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アメリカの医療制度が、「崩壊」していることは
非常に有名である。

それを批判する有名なキャッチコピーは、
「金がないやつは、死ね!、という医療制度」
であるとのこと。

で、
日本では、ほとんどヒットしなかったが、
最近、日本の医療制度改革も話題になっていることもあり、
参考になるかと思って、この映画を見ることにした。

この映画、とは、
社会派ドキュメンタリー映画を作ることで有名な
アメリカ人の、マイケル・ムーアが、
自国の医療制度の問題を、厳しく(かつ、コメディータッチで)
紹介したものだ。

題名は、「シッコ」
英語の題名は、"SiCKO" (狂人の意。ここでは sick のもじり、か?)

映画は、アメリカ人が、(医療制度的に)悲惨な状態で生活してる
実例を、次々と紹介してゆくことで構成される。

以下、それらを列挙。


(内容は、予想をはるかに超える、すさまじいものだった。)

(ただし、この映画は、マイケル・ムーアの
 独断と偏見が入っている可能性があることを
 最初に明記しておく。)


・・・・・・・・・
・・・・・・・・・

1.
アメリカ合衆国は、先進国の中で唯一、
国民健康保険制度がない国である。

このため、
全人口3億人のうち、
まったく健康保健を持たない人が、5000万人。

・・・

2.
この、健康保険を持たない人は、
病気や怪我をした場合、法外な料金を請求される。

(アメリカの医療費は、ものすごく高い。)

どのくらいかというと、以下。


リックという名前の男性は、
仕事中、左手の指二本を切断した。
中指と薬指だった。

病院は、それを元通り、くっつけて欲しければ、
中指には、6万ドル(600万円)、
薬指には、1万2千ドル(120万円)、
払え、と言った。

"ロマンティックな"リックは、
(左手の)薬指をくっつけてもらったが、
中指は、あきらめて、ゴミ捨て場に捨てた。

(アメリカの病院は、金のないやつの治療はしない。)

・・・

3.
この「保険を持っていなかったため」に
(つまり、治療費が払えないので、
 病院で治療してもらえなかったために)
死亡した人間の数は、毎年、1万8千人前後。

繰り返すが、これは「先進国」である、アメリカ国内の話である。

・・・

4.
健康保険を取得しようとしても、
民間の保険会社には、厳しい「入会」の基準があり、
なかなか入れない。

例えば、体重と身長を比べて、
(BMI: body mass index を計算し)
太りすぎか、やせすぎかが判断され、
どちらかにひっかかれば、入会できない。
つまり、健康保険を取得できない。

アメリカ人は、
肥満が多い。
それも、かなりの肥満が多い。
(いわゆる、ちょーデブ、である。)

肥満の人は、糖尿病や心筋梗塞になる
確率が高い。
保険会社は、当然それをいやがる。

よって、保健に入れない人は多い。

・・・

4.
それ以外に、
過去になんらかの
「将来、リスクになる病気」をしたことがある人、
いわゆる「既往歴(きおうれき)」がある人は、
保険を取得できない。

気になる病気とは、
コレステロールが高い(高コレステロール血症、高脂血症)、
アレルギー性疾患(気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症等)、
喫煙をする人、
など、
将来、心筋梗塞や、呼吸不全、癌(がん)になるリスクが高く、
したがって、
高額の医療費がかかる可能性の高い人
(保険会社が高額の支払をしなければならない可能性が高くなる人)
は、
保険に入れないようになっているのである。

(そうした、既往歴のある人や、肥満のある人が、
 無理やり、保健に入ろうとすると、
 保険料金が、10倍、下手すると100倍以上に
 値上がりする。よって、事実上、入れない。)

また、
上記の、「将来、リスクになるかもしれない病気」
と保険会社が考えられる病気のリストは、
なんと!、
A4サイズの紙にプリントすると、
37ページにもなる、膨大な数がある。

(つまり、数百ある、これらの病気(または状態)の
 ひとつでもあると、アメリカでは健康保険に
 入れないのである。)


例えば・・ (アルファベット順)

アルコール依存症、
AIDS,HIV陽性、
貧血、
動脈瘤、
狭心症、
心臓弁膜症、
先天異常、
先天代謝異常、
動脈硬化、
不整脈、
心房細動、

など、アルファベットの、
Aで始まる病気(または状態)だけで
40ぐらいある。

Zまで数えたら、いくらあるか・・?

