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新型インフルエンザのワクチン接種が
始まった。

なんらかの組織で、
ワクチン接種の担当者になってしまった人は、
情報を集めたいだろうから、
いろいろまとめて書いておく。

(最近、私のブログ内の、
 新型インフルエンザ関係のコンテンツの
 ヒット数が、やたらと増えている。
 最初に日本で発生した、今年の5月ごろよりも多いくらいだ。
 やはり、日本でも死亡例がでたためか?)

・・・

現在、1(いち)医療機関あたりの
1日のインフルエンザ患者数が、
10人を超えた病院が増えてきている。

地方自治体によって若干差があるが、
全国全部でそうなるのは、時間の問題。

で、この、1医療機関あたりの
インフルエンザ患者数が、10人を超すと、
「注意報」レベルと判断される。

「注意報」レベルとは何かというと、
こうなると、その地域で、
4週間以内に、大きな流行が起きるのが
(過去の経験から)
ほぼ確実、とされている。


・・・

で、上記のような状況で
ワクチン接種が開始されるわけだが、

ワクチンを接種してから、
新型インフルエンザの抗体が
その人の体の中にできるまでに
普通、4週間かかるので、

つまり、
ぎりぎり、まにあわなかった(?)、
可能性もあるが、

通常、
(季節性)インフルエンザは、11月から12月末までに
接種すればよいことになっているので

もっとも流行する可能性が高い
(空気の乾燥する)
1月、2月にまにあったのだから、
一応、よしとしなければならないか。

国連WHOも、日本政府も、
なんとか、この時期に接種が開始できるように、
総力を尽くした、結果だと思う。


・・・

一応、国の方針では、
以下の優先順位で、ワクチン接種が行われる。


(1)医療従事者(10月以降、1回接種)
    約100万人

   (この中でも優先順位があり、
    新型インフルエンザ外来、その入院病棟、
    一般外来、一般患者の入院病棟
    その他の部署に配属されている人
    の順に接種が行われる。)

(2)妊婦(11月以降、1〜2回接種)
    約100万人

(3)ある特定の持病を持った人(11月以降、1〜2回接種)
   (喘息、糖尿病、慢性腎不全(透析患者)など)
    約900万人

(4)1歳から就学前までの児童(12月以降、2回接種)

(5)小学校低学年(12月頃、2回接種)
    (4)と(5)で約1000万人

(6)1歳未満児の保護者(来年1月以降、1〜2回接種)
    約200万人

(7)小学校高学年(来年1月以降、2回接種)

(8)中学・高校の生徒(来年1月以降、1〜2回接種)
    (7)と(8)で約1000万人

(9)高齢者(65歳以上)(来年1月以降、1〜2回接種)
    約2100万人


注: 接種時期は地方自治体によって大きく異なる。


注: 「ある特定の持病」とは何かについて、
   このブログの最後に、詳しく記載した。
   自分で持病を持っている人は、目を通した方が良い。


注: もともと厚生労働省(官僚側)は、大人(13歳以上)は一律に、
   一回接種にしようとしたのだが、
   担当政務官(政府側)のほうから、
   やはり、妊婦や持病を持つ人などは、
   大人でも2回接種のままにしたほうがいい、
   という反対意見がでたため、上記のようなことになっている。


注: 国内産のワクチンの数は、2700万人分しかない。
   それで足りない分は、輸入する方向だ。
   輸入ワクチンの安全性については、後述する。


注: 妊婦へのワクチン接種の安全性に関しては、
   厚生労働省とWHOは、
   問題ない、としている。
   しかし、
   日本産婦人科学会は、これに対し、
   独自の臨床試験を行い、安全性をテストする、と言っている。
   この件も、後述。


・・・

ワクチンの接種回数に関しては、

アメリカのデータや、
これまでの季節性インフルエンザの接種を
参考にする限り、
私は、
健康な大人に対しては、
一回の接種で、問題ないと考えている。


なお、1歳以上、12歳以下の小児には
季節性インフルエンザと同様に
2回の接種を行う。

(子どもは、2回うたないと、
 効果が低いことが確認されているため。)


