくなり、
世界中に感染が広がる可能性が、極めて高い。

いわゆる「パンデミック」(世界的大流行)が
起こってしまう可能性のほうが、高くなる。


・・・

一方で、
今回の豚インフルエンザ(H1N1)由来の
新型インフルエンザは、
「弱毒性」
であることが、わかっている。

弱毒性とは、
通常の「季節性インフルエンザ」と同じぐらいの
死亡率が0.1%弱程度のものを言う。

季節性インフルエンザとは
(日本では)
毎年11月から3月ぐらいまでに流行る
普通のインフルエンザで、
毎年、約1千万人が感染し、
毎年、5000人から6000人が
死亡している。

死亡しているのは、主に高齢者である。


・・・

では、
強毒性とはなにか、というと
1918年に起こった
スペイン風邪と呼ばれる(当時の)新型インフルエンザの時の死亡率が
2%前後(1〜5%)であったため、
その2%前後以上のものを、強毒性、と呼ぶことになっているようだ。

また、病態生理学的には、
死亡率が上昇する理由として、諸説あり、

1.呼吸器感染だけでなく、全身感染する
2.上気道(咽頭など)だけでなく、下気道(肺)にも感染する
3.サイトカインストーム(免疫の過剰反応による増悪)が起きる

などが、いわれているが、
どうも、まだ、統一見解は、ないようだ。


ちなみに
サイトカインストームについては、
以前、ブログに書いた。


参考: サイトカインストーム
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65225876.html


・・・

で、
今回の豚由来の新型インフルエンザ(H1N1)は
感染力は強そう(または普通)だが、弱毒性だ、
というのが、今のところのWHO等の見解だ。

だから、日本に入ってきても
その被害は、
通常の、季節性インフルエンザと同じ、
感染者が1千万人ぐらいで、死亡者が数千人ですむのではないか、

考えられる。

(要するに、まだ、大騒ぎするほどではない、とも言える。)


・・・

しかし、
同時に、安心しては、いけない、という
コメントも、WHOは発表している。

理由は、
インフルエンザは、非常に変異をしやすいため、
今後、感染が各国で拡大していく中で
変異、を起こし、
強毒性に変わる可能性が示唆(しさ)されている。


具体的には、
最悪なケースを紹介しておくと

強毒性の中でも、最強の強毒株である、
鳥インフルエンザ(H5N1)が流行している地域に
今回の
豚由来の新型インフルエンザ(H1N1)が流行し、
かつ
その国の、ある人が、この二つに、同時感染した場合、
その人の中で、新型インフルエンザが、遺伝子の変異(遺伝子再集合)を起こし、
強毒性に変わる可能性があるのだ。


で、
現在、鳥インフルエンザが流行している地域は、以下である。

エジプト、ベトナム、インドネシア、中国、など


詳細は、WHOの、鳥インフルエンザ、タイムライン(時系列の発生記録)
http://www.who.int/csr/disease/avian_influenza/Timeline_09_03_23.pdf


つまり、
本当は、これら、鳥インフルエンザが流行っている国に
今回の、豚由来の新型インフルエンザが、入っていってしまうこと、
を防ぐことが、
現在の、最重要課題だ、ということである。


ところが、
なんと、エジプトは、途上国であり、
特に、保健(医療と公衆衛生)のレベルは、非常に低く、
鳥インフルエンザが、蔓延(まんえん)している状態だ。

蔓延している状態とは、
鳥インフルエンザに感染している鳥(養鶏など)が
ほとんど管理されておらず、
要するに、感染しても、処分(殺滅)されていない状態なのだ。

(普通、日本では、ある農場で、一羽でも鳥インフルエンザに感染したら、
 その農場の鶏などを、全部、処分することになっている。
 で、政府は、その被害額を、当然、保障する。

 が、エジプトでは、それがあまり行われていないので、
 鳥インフルエンザは、現在も、広がりつづけている。
 鳥は、大量に死に続けており、
 かつ、人の死亡例も多数出ている。)


要するに、現在、「エジプトが、一番まずい」のである。


鳥インフルエンザと、人インフルエンザは、
ともに
豚にも感染できる能力をもつため、

今回の豚由来の新型インフルエンザがエジプトに広がった場合、

エジプトの豚(または人)の中で
同時に感染したウィルスたちが、遺伝子変異を起こし、
強毒性の新型インフルエンザが発生するかもしれない。


・・・

過去の事例を振り返ってみると、
1918年のスペイン風邪でも、
1968年の香港風邪でも、

最初は、弱毒性で始まり、
広がっていく過程で、強毒性に変わっていったことが
史実として、確認されている。

具体的には、
(過去の事例では)
春ごろに感染が始まり、一度、夏に収束し、
秋ごろ、再度流行が始まって、
その頃に、強毒性を獲得し、
大量の人が、死亡している。


今回の、新型インフルエンザも
似たような経緯をとる、可能性がある。


・・・

まずいのは、
エジプト等で流行(はや)っている
鳥インフルエンザ(H5N1)は、
強毒性の中でも、桁(けた)はずれに強い毒性をもち、
死亡率60%以上(エジプトだけなら、80%以上)である。

もし、
今回の、豚由来の新型インフルエンザ(H1N1)が
この毒性を獲得した場合、
世界は、とんでもないことになる。


日本は、自分の国の空港で
水際対策などをやるよりも、
もっと
エジプトなどの、
鳥インフルエンザのコントロールがついていない
途上国での水際対策などを
支援するべきかもしれない。


そもそも、
エジプトでの
鳥インフルエンザが、なぜ、いまだに
コントロールできていないのか、
というと

エジプトでは、
政府が、「大きな養鶏場」で感染が発生し、
そこにいる鳥を全部殺した場合、
その保証金をだすのだが、

「小さい養鶏場」(家庭で数羽飼っている状態)などのときは、
感染して殺しても、保証金はださず、
ただ政府の官僚が、鳥を殺しまくって終わり、
という状況だった。

このため、
貧しい人は、大切な、持っている鳥を
全部、殺されてしまうことになる。

これは、貧しい人にとっては(生計をたてていく上で)致命的で、
より貧困になってしまう。

だから、
その感染を、「隠す」ようになってしまった。

この体質が国全土に広がってしまったため、
エジプトでは、
小さい養鶏場をもっている人では
いまだに、隠す、体質がしみついており、
このため、
感染しても、政府へ報告がいかず、
(よって、WHOにも報告はいかず)
まったくコントロールが、できない状況になっている。



・・・

と、思ったら、
昨日、ドイツで、
豚由来の新型インフルエンザ(H1N1)の感染が
人で確認された。

上述の(リンクを貼った)WHOの
鳥インフルエンザ(H5N1)タイムラインによると
ドイツでは、先月、鳥インフルエンザも発生している!


豚由来の新型インフルエンザと、鳥インフルエンザが
同時に存在する国が、少なくとも一つ、すでに生じてしまったことになる。

今後、この状況は、ますます悪化していくことだろう。