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WHO(世界保健機関)職員の現状を題材に、
国連職員のスタッフの数と給料の状況を概説する。

将来、国連を含む、国際機関に
就職しようと思う人には
参考になるデータだと思うが、
そうした分野に興味がない人は、読まなくていいと思う。
(あしからず)

・・・

1.
まず、トータルの職員の数であるが、
2009年9月30日の時点での
WHOの総職員は、

16,162人である。

最初に説明を要するのは、
国連職員の雇用形態には、
永久就職またはそれに近い長期契約のものと、
一時的な、数か月から2年程度の短期のものが、
あること、である。


永久就職等の雇用形態を、
long-term appointments(永久契約)
または
service appointments(業務契約)
と言う。

これが、6964人、である。


一時的な雇用形態のことを、
temporary appointments(一時的契約)
と言う。

これが、9198人、である。


つまり、後者の、一時的な契約のほうが
多いのである。


(注: WHOでなく、他の国連機関の場合、
 永久契約と一時契約の中間の、indefinite contract(期間不定契約)
 というものもある。これは、一応、永久契約の方に近い。
 また、一時的な契約のことを、fixed term(期間限定契約)
 と呼ぶこともある。
 それ以外にも、組織により、いろいろあって、複雑。)


ポイントの一つは、
近年、永久就職の枠は、減らされており、
今後、国連職員になっても、
短期の契約で雇われる可能性のほうが高いこと。

もう一つのポイントは、
国連職員の多くは、
(それを続けたい場合)
数か月あるいは2年程度ごとに、
新しい就職場所を見つけるため、
自分の履歴書を、
空いている場所(または、もうすぐ空く場所)に
送りまくり、なんとか、
自分の「席」を引き続き確保することになる。

このように
就職活動が死ぬまで永久に続くのが
国際職員の宿命である。


ただし、
ある一定以上の雇用契約を得てからは、
(後述する)昇進をする気がなければ
現在自分がいるポジションの単純延長をすることは
可能である場合もあるので、
上記ほど、ひどくはない場合もある。


・・・

また、
上記の二つの雇用形態の他に、
非常に短い、一か月以内の契約、
あるいは、
ある特定の一つの仕事に限定された雇用形態を
コンサルタンシーと呼び、
そうして雇われた人のことを、
"consultants" と呼ぶようになった。

このコンサルタントの人々は、
WHO「スタッフ」には入れない(スタッフと呼ばない)ことになった。
(2008年7月から、そういう規定になった。)

この、非常に短い間、国際機関に雇われる、
というケースも多い。

(理由は、上記のように、再就職は「席の奪い合い」で、激しい競争があり、
 このコンサルタントの席を、つなぎ、として取得しなければならない状況も
 ありうるからである。)


・・・

男女比であるが、女性の数が、だんだん増えている。
1990年に、21.8%だったものが、
2009年に、38.8%まで上昇した。

よって、国連内でのジェンダー(女性の権利)問題は、
改善中である。


・・・

WHOの組織は、以下のようになっている。


スイスのジュネーブに本部がある。
これを、headquarter という。

ここで、3219人が、働いている。


また、
世界を6つのエリアにわけ、「地域事務所」と呼ばれるものがある。
それらを、regional offices という。

http://www.who.int/about/regions/en/

(これは、WHO特有のもので、
 他の国連の組織は、また別の分け方をしていてややこしい。)


各エリアの名前と、地域事務所の場所(かっこ内)と、
それぞれで働いているWHO職員の数は、以下である。


1.アフリカ (コンゴ・ブラザヴィル) 2790人
  Regional Office for Africa : AFRO

   北アフリカ沿岸部以外の、ほぼ全てのアフリカ。

2.アメリカ (アメリカ合衆国・ワシントンD.C.) 202人
  Regional Office for the Americas : AMRO (PAHO)