1歳未満は、
(免疫力が、まだ不十分の時期のため)
新型インフルエンザ・ワクチン接種の効果が
あるかないか、わかっていないので、
日本では、接種をしないことになっている。

あと、
鶏卵アレルギーのある人は、接種できないことがある。
ワクチンの製造に、鶏卵を使用するからである。


・・・

医療従事者が、まず受ける必要があるのは
当然で、
その理由は、「不顕性感染」の存在による。

「不顕性感染」とは、
ウィルスが感染して、
体内で増殖しており、
かつ
その患者は、まわりにウィルスを
まきちらしているにも関わらず、
本人には、
まったく症状がない状態をいう。

南米ペルーなどのデータでは、
新型インフルエンザが、
「不顕性感染」となっている割合は、
なんと、
50%から70%の間とされている。

(要するに、
 新型インフルエンザに感染しても、
 感染して発症する割合よりも、
 感染して「不顕性感染」となる割合のほうが
 多いのである。)


つまり、
あなたは、
熱も咳も、なんの症状も全くないかもしれないが、
既に、
新型インフルエンザに感染しており、
かつ
まわりの人々に感染させまくっている可能性がある、
ということなのである。

で、
もっとも、この「不顕性感染」を起こしやすく、
かつ、
それにより、まわりの人への被害を
拡大させる可能性の高い職業が、
医療従事者だ、ということである。


その他、医療従事者が、倒れてしまうと、
病院が機能しなくなり、
新型インフルエンザになっても
それを治療する人がいなくなってしまう。

特に、ある確率でおこる呼吸不全などの重症化(死亡など)
を防ぐために、病院には機能していてもらわないと、困る。


要するに、極論するならば、
医師や看護師の命を助けるために
医療従事者に優先的にワクチンを打つのではなく、

「不顕性感染」による社会への広がりを防ぐため

「重症化」した患者を助けられるよう病院を機能させておく、
ために
医療従事者に優先接種を行うのである。


・・・

新型インフルエンザワクチンと
季節性インフルエンザワクチンの
同時接種については、
10月18日に
厚生労働省が、「問題ない」
という指針をだしたが、

しかし、結局のところ、
現場の病院では
1週間以上の間をあけて、
接種しているところが多いようだ。


・・・

新型インフルエンザ・ワクチンを
政府が、国民に接種する目的は、

死亡者や重症者の発生を
できる限り減らすこと、にある。

これが、主な目標。


・・・

接種対象者に関しては、
上記のとおりの優先順位を決めるものの、
あくまで「希望者」に対してのみ
接種を行う。

(これは、後述する、副作用の問題があるため。)

・・・

インフルエンザ・ワクチンの有効性については

まず、効果は100%あるわけではない。

一般的にいって、どんなワクチンでも
80%ぐらいの人に、それなりの効果があるが、
20%ぐらいの人には、接種したのに抗体ができず、
インフルエンザなどの病気に結局かかってしまった、
という人も多い。

ただし、これまでの臨床試験により、
「重症化や死亡の防止」については
一定の効果がある、とされている。


具体的には、以下のデータがある。
(ただし、季節性インフルエンザのデータである。)

1.健常者のインフルエンザの発病割合が、80%減少。
2.高齢者の肺炎やインフルエンザによる入院が、50%減少。
3.老人施設入所者のインフルエンザによる死亡が、80%減少。
4.小児の発熱が、25%減少。


・・・

インフルエンザ・ワクチンの副作用について、1。

新型インフルエンザ・ワクチンの副作用は
季節性インフルエンザ・ワクチンの副作用と
同程度であろうと推測されている。

理由は、ワクチンの製法などが
ほとんど同じだからである。


しかし、
(季節性)インフルエンザ・ワクチンには、
非常に稀(まれ)ではあるが、
重篤(じゅうとく)な副作用も起こることがある。


具体的には、「脳炎・脳症」がそれであり、
死亡したり、脳障害や片麻痺などの重大な後遺症が
起きる場合も、ありうる。

その確率は、
接種者、1億人に対して、5人程度である。


上記のように、この重大な副作用が発生する確率は
非常に低いため、
公衆衛生学的には、多くの人の健康を守るために
接種したほうが良い、ということになる。


理由は、
新型インフルエンザが、政府の予想通り、
国民のうちの6000万人に感染し、
そのうち、死亡率が、0.1%だとして試算した場合、
6万人が死亡する、ことになる。

