.

・・・アメリカ、ラスベガスの学校、中学1年の「社会」の授業にて・・・


先生   「君たちにとって、『世界』が意味するものは何か?」
      "What does the world mean to you ?"

生徒たち 「・・・」

先生   「では、質問を変えよう。
      『世界』は、君たちに何を期待しているか?」

生徒A  「何も」

先生   「・・・そうだな。まだ選挙権もないし、
      私の許可がなければ、この教室から出ることもできない。
      つまり、今の君たちは、縛られている。

      しかし、それは永久にではない。
      君たちは、やがて、社会に出る。
      『世界』に出ていくのだ。」

生徒たち 「イエーーィ!」

先生   「しかし、もし将来、君たちが出ていった『世界』が、
      君たちの望むような世界ではなく、
      『くそったれ』"shit" と言いたくなるような、
      大きな失望でしかない、可能性もある。」

生徒たち 「げーーっ!」

生徒たち 「そんな時は、
      『世界』のダメな部分を、根本から変えてしまうことが必要だ。
      そうした努力が必要になる。
      その方法を考えることを、今日から、始めよう。

      これが、君たちへの、私からの課題だ。


       『世界を変えるためのアイデアを考え、
        かつそれを、行動にうつすこと』

       "Think of an idea to change our world.
        and put it into action !"


      この課題は、これから1年間つづく、特別な課題だ。」


生徒たち 「えぇーーーっっ!」


生徒A  「変よ」

生徒B  「クレイジーだ(狂ってる)」

生徒C  「難しいよ」


先生   「そうだな。そう考えることもできる。

      しかし、次のように考えることもできるよ。



      『可能かもしれない』と。



・・・・・・・・・・

生徒の一人、トレバー少年が、黒板に描いて、彼のアイデアを、説明する。


トレバー 「これが、僕です。
      そしてここに、3人の、別の人たちがいます。

      僕は、これから、この3人の人たちを助けます。
      何か、いいことをしてあげます。

      何か、大きなことです。
      本人ではできないような、何か難しいことを、です。

      それを、僕は、してあげます。

      その3人の人たちは、それぞれが、また違う別の3人に対し、
      同じことをしてあげます。

      これで9人になります。

      そして、その9人の人が、また同じことをすると、
      27人の人たちが、救われることになります。

      これを繰り返していけば、もしかすると・・


      その、大切なことは、
      助けてくれた人に、その『恩を返す』のではなく、
      全然違う人に、『恩を渡してゆく』ことです。

      感謝の気持ちを、次の人に伝えてゆく、
      将来に、その気持ちを、残してゆく、
      そんな感じです。

      その・・、"pay it forward" ということです。」





・・・・・・・・・・

さて、
この映画は、国際協力やボランティアを行う人たちには
非常に有名な映画である。

この映画をみて、
なにか、「良いこと」を
周りの人に対して、やってあげようという気になった、
という人が、私のまわりに少なくとも数人いた。

で、
こうした話を聞いた時、
(基本的に、へそまがりの)私は、
この映画に対して、否定的な印象をもった。

また、例によって、
ボランティアや、人助けの精神についての
「綺麗ごと(きれいごと)」の部分だけを描いた、
「空想」の作品なのだろう、と。

現実は、そんなに甘くない。
そんな単純な方法で、世界がよくなったりすることなど、
ありえないのだ、と。


・・・

しかし、映画を見終わって、印象が変わった。
これは、けっこういい映画かもしれない、と。

なぜかというと、
主人公である少年・トレバーは、
上記のように、三つの「人助け」を実行していくのだが、
ことごとく、失敗する。


麻薬中毒のホームレスを校正しようとするが、
結局だめで、またその人は、麻薬中毒に戻る。

火傷で精神に傷を負った男を
立ち直らせようとするが、どうしてもうまくいかない。

アルコール中毒の母親を、更生させようともするが、
どうしても彼女は、酒を飲むのをやめられない。


このため、トレバーは、挫折し、
「やっぱり、世の中は、変えられないんだ・・」
と絶望してゆく。



これを見て、私は、この映画に対する評価を変えた。
けっこうリアルに作られている、と思った。

世の中をよくしようと努力する人は、いるのだが、
それにも関わらず、よくならないのが現実である、
ということを、ちゃんと描写していたからである。


・・・

しかし、
トレバーが努力してくれたことにより、

「彼から恩を受けた3人」は、
それぞれが、
(自分自身の問題は、結局解決できないままではあるが)
それでも
他の人々に、「恩を渡そう」とした。

「恩を次の人に渡そう」としたのである。


 "Pay it forward"


・・・

その結果、
この"Pay it forward"ムーブメント(運動?)は、
ラスベガスから、ロスアンゼルスまで到達し、
地元のジャーナリストの知るところとなる。

で、
そのジャーナリストは、
ムーブメントに関わった人たちの足取りをたどり、
最終的に、その少年・トレバーにたどりつく。

ジャーナリストは、
その夜に放送する、テレビ番組の中の「特集」
"Pay it forward movement"
のため、
トレバーに、ビデオカメラの前でインタビューする。


