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予想が、的中してしまった。(汗)


私は、5月2日のブログで、
感染拡大のシミュレーションの論文を紹介した。
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65251881.html

次いで、5月19日のブログで、
関西の神戸高校を中心とした国内での新型インフルエンザ発生を分析し、
5月22日頃からの関東への波及を推定した。
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65259476.html

さらに、5月21日のブログにて、
遅くとも明日(5月22日)には、関西から関東にウィルスが拡散する、
と書いた。
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65260312.html


そうしたら、今日、
次のニュースが入ってきてしまった。


・・・

5月22日、
埼玉県は、埼玉県鷲宮町に住む29歳の男性が
新型インフルエンザに感染していることを
本日未明、確認した。

男性は、5月17日から19日まで、
大阪・京都方面へ旅行しており、
20日に発熱。21日に発熱外来を受診した。

この男性に、海外渡航歴はない。

・・・

以上より、
関西方面で蔓延してしまった新型インフルエンザウィルスが、
ついに関東にも入ってきたことが、
ようやく確認された、と言っていいかと思う。

もちろん、この見つかった患者だけが
関東でウィルスを持っているわけではなく、
すで、関東でも多数の人が感染しており、
その一部が、初めて発見された、とみるのが妥当。


・・・

こうした、
新型インフルエンザに関する情報を、
インターネットを通して皆さんに提供する場合、
注意していることがある。

それは、
「不安を煽り(あおり)すぎてもいけない」
かといって、
「災厄の可能性について、触れないわけにもいかない」

という
二つの板挟みの中で、
バランスをとった情報を提供することだ。
(当たり前、だけど)


しかしながら、自分を客観的にみた場合、
私は医師であり、国際協力にかかわるものなので、
発言をする時に、
やや、「危険性を、煽る側」に、
ちょっとだけ、わざと偏る(かたよる)ようにしている。

その理由は、
現在、WHOが、新型インフルエンザの警戒度を
最高の「フェイズ6」にしようとしているだが、

(医学的には、もう、とっくにフェイズ6なのだが)
(しかしこれをすると人や物の移動が制限されるのだが)

欧米や日本などの経済界が、
GNPを始めとする経済への悪影響が大きくなりすぎるとして
(WHOに釘を刺し)
警戒度を上げさせない状況があるからだ。

よって、私のことを
客観的に、社会の一つの要素、として考えてみると、
わざと、危険性を、やや煽る発言をした方が、
「社会全体の、様々な人の意見の総和」
を考えた場合、
全体としてはバランスが良くなるだろう、
と、考えるからだ。


・・・

しかし、その
「ちょっと危険性をあおるほうに偏った私の予想」
(と、自分で思っていたこと)
が、的中してしまった。

つまり、
新型インフルエンザの感染力(などの社会への影響)は、
医者の私が、(普通に)考えるよりも、もっと強い可能性がある、
ということになる。

・・・

通常の季節性インフルエンザは、

感染力が、       1.3人
死亡率が、       0.1%弱

日本の国内感染者数が、 毎年、1000万人
日本の死亡者数が、毎年、数千人〜1万人

感染力とは、ある患者が、ウィルスを持っている場合、
その人が、完治するまでに、
他の人、何人にウィルスを感染させてしまうか、
という人数である。

つまり、
通常の、季節性インフルエンザの場合、
一人の患者は治るまでに、平均で、1.3人に感染させるのだ。

(感染させるのは、発症する前々日から、発症して七日目ごろまで)



・・・

今回の新型インフルエンザA(H1N1、豚由来)は、
これまでの症例の解析によると、

感染力は、2.0〜5.0人
死亡率が、0.1〜2.0%(しかし、今後変異する可能性あり)

としている。

参考:
The Signature Features of Influenza Pandemics
Dr. Miller(NIH), et al
New England Journal of Medecine, May 7, 2009

(注: 論文が掲載されたのは、アメリカで最も権威ある医学雑誌)


・・・

つまり、今回の新型インフルエンザは、
通常の、季節性インフルエンザの、数倍、感染力が強い
可能性があり、このため、
通常の、季節性インフルエンザのつもりで予想していると
もっと被害(感染)が拡大する可能性がある、
ということになる。

なお、一方で、
政府が作っていた、もともとの、新型インフルエンザ対策は、
鳥インフルエンザ(H5N1、強毒性で死亡率が60%)を
想定していたものだったので、
死亡率、という観点でみれば、
それは、予想よりもはるかに低い、と言ってよい。