仮に、
全国民にワクチンを接種すれば、
その副作用で、5〜6人死亡するかもしれないが、

仮に、
全国民にワクチンを接種しなければ、
その病気によって、6万人死亡することになる。

どちらが、国民によって良いかは
自明であろう。


かりに、新型インフルエンザによる死亡率を
0.1%ではなく、
(先進国である日本の医療体制は優秀だから)
0.01%にまで下がるとしても、
上記の死亡予測数が、6千人に減るだけであり、
結論は変わらない。


・・・

インフルエンザ・ワクチンの副作用について、2。

上記のような重大な副作用以外にも、
その他の副作用は、いろいろある。

まず、「局所反応」といって、
接種した腕の注射部位が、赤くなったり、
または、腫れたり、硬くなったり、
することは、ざらにある。

医者としての私の臨床経験では、
おおよそ、3人に1人ぐらい(30〜40%)の
高い確率でみられる。

よって、あなたがワクチンをうった場合、
これは、まず起きる、と思ったほうがいい。

が、別にそれで普通である。

4週間後に抗体ができるかできないかには、
この局所反応の有無は、基本的に関係ない。


それ以外の副作用としては、
100万人の接種に対して、
2人が、その他の副作用を生じる。

そのうちわけは、


脳炎・脳症 2.7%

即時型全身アレルギー 9.0%
(アナフィラキシー・ショック)

けいれん 1.4%

運動障害 1.8%

全身の発疹 10.4%

39度以上の発熱 14.5%

など、である。


上記のうち、死亡する可能性が高いのは、
脳炎・脳症

即時型全身アレルギー
(これにより、重篤な喘息か、喉頭浮腫を起こした場合)
である。

脳炎・脳症については、すでに前項で書いたが、
実は適切な治療が、現在まだない状況だ。
(なぜ、それが起こるかすら、よくわかっておらず、
 よって、その治療方法も、ない。)

即時型全身アレルギーのほうは、
ステロイドホルモン剤の静脈注射など、
病院にいて適切な治療さえ受ければ、
なんとかなると思うが、
一気に、
喘息からの呼吸不全や、喉頭浮腫によって窒息すると、
死亡する可能性もある。


で、
こうした、ワクチンによって死亡する確率は
1億分の5、程度と、かなり低いものの、

それが起こってしまった「一人の人」にとっては
100%の確率で起こってしまったわけなので、
非常に申し訳ないことになる。


(ある見方としては、
 国民全体の健康を守るために、
 その人たちは、犠牲になった、ともとれる。)


このために、世の中には、
「全てのワクチン接種に対し徹底的に反対する団体がある」
ことも
あえて、ここに記載しておく。


・・・

ワクチンによる副作用が起こった場合については、

現在、
「医薬品副作用救済制度」
という法律があり、それで国が対応する。

将来、
「インフルエンザ・ワクチン副作用に関する新法」(仮名)
を作ることが検討されている。

・・・

輸入ワクチンの安全性については、

1、国内では使用されていない成分が含まれている。
2、ワクチンの製造につかう、細胞株が、国内のものと異なる。

以上の、2点において、
その生産国においては、安全性が確認されているものの、
日本国内においては、臨床試験などが実施されておらず、
安全性が確立しているとは、いいがたい。

よって、一抹の不安を覚える。


もう少し詳しくいうと、


1.については、
通常、ワクチンの接種により、
白血球たちに、確実に抗体を作らせるために、
「アジュバント」と呼ばれる、
免疫を賦活化(活性化)する成分を
ワクチンの中に混ぜるのである。

