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地球温暖化に対する対策を、
世界中の国が集まって話し合う会議
が、昨日から始まった。

正式名称は、
「気候変動枠組み条約」(UNFCCC)の、
「締結国会議」(Conference of Parties)の、
(毎年やっている会合の) 15回目なので、
通称、「COP15」、という。

デンマークのコペンハーゲンで行われる。

これに、
京都議定書(COP3、1997年)の時は、参加していなかった、
CO2の大型排出国である
中国、アメリカ、インドの各主席が出席することになり、
はずみがついた。

これで、一応、
CO2排出に関する「主要国」のほぼ全てが
参加することになったからだ。


・・・

注:
気候変動枠組条約(UNFCCC)
United Nations Framework Convention on Climate Change
http://unfccc.int/

http://www.env.go.jp/earth/cop3/kaigi/jouyaku.html

注:
COP15
締約国会議 (Conference of Parties)
United Nations Climate Change Conference Copenhagen 2009
http://en.cop15.dk/


・・・

一方で、
各国のCO2削減目標も発表された。


・・・

最後までCO2の削減目標を発表しなかったインドが、
ようやく最近、発表した。

インドは、
国内総生産(GDP)当たり二酸化炭素(CO2)の排出量を、
2020年までに2005年比で20〜25%削減する、
という。

しかしこれは、
1990年比で考えた場合、むしろかなり増加する。
(中国と似たような方針だが、この件は後述。)


ここで、各国の削減目標を、まとめておく。

(ちなみに、GDPとは、各国の国内総生産、のこと)


・・・

日本: 1990年比で25%削減

    (1990年比換算、25%削減)

アメリカ 2005年比で、17%削減

    (1990年比換算、4%削減)

中国   2005年比で、単位GDPあたり40〜45%削減

    (1990年比換算、おそらく、500%増加)  

    (上記は、毎日新聞の予測試算) 

EU   1990年比で、20〜30%削減

    (1990年比換算、20〜30%削減)

ロシア  1990年比で、22〜25%削減

    (1990年比換算、22〜25%削減)

インド 2005年比で、単位GDPあたり20〜25%削減

    (1990年比換算、??%増加) 

オーストラリア 2000年比で、25%削減

    (1990年比換算、11%削減)

カナダ  2006年比で、20%削減

    (1990年比換算、3%削減)

韓国 2005年比で、4%削減

    (1990年比換算、??%増加)


・・・

簡単にまとめると、


日本は、
1990年比で、25%削減を公表しているものの、
現実的に考えた場合、産業界の反発が強く、
(真水(まみず)と呼ばれる)国内での「本当の」CO2削減を
おこなうことは、まず無理である。

例えば、経団連会長などが、25%削減に強烈に反発しており、
国内排出の最大のセクター(部門)たちのそろう、産業界が
それに協力してくれるとは、あまり思えない。

(ポーズとして、そこそこやる程度と思われる。)

よって、日本が上記を実現するためには、
最終的に(2020年直前に)
国際排出権取引市場などをつかって、ロシアあたりから
金(かね、国家予算)でCO2排出権を買う、などの方法しかない。

これは、
鳩山首相が、国内における排出削減の方法を、
まったく示していない(アイデアのない)状態で、
25%削減、という数字を言いだしたためで、

鳩山首相は、それを実現できないだろうから、
そのつけを支払わされるのは、
我々国民(の税金)となる。


・・・

アメリカは、
現在、アメリカ国民の失業率が10%以上、
オバマ支持率が50未満に下落しているため、

失業問題をさらに深刻化させる
CO2削減対策など、とれるはずがなく、
1990年比で、4%削減、という
現実路線を主張した。


・・・

中国は、
「自称」、「途上国」のため、
今後も、発展をしていくことを正当化しており、

基本的に、今回のCOP15でも、
京都議定書の、付属書I国(先進国)だけが、
数値目標を義務付けられるべきだ、とし、

COP15で作られる新しい枠組みも、
京都議定書の単純延長とされることを望んでおり、
中国などの途上国は、義務化されないことを
強硬に主張。

以下のCO2削減方針を打ち出しているが、
それが国内的な「目標」にすぎず、
それが仮に実現できなくても、
国際的な罰則は適応されない方向。

中国の方針(国内目標)は、
2005年比で、単位GDPあたり40〜45%削減
である。

これを1990年比の、CO2総排出量(絶対排出量)に
換算すると、
1990年比換算で、
毎日新聞は、500%増加!、
としている。

本当なのかと思って、
私が自分で、データから計算してみた。

1990年の時点で、中国のCO2総排出量は、22億トン
だった。

2005年の時点で、中国のCO2総排出量は、56億トン
ぐらい。

中国のGDPは、毎年10%ぐらい成長しているので、
2005年のGDPを、1.0 とした場合、
2020年のGDPを計算してみると、

1.0 X 1.1の 15乗

(1に、1.1を、15回、かけ算する。)

結果は、4.17725、となる。

つまり、
2020年に、中国のGDPは、2005年の約4倍になる。

もしも、
CO2の排出量が、GDPと比例して増えるのだとした場合、
2005年のCO2総排出量である、56億トン
を、4倍すると、
224億トン、となる。

で、仮にこれを、GDPあたりで、40%削減したとすると、
224億トンx0.6=134.4億トン。となる。

これが、2020年の、中国の予想排出量である。

この数字を、1990年の22億トンと比べるために、
134.4億トンを、22億トンで割ると、6.1、となる。

つまり、約6倍(600%増加)になる!。


上記のように、
経済成長率およびCO2排出量を、毎年10%増加として計算した場合
中国は、1990年比で、600%増加、させる、
と言っているのと同じである、ことになる。


