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「私の大切なものは、家です。

 家は、

 『知らない人から見つめられるという恐怖』

 から守ってくれる、唯一の場所だからです。」


(Mちゃん、16歳、女性)


ケニアの、
HIV/エイズとともに生きる百数十人の子どもたちに
「あなたの大切なものは何ですか?」
という質問をし、それを絵に描いてもらいました。

(写真: お絵描きイベント)

96_MG_2425_お絵描きa






すると、一人の少女が、
こんな絵を描いてくれました。

(写真: Mちゃんの写真)

55_MG_0063_お絵描き、家を描いた子a






(絵: Mちゃんの家)

55Km_064a_家






・・・

HIVとともに生きる人々は、
エイズを発症しないように
毎日たくさんの薬を飲まないといけません。

薬を飲まないと、発症してしまい、
結核や肺炎、癌などで、
死んでしまうかもしれないからです。

(写真: Mちゃんが毎日飲む薬)

55_MG_0512_薬の実物a











これらの薬を飲むために、
HIVとともに生きる人々は、
毎月一回、
病院にいって診察を受け、
薬をもらわないといけません。


病院の中に、
包括的治療センター ( CCC )
( comprehensive care center : CCC )
という名前の建物があります。

(写真: 包括的治療センター ( CCC ) )

55_MG_1027_CCCa






HIVに感染している人々は、
ここで診察を受けます。

CCCという抽象的な名前がついている理由は、
周りの人に、ここに来ている人たちが、
HIVに感染している人たちだと
わらかないようにするためです。

しかし、今では、村人の間でうわさが広がってしまい、

「CCCに行っている、ということは、
 その人は、HIVに感染しているということだ」

と周りの人も知ってしまいました。

このため、HIVに感染している人たちは、
CCCに行きにくくなってしまいました。

(写真: 暗い風景)

55_MG_2693_病院の子の家a








・・・

HIVに感染してしまうと、
社会の人から冷たい視線で見られることが多いのです。

これは、迷信や誤解があるためです。
その一つを紹介します。

(ケニアの半分以上の人は、キリスト教徒です。)


「神は、やがて来る審判の日に、
 善行(ぜんこう)をつんだ人間は天国へ送り、
 悪行(あくぎょう)をつんだ人間は地獄へ送る。

 しかし、神は、
 あまりにもひどい悪行をつんだ人間は、
 この世において、生きながらにして、地獄に落とす。

 それがエイズという病気である。
 エイズは、神がかけた呪いである。
 エイズ患者に近づくと、
 自分も呪われてしまうので、近づくな!」

(写真: お墓の写真)

55_MG_0781_墓a











・・・

また、最初エイズは、(歴史的に)
同性愛の人々から見つかったことや、
売春などのセックス・ワーカー(性行為を職業とする人)
たちの間で広がっていった経緯があったため、

そうした人々だけが感染する病気だと誤解されている
場合が多いのです。

このためHIVに感染した人に対する偏見がもたれ、
差別が行われています。

このような迷信や誤解があるため、
HIVとともに生きる人々は、
病院にいくことがなかなかできません。

(写真: 人々の視線)

55_MG_2111_視線が怖い_合成a











・・・

現在、
HIVというウィルスを完全に殺す薬は、
まだ、開発されていませんが、

HIVと共存し、ともに生きていける薬は
開発されています。

しかし、
上記のような理由のため、
HIVとともに生きる人々は、
病院にいくことが、できず、

エイズを発症してしまい、
結核・肺炎・癌などで死んで行ってしまうのです。

(写真: 病気の人)

96_MG_2909_点滴a






偏見 prejudice

差別 discrimination

社会的恥辱 stigma


こうしたものが、
HIVとともに生きる人々の
命を縮めてゆきます。






・・・

ですから、
Mちゃんは、こう言ったのです。


「私の大切なものは、家です。

 家は、

 『知らない人から見つめられるという恐怖』

 から守ってくれる、唯一の場所だからです。」


(写真: お母さんに守ってもらっているMちゃん)

55_MG_0208_家の子の家、祖母a







・・・

HIVとともに生きる人々の現状は、
このようにとても大変です。


HIV/エイズの問題を解決するには、
医療の問題だけではなく、
差別や偏見を始めとする、社会にある
様々な問題を、解決しなければならないからです。



けれども、
今、この瞬間も、

ケニアで、いや、世界中で、
彼ら彼女らを救うために、
たくさんの人が働いています。


病院の現場で、医師や看護師が、

コミュニティーで、
HIVとともに生きる人々の人権を守ろうとする人たちが、

政府や村の中で、
誰でも医療を受けられる仕組みを作ろうとする人たちが、

なんとかしようと、がんばっているのです。


・・・

(写真: Mちゃん、メガネあり)

99_MG_0353_家の子a











私が、そんな風に、
「世界で困っている人を助けようとする人を
 増やす活動をしているんだ」
という話をしたら、

2週間の取材の最後に、

彼女は、

メガネをはずしてくれました。



自分の「家」から出てくれた彼女は、

とても、美しく、まぶしかったです。


(写真: Mちゃん、メガネなし)

99_MG_0374_家の子a





























書籍: 

HIV/エイズとともに生きる子どもたち ケニア (2009/11/28、本日、発売!)
小学館
山本敏晴
(NPO法人・宇宙船地球号・代表 元・国境なき医師団・理事)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/409726401X

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関連ブログ:

国連エイズデー、HIV世界の現状 7191字
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エイズ第二章、HIV/AIDSの社会的側面 6,132字
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それでも生きる子供たちへ
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