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このブログは、続きものですので、
まずは以下をお読み下さい。

朝鮮半島の核問題1.日本側の視点 9963字
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65275270.html

朝鮮半島の核問題2.朝鮮側の視点A、強制連行 6349字
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65277261.html

朝鮮半島の核問題2.朝鮮側の視点B、核拡散防止条約 7713字
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65277651.html

朝鮮半島の核問題2.朝鮮側の視点c、核持ち込み 8256字
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65277989.html


さて今回は、レアメタルの話である。


・・・
・・・

レアメタルとは何かというと
鉄などと異なり、資源の量が少ない、
「希少な金属」のことである。

対義語になるのが、
ベースメタル、という言葉になり、
これにあたる金属が、
鉄、銅、鉛、錫(スズ)、亜鉛、
アルミニウム(ボーキサイト)など
多数ある。

で、
レアメタルにあたる金属は、
31種類と数えられており、

ニッケル、クロム、コバルト、チタン、
タングステン、などがある。

(それぞれ、携帯電話やパソコンのような
 IT機器の部品として、必須の金属である。)

その中でも今回は、
タングステンの話をしようと思う。


さて、この
タングステン ( Tungsten ) だが、
元素記号は、「W」と書く。

なんでかというと、
ドイツ語では、タングステンのことを
Wolfram 
(狼のようにむさぼり喰いつくすもの)
と表記するからだ。


なぜ、このタングステンが、
「狼」なのか?


・・・

タングステンは、最も融点が高い金属のため、
一般家庭では、電球のフィラメントとして
使われる。
電気によって発熱し、発光する部分だ。


次に有名なのが、
非常に硬度が高いため、
金属製品の切削機械に使用されている。

具体的には、ドリルなどの先端に用いられ、
車などの鉄鋼製品を製造するために
必須となっている。


3番目に登場するのが、
軍事目的での使用である。

非常に重く、硬い金属であるため、
対戦車・対戦艦用の弾丸である、
徹甲弾に用いられている。

戦車の分厚い(ぶあつい)装甲でも
このタングステン製の弾丸を使えば、
貫通できる、とされている。


戦車の装甲を、
「むさぼり喰いやぶる」
狼の性質が、ここにある。


・・・

このタングステンの世界分布には
ムラがあり、なんとその埋蔵量の
8割前後が、中国周辺にあると言われている。

このため、アメリカも日本も
この中国からタングステンを輸入していた。

その中国周辺にある国の一つが、
朝鮮である。


実は、朝鮮は、
「世界の鉱物標本室」
と言われるほど、様々な鉱物資源に恵まれており、
有用な鉱物だけで200種以上あると
言われている。

(大陸プレートと、海洋プレートの移動による
 地殻変動の影響で、
 様々な鉱物が生成しやすいらしい。)

タングステンだけでなく、
ウラン、コバルト、マンガン、ニッケル、チタン
など、豊富な資源が確認されている。

例えば、朝鮮のウランの埋蔵量は2600万トン
だそうだ。

参考:
日本原子力産業会議
http://www.jaif.or.jp/

・・・

さて、話を中国にいったん戻す。

中国は、このように、もともとは、
タングステンを始めとするレアメタルの
最大の輸出国の一つであった。

ところが、
最近中国は、経済的な急成長をしたため、
自国内でそのほとんどを消費してしまうように
なった。

このため、
2005年、タングステンは価格が高騰し、
最近では、
(中国からの)輸出が制限されるようになった。

それどころが、
中国はそれでも資源が足りなくなり、
ついに、
レアメタルの輸入を始めるようになったのだ。

逆にいえば、今後、
タングステンを始めとするレアメタルを
国外に出してくれなくなってしまう
可能性が高い。

このため、
レアメタルの欲しい日本もアメリカも
困ってしまった。

レアメタルは、
パソコンを始めとする電子機器の中核部分や
車など鉄鋼製品の切削などに
必要不可欠な資源であるからだ。


・・・

ここから、ちょっと昔の話に入る。


1940年ごろ、朝鮮に
小林鉱山という株式会社があった。

(まだ、朝鮮半島に、
 日本が、朝鮮総督府をおき、
 支配していた頃の話である。)

この会社は、
朝鮮半島のタングステン生産量の7割をしめ、
採掘から精製までを一手に引き受けていたため、
「小林百年鉱山」
と呼ばれ、名声(?)を得ていた。

この1940年代ごろから
タングステンは、
その重く、硬い性質から、
対戦車、対戦艦の弾として
その装甲を貫通して破壊する
「徹甲弾」の原料として使われるようになった。