(経済成長率を、10%でなく、8%に仮定して計算すると、
 2020年のGDPが、3.172倍。
 よって、2020年のCO2排出量が、178億トン。
 これを、40%削減したとして、106.6億トン。
 で、1990年の22億トンで割ると、4.8445倍。
 つまり、約5倍になり、500%増加、ということになる。
 毎日新聞は、これを採用しているのだろう。)


ともかく、
1.中国の方針は、達成したところで、とんでもない数字であり、
また、
2.それを国内の方針、としているので、国際的な約束にする気はない。

この二つが、おそらく、
今回のCOP15における中国の「外交カード」であり、
おそらく、
ぎりぎりのところで、
後者のほうを譲歩し、中国は、
国際社会に貢献した(国際社会のために譲歩した)、
などといって恩をきせるつもりに違いない。


・・・

インドは、この中国の動きをみて、
自分も、ほぼ同じ戦略をとる気のようだ。

GDPあたりでCO2を削減する、と言っている時点で、
真似をした、と考えてよい。


・・・

以上が、主な各国の動きであるが、
ま、
状況は、ほぼ絶望的だと私は思う。

(予想通りではあるが。)


今回、途上国たちが、
(自分たちにCO2削減義務を課されないために)
(先進国だけに排出削減目標のある)
京都議定書の単純延長(数字だけは厳しくなるが)
を望んでおり、

先進国側は、(少なくとも日本は)
それには絶対、同意できない、と言っている。

よって、
COP15で、各国が合意する(国際的な罰則のある)
「新たな議定書」が作られる可能性は、ゼロである。

で、まあ、
しょうがないので、
とりあえず、なんらかの「政治的合意」をめざそう、
という方向のようだが、
それすらも、かなり難しいと思う。

・・・

一応、昨日の新聞によると

「主要包括COP決定」という名前で、

1.先進国の削減目標(数値目標あり、罰則もあり))
2.途上国の削減計画(数値目標あっても、罰則はなし)

3.途上国への短期支援の分担
4.途上国への長期支援の分担

を目指すことになりそうだ。


で、まあ、私が考えるに、

中国、インドという、CO2排出大国が、
CO2(総)排出量を、まったく減らす気がないため、

大気中のCO2濃度の上昇は、上がり続け、
よって、
地球の温度は、どんどん上昇すると考えたほうがよい。

(残念ながら本当だから、しょうがない。)


よって今後は、

「緩和」と呼ばれるCO2削減策に力(お金)を入れるのではなく、

「適応」と呼ばれる、
(温暖化することは、もう防ぎようがない、として、)
それが起こった場合の対策のほうに、
より力を入れるほうが、妥当になる可能性がある。

(高温で育つ農作物の品種改良や、海面上昇の対策等)


で、
ポイントは地球温暖化が起こった場合、その被害に会うのは、
80%以上が途上国(しかも小国)の人々であるから、
先進国や、中国・インドといった主要国は、
そうした地域への国際協力(予防的対策措置)を、
どんどんやるべき道義的責任がある、ということである。


・・・

なお、
地球温暖化が起こった場合、
途上国(の小国)がどのような影響を受けるかというと、

アフリカでは、

 2020年までに、1〜2億人が、
 気候変動にともなう水不足(による農業収量の減少)や、
 逆に、集中豪雨による洪水の危機にさらされる。

アジアでは、

 ベトナム紅河流域、メコン川流域、バングラデシュのデルタ地帯
 など、河川と海がぶつかる辺りに住んでいる、
 それぞれ数百万人の人の住む地域が
 海面上昇および気候変動によって強大化する台風の影響で、
 水没や洪水にみまわれる可能性が高い。

南米では、

 飢餓のリスクにさらされる人が、
 2020年に500万人、2080年に8500万人
 まで増加する。

全世界では、

 マラリアを媒介する蚊が生息できる地域が拡大するため、
 1.3度しか上昇しなかった場合でも、
 マラリアの被害が1〜2億人増える。

 2050年までに、利用可能な水が、10〜30%減少する。
 2080年までに、30億人が水不足となる。

 4度Cを超える上昇が起こった場合、
 全生物種の40%が、絶滅の危機にさらされる。 
 

(以上、すべて気候変動に関する政府間パネル・第四次報告書より)


ともかく、
これらの国々に対する、「適応」策を中心とした
国際協力(資金援助、技術強力)が望まれる。


・・・

あと、
経済学的に考えると、

「緩和」策と「適応」策の
どちらにお金をかけたほうが、
総合的な被害が少ないか、ということも
考えないといけない。

当然そこには、
(温暖化対策による)経済的なダメージも考慮される。

で、
この、どちらがいいか、
ということを試算してみるためには、

各国が2020年までに、何%CO2を削減する、
と明言してくれたほうが計算しやすいのだが、

中国やインドのように、
経済成長率の大きい国が、
GDPあたりCO2は??%削減する、
なとど言われても、

今後の15年間の間に、
どのくらい、実際にGDPが増え、
その結果、どのくらいCO2が出るのか、予想しにくい。

このため、
「緩和」策と「適応」策の
どちらにお金をかけるのが、
より効率的に、総合的な被害を減らせるのかを
計算することが、難しくなっている。


このことも、一つのポイントになっているが、
中国やインドが、
「GDPあたりで減らす」
という部分を、譲歩する可能性は、まあ、ないと言ってよいと思う。


うーーむ。未来は暗い。








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