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46億年前、暗黒星雲の中に
太陽が誕生し、まわりに
その重力による「うずまき」を作った。

「うずまき」の中で、
無数の塵(ちり)や岩がぶつかりあい、
塊(かたまり)が形成される。

塊がある程度大きくなると、
その塊も重力を持つようになり、
そこに
多数の小さな隕石たちが降り注ぐようになる。

この重力による物質の集積の結果、
惑星が誕生してゆく。


・・・

絶え間なく隕石が降り注いでいた間、
惑星の表面は、マグマの海だった。

しかし、やがてそれはおさまり、
38億年前、惑星全体が冷えていった。

大気中の水蒸気たちは、水となり、
大きな、水たまりが形成された。

それが、「海」である。

・・・

当時の大気には、
メタン(CH4)、アンモニア(NH3)、
水蒸気(H2O)が多かった。

大量の水蒸気は雲を作り、
雨と、そして「稲妻」を呼ぶ。

「稲妻」は、エネルギーとなり、
メタン、アンモニア、水蒸気を反応させ、

タンパク質のもとになる「アミノ酸」を作り、
遺伝子(DNA、RNA)のもとになる「塩基」も生まれた。

これら、
アミノ酸と塩基は、海の中にたまっていた。


これを、「原始プール」 または 「生命のスープ」 と呼ぶ。

・・・

当時、まだ海の底では
火山活動が激しく、
深海での噴火が続いていた。

この噴火口の付近では、
温度が、400度ぐらいまで
上がっていた。


同時に、
深海では、水圧が高くなる。

すると、物理学の現象で、
水の「沸点」(液体から気体になる温度)は
上昇する。

そこでは、100度以上に温度が上がった
「熱水」が存在する。

高い水圧が存在する場合、水は、
なんと400度近い温度でも、
水蒸気にならず、
「液体と気体の中間」のような特殊な状態で存在する。


これを、「超臨界水」(ちょうりんかいすい)という。


超臨界水の中では、
(酵素などの触媒がなくとも)
様々な化学反応が、急激に進んでいく。


この結果、
普通、自然界では
(酵素などの触媒がなければ)起こりえない、
アミノ酸とアミノ酸同士の結合、
すなわち、「タンパク質」の生成が行われた。


・・・

タンパク質は、
「立体的な構造」を作ることができる。

アミノ酸の配列によって、
様々な、複雑な形状をとることができる。

この様々な形は、
「鍵(カギ)」と「鍵穴(かぎあな)」のように
いろいろな物質を結びつける。

自分の持つ形に、適合する物質たちを引き寄せ、
化学反応を誘発する、
すなわち
「酵素」(こうそ)
としての性質を持つようになる。



が、まだ、足りなかった。

生命を生み出すには、
立体構造と、酵素の他に、
もう一つ、

それらの材料となる物質を包み込み、
まわりに拡散していってしまわないようにするための
(反応する物質たちの濃度が、
 薄くなっていってしまわないための)
包み込む、なんらかの「膜」が必要だった。


・・・

タンパク質には、
親水性の部分と、疎水性の部分がある。

(炭素原子(C)が多い場所は、疎水性(水を嫌う場所)となり、
 水素原子(H)が多い場所は、親水性(水を好む場所)となる。)

親水性の部分と、疎水性の部分は、
それぞれが、くっつきあう性質がある。


原始の地球の海の、波打ち際で、
海水は、蒸発と乾固を繰り返していた。

この単純な物理現象が、
タンパク質の重合を促進し、
ついにある日、次のような配列が生まれた。


水素をH,炭素をC,とすると、


HHHHHHHHHH
CCCCCCCCCC
CCCCCCCCCC
HHHHHHHHHH


親水性の部分を、外側に出し、
疎水性の部分内側にしてできた、
「二重構造」の「膜」である。


この膜が、「泡(あわ)」のように
くるりとまるまり、

数億年の時を経てできてきた
アミノ酸とタンパク質、
そして(遺伝子のもとである)塩基たちのすべてを
包み込んだ。


これを 「コア・セルベート」 と呼ぶ。


・・・

「コア・セルベート」の中で、
膜につつまれ、高濃度となった塩基たちは、
まわりにあるタンパク質の酵素作用で、
重合を繰り返し、
ついに、最初の核酸である、
「RNA(リボ核酸)」を生みだす。

