.
たまには、新聞記事の解説などをしよう。

・・・
・・・

5月21日、読売、朝日、毎日の朝刊
および厚生労働省のプレスリリースより。


東京都の洗足学園高校に通う、女子の高校生2名が
新型インフルエンザと確認された。

その2名の住所は、
東京都・八王子と、神奈川県・川崎市。

二人は、アメリカの模擬国連
(国連のマネをして学生がやるイベント)
に出席するため、アメリカに行っていた。

5月11日 アメリカに到着。

5月14日 模擬国連の開会式
      (おそらく、この日に感染した。)

5月16日 模擬国連二日目、閉会式
      (おそらく、この日からまわりに
       ウィルスの排出を開始している。)

5月18日、帰国するための飛行機の機内で発熱。

      乗っていた飛行機は、
      コンチネンタル航空(CO)09便。
      ニューヨーク発、成田着、のもの。

5月19日、午後1時55分に、成田空港に到着。

      空港の検疫を通過する際、
      サーモグラフィー(温度感知機)で
      発熱している二人が、発見された。

      しかし、
      簡易インフルエンザ検査では、「陰性」だった。

      (発症の初期には、
       簡易検査では陰性になることがある。
       精度(偽陰性)は、8割ぐらい。)

      (また、飛行機内で、二人の半径2m以内にいた
       人々は、感染した可能性がある。)

      ともかく、検査は陰性だったため、午後4時ごろ、
      二人はそれぞれ別方向のバスに乗り、帰宅。

      (このバスは、特定されている。)
      (しかし、この時、バスの同乗者に感染させた可能性がある。)
      (検疫官の指示で、マスクはつけていた、という。)

      八王子市の生徒は、その後、
      バスが到着した京王多摩センター駅から、
      京王相模原線とJR横浜線を使って、自宅へ移動した。

      川崎市の生徒は、その後、
      バスが到着した、たまプラーザ駅から、
      東急田園都市線とタクシーを使って、自宅へ移動した。


5月20日、2名とも、
      38度から40度の発熱。
      発熱相談センターに電話。
      それぞれの地元の指定医療機関を受信。

      同日、PCR(ウィルスの遺伝子)検査にて、
      新型インフルエンザA(H1N1)が、「陽性」。

・・・

今回のケースは、最初に関東にウィルスを持ち込んだ人が
特定できているので、
(もしも、関西でのアウトブレイク(大発生)がなかったならば)
厳重な疫学調査と、それによる封じ込め対策を行うことが
できた可能性がある。

(一般の社会に広がる前に、完全に止められる可能性がある。)

しかし、
実際は関西で既に267人以上の人が感染を確認されており、
(よって感染している人は、1000人をはるかに越えていると推計され)
関東にも、すでに大量のウィルスが流れてきていると考えられるので、

上記の
洗足学園の2名の女子高生に対する疫学的な調査や封じ込めをしても
ほとんど意味はない、と考えられる。

(ちなみに、関西方面のアウトブレイクから、
 関東へのウィルスへの流入は、水面下で、
 最速で、5月14日ごろから、
 最も遅くても、5月22日(つまり明日)ごろから、
 始まっている、もしくは、始まると考えられる。)

http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65251881.html

・・・

余談だが、
「洗足学園中学高等学校」で、全校生徒などに対し、
私は過去に三回、講演を行っており、

「プロとして国際協力を行う、国際協力師、という職業があります。
 その職業に就くためには、これこれこういうことを学生時代にやっておくように。
 そして、世界に目を向けよう!」

などと話していた。


2005年6月16日
2006年06月08日
2008年10月02日


もし、今回の生徒が、私の言ったことに影響を受けて
アメリカの模擬国連に参加したのであるならば、
彼女らが感染したのは、私のせい、という可能性もあるので、
「すみませんでした・・」、という感じである。



洗足学園の前田隆芳(まえだたかよし)校長先生の弁は、以下だった。

「(高校時代に、海外での「模擬国連」に)
 参加させることで得られる経験は
 なにものにも代えがたいと考えた。
 (ので、参加させた。)

 しかし、引く勇気も必要だったかもしれない。」



参考:
洗足学園・中学高等学校
http://www.senzoku-gakuen.ed.jp/



・・・

さらに余談だが、

「模擬国連」のほうも、
私は以前、東京の早稲田大学で開かれたものを見学した。

模擬国連とは、
それぞれの学生(おもに大学生)が、各国の代表のつもりとなり、
その国の立場から、発言を行い、
その結果、最後に多数決などで、決をとる、
というものである。

(自分の普段の意見とは関係なく、)
その国の代表になったつもりで、
その国の「国益のため」に、発言をしなければならない、
ところが面白い。

すべて英語で行い、
議事進行の仕方も、ほとんど全て
実際の国連と同じである。

皆さんも、一度は、
近隣の大学で行われているものを
見学されるといいのではないか。

(今回の、インフルエンザ騒動が、おさまってからにしてね。)