この頃、すなわち戦前に行われた調査では
朝鮮のタングステンの埋蔵量は、
世界最大であった、という。

よって日本は、その鉱山開発を進めていたのだ。


・・・

1945年、日本は敗戦し、
(その支配が失われたことで)
混乱する朝鮮半島において、二つの国が誕生する。
朝鮮と、韓国である。

また、
1949年、中国において政変があり、
国民党が追い出されて(台湾へいき)、
中国共産党が政権をとった。

このため、
中国からのタングステンの輸出先は、
アメリカからソ連に変わった。

(アメリカには、タングステンが来なくなった。)

で、
(このタイミングで)
1950年、朝鮮戦争が勃発する。

最初、(北)朝鮮側が圧倒的に優勢だったため、
朝鮮半島にあった全てのタングステン鉱山は、
朝鮮の手におちてしまった。

(それまでは、韓国側にあった鉱山から
 アメリカはタングステンの供給を
 受けていた。)

アメリカは、困った。

資本主義勢力である
韓国を応援しなければならないのに、
「弾(たま)」を作れないのである。

(これを一回目の「タングステン危機」という。)

困ったあげく、
タングステンをなんとしても入手するための計画、
通称「W計画」をアメリカは発動する。

(Wは、タングステンの元素記号である。)


・・・

話がちょっと前後するが、
1945年の終戦時、
いわゆる「A級戦犯」の容疑として、
巣鴨プリズンに投獄された人々の中に、
笹川良一、岸信介、児玉誉士夫(こだまよしお)
などがいた。

児玉は、戦時中に、
中国や朝鮮でタングステンなどを大量に入手し、
それを売りさばいて巨万の富を得る、という
活動をしていた。

戦犯の疑い、であったため、その調書から、
このことを知った米軍は、
W計画にこれを利用できないか、と考えた。

児玉は、中国や朝鮮に、
総計で、500トン以上のタングステンを
隠しもっていることがわかり、
ここでアメリカは、児玉と取引をした。

この詳細は、闇の中に葬(ほうむ)られているが、
ともかく児玉は釈放され、その代りに
大量のタングステンをアメリカに売った。

売ったお金は、当時の
(資本主義の考え方をしている)自由党の
創設資金の一部になった。


余談だが、
当時、ソ連は、各国に共産主義勢力を増やすため、
いろいろな国の共産党や社会党に、
政治資金をばらまいていた。
(日本でも、行われた。)

これに対抗するため、
アメリカは、日本の自由党に
政治資金を提供するという
(W計画とあわせて)一石二鳥の
戦略をとったことになる。

(ちなみに、この経緯などもあり、
 児玉は、日本の政財界の黒幕となり、
 右翼の大物、となっていった。)


こうして、
アメリカは、一回目のタングステン危機を
乗り切ったのである。


・・・

1950年代に入ると、
アメリカは、入手の難しいタングステンに代えて、
同程度の強度を有する「劣化ウラン」を使用した
「徹甲弾」を開発してゆく。

もともとは、戦車を主力としていた(北)朝鮮に
対抗するために作りだされたものだった。

しかし、
劣化ウラン弾が、実際に実戦投入されたのは
だいぶ後のことになる。

1991年、湾岸戦争、
1995年、ボスニア紛争、
1996年、コソボ紛争、
2001年、アフガニスタン空爆、
2003年、イラク戦争、
において、
劣化ウラン弾が、使用された。

その威力は絶大で、
戦車の装甲を貫通した弾は、
戦車の内部で爆発し、内部を焼きつくし、
ついでに
周囲に、放射能を撒き散らした。

知らない人もいるかと思うので解説すると、
劣化ウランは、「核のゴミ」と言われており、
核兵器などを作るための「濃縮ウラン」
を作る際にできた、ゴミである。

(ゴミなので、ほぼ無料で入手できるのが、
 タングステンとの違いだ。)

劣化ウランの放射能は、濃縮ウランよりは低いが、
それでも放射能をまとっており、
実戦で使われると、その周囲が放射能で汚染される。

具体的には、劣化ウラン弾は、
「湾岸戦争症候群」
という病気を起こした。

上述の戦争に参加した兵士や戦争被害者において、
記憶障害・関節などの疼痛・脱毛などの症状があいついで生じた。
子どもに先天異常が起こったとする報告もある。

ともかく、
この「湾岸戦争症候群」がマスコミの注目をあつめ
世界的な批判を受けるようになったため、
再び、アメリカ軍は、
(劣化ウランをやめて)
なんとかタングステンを入手しよう、
という動きになりつつある。


