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今回取り上げる"TUVALU"は、
ドイツ人の「ファイト・ヘルマー監督」が作った
空想の世界のファンタジー映画です。

架空の楽園「ツバル」を夢見るカップルが
いつの時代、どこの場所ともわからぬ『プール』を舞台とし、
悲劇のような喜劇が展開される、不可思議な映画。

ほぼセリフはなく、無声映画に近い。
色は単色のセピア色で、映像はノスタルジックな感じ。
芸術性が高く、世界各地の映画祭で様々な賞を受賞。


なお、この映画は、
当法人の制作した、現実の世界のドキュメンタリー映画
「ツバル 大切なものに導かれて」
とは、全く関係ない内容です。
念のため。




・・・・・・・・・・

監督  「僕のアイデアは、場所から生まれる。
     ツバルは、10年程前、プールで思いついた。

     ツバルは、南太平洋に実在する島の名前。

     しかし、映画の中では、
     人々の憧れの地を表している。


     遥かな地への憧れ。
     自由への夢。

     幸福への壮大な旅。
     目的地のない人間の、冒険の先にあるもの。


     そんな感じの、人々の頭の中にある場所。


     ロケ場所を探すのが、大変だった。

     リッチな雰囲気のプールでありながら、
     古くて退廃した感じが必要。

     世界中のプールを捜した結果、
     最終的に、ブルガリアの首都、ソフィアにある
     プールを選んだ。

     理由は、プールのイメージがぴったりだった
     だけじゃなくて、
     建物のすぐ外に、海と、沈没船があったからだ。


     プールと、沈没船。
     完璧な組み合わせだった。

     なぜかというと、
     『内』と『外』のコントラストを
     表現したかったから。

     もちろん、人間の内面と、外の世界、ということ。


     僕にとってのプールは、
     人間の内面の象徴で、
     オアシス的な存在なんだ。

     しかし、
     外の世界は、さびれた港と沈没船。

     それを表現したかった。


     僕が作りたかったのは、
     悲劇的な喜劇、だった。

     悲しさが全編にただよっている、喜劇だった。

     世界が消滅する前に、
     人は、ありったけの幻想を夢見る。

     その人間の悲しみを表現したかったんだ。


     しかし、皮肉なことに
     人間は、その悲しみに適応してしまう。

     そこに、喜劇が生まれてゆく。


     主人公の男性「アントン」は、住み込みで、
     盲目の父親といっしょにプールで働いている。

     主人公は、もう、30歳ぐらいになるのに、
     一度も、プールのある建物から
     外に出たことのない『少年』。


     父親は、様々な幻想を抱いていて、
     息子の逃亡を恐れ、
     外出をいっさい禁じている悲しい人間さ。


     主人公にとって、唯一の外界は、
     そのプールがある建物の、屋根の上だけ。

     ある日、その屋根の上から、
     主人公は、
     かわいい女の子を見かける。

     そして、また別のある日、
     そのかわいい女の子が、プールにやってくる。

     主人公は、恋に落ちる。

     そして、その、かわいい女の子は、
     不思議な地図を持っていた。
     『ツバル』という架空の場所、
     あこがれの場所へ行くための地図を。

     そこで主人公のアントンは、
     彼女のために、船の『マシン』(動力源?)を作ろうとする。

     そして・・、というストーリーさ。

     
     俳優の出身地は、関係なかった。
     セリフがないんだから、言葉も限定されないし。

     場所も、どこどこの国、という設定すらない。

     だから、いろんな国で
     俳優のオーディションをした。

     主人公は、フランス人。
     ヒロインは、ロシア人。

     あと、アメリカ人も、ドイツ人も、
     ブルガリア人も、ルーマニア人も、いろいろいる。

     僕は、ドイツ人だけどね。


     セリフが無いことは、
     いくつかの良い効果を産んだ。
     俳優たちは、
     感情表現や動きだけに集中することができる。
     セリフを間違える心配など、しなくてすむからね。
     ある意味、奥深い演技を、追及できると思う。


     しかし一方で、
     『サイレント映画』(セリフのない映画)は、
     ここ40年ほど、なかった。
     だから、いろいろな人から、無茶だと言われた。

     僕らも最初は不安だったけど、
     俳優たちの素晴らしい演技が、ささえてくれた。

     どんなに無理だと言われようが、
     挑戦することに意味がある。
     そんな時代錯誤なもの、と非難されても構わない。
     ぼくは、撮りたいものを撮りたい。 


     この映画は、アメリカでは、きっと
     見向きもされないだろう。
     だから、ヨーロッパ向けの作品だね。(笑)   
 

     これは、現代の話じゃない。
     未来のようであり、でも、ノスタルジックなんだ。

     古い乗り物や、古い機械しかでてこないから、
     昔の話であるとも解釈できるし、

     一方で、未来でありながら、
     近代化や文明の発達を、むしろ恐れた
     人間たちの集落の話、かもしれないよ。

     
     そうして、ついに、できあがったんだ。

     どこの場所か、どこの時代か、
     未来の話か、過去の話か、すらわからない、
     不思議な映画、"TUVALU"が。」














Tuvalu, a film by Veit Helmer
http://www.youtube.com/watch?v=TqrgLDSA7K8