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伊豆七島の一つ、新島(にいじま)での講演を頼まれたため、

東京のJR山手線・浜松町駅から
徒歩数分のところにある
「竹芝桟橋(たけしばさんばし)」にいった。

で、
新島に行く「かめりあ丸」という
割と大きな船に乗るため、
その船の運航会社である
「東海汽船」のカウンター(窓口)にいった。

船の出発が、午後10時だったので、
念のため、
1時間前の午後9時に、ここへ来た。


山本 「あの、新島に行きたいんですけど。」

受付嬢「一泊二日、船中泊になる「かめりか丸」で
    よろしいですか?」

山本 「はい。それでお願いします。
    明日の朝、8時20分に着くんですよね?

受付嬢「はい、そうなんですけど・・・・・」

山本 「?」

受付嬢「条件付き、の、就航(しゅうこう)となります。」

山本 「条件付き?」

受付嬢「天候によっては、島に着かない、ということです。」

山本 「えっ、マジですか?」

受付嬢「はい。」

山本 「えっ、えっ、・・出発もしないんですか?」

受付嬢「いえ。今のところ、出発はする予定です。
    しかし、新島などの各港の状況によっては、
    船が接岸できず、船から降りることができない、
    かもしれないんです。」

山本 「!、まじですか?」

受付嬢「はい。」

山本 「そ、その場合、どうなるんですか?」

受付嬢「そのまま、ずっと乗っていてもらって、
    神津島(こうづしま)で、おりかえして、
    (船が東京に戻ってくる)上り(のぼり)で、
    着港できる場合もあります。」

山本 「そ、それは、何時ぐらいになるんですか?」

受付嬢「港の状況によるのでわかりませんが、
    たぶん、正午の12時ぐらいです。」

山本 (講演は午後1時からだからギリギリ間に合うか?)
   (あ、でも、上りで確実に着港する保障もないな・・)

受付嬢「どうなさいますか?」

山本 「あ、はい。とりあえず、乗ります。」


・・・

かくして、私は、「かめりあ丸」という船に乗った。

この船は、どうも、新島にだけ行くわけではないらしく、
大島(おおしま)、利島(としま)、新島、式根島(しきねじま)、神津島
という順番に寄港するらしい。

で、その後、この船は、「上り」(のぼり)の船に変わり、
上記の島々に逆の順番で戻ってくるようだ。

だから、
もし私が、新島で降りれなかった場合、
神津島にいった後、(東京方面へ)戻ってくる時に、
再び新島で降りられるチャンスがあることになる。

し、しかし、
島の目の前までいっても、
船から降りれない、なんてことが、
世の中にあるとは・・


ちなみに、もう一つ知らなかったことがあった。
この船には、次のようないろいろな部屋の
ランクがあった。

特等
特一等
一等
特二等
二等

で、NPO法人として講演にいくので
とりあえず、ほどほどの部屋を選んで乗船したのだが、
4人部屋で、二段ベッドの相部屋(あいべや)だった。

聞いてみたら、この船は
特等以外は、すべて相部屋、または集団での雑魚寝(ざこね)
である、とのこと。

舟って、ほとんど乗ったことがなかったので
知らなかった・・(汗)。


・・・

翌日、新島で講演のある、この日の天候は、
運悪く最悪で、
秋雨前線と、やってきた台風20号が合流し、
広大な暴風雨地帯を形成していた。

台風の威力そのものは、大したことないのだが、
前線との「干渉」により、強い風が発生し、
海上に強い波が発生していた。

このため、船は揺れまくり、
かつ、
港の中の波も荒れくるい、
かめりか丸が寄港しても、
着岸できない可能性がある、のだそうだ。

と、いうわけで、
ひさしぶりの二段ベッドで横になりながら、
不安な夜をすごした。


・・・

朝6時、
船内放送が、ひびきわたり、

ぐらぐら揺れて、ちょっと船酔いしていた
私の意識を、たたき起こす!


放送 「ただいま、なんとか、無事、
    大島に到着いたしました。

    なお、天候の都合により、
    利島(としま)、式根島へは
    就航(しゅうこう)しないことになりました。

    新島へは、「重い条件付き」の就航となります。」


お、「重い条件付き」の就航って、どういう意味だよ!

聞いたことがない単語や表現がならび、
私は当惑する。

部屋をでて、船員さんをつかまえて、問いただす。


山本 「新島への、重い条件付きの就航って
    どういう意味ですか?」

船員 「ああ。
    とりあえず、新島までいってみるんだけど、
    港の波の様子をみて、
    荒れてたら、あきらめるってことさ。」

山本 「・・新島の目の前まで行っても、
    着岸できない・・かもしれないってことですか?」

船員 「そうさ。
    条件付きの就航だから、しかたないさ。
    天気は、人間の力じゃ、どうにもならないからね。」

山本 「・・・」


既に、
利島(としま)、式根島への就航は、中止になった。

新島での就航は、「重い条件付き」に変更。


もはや、これは、新島で降りられない、可能性の方が高い、
と考えたほうがいい。

私が、講演を、すっぽかしたことは
これまで、ただの一度もない。

が、今回は、初めてそうなってしまう可能性がある。

だって、
下り(くだり)の新島で降りられないなら、
上り(のぼり)でも降りられない可能性が高い。

だって、台風20号は、いまも、刻一刻と
こちらに向かってきているのだから。

(これから条件は、さらに悪化する可能性のほうが高い。)


大島に着いた途端に回復した携帯電話をつかって、
パソコンをそれにつなぎ、
Eメールで、当法人の講演担当にメールを送る。

そして、主催者に状況を通知してもらい、
とりあえず、行けない可能性があることを
伝えてもらう。


このEメールを送ったことで
もはや、私にできることの全てを行ったことになり、
一気に力がぬける。

力がぬけた後に、襲ってきたものは、
強烈な「船酔い」だった。

揺れ続ける波に翻弄(ほんろう)され、
私の体と精神は、大きくゆさぶられる。


も、もし、新島で寄港せず、
おまけに
上りの新島でも寄港しなかったら、

わたしは、
東京の竹芝桟橋に戻るまでの、今から
「14時間」
の間、このまま船酔いを続けなければならないのか!?

(うう、吐きそう・・)





おっ


おえええぇーーーっ



か、仮にも「東京都に所属」する、伊豆七島の新島にいくほうが
アフリカの開発途上国にいくよりも、大変だったなんて・・

うう


で、でも、まさか、21世紀の現代日本に
天気の都合によって、

物資もとどかず、
人も移動することができず、

しかも
目の前までいっても、降りることすらできない島があるなんて
知らなかった・・

(で、結局、合計「22時間」、連続で船に乗ったあげく、
 結局、新島にはつけず、
 おめおめと東京の竹芝桟橋に戻ってしまう可能性があるなんて・・)






まだまだ、人生、未熟です。

また一つ、今日も勉強ちまちた・・


でも、船酔いだけは、勘弁して欲しいです、神様。





おっ


おえええぇーーーっ






東海汽船
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