ある種の「脂肪」であることが多い。

で、国内で使われているアジュバントと、
海外のものは、違う場合がある。

で、その安全性が、国内では確認されていない。


2.については
ワクチンは、培養細胞において作られるのだが、
その使われる細胞の種類が
国内のワクチンメーカーのものと
外国のものは異なっている。

これについても、国内では安全性が確認されていない。


こう書いてしまうと、
皆さんは、おそらく、輸入ワクチンについて
不安に思うだろうが、

さらに私が調べたところ、

少なくとも、アメリカのワクチンメーカーが作ったものは、
アジュバントが、全く入っておらず、
細胞株の安全性も、
CDC(米国国立感染症予防センター)が確認しているので
大丈夫だと思う

(CDCは、世界最高の医療研究機関である。)


・・・


以上を認識した上で、
あなた自身が、ワクチン接種を受けるかどうかを
判断してほしい。

もちろん、あなたの家族のことも。




・・・
・・・

補足1:

妊婦へのインフルエンザ・ワクチン接種の安全性については
まだ、議論が続いている。

つい数か月前まで、妊娠中のワクチン接種は、
やめたほうがよい、とされていたのだ。

ところが、その数か月前に、WHOが
妊婦に対するワクチン接種は積極的に行うように、
という、ちょっとびっくりする声明を発表したので、
おそらく、私だけでなく、多くの医師が
怪訝(けげん)な顔をしたことだろう。

基本的に、妊娠中にワクチンを接種した場合、
胎児への悪影響があるどうかは
「わかっていない」
ため、大丈夫かもしれないが、
流産や先天異常を起こす可能性もあるので、
「どちらか確認できていないので、やめよう」
という話になっていたのだ。

その証拠に、
季節性インフルエンザ・ワクチンの製品の箱に入っている
添付文書(てんぷぶんしょ)には
「妊娠中の接種は、特別な理由がない限り、控えるように」
と、書いてあるのだ。

ちなみに、今でも、書いてある。
(今、病院にでまわっている
 新型インフルエンザ用ワクチンの添付文書にも、そうかいてある。)

それなのに、急に、WHOと政府が、
妊婦に接種してもいいことになりました、と言われて、
「はい、そうですか」
と、納得する医師のほうが、疑問である。

と、いうわけで、日本産婦人科学会が、
大規模な臨床試験を行い、安全性を確認する、
と発表したのは、妥当であり、また当然である。



補足2:

国が、優先的に、ワクチンを接種すべき人たち、として、
第三優先にあげているのが、
「ある特定の持病」を持っている人たち、である。

では、その「ある特定の持病」とは、なんであろうか?

それを以下に記載する。

(持病をもっている人は、自分が対象となっているのかどうか
 知りたいだろうから、以下に記載しておく。)


1. 慢性呼吸器疾患(気管支喘息、肺気腫、肺結核、など)

2. 慢性心疾患(日常的な身体活動で動悸や胸痛を生じる人など)

3. 慢性腎疾患(透析患者、腎移植後、ネフローゼなど)

4. 慢性肝疾患(肝硬変で脳症・腹水・黄疸などがある人など)

5. 神経疾患・神経筋疾患(脳性麻痺で誤嚥性肺炎など)

6. 血液疾患(白血病、悪性リンパ腫、再生不良性貧血など)

7. 糖尿病(糖尿病で心肺疾患・腎不全等の併発疾患のあるものなど)

8. 疾患や治療に伴う免疫抑制状態(抗がん薬治療中の人など)

9. 小児科領域の慢性疾患(気管支喘息、慢性腎疾患などの小児)


   さらなる詳細を知りたい方は、以下のページに、
   その全てが記載されている。

   が、やたら長いので、覚悟して読むように。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/inful_list_e.pdf



参考:
厚生労働省、新型インフルエンザ
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/index.html

アメリカ疾病管理予防センター(CDC)
Centers for Disease Control and Prevention
http://www.cdc.gov/h1n1flu/index.htm



追記:

インフルエンザ・ワクチンの添付文書の記載 (原文そのまま)

「妊婦、産婦、授乳婦等への接種」

妊娠中の接種に関する安全性は確率していないので、
妊婦または妊娠している可能性のある婦人には
接種しないことを原則とし、
予防接種上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ
接種すること。