・・・

5.
このため、
健康保険を取得するために、
アメリカ人は、
自分の「既往歴」を隠す、ことになる。

つまり、
過去に、大きな病気(手術、入院等)があっても、
現在飲んでいる、高血圧の薬などがあっても、
書類に書かない、のである。

(保険会社の書類だけでなく、
 保険会社にばれないように、
 病院での医師の質問などにも
 医師に対して、本当のことを言わなくなる。)

このため、後に、なんらかの病気をして、
医師の診察を受けた時も、
本当の既往歴をいわないため、
医師は、誤診をしやすくなる。

(正しい既往歴を言ってもらわないで、
 正しい診断をすることは、
 まず、無理である。)

よって、正しい治療は行われず、
結果として、
患者は死亡する可能性が高くなる。

・・・

6.
一方、
保険に入っている人でも、
後日、
既往歴を隠していたことが
ばれてしまった場合、
医療費は、払ってもらえない。

なんで、ばれるかというと、
医師の記録(カルテ)のコピーが、
保険会社に郵送されて、「審査」を受けるからだ。

つまり、
医師に本当のこと(既往歴)を言った患者は、
保険会社から診療費を払ってもらえない。

・・・

7.
また、医師の治療も、
「確実に効果のある治療」だと
「現在、そう判断されているもの」
でないと、
保健会社は、診療費を払ってくれない。

つまり、
癌に対して、
ある大学病院の医師が、
最新の新薬を使おうとしたり、
あるいは、
まだ一般的ではないが、
最近学会で効果がある可能性が高いと
報告があった治療方法、などを
医師が行った場合、

保健会社は、それを
「必ずしも、医学的に必要であるとは言えない」
または、
「実験的だ ( experimental )」
といって、保健料金の支払いを拒否する。

この、治療方法が
「実験的だった」
(現在おこなわれている一般的医療ではない)
として、支払を拒否する保険会社は、
ものすごく多い。

つまり、はっきりいえば、
アメリカの医療保険会社には、
入っても、ほとんど無駄である、
という極論すらできるような状況だと、
映画では描かれている。

(これには、確認を要する)

・・・

8.
保険会社(ヒューマナ社)も、
医師を雇っている。

なんのための医師かというと、
上述のように、
患者から、医療費を払ってくれ、
という申請があったときに、
その申請に、「なんくせ」をつけ、
支払を断ることを仕事とする医師を
雇っているのである。

支払いの「拒否」をした割合の高い医師は、
(保険会社の中で)どんどん給料が上がり、
会社内での地位も上がっていく。

そうした医師の給料は、
最初、年収で数百万円なのだが、
拒否する確率が高い医師は、昇給され、
優秀だと、数千万円まで上がる。

このため、
医師は、なんとしても
患者からの医療費の申請を拒否し、
自分の給料を上げようとする。

(保険会社の利益を、最大にしようとする。)


本来、人の命を救うべき、
「医学の知識」を用いて、
患者からの保険料金の支払いの要求に
「なんくせ」をつけ、それを拒否する。

拒否された患者は、治療を受けられず、
そのまま死んでゆく。

(アメリカの病院は、金のない人には、
 治療をしないため。)

これが、保険会社に雇われた「医師?」
たちの仕事だ。

(まさに、世も末、である。)


(こうした(強欲な)医師たちは、
 最初、調子にのって、お金を稼ぐのだが、
 後日、
 そのうちの一部の人が、
 やはり慙愧(ざんき)の念に
 耐えられなくなり、
 保険会社をやめ、
 自分が行った悪行・非道を
 ブログや、マスコミや、国会で、ばらす、
 ということを行うこともある。
 こうした映像も、映画の中に登場する。)

・・・

9.
上記の、医師が、「なんくせ」をつけて、
支払を拒否するのは、まだいいほうで、
ある会社(ブルー・シールド社)では、
会社員が制作した「支払いの拒否状」に
医師は、
(眼を通さずに、事務的に)
サインをするだけ、というシステムになっている。