   北アメリカ大陸と南アメリカ大陸の両方全て。

3.東地中海 (エジプト・カイロ) 924人
  Eastern Mediterranean Regional Office : EMRO

   いわゆる中東(西アジア)と北アフリカ沿岸部。

4.ヨーロッパ (デンマーク・コペンハーゲン) 613人
  Regional Office for Europe : EURO

   ヨーロッパ全てと、ロシアも含む。

5.東南アジア (インド・ニューデリー) 740人
  Regional Office for South-East Asia : SEARO

   インドなどの南アジアと、東南アジアの西側半分。

6.西太平洋 (フィリピン・マニラ) 710人
  Regional Office for the Western Pacific : WPRO

   東アジアとオセアニアと、東南アジアの東側半分。


(要するに、アフリカ地域事務所の管轄下にある国々から、
 多くのWHO職員が雇われていることになる。)


で、上記の6つの地域事務所と、スイスの本部以外に、
各国に、country office というものがある。


で、以上三つの就職場所の、人数比は、以下である。

本部    33.2%

地域事務所 30.3%

各国事務所 36.5%

最近は、本部で働く人の割合が減り、
地域事務所と各国事務所の割合が増えている。


・・・

さて、日本人の国連職員の数の現状をみると、

国連拠出金(国が国連に出している金の量)の
割合を考えた場合、

国連職員の数が、121〜166人いるのが、
適正である、ことになっている。

(日本は、アメリカについで、巨額の国連拠出金を出しているからである。)

しかし、実際は、34人しかいない。

男、20人。女性、14人。

で、国連にはその立場にランキングがあり、
P1〜P6等により分類される。

日本人の内訳は、

P1     0
P2     0
P3     5
P4    11
P5    16
P6/D1  1
D2     0
ungraded   1

それぞれのグレイドの意味は以下である。


P1 経験のない人

P2 修士取得後、経験年数2年以上

P3 修士取得後、経験年数5年以上
   または博士取得後、経験3年以上

P4 修士取得後、経験年数8年以上
   または博士取得後、経験6年以上

P5 修士取得後、経験年数13年以上
   または博士取得後、経験11年以上


(注: 修士とは、マスター。博士とはPh.D。)

(注: JPO試験に受かった場合のP2レベルの人数がゼロの理由は後述)

で、P1からP3までは、
「国連職員採用競争試験」等によって採用される。
これが、基本である。


参考リンク:
国連職員採用競争試験(国連で働く)|国連広報センター
http://www.unic.or.jp/opportunities/employment_examination/


ちなみに、
上記のように、日本人の国連職員が少ない問題を
解決するために、
日本政府の外務省が(無理やり)つくった措置が、
国連AE/JPO試験である。


注:
Junior Professional Officer、JPO
Associate Expert、AE

参考リンク:
外務省国際機関人事センター
http://www.mofa-irc.go.jp/boshu/boshu_aejpo.htm


応募資格は、
35歳以下、英語、大学院修士、
(年によっては2年間の勤務経験も条件にある場合がある)

倍率は、約1000人受験して65人合格。

この試験に合格すれば、
いきなり、P2のランクで、国連職員になれる。
昔は3年だった。現在2年。

また、このJPOとして国連職員の任期を終わった後、
その後も、国連に残れた(再就職できた)人の割合は、
おおよそ50〜60%程度である。
(外務省にデータがある。)

つまり、(その後も)けっこう厳しいのである。
JPOで国連職員になれた場合、
将来のことを考えて、人脈(コネ)をつくることと、
自分の実績をつくることに、奔走することも
必要になる。


なお、このJPO試験に合格した場合の、
1年あたり65人前後、2年だから130人前後いるはずの、
P2レベルの日本人国連職員が、
上記の「日本人国連職員の内訳」の中に、
数字として入っていない理由は、

このJPO試験に受かって国連に配属されている職員は、
正規の国連職員では、ない、からである。

正規の国連職員とは、国連から給料をもらっている人のことを言う。

JPO試験は、
日本政府の外務省が、日本人の国連職員を増やすために、
無理矢理作った制度で、
JPO試験合格者が、2年間、国連で仕事をする間の給料を
(国連ではなく)日本政府の外務省が支払うことになっている。

