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金色で書かれた文字が、壁で輝いている。

「ファーストクラス・アンド・さくらラウンジ」

その大きな看板の横に、
そこへ入る自動ドアがある。

しかし、私は、その前で、しばし立ち止まる。


仮にも、「ファーストクラス」と書いてある場所に
自分なんかが足を踏み入れてもいいもんだろうか、と。


すり足気味で、おそるおそる歩を進めると、
私が予想していたよりも、早い段階で「突然」自動ドアが開き、

私は、「びくっ」とし、
自分がおこなってしまったことを後悔し、下をむいた。


でも、もう、止まることはできないと、
ふと目を上げると、


私の前には、金色に磨き上げられた床が光っており、
その上に、3人のピンクのジャケットを着た女性たちがほほ笑んでいた。


「ようこそ。J社、さくらラウンジへ」


・・・

ピンクのジャケットのお姉さんに、
飛行機の搭乗券を提出し、
さくらラウンジの中へ入ると、その広さに驚いた。

なんだこれは!

400平方メートルは下らない広さがある、
広大なラウンジ(応接室)である。

部屋の半分以上の壁には、天井までとどく、広い広い窓があり、
まばゆいばかりの光を、ラウンジの中へ呼び込んでいる。

室内の調度品は、
白と、ベージュで統一されており、
それら全てが、昼の陽光で照らされている。


まるで、この世のものとは思えぬ、
「白と、わずかな色彩」とで統一された
「リゾートホテルの昼下がり」のような空間がそこにあった。


窓の外には
空港に直結された、
J社の飛行機群が一列にならび、

整然と並ぶ、その航空機の隊列からは、
「経済大国ニッポン」の、栄光と繁栄を彷彿(ほうふつ)させる。


ああ、
広大なこのラウンジに配置された、
百席以上はあろう、ソファーたちの
いったい、どれに、私は座ろうか?


・・・

このような空間に入れることは、
二度とないかもしれないので、
とりあえず、遊園地をおとずれた気分で、
ラウンジの中を、一通りまわってみた。

その設備の贅沢さに、驚嘆する。


ソファーは、いろいろなタイプがあり、
頭まで支える背もたれの高いものから、
腰あたりだけのものまで、十数種。

マッサージチェアーも数種類が用意されており、
無料。

仮眠用のベッドもあり、
その横には、
ヘッドカバーなる、白い布(紙)がある。

(これは、なんに使うのかなあ?)


あと、
驚いたのは、
トイレの便座にも、ウォシュレットだけでなく、
マッサージ、というボタンが付いていたこと。

(あれ、どうやってどこをマッサージするんだろう?)


インターネットの、
無線LAN,有線LANは、
当然のように完備。

それどころか、
ほとんど全てのソファーで
インターネットが自分のパソコンでできるよう、
電源と有線LANの穴がすぐそばの壁に付いている。


新聞は、無料で、盗み放題。
雑誌は、数十種類を用意。


最大の関心事である、飲食ブロックには、
以下のラインナップがあり、
思わず、生つばを飲み込む。

・・・

食品オリンピックとも言われる「モンド・セレクション」において
世界ゴールド金賞を受賞した、
プレミアムモルツ、が飲み放題。

その横に、
日本で最も売れているビール、
アサヒ・スーパー・ドライが滴(したた)り落ちている。

どちらも、無料!


そのおつまみと思われる、
チーズ、柿の種、クラッカー、飴玉等が、
無限に用意。


また、飲み物は他にも、

20種類のアルコール
 ワイン、日本酒、ウィスキー、ブランデー、他

20種類の、ソフトドリンク
 コーラ、スプライト、ジンジャーエール、他

手作りジュース(?)として
グレープフルーツジュース
オレンジジュース
トマトジュース
林檎ジュース


(あと、私のお気に入りの)
J社オリジナル・ドリンク: スカイタイム「ゆず」


ついでに、

ポカリスエット(缶なので盗み放題。機内に持ち込むため拝借。)
ウーロン茶
コーヒー
紅茶
牛乳



コーヒーと紅茶の横には、
クッキー3種類が置かれており、

マカダミアナッツとココアクッキー
ヘーゼルナッツクッキー
紅茶クッキー、

があり、
どれも、美味しかった。


以上、全部、食べ放題!


たぁーべ、ほぅおーだいっ!

たぁーべ、ほぅおーだいっ!

ほっほー!


・・・

さて、座る場所であるが、

結局、
いろいろ考えた末、

天井までとどく広い窓のそばにある
白いソファーに、私は座った。

窓際の席にも
全席、パソコンを使うための
電源コードを刺す穴と、LANケーブルが
完備されているからだ。


(ところが、
 私が座った場所のLANケーブルは、
 うまくインターネットに接続できなかったので、

 私が、おたおたしていたところ、

 ピンクのジャケットをきた女性スタッフが飛んできて、
 すぐに、私を、
 確実にLANに接続できるシートへ、連れていってくれた。

 なんという、気配り!
 というか、事態の察しの良さ、であった。)



今、私は、このような状況で、
このブログを書いているのです。

ああ、
なんか、幸せな気分。


太陽は、ぽかぽか降り注ぎ、

私の体と心を温かくし、

食べ物も、飲み物も、全部、無限にある。


えっ、

あっ、そうだ!