・・・

10.
さらに保険会社は、
上記に加えて、
さらに、
医療費の支払いの申し込み用紙の
どこかに
ちょっとでも、「記入漏れ」があったり、
本人も忘れていた既往歴を
様々な方法(刑事事件の捜査のような方法)で探し出し、
なんとしても、保険料を支払わないようにする。


・・・

11.
このように、
アメリカにおける医療保険の会社は、
患者の健康を守るためではなく、
純粋に、金儲けのために存在する、

映画の中では強調されている。

保険会社たちの実名も、多数登場する。


Blue Cross, Blue Shield
http://www.anthem.com/

horizon blue cross blue shield
http://www.horizon-bcbsnj.com/members.html

humana
http://www.humana.com/

kaiser permanente
https://www.kaiserpermanente.org/

・・・

11.
医療制度に対する、
アメリカの政府の問題にも触れていた。

1971年、ニクソン大統領は、
「医療保障などに興味はない」
と明言した。

しかし、この時、同時に、
「民間の保険会社(カイザー・パーマネンテ)が、
 医療保障を、(国の代わりに)やる」
ことを容認した。

ニクソンは、この時、
民間の企業が、医療保障などやったら、
金にならないから、無理じゃないか、
と質問したが、
調べた結果、
「患者からの医療保障の請求を
 保険会社が、(雇った医師(上述)などを使って
 断り、それによって利益が増えるから大丈夫だ」
という説明を受け、納得した。

(要するに、このシステムの、OKがでたのだ。)

これが、
アメリカの保険会社が、現在まで続く、
雇った医師により、請求を「拒否」し、
会社の利益を最大限に上げてゆくシステムの
始まりだった。

・・・

12.
その後、医療保険会社たちは、
もうかったお金で、アメリカの議会を構成する
議員たちに、一人あたり、数百万円ずつの献金を行い、
さらに、
自分たちに都合のよいシステム(政策)を作ってもらう。

これらの政策は、多数あるので、とても書ききれない。


ちなみに、前アメリカ大統領のジョージ・ブッシュも
891,208ドル(約1億円)を保険会社からもらっており
いくつかの、保険会社たちがもうかる法律を作った。

・・・

13.
また、
ヒラリー・クリントンは、
この医療保険制度の問題にきづき、
最初、なんとかしようとするのだが、
徐々に、
(自分が大統領になりたいという、政治活動のため)
保険会社たちから多額の献金を受けるようになり、
最終的に、買収される。

(これも、確認を要す。)

・・・

14.
その後、映画は、
カナダ、イギリス、フランス、キューバと
アメリカの医療保険制度を比較し、
そのどの国と比べても、
アメリカの医療制度は、非常に劣っていることを
明らかにする。

簡単にいうと、
上記の比較された国々では、
医療は、ほぼ無料で受けられる。

どんなに貧しい人でも、
ほぼ無料で、受けられるのだ。

アメリカのように、
金がないからといって、
病院が、診療を拒否することもない。

(これも、要確認)




・・・・・
・・・・・


さて、映画ではなく、
私(山本)が調べた結果であるが、

アメリカの平均寿命は、たしかに、
先進国の中で、ほぼ最低である。


         男  女

日本      79.19  85.99

スウェーデン  78.94  82.99

フランス    77.2  84.1

イギリス    76.9  81.3

ドイツ     76.64  82.08

デンマーク   75.95  80.48

アメリカ合衆国 75.2  80.4


(上記の統計は、日本の厚労省のデータを引用)


その他、各国の医療レベルの基準に
WHO(世界保健機構)などが用いている
乳児死亡率などで比較しても、
アメリカは、やはり、
(先進国の中では)最低レベル。


いやはや。

私は今まで、どちらかというと、
アメリカのことが嫌いだったのだが、

この映画を見たあと、いろいろ調べた結果、
アメリカ人のことが、とってもかわいそうになった。

この詳細は、また別に紹介する。


・・・

また、各国の医療制度の比較に関しては
いろいろ、面白い知見があるので、
今後、おって紹介してゆく。

まず、次回は、
「日本の医療の、国営化・公営化の是非」
の話から。





シッコ 日本語版 予告篇
http://www.youtube.com/watch?v=pGWpVEg3JcE