このため、
JPO試験合格者は、正規の国連職員とは考えられておらず、
上記の表に、登場しないことになるのだ。
(文末にWHO公式文書へのリンクあり)

また、このような日本政府の、どこかの省庁が、
「日本がお金を出すから、うちの職員を国連内に置かせてくれ」
と頼んで、置かせてもらっているケースは(JPO以外にも)多々ある。

例えば、
(JPOの外務省だけでなく)厚生労働省(厚労省)などは、
WHOの中に、定期的に厚労省の職員を出向させており、
国連内における日本の発言権を、ある程度保つ、工夫(?)をしている。


・・・

さてここから、いきなり、薄汚い話になるが、

一般的に、国連職員は、
おたがいが他人よりも、
ちょとでも上のポジションを得るために、
足の引っ張り合い、をしている、
とも言われており、

そうした、非常にドロドロした組織の中で
勝ち上がっていったものが、
P4,P5,P6と、立場を上げていき、

最終的に、
事務局長(D1〜D2)レベルの、
組織のトップとなることができる、
という、

己(おのれ)の出世欲にかられた「地獄の亡者」(もうじゃ)の集まり、
のような側面もある。

自分が、「ほんの少し」かかわったプロジェクトを
あたかも、「全て」自分の手柄のように言い放てる人が
出世する、と言われている。

また、
他人の言うことなど聞かず、
自分の言いたいことを会議で言い続け、
しかも、
早口の英語で、でかい声で話つづける、
という
とんでもない性格のやつが、出世していく、という事実もある。

またさらに、
国連職員は、実際は、途上国の現場にいくことは、ほとんどなく、
先進国の首都か、
途上国でも首都の五つ星ホテル
(またはプールと召使つきの高級マンション)で、
コーディネーター(政府との調整役)として、
仕事や生活をしているにもかかわらず、

月に一回程度、
途上国の田舎の現場にいき、「2時間だけ」視察をしたときに、
(自分自身の)写真を撮りまくり、
あたかも自分は、
途上国の田舎の現場に、「ずっといました」というような
ウソのレポートを書き、
自分が、いかに途上国の現場を詳しく知っているか、を強調し、
それをまた、会議の席で、大声でまくしたてる、
ということをするやつが、出席してゆく、という側面もある。


一方で、言い方を変えるならば
(中庸の意見をいうならば)

自分の立身出世と、世界への貢献のバランスを
うまくとることができる人が、
国連という世界で生き残れる、
とも言える。


・・・

給料は、以下である。
先日の国連総会で、国連職員の給料を
3%程度、増やすことが決まった。

以下、具体例を示すと、

日本人で国連職員になりたい人が、
JPO試験に合格した場合、
P2のランクなる。

P2職員の1年目の年収は、以下である。

Gross 61,919 US$ (620万円)
Net D 49,082 US$ (490万円)
Net S 46,037 US$ (460万円)

グロスとネットの違いは、以下。
国連職員には、国連課金(スタッフ・アセスメント)
と呼ばれる税金のようなものが課される。
これなどを引くまでが、グロス。
これなどを引いた後が、ネット、である。

ネットD とは妻や子どもなどの扶養家族がいる場合。
ネットS とは扶養家族がいない場合。
(つまり、Dとは、dependent family member)

この年収を12で割ったものが、月収である。
ボーナスはない。

安いと思うかもしれないが、もちろんこれだけではなく、
以下のような、様々な上乗せがある。

一つは、地域調整給(ポスト・アジャストメント)といって
物価の高い、例えば、東京やジュネーブの場合、
かなり高額の給与が付与される。

また、逆に、僻地や危険地帯で働く場合、
その分の追加がある。
(モビリティー・アンド・ハードシップ)