・・・

ここにおいて、アメリカは、資源探査衛星において
世界中のタングステンの埋蔵量を探った結果、
なんと潜在的には、
(北)朝鮮にその半分が眠っているという
報告がきた。

タングステンだけでなく、
マグネサイト、モリブデンなども
大量にあるという。

このことは、アメリカの経済界にも報告がいき、
以後、
朝鮮がタングステンなどのレアメタル等の
資源大国であることは、
ウォールストリート(アメリカ経済界)の
常識となっていった。

そしてそれは、世界中に広がっていく。
もちろん、ヨーロッパにも。


・・・

2000年ごろから、
イギリスの投資会社が
朝鮮の(レアメタルを始めとする)鉱物資源の開発に対し、
積極的な投資をしようとした。

この投資会社たちからの意向にイギリス政府が応じ、
2001年、
イギリスは朝鮮と国交を回復し、
平壌(ぴょんやん)に大使館を建設した。

同年から、イギリスの投資会社が、
朝鮮への投資を検討する。
石油大手の、BP社や、シェル社、
その他、投資のコンサルタント会社などが
調査チームを作り、朝鮮を訪れている。

2005年からは
中国を介して、
イギリスの投資会社(アングローシノ・キャピタル)は
朝鮮の鉱山を買い占める手続きをした。

このためのファンドを
「朝鮮開発投資ファンド」という。
5000万ドル規模とのこと。
http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/~shanghai/newsletter.html/081020news236.html


この、イギリス系のファンドだけでなく、
その他、世界各国のファンドが、
この朝鮮の資源を狙った動き、をみせている。

「リスクは高いが、儲けも大きいはずだ」
すなわち、
ハイ・リスク、ハイ・リターン
を狙う場合、ここも投資の対象になるのだという。

・・・

もう一つの側面は、
アメリカの(軍事的な)仮想敵国は
現在、ロシア(旧ソ連)ではなく、
中国にかわっている。

ところが、
軍需産業に必要なレアメタルのほとんどを
アメリカは、中国から輸入している。

よって、
アメリカは、露骨に中国と敵対できない。

もしも、
将来的に中国と軍事衝突をする可能性が
本当にあるのならば、
その時までにアメリカは、
中国に代わる、レアメタルの資源国を
「確保」する必要がある。

で、
その候補となるのが、
朝鮮という国、というわけだ。


(北)朝鮮という国の軍事的脅威は、
中国のそれと比べた場合、
微々たるものである。

軍事費をとっても、
核兵器のもっている数をとっても、
兵隊の数をとっても、
比較にならない。

よって、もし、
対中国に照準を合わせるならば、
朝鮮を懐柔し、
(仮に、核開発にめをつぶってでも)
外交関係を樹立し、
レアメタルの確保に動いたほうが、
「アメリカの世界戦略」
としては正しい、と言える可能性がある。


・・・

で、
実際、それは、行われたようなのである。

アメリカの前ブッシュ政権において、
最初ブッシュは、
朝鮮に対し強行姿勢をとっていたにも関わらず、

その政権の後半において、朝鮮に対し、
1.「テロ指定国家」を解除し、
2.「金融制裁」を解除する、
など、朝鮮を懐柔しようとする動きをみせていた。

以前の方針とは、逆の動きであったため、
やや理解に苦しむ政策だったのだが、
どうも、
アメリカ経済界からの、
なんらかの進言があったのではないか、
と言われている。

「朝鮮の資源が、なんとしても欲しい」
と。


・・・

背景としては、
朝鮮が、あまりにも(国際社会から)孤立し、
また経済的にボロボロになっていくのを見ていた中国は、

このままでは朝鮮の(共産主義)政権が倒れ、
中国にも
(共産主義体制が崩壊するかもしれないという)
悪影響が及ぶのを恐れて、
なんとか、その体制を維持させようとした。

で、
中国は、近年、
政治は、共産主義のままでありながら、
経済は、市場経済を導入し、
経済的には発展してゆく、という政策をとった。
で、一応、
上海などの例をみる限り、それは成功している。

中国は、同様の製作を朝鮮にもとらせようとし、
金正日(キムジョンイル)に話をした。

当初、
金正日はそれ(資本主義的政策の取り入れ)を嫌ったが、
いろいろ考えた末、
基本的に、その意見をいれ、
朝鮮の中に、「経済特区」を作った。
これが、1991年のことである。