・・・

「今日は、皆さんに、ユニークな中学生を紹介します。
 トレバー君です。
 "Pay it forward movement"を起こした少年です。
 
 君は自分が誇らしいだろう?」

「いいえ。」

「全然? それは、なぜ?」

「社会科の成績で、Aはもらったけど・・
 でも、結果は失敗だった。

 一生懸命、努力したけど、結果は、ダメだった。
 3人とも、ダメだったんだ。


 でも、
 ママは、それでも「次に渡して」くれた。

 僕が、ママに対してやったことは、失敗しちゃったけど、
 それでもママは、次の人に気持ちを渡してくれた。

 次に渡す運動、"Pay it forward movement"が広まったのは、
 ママのお陰だよ。
 ママには、「勇気」があったんだ。


 それでも、やっぱり、難しいみたい。
 感謝の気持ちを渡しても、なかにはとても臆病な人がいる。
 行動をすることが、できないんだ。

 自分の今までの生活を、「変える」ことを恐れる人がいて・・。
 変化が、怖いんだ。きっと。


 本当は、世界はきっと、それほど「くそったれ」"shit"ではないんだ。


 だけど、日々の暮らしに慣れきった人たちは、
 良くないことも、なかなか変えられない。

 だから、あきらめる。

 でも、あきらめたら、負けなんだ。


 もちろん、それは、難しいこと。
 周りの人が、どういう状況か、もっと・・
 よく見る努力をしなくちゃいけないし・・

 でも、そうすれば、
 一人の人を、「直せる」チャンスは、あるかもしれない。」




「今日は、君の誕生日だそうだね?

 誕生日の願いは、"Pay it forward movement" の
 世界への広がりかい?」



「いいえ。それは叶わないと思います。」


「どうして?」


「もう、遅いんだ」


「なぜ?」






「僕のローソクは、もう、吹き消してしまったから」

 "I already blew out my candles."




















Pay It Forward Trailer
http://www.youtube.com/watch?v=_pCtXRP1edo






・・・・・

補足1:

Pay it forward は、アメリカの映画。
邦題は、ペイ・フォワード。
2000年に公開。
監督は、ミミ・レダーという女性。

主人公のトレバー少年は、
シックス・センスなどで有名な
ヘイリー・ジョエル・オスメント。

(まだ、子どもなのに)
彼の「やや抑え気味の」演技がひかる。


補足2:

この映画は、DVDで見るのがお勧め。

本編を見た後に、
いわゆる、
ディレクターズ・カットと呼ばれる、
監督がしゃべりながら説明してくれるバージョンを
見る必要がある。

これを見ないと(というか、聞かないと)
監督が、どういう意図で、
このような演出をしたのかが、わからない。

本編だけでは、意味不明のシーンが、
いくつかあった。


補足3:

エンディングは、悲しい。
(上記した部分で、映画が終わるわけではない。)

あまりに悲惨で、
ここに婉曲に書くことすらできないほどだ。


このため、
アマゾンなどに投稿されたレビューを見ると、
「どうしてこのバッド・エンディングが必要なのか?」
という批判も多かった。

しかし、
それは、上記の、監督の説明、を聞くことにより、
ようやく、その謎が解ける。


補足4:

不思議なことに、
エンディングは悲しかったにも関わらず、

なぜか、わたしは、
この
Pay it forward 運動のようなことを、
むしろ、やる気になった。

(まわりの人の多くも、同意見だった。)


「このような努力をしても、
 世の中そんなにうまくいかないんだ」
という風に
思わせるエンディングでありながら、

なんと、これを見た人々の多くが、
「いや、それでもやろう」
と思わせてくれる、という
非常に不思議な技法がとられていた。


そこを私は、高く評価する。




補足5:

昔、ブログで、この話と、ちょっと似ている話を書いた。
参考まで。

あなたの力 1,644字
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/51192177.html


補足6:

うちの団体は、もともと、
以下のようなキャッチコピーで始まった。

「人に優しいことをすると、
 その人も他の人に優しくしてくれて、
 世界に優しさが広がっていく、
 という考えがあるんです。」

http://www.ets-org.jp/ets.html

このキャッチ・コピーを私が書いたのは、
この映画を見る数年前であったのだが、

偶然、ほぼ同じ概念のコピーを
考えついた、ということになる。


もちろん、
この概念だけで、世界がよくなることは
決してないのだが、

こうした活動(国際協力など)を続けていくための
一つのモチベーション(動機づけ、やる気)として、

心の奥底に、このコピーを置いておくのも
悪くないような気がする。



もちろん、私も、
それをおこなっている一人のつもりなのだが。