(RNAは、非常に不安定な物質で、
 まわりに膜がなければ
 自然界で存在しえない。)


このRNAは、遺伝子としての機能を持つ。


RNAの中にある4つの塩基が
暗号のようにして、
アミノ酸の並べる順番
(すなわち、タンパク質の立体構造と性質)
を決定するシステムが生まれていく。


以下が、RNAが持つ、4つの塩基(遺伝子情報)である。

U:ウラシル
C:シトシン
A:アデニン
G:グアニン


RNAの配列の中で、塩基たちが、たとえば、

GUC と並ぶと バリン      というアミノ酸が生成
GCC と並ぶと アラニン     というアミノ酸が生成
GAC と並ぶと アスパラギン酸  というアミノ酸が生成
GGC と並ぶと グリシン     というアミノ酸が生成


このように、
4種類ある塩基は、「三つ組」で、
ひとつのアミノ酸をコード(暗号化)する。

また、最初に生まれた遺伝子「RNA」は
(上記の例を見ればわかるが)
三つ組の中の、「真ん中(二番目)の塩基」が、何であるかで、
そのコードするアミノ酸が、決定される、という単純なシステムだった。
(1番目は常にGで、3番目は常にCだった。)

(現在の生物は、進化し、1番目も3番目も、変化し、
 さらに多数のアミノ酸を、つまり多種類のタンパク質を
 合成できるようになっている。)


・・・

RNAは、遺伝子情報としての機能を持つだけでなく、
それ自身が、タンパク質のように、
「酵素」として働くことがある。

これを、「リボザイム」 という。

(RNAは、リボ核酸で、酵素が、エンザイムだから。)


このため、
コア・セルベートの中で
RNAを中心として、
アミノ酸、タンパク質、塩基たちは、
急速に、様々な化学反応を繰り返し、
ある日、
もう一つの、塩基を生みだした。


チミン(T)という塩基を。


チミンは、ウラシルに置き換わる遺伝子情報になり、
(UCAGの4種類の塩基ではなく)
TCAGの4種類の塩基による遺伝子情報の継承が生まれる。


これが、「DNA(デオキシリボ核酸)」の誕生だ。


DNAは、RNAよりも物質として安定していたため、
以後、DNAは、RNAにとって代わる「遺伝子」となった。


・・・

この頃、
海水中にある「リン」(燐)を取り込んだ
コア・セルベートは、
自分の中で、新たな化学反応を起こし、
「リン脂質」という物質を生みだす。

この物質は、
炭素(C)が並ぶ、疎水性の部分と、
水素(H)が並ぶ、親水性の部分をもち、
かつ、
簡単に合成でき、
かつ、
簡単にまるまって、「膜」を作る性質があった。


以後、
タンパク質でできた膜ではなく、
リン脂質でできた膜が、
「それ」を包むようになった。


「それ」とは、すなわち、

最初の細胞、最初の「生命」である。


・・・

「生命」の定義は、基本的に次の二つである。

1.自己複製できること
2.代謝(化学反応)が、
  その中で継続的に起こっていること

ただし、
1.2.が起きるためには、
自己がなんであるかを決めるための境界線であり、
かつ、
自分の中と外を区別するための境界線である、
「膜」が必要だった。


この中に、
自己複製をするためのDNAがあり、
代謝を行うためのタンパク質(酵素)があれば、
それは、
「生命」である、ということになる。


・・・

繰り返すが、

DNA(遺伝子)の中にある、
4種類の塩基(TCAG)が、
「三つ組」となり、
それらが様々なアミノ酸をコード(暗号化)して指定し、
かつ、その並べる順番を指示することにより、
様々なタンパク質(立体構造または酵素)が生まれる。

