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気候変動枠組み条約の、
第15回めの締結国会議(COP15)が、
閉幕した。

予想されていた通り、二つのことが起きた。

1.
中国、インドなどが
(2020年までにCO2を削減する目標値を)
義務化されることを拒んだため、
各国ごとの(罰則のある)数値目標の設定は、
行われなかった。

2.
温暖化対策に関する、
途上国への資金援助などが、
今後、巨額に行われることになった。

これらに関し、個人的には、三つの感想がある。

1.
人類は、温暖化を止める最後のチャンスを
逃してしまい、残念だった(悪いことだった)こと。

2.
しかし、上記のため、今後は、
緩和策(CO2削減)ではなく、
適応策に力を入れるのが妥当となったので、
今回、最終的な政治的合意で、
途上国への巨額の支援が行われることになったのは、
まあ、
ある意味、一つの落としどころだったのかなぁ、
(妥当だったのかなぁ)
とも思っている。

3.
日本の立場としては、
日本とEUだけが、
1990年比で、CO2削減を25%行わせられる、
(他の国は、減らさないどころか、増やすのに、やらせられる)
という、最悪の結果を避けられたことは
良かった、と思う。


つまり、
悪かったこと、妥当だったこと、良かったこと、
という三つの全てが起きたのが、
COP15、だったのである。


それを追って、説明してゆく。


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1.残念だったこと(悪かったこと)

地球温暖化を止めるには、
2028年に突破すると考えられている
(産業革命以来)プラス2度Cを
突破させないことが必要だった。

大気中に放出されたCO2は、
いったん、海などに吸収された後、
10年かかって大気中に再放出されるので、
2028年の2度C上昇を防ぐには、
2018年までに、大気中へのCO2の排出を
減少させなければならなかった。

しかし、
2020年までのCO2排出削減を決めるべき
(今回の)COP15において、
各国に数値目標を課さないことになったので、
(各国は自主目標を決めるが、それに対する罰則はないので)
上記の2度Cの上昇を防ぐことは、
事実上、不可能になったと考えてよい。


ちなみに、
2度Cを越えてしまうと、
「シベリア凍土や氷河の融解によるメタンガスの放出」などによる、

「温暖化の加速化(暴走)」が起こる可能性があり、
おそらく、100〜150年後までに
地球は、6度C前後まで上昇していってしまう可能性が高くなる。


参考:
暴走する、地球温暖化 point of no return は本当か? 9021字
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65332280.html


・・・

また、逆に、
一般の人があまり知らない事実も紹介しておくと、
逆に、地球の温暖化は、6度C前後までしか上昇しないことがわかっている。

理由は、
地球が温暖化してゆくと、
地球から宇宙に向って放射される(逃げる)赤外線(熱)の量が増大し、
温室効果ガスでトラップ(吸収)される量よりも、はるかに大きくなるからである。

このことは、
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第四次報告書にもそう書いてあり、
かつ、
現在よりもCO2濃度が5倍もあった白亜紀の気温が6度高いだけであったこと
などから、ほぼ確実と思われる。

(より科学的な詳細は、上記のURL参照)


つまり、
温暖化は、ほおっておいても、いつか勝手に止まるのである。

よって、
温暖化対策のうち、我々が、
「緩和策」と呼ばれる「CO2の削減」をする意味は、

「温度が上昇してゆく速度を遅らせることにより、
 時間的な余裕を作り、
 温暖化対策に必要な資金の準備をしたり、技術の開発をしたり、
 被害が甚大になる開発途上国への「適応策」(後述)を講じるため」
だということになる。


ところが、COP15の直前に、
(現在、全世界からのCO2排出量の21%を担う)
排出量世界一の中国が、
「2005年比で、単位GDPあたり40〜45%削減」
という
「国内目標」(国際的には規制も罰則もなし)
を言ってきた。

中国のGDPは、毎年8〜10%増加しているため、
かりに上記の国内目標を守ったとしても、
2020年、中国のCO2排出量は、
5倍から6倍になる(500%から600%増加する。)


(以下のURLに、中国のCO2排出量の計算方法を掲載)

参考:
COP15開幕!、中国、アメリカ、インド主席が参加 4738字
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65330619.html


で、
現在、中国のCO2排出量は、すでに21%なのだから、
(それが5〜6倍になるので)
将来的に中国は、一国だけで、
現在の地球全体からのCO2総排出量を超える量のCO2を
放出してゆく可能性が高い。