模擬国連委員会
http://jmun.org/

早稲田大学・模擬国連 Model United Nations Waseda Branch
http://tokyo.cool.ne.jp/munwaseda/


・・・
・・・

で、一応、まだ関東では関西のように
「蔓延」はしていないことになっているので

東京都などは、積極的な疫学調査を行い、
接触者の特定と体調の確認などを行う。

接触者は、高危険群と、低危険群にわけられる。

今回のケースの場合、

高危険接触者とは、
1.面と向って、2m以内で、会話をした人。
2.家族
3.飛行機内で2m以内に、長時間座っていた人。
4.感染の可能性を知らず接していた医療従事者。
5.タクシーの運転手。
など。

低危険接触者とは、
1.電車に短時間、いっしょに乗り合わせた人。
2.バスに短時間、いっしょに乗り合わせた人。
など。


・・・
・・・

一方、
関西のほうの、患者群に対する症状の分析が
行われている。

神戸市保健所等が
神戸で発生した43人の患者への聞き取り調査によると、

患者の
90%に高熱(38度以上の発熱)があり、

60〜80%に、倦怠感(けんたいかん)、熱感、咳、のどの痛み、

50%に、鼻水(鼻汁)、鼻づまり、頭痛、

10%程度に、嘔吐、下痢、

7%に、結膜炎

があった、と言う。


が、
これを、うのみにしては、ならない。

38度未満の発熱(微熱)が出た人は、
「自分は、ただの風邪だろう」
と思って、医者にいっていない可能性があり、
そうした人は、
当然、検査もされないので、見つかっていない、というだけ。


あと
アメリカでの症例では、
30%程度に、
嘔吐や下痢などの消化器症状があったのだが、
(上記の報告を参考にする限り)日本では、少ない。

これは、人種差による症状の違いの可能性と、
日本にくる過程で、
(今回の新型インフルエンザが変異しやすい場合)
既に、少し、変異した可能性もある。


・・・

死亡率については、
日本では、まだ報告がないが、
今後、患者が1000人以上でてくれば、
当然、死亡例も出てくると考えられる。

理由は、

まず、5月20日の時点で、

世界全体の新型インフルエンザA型(H1N1)の確認例と死亡数は、
10,243症例で、80人死亡。(死亡率は約0.8%)

メキシコ(途上国・新興国)では、
3,648症例で、72人死亡。(死亡率は約2.0%)

アメリカ(先進国)では、
5,469症例で、6人死亡。(死亡率は約0.1%)

である。

仮に、
日本は先進国なので、被害は、アメリカに近いだろうと考えた場合、
死亡率は、0.1%だが、
この数字でも、
1000人感染すれば、1人が死亡する、ということになる。

ちなみに、
毎年、日本で冬に流行る(はやる)季節性インフルエンザの死亡率が
0.1%弱、なので、
今回の新型インフルエンザは、(今のところ)それと同等の死亡率
(または、それよりちょっと高い程度)
ということになる。


なお、
メキシコの死亡率が、異様に高かった理由は、
メキシコには、
新型インフルエンザの確定診断ができる施設も
(そもそも、検査キットも)
ほとんどなく、このため、
検査ができないから、確認できない、という状態が
つい最近まで続いていたため。

最近、メキシコで行われた疫学的推計調査で、
メキシコでの感染謝すは、
約2万人であった、と試算された。

(この論文は、後日また紹介するつもり。)

これが本当であれば、
メキシコでの死亡率は、0.36%まで下がり、
その医療事情を考えると
ある程度、妥当な数字、といえるかもしれない。


・・・

ただ、皆さんに忘れて欲しくないことが、
一つある。

毎年流行する季節性インフルエンザの死亡率は
0.1%弱だが、

毎年、1千万人の人が感染するため、
「数千人から1万人の人が、死亡」している。

つまり、
なにを言いたいか、というと
死亡率が、低くても
多数の人が感染してしまえば、
数千人以上の人が、死んでしまうのである!


で、
新型インフルエンザは、
季節性インフルエンザと違い、
ワクチンもなく、
過去に似たようなウィルスに
感染した人が、ほとんどいないため、

通常の、季節性インフルエンザよりも
感染する人の数が、多い可能性が高い。

具体的には、日本国内で、

最低で、1000万人。
最大で、6000万人超、

という数字になる。
(これは、日本政府の試算である。)


仮に、悪いほうの、6000万人が罹患した場合、
「0.1%の死亡率でも、6万人が死亡」する、ことになる。


また、
アメリカの死亡率に、日本も近いであろう、
と判断してよいかどうかは、
まだわからない。

統計学的には、
少なくとも、症例数が、2000、を超えないと
正確な推計は難しいといわれている。

(日本は、現在まだ、確定症例は、200〜300人。)

(また、感染してから、平均で、6〜7日めぐらいに
 死亡例がでるので、
 アウトブレイクの初期は、
 死亡率が低く概算されてしまうことが多い。)



よって、
もしも、今回の日本での新型インフルエンザの殺傷力が、

世界全体の死亡率である、0.8%、のほうに近かった場合、

国内での死亡者数は、そうとう増えることになる・・。



その中に、
あなたや、あなたの家族や友人が、含まれないことを祈る。