ここで、一生、暮らしたら、どうだろう?


成田空港からは、
夜中でも、しょっちゅう飛行機が離着陸しているから、
朝までここにいても、変に思われないんじゃないかな。


(誰にも)怒られないんじゃないかな。


ラウンジを管理しているスタッフの人たちは、
おそらく、
8時間交代制で、勤務を代わるだろうから、
24時間、私がここにいても、
きづかないんじゃないだろうか?


もしかすると、一生、ここに座っていても、
ばれないんじゃないかしら?



うふふ



将来、お金がなくなったら、
残るお金で、J社のビジネスクラスの中で、
一番安い航空券をかって、
さくらラウンジに入って、


残りの人生は、一生、ここでおくろうっ、と。



今日は、いい日だ。

(残りの)人生計画もたったし。

これでもう、年金など、払わなくても大丈夫。


ありがとう。
台湾の人たち、
こんなあたちを、ビジネスクラスで
講演によんでくれて、ありがとう。

おかげで初めて、さくらラウンジに入れたよ。


このラウンジが気に入って、
このままここに永久に居ついてしまって、
講演にいかなかったら、ゴメンしてね。


うふふ


・・・


あ、

あれっ、

あれあれっ、




ピンクのジャケットの人が、

また、あたしのほうに、歩いてくるよ。


な、なんでだろう。



(あたちの、考えが、ばれてちまった?

 一生、ここに居るつもりだと、ばれてちまった?


 昔から、わかりやすい性格だと言われるけど、

 しょ、しょんなはずは・・・)




ピンクのジャケットのスタッフは、

私を見つめると、こう言った。



「お客様、台湾へ出発のお時間でございます。」



ピンクのジャケットの女性スタッフは、

私に一目ぼれして、

じゃなくて、全ての客の旅客機の出発時刻を把握していて、

ちゃんと、乗り遅れないように、

いちいち教えてくれるのである。


なんという、サービス!


「あ、ありがとうございます。」


と、私は言って、
机の上に広げた、
仕事用の、パソコン一式セットや、
文献各種をしまいこむ。


しかし、
この「白と、僅かな色彩」でつつまれ、
その中を
「ピンクの蝶」(女性スタッフのこと)が飛び交う世界から
なかなか、去っていく気にならない。


躊躇(ちゅうちょ)すること、十数分。


名残(なごり)惜しさを抑えて、
私はついに立ち上がり、
さくらラウンジの出口への道を歩む。


・・・

出口の近くまで来たところ、
螺旋(らせん)状の階段を降りてきた客がいた。

えっ、

このラウンジには、二階があったのか。

し、
しかも、その客からは、
まごうことのない、「カレーの匂い」がするではないか。


えええっ

私は、慌てて、
入口付近にいた、3人のピンクの蝶に話しかけた。


「もしかして、ここって、二階に、食事できるとこ、あるんですか?」

「はい。左様でございます。」

「食事すると、おいくらぐらい、なんですか?」

「無料でございます。(にっこり)」

「えっ! ・・・(絶句)」


私は、時計を見た。

もう、搭乗開始の時間をすぎている。


でも、食べる時間は、ないかもしれないが、
どんなメニューがあるか、
一目(ひとめ)見る時間ぐらいの余裕は、あるだろう。


荷物(ピギーバック)をひきずって、
階段を駆け上がり、
二階に到着すると、

なんとそこは、
ビュッフェ(バイキング)スタイルの「レストラン」になっていた。


(私は、くやし涙が、こみあげてくる。)

(だって、無料のレストランなんて、
 きいたことないのに、
 食べる時間がないんだもん!)


私は、土壇場(どたんば)においては、
驚異的な記憶力を発揮する人間である。

以下、私が、9秒の間に見てまわり、
脳に記憶した、メニューの数々である。


・・・

鶏肉と玉葱(タマネギ)のバルサミコ風

鱈(タラ)の吹雪煮(ふぶきに)

イタリア風ミネストローネ

野菜と肉のトマトシチュー

ホタテ入りグラタン

山芋うどん、梅肉風

特製ビーフカレー

オレンジマフィン

プラムマフィンン

クロワッサン

レザンレワ

味噌汁

ご飯



以上、全部、食べ放題。

無料。


・・・


ああ

あああ


どれも食べたかった。

どれもこれも食べたかった。


どれもこれもあれもそれも食べたかった。



「白い空間を舞う、ピンクの蝶たち」の上の世界には、

こんな

「無料の超絶レストラン」

という、

天国を超える「極楽浄土」(ごくらくじょうど)の世界があったのだ。



・・・


そして、今、

くやし涙をぬぐいながら、私は台湾へ向かう飛行機に乗る。



私は、ここに誓う!


絶対、いつの日か、またビジネスクラスの航空券を手にし、

この、さくらラウンジを訪れ、


絶対、絶対、


どれもこれも食べます。

どれもこれもあれもそれも食べます。


どれもこれもあれもそれも、パクパクパクパク食べるのです。



もちろん、その時の掛け声は、あれです。






たぁーべ、ほぅおーだいっ!

ほっほー!























ああ、スーパーシート! 2,746字 (お笑い)
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