ちなみに、
インドも、似たような方針を打ち出している。


一方、
日本とEUが担っているのは、
全世界からのCO2排出量の10〜20%程度であり、
そのうち、
25%を削減したところで、
全世界からのCO2排出量を、4〜5%減らすにすぎない。


かたや
中国やインドが、その国だけで、
500〜600%増加させるのだから、
日本やEUが、CO2の排出削減を(4%程度)する意味は
「焼け石に水」、ということになる。


また、
上述のように、
CO2上昇による温暖化は、
やがて6度Cで頭うちになることがわかっている現段階で、

CO2排出削減を
(日本やEUだけが)行う意味が、何かちょっとでもあるのか??
という
強烈な疑問が生じることになってしまう。


(なぜなら、中国やインドが発展を終えて、
 じゃあ、いよいよCO2削減を始めようか、
 という2100年ごろ(?)には、
 もう既に地球の気温は、MAXである6度上昇まで
 達してしまっている可能性もあるからだ。)


と、いうことは、
もう、上記が決定的となってしまった(COP15の)後は、
(日本の政府も企業も民間も)
CO2削減など、今後、全くやらなくてもいいのか??、
という、甚大な「疑問」が生じる。


これに関し、今後、詳細に検討してゆくことにする。

(先入観をなしに、純粋に科学的に検討する予定。)


参考:
Stern Review on the Economics of Climate Change- HM Treasury
http://www.hm-treasury.gov.uk/sternreview_index.htm

スターン報告書: 気候変動の経済学
http://www-iam.nies.go.jp/aim/stern/SternReviewES(JP).pdf


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2.妥当だったこと。

1.の理由で、
日本とEUだけが、CO2を削減するような
「政治的合意」をしても、なんの効果もないわけだから、

COP15において、
CO2排出削減に対し、なんの取り決めもできなかったのは、

こうなってしまった以上
(中国、インドからの莫大なCO2放出が決定的である以上)
逆に、妥当だったのかな、とも思う。

いまさら、CO2排出削減の「緩和策」を(日本とEUだけが)行っても、
あまり意味がないと考えられるからだ。

よって、
今回のCOP15で、
「先進国だけにでも、数値目標を課そう」としたことに対して、
主にアメリカが強硬に反対したことには、私は賛成である。


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で、代わりにやるべきことになるのが、
途上国への「適応策」である。

なぜなら、温暖化による被害にあうのは、
主に、途上国(の中の小国)であるからだ。

例えば、

海面上昇で水没するツバルの土地の高さを底上げしたり、
気温上昇により農業収穫が減る熱帯地方で品種改良をしたり、

洪水が増加するバングラデシュ、ベトナムで治水を行ったり、
降水量が減少する中東などの国々で水インフラの整備をしたり、

などが、いわゆる「適応策」である。


中国などの新興国が、CO2排出削減(緩和策)をする気が
まったくない現在、
こうした、「適応策」に、直接お金をかけていくことが
より有効と考えられる。

理由は、CO2排出削減(緩和策)にお金をかけても、
中国やインドが、500%以上ものCO2排出増加をする中、
わずか数%のCO2削減などに、何百兆円もかけても、
ほとんど意味がない、からであり、
(また、お金を投じた場合の、「費用対効果」が低いからであり)

そんなことをするなら、
そのお金を、そのまま適応策に使ったほうが、
はるかに有効である。

(ちなみに、日本で、2025年までに、
 CO2排出削減を25%しようとする場合、
 国内だけ(の「まみず」)で達成するには、数百兆円が必要で、
 海外の排出権取引市場などを使った場合、
 数百億円と言われている。)


と、いう状況の中で、
今回のCOP15では、最終合意案で、

「途上国への資金支援を、
 2012年までに、年100億ドル、
 2020年時点で、年1000億ドル」

という「政治的合意」に達したのは、
まあ、ある意味、妥当だったのかな、と思っている。


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3、良かったこと。

日本としては、(特に産業界にとっては)
今のところ、良かった、と思う。

鳩山首相が言いだした、
2025年の時点で、CO2排出量を25%削減する、
という数字は、
何の根拠もなく、達成できる見込みがないものだった。

経済界も同意しておらず、
よって、国内での25%削減が達成できる可能性はなく、

やるとしたら、
2025年の直前に、ロシアや東ヨーロッパ諸国から
「ホットエアー」と呼ばれる、
余っているCO2の排出権を購入するぐらいしか
達成の方法がなかった。