酵素は、次の反応を誘発し、
また、
別の遺伝子へ働きかけ、次のタンパク質が合成され、
それがまた・・

という風に、繰り返されるのが、
生命の本質である。


遺伝子であるDNAと、酵素であるタンパク質は
いわゆる
「卵とニワトリ」の関係にある。

・・・

現在の生物は、すべて、全く同じ上記のシステムを持つため
全ての生物は、原始に生まれた
「たった一つの生物」から生まれたことがわかっている。


この、最初の生物(細胞)のことを

「LUCA(ルカ)」 Last Universal Cellular Ancestor

と呼ぶ。


彼女が、私たち全ての先祖、全ての母である。


・・・

「LUCA」が生まれた後は、
それはそのまま、現代でいうところの
「細菌」
となり、まわりの養分(アミノ酸ななど)を取り込んで
自分を増やす活動を開始した。

やがれそれは、
多細胞生物に進化し、
カイメン
(海綿。海の中で、筒のような形状で揺れている軟体動物)
となる。

・・・

カンブリア紀(5億年前)になると
「カンブリア爆発」 または 「生命のビックバン」
と呼ばれる
急速な進化(生物の多様化)が起こった。

理由は、
この時期、地殻の変動が激しく、
造山活動が強く起ったからである。

このため、マグマからの噴火などにより
海水中の、リン(P)とカルシウム(Ca)の量が増えた。

この二つが結合すると
「リン酸カルシウム」となり、
この物質は、すなわち
「骨」となる。

多細胞生物の中で「骨格」となる
骨ができたことで、
生物は、劇的な進化を始める。

二つの道があった。

外骨格を作る、昆虫などの甲殻類と、
内骨格を作る、魚などの脊椎動物系だ。

・・・

最初は、甲殻類のほうが、優勢だった。

海の中で、脊椎動物たちは、最初は、
「狩られる」ほうの立場だった。

しかし、
餌の豊富な浅瀬で生活していた魚が、
ある日、ついに、
陸上へと進出することになる。

爬虫類、そして、恐竜の誕生だ。

恐竜の時代は、
1億年以上も続いた。

・・・

6500万年前、
巨大な隕石が落下し、
恐竜を絶命させた。

以後、哺乳類が繁殖するのだが、
このころから、地球の乾燥化がおきる。


ある日、木に登っていたサルは、
乾燥化のため、枯れてしまいそうになった木から
下に降り、餌(えさ)を求めた。

木につかまる必要がなくなった「手」で
石をつかみ、
それを武器として、他の動物を殴って殺し、喰うことを覚えた。


こうして、「道具を使う動物」
すなわち、

「人類」が誕生する。


・・・

このサルは、
効率よく、餌を得るために、

狩猟生活から、牧畜(遊牧)生活へ移行し、
さらに、
農業を行うようになった。

農業の技術を後世に伝えるため、
文字が生まれ、

宗教、思想、哲学が誕生し、



ある日、サルは、次のようなことを考えだす。




「私は、何のために生きているのか?」



「どうして、生まれ、そしてやがて、死ななければならないのか?」





「この宿命を持つ、最初の生命は、いつ生まれてしまったのか?」



























補足1:
38億年前の大気は、
メタン、アンモニアが多かったのは誤りで、
(それらよりも、ずっと反応しにくい)
窒素や二酸化炭素などの普通の物質が多く、
そこに(稲妻ではなく)宇宙線が降り注いだ
ことにより、
最初のアミノ酸等が生まれたのではないか、
とする説もある。


補足2:
最初の生物は、
タンパク質だったのか、DNAだったのか、
ということは、
ニワトリと卵の関係として、
長い間、論争されてきた。

現在では、
どちらでもなく、
遺伝子機能を持ちながら、酵素の作用も持つ、
RNAが、最初の生命を作った、とする意見が強い。

文中に登場する、リボザイム、である。


補足3:
この他、最初の生命は、
宇宙からやってきた、とする説も
かなり有力である。

太陽が発生した頃の、暗黒空間は
非常に温度が低かったが、
そんな状態でも、
メタン、アンモニア、水があれば、
それらが含まれる「氷」に
宇宙線がそそぐと(それをエネルギーとして)、
アミノ酸や塩基がうまれる。

これは、多数の隕石の中に、
アミノ酸や塩基などが含まれていることから
示唆されている。


ハレー彗星の中には、
「芳香族(ほうこうぞく)アミノ酸」という
最も複雑な形状の有機物があることが、
1986年に証明された。


つまり、
母なる「LUCA」は、
彗星に乗って、やってきたかもしれないのだ。

それを信じて、今夜、星空をながめて見るのも、いいかもしれない。


「わたしたちのお母さんは、今も、星空を駆け抜けているのだ」と。


























やつらの足音のバラード (ちのはじめ) 名曲です。是非聞いて!
http://www.youtube.com/watch?v=fkauoiO4YKA


最古の人類 ラミダス猿人「アルディ」
http://www.asahi.com/science/update/1002/TKY200910010472.html