しかし、感染者が大幅に増えれば、
死亡率が、0.1%と低くても、多数の死者がでる。

具体的には、
1千万人を超す感染者がでれば、
1万人以上の人が、死亡する。


・・・

日本で、どのくらいの感染者がでるかは、
まだ、わからない。

しかし、
社会不安を、煽りすぎる気は、ないので、
以下、客観的に、様々なこれまでの事象と発言を、列記しておく。


・・・

政府が、だいぶ前に試算した予想では、
(これは、鳥インフルエンザが入ってきた場合だが)
日本国内で、最大で2500万人が感染する、としていた。


で、現在、
日本国内で感染を確認したケースは、約300人。


東北大学の押谷仁(おしたにひとし)教授
(大学院医学系研究科・微生物学分野)は、
5月20日の講演で、以下のように言っていた。

「現在、すでに確認されている例の、
 少なくとも10倍の人が感染していると考えられる。

 これからの数週間から一か月程度で、
 日本国内で、数十万人が感染するのではないか。」

http://web.bureau.tohoku.ac.jp/100aniv/campaign/smnr6/ositani3.html


・・・

一方、今回の発端(ほったん)となったメキシコは、
昨日(5月21日)
「新型インフルエンザの制圧宣言」を発表した。

(もう、流行は終わった、と言ったのだ。)
(それが、本当かどうかは、ともかくとして。)

これまでの感染者数は、
確認されたものが、4008人、死亡数が、78人、
(死亡率、約2%)だったと発表した。

しかし、これには、異論が多く、
メキシコは、感染疑い例に対し、ほとんど確認検査を
行っていなかった。

よって、WHOなどが、実際に感染していた人の数を推計し、
その結果では、2万3千人(6千〜3万2千人)
が感染していたのではないか、という論文がある。

参考:
Pandemic Potential of a Strain of Influenza A (H1N1)
Fraser C. et al.
Science. 2009 May 14

(注; サイエンスは、世界で最も権威ある科学雑誌)


日本の人口は、メキシコとほぼ同じなので、
この数字(つまり、約2万人)ぐらいの感染者になる可能性もあると思う。


・・・

同じ先進国である、アメリカはどうかというと、
現在、
感染の確認数が、5710人。死亡者数は、8人。

アメリカ疾病管理予防センター(CDC)の
ベッサー所長代行によると、

「アメリカにおける新型インフルエンザの
 流行曲線( epidemic curve )は、
 上昇中であり、また、
 地域(州)ごとに異なる動きをみせており、
 事態が鎮静化した、というには、ほど遠い状況だ」

と言っている。

http://www.cdc.gov/h1n1flu/pubs/

・・・

ここにおいて、
我が国、日本の状況にもどってみると、

関西などの蔓延している地域では
(指定病院で、全例への遺伝子検査をすることをやめて)
一般の病院で、医師が必要だと判断した場合のみ
遺伝子検査で「確認」するようになる方向となった。

これは、
関西などの蔓延地域では
検査を必要とする症例の数が多すぎて、
物理的に検査をすることが、
もはやできない、という状況がある。

(要するに、パンクしてしまった。)

つまり、
日本は、「確認」するのを
(ある意味で)
諦めた、のだ。


注:
日本でこれなのだから、
医療体制の整っていない海外では
もっといい加減に「確認」が行われている、
と考えたほうが良い。


・・・

よって、今後、新聞やテレビで
国内の感染確認者数は、何人、とか言っていても、
疑われた症例の全例を検査しているわけではないので、
実際は、確認例よりも、ずっと多い可能性が高い。

もちろん、それ以外にも
症状が軽くて、風邪だとおもって病院にいかない人や、
全く症状がでない「不顕性感染」のケース
(でも、ウィルスは排出している症例)
などがあるため、

ともかく確認例よりも、実際の感染者数は
もっとずっと多い、ということ。


・・・

で、もどって、このような状況の中で
皆さんにできることは何か、というと、


自分が感染したくない場合には、
人混み(特に満員電車)を避けること、と
手洗い。

社会に広がらないようにするためには、
マスクをすることと、咳エチケット。
(咳をする時はティッシュでおさえ、
 かつ、他人から1m以上離れる。)

もし自分が感染したと思ったら、
地方自治体の保健所等にある
発熱相談センターに電話をし、
指定病院にいくのか、
一般の病院にいっていいのか、
指示を受ける。


これ以上のことを知りたい人は、
以前にさんざん書いた、予防方法を
読んで下さい。


短いほうがいいひとは、下記へ。

http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65259476.html

長くてもいいから、本当のことが知りたい人は、下記二つへ。

http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65232371.html

http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65232637.html


・・・


一応の結論としては、
今回の、日本国内での新型インフルエンザの流行は、

仮に、感染が「確認」されたケースが
数百人で終わったとしても、
(そう報道されたとしても)

実際には、
少なくとも(最低で)2万人以上の人が感染することになる、
ということである。