よって、
実は、日本としては、
数値目標の合意がなくて、助かったはずだ。

今、一番ほっとし、喜んでているのは、
日本政府の財務省の人(と、経団連の人)かもしれない。

排出権取引市場で25%削減を達成するには、
数百億円規模の予算が必要なのだから。


また、
EUと日本だけが、25%削減を課せられる、
という最悪の事態に陥る可能性も
(今回の、COP15の会期中に)あったのだが、
それだけは、日本は強硬に防いだ。

これは、環境相の職員や、外務省関係者が、
(他国から批判を受けようとも)がんばった(拒絶した)からで、
これは、日本国民としては、評価してあげていいと思う。

(だって、ロシアから排出権を買うはめになった場合、
 そのための数百億円のお金は、
 当然、われわれ国民の税金が使われてしまうところだったのだから。)


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以上が、
悪かったこと、妥当だったこと、良かったこと、の
三つである。


いずれにしても、今後の最大のポイントは、

中国、インドを中心とする新興国たちが、
今後、経済を発展させ、GDPの上昇を
(CO2排出削減よりも)優先させる中で、

GDPの成長が、どこかの段階で、高止まりになり、
その後、CO2排出削減に移行しようと思うまでの間に、

地球温暖化が、上限である6度Cまで、
上がってしまうのかどうか、ということである。


もし、上記のことが起こってしまう場合、
先進国たちは、今後、CO2の削減努力をしても、
事実上、ほとんど意味がない、ことになってしまう。

(この件は、これまでのCO2削減政策が、
 すべて無駄になるかもしれないことを示す、
 非常に重大な問題である。)

一方、
中国、インドなどの経済成長が頭うちになり、
CO2排出削減を優先するようになるのが、
2度あるいは4度上昇したあたりである場合、

先進国がCO2削減をするのは、
ある程度、意味があると考えられる。


つまり、すべては、
中国、インドなどを始めとする新興国たちが、
いつ、経済成長よりもCO2排出削減を優先するほうに
政策を転換するか、ということに
地球の未来はかかっている、といってよい。


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もう一つの側面は、温暖化に対する議論の中で、

「途上国」と称する国の中に、

中国、インド、ブラジルなどのいわゆる「主要国」と呼ばれる「大国」もあれば、
ツバルなどの島嶼国(とうしょこく)やアフリカの国々を始めとする「小国」も
あることである。

で、
同じ「途上国」の中でも、
主要国である中国などは、今回の結果に満足し、
満面の笑顔でいるのに対し、

「途上国」の中でも、ツバルのような島嶼国の人々は、
今回の結果により、海面上昇で自国が水没することが、ほぼ確実になったので、
なげき悲しんでいる。


よって、今後は、
先進国と途上国、という短絡的な二つの枠組みで、議論をするのではなく、
CO2排出量などに応じた、国々の、新たなグループ分けも、
必要になると考えられる。

具体的には、以下の三つに基づいて、
先進国だろうが、途上国だろうが、新たに分類しなおす、ということである。


1.一人あたりの排出量(排出の責任)
2.一人あたりのGDP(削減費用を負担する能力)
3.GDPあたりのエネルギー消費量(国全体の削減ポテンシャル)


これらによる新たなグループ分けが、まずは必要ではないかと思う。


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補足1:
昨日(2009年12月19日)の
朝日小学生新聞で、ケニアのHIV写真絵本が紹介されました。


補足2:
昨日(2009年12月19日)の
読売新聞・夕刊(東京版では17面)に
COP15の結果に対する、山本敏晴のコメントが、
222文字ほど掲載されました。

http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20091219-OYT1T00450.htm


交渉の行方を日本で見守った写真家で医師の山本敏晴さん(44)は
「悪い意味で予想通りの結果。残念だ」
とため息をついた。

温暖化による海面上昇で水没が心配される太平洋の島国ツバル
の写真を撮り続ける山本さんは、

「中国は経済成長で二酸化炭素(CO2)の排出が増えることを
 容認する目標を設定したまま。

 温暖化の被害を受けるだけのツバルとは違い、
 経済発展した途上国には能力に応じた責任の果たし方があるはず。
 温暖化を止められないことがはっきりしたと思う」

と話した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091219-00000450-yom-soci