ところが、その後、
1997年に、「アジア通貨危機」というのが起こり、
朝鮮の「経済特区」たちも、被害を受ける。
これで、金正日は、またまた市場経済に
懐疑的になり、
翌年、「経済特区」をいったん、止める。

しかし、韓国との「経済格差の広がり」が頭痛の種である
金正日は、
2000年、再び中国やロシアと相談し、
結局、また「経済特区」を始めた。

で、
このタイミングで、
上述のように、イギリスが入ってきたのである。

・・・

「資源ナショナリズム」についても
簡単に触れておく。

1962年、国連において、
「天然資源に対する恒久主権の権利」
が宣言された。

要するに、資源は、その国のためのものだ、
ということが確認された。

1973年の「オイル・ショック」で
アラブ諸国が石油の価格を吊り上げたのは有名。

2000年、ロシア大統領となったプーチンは、
自国内にある石油や天然ガスなどの資源を
徹底的に国営化し、外国の民間企業を追いだす
などして、いわゆる「ロシア流」の
「資源ナショナリズム」を実践する。
で、
これが成功し、ソ連崩壊後、
弱体化していたロシアを、
資源大国として復興させた。
この
プーチンの戦略は、あまりに見事だったので
後日、詳細に紹介する。

で、
この「ロシアの成功」に触発されたか、
中国でも、自国内に大量にあり、
また、今のところ、(世界で)独占状態にある
レアメタルをもちいて、ロシア流の
「資源ナショナリズム」の考え方を導入し、
自国の経済を発展させ、かつ、
世界における発言権を拡張し、
外交的に有利に立ちまわろうと思うようになった
のではないか、と思う。


・・・

で、ようやく、最初の段落に戻ったわけだ。

中国が、レアメタルの価格を吊り上げたり、
あるいは、もう海外に出さない、などと
言いだした場合、最も困るのは、
軍事大国である、アメリカである。

中国は、
2005年にタングステン価格を
高騰させただけでなく、
2006年、2007年には、
タングステンを含むレアメタの
輸出税を導入したり、それを増額したりしている。

そしたら最近は、ついに、
もう、外国に出さない、とまで言っていた。


そこで、ついにアメリカは、
2009年6月、
中国がレアメタルを含むいろいろな鉱物を
不当に輸出制限しているとして
世界貿易機関(WTO)に提訴した。


・・・

そんな中で開催されたのが、
今月(2009年7月)下旬に開催された
アメリカと中国との二国間協議
「米中戦略・経済対話(SED)」
であった。

上述してきたような理由で、
当面、アメリカは、中国に敵対できない。
なんとか仲良くして、
レアメタルを恵んでもらわないといけない。

(余談だが、アメリカの国債の保有高で、
 世界最大なのは、現在、中国である。
 昔は、日本だったのだが、昨秋、追い越された。)


このため、アメリカのオバマ大統領は、
今回の会議において、
「米中の2国間関係が21世紀を形作る。」とし、
「世界で最も重要な二国間関係である。」と明言し、
さらに、
(中国の古代の思想家である)
孟子の言葉を引用するなどして、中国のご機嫌をとった。


一方で、そうは言っても、
中国からのレアメタル供給がうまくいく保障もないので、
(中国が順調に経済発展すると、
 本当に自国で全部消費するようになってしまう可能性もあるので)
朝鮮とも、微妙な関係を続けないといけないわけで、
それにも配慮しないといけない。

アメリカとしては、頭が痛い問題のはずだ。


・・・

最後になるが、
環境問題の側面も影響している。

地球温暖化がブーム(?)になって依頼、
各国の政府も一般の民衆も
「環境問題」に敏感になっている。

昔、銃弾といえば、鉛(なまり)で作っていた。
ところが鉛は、
かなりはっきりと、
人体に害があることがわかっている。

人体だけではなく、
自然界においても、いろいろな生物に
様々な毒性を発揮する。

タングステンも重金属だが、
その毒性は、鉛ほどではない。

このこともあって、
銃弾だけではなく、
例えば、釣りに使う「おもり」(シンカー)
なども、鉛からタングステンに変更する
企業が増えてきた。

こうした世界的な流れの中で、
タングステンは、ますますその需要をまし、
不足していくこととなった。


・・・

「W計画」第二弾は、
すでにアメリカで発動しており、
(タングステン等の取得のために)
軍産複合体がいろいろな手をうっているが、
どうも芳しい(かんばしい)成果は
あがっていないようだ。


どうやら、タングステンという名の
「狼」が噛みついたのは、
アメリカという超大国の
喉元(のどもと)なのかもしれない。