その他、扶養家族手当、住宅手当が付与される。

以上の結果、
結局、基本給の、普通、1.5倍から2倍ぐらいになる。

また、以上は、ど初心者の、
JPO試験に受かったばかりの、1年目の場合、
である。

・・・

経験年数が増えた場合の給料の増額は以下。

P2のままの場合(昇進しなかった場合)、グロスでみると

1年目 61,919
2年目 63,707
3年目 65,492
4年目 67,279
5年目 69,065


P2から、どんどん昇進していった場合、

P2  61,919
P3  75 972
P4  92 907
P5 113 404
P6 137 021


上記を見ればわかるとおり、
P2の同じランクにいるよりも、
1階級、昇進したほうが、給料は高額になる。

このこともあって、
国連職員は、
現在の自分の「契約」が切れるごとに、
1ランクでも上の階級を狙って、
自分の「売り込み」を各部署に行い、
また、ライバルとなる人の悪口をいい、足を引っ張る、
という行為に走ることになる。

このことは
WHOだけでなく、
全国連共通の問題として
広く知られている。


(注: もちろん、全国連職員が、
 足の引っ張り合いをしているわけではない。
 あくまで、こういう側面もある、ということ。)

(注: また、始めから、P4〜P6に就職するケースもある。
 例えば、日本の厚生労働省などのトップクラスにいた人が、
 いきなりWHOに就職した場合、
 始めから、かなり上のポジションに就職できることもある。)


・・・

で、
これだけ、ボロクソに書いておいて、言うのもなんだが、
上記は、一つの側面であって、
だから、国連が、全然ダメだ、ということはない。

それぞれの国際協力の形に、問題がある、ということの一つを
紹介しただけ。

(国際協力には、大枠で、
 国際機関系(国連を含む)、
 政府機関系(JICAなど)、
 民間組織系(NGOなど)という、三つがあるのだが)


日本政府のJICA等の行う国際協力には、
また別の種類の、本質的な問題ある。

(例えば、日本の外務省は、日本の外交上の利益のために
 国際協力や途上国の開発を行っているわけであり、
 その外務省の下に位置する、JICAは、その影響を受ける。
 要するに、日本の国益のほうが、途上国の利益よりもはるかに優先される。)


民間のNGOには、もっと根本的な問題がある。

(例えば一般に、NGOは自己満足型の国際協力が多く、
 数字で結果を出さず、学問的な裏付けもなく、持続可能性も低い、など)


戻って、
国連(国際連合)には、安全保障理事会の常任理事国に、
アメリカ、中国、ロシア、イギリス、フランスという五か国が
就任しており、それらの国が「拒否権」を持っているため、
それらの国に都合の悪い決定は、国連ではなされない、という
「最大の欠点」がある。


と、いうわけで、それぞれが、どっちもどっち、なのである。


私の狙いは、
「本物の国際協力師を育てること」にあるので、
自分が、上記の組織のどれかに入った場合、

まず、始めから、上記の問題点を知っておくことが必要で、
かつ、
その組織内での在任中も、決してその欠点を忘れず、
目をそむけず、
その上で、世界のために自分が何をできるか、ということを
考え続ける、
「いばらの道」を、あえて進んで欲しいと思っている。


具体的にいえば、
自分は、この組織に入ったのだから、
本質的に、この組織にこういう欠点があるのは、しょうがないのだから、
もう、諦めるしかない、
とは思わず、

その欠点を極力小さくするように、常に努力し、
組織から受け取った「金(予算)」をつかって、
なるべく「本当に意味のある国際協力」に近いことを
やって頂きたい、ということである。


厳しいかもしれないが、
自己満足でない国際協力とは、そういうことだと私は思っている。















・・・


参考リンク:

国際協力師への道 4,737字
 国連職員になるための、9通りの方法も記載。
 その他、具体的なキャリア(学歴・経歴)の作成方法まで詳述
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/52357466.html



WHO: 世界保健機関
http://www.who.int/en/

WHO: documentations
http://apps.who.int/gb/e/

EB126/33 Add.1
Human resources: annual report
http://apps.who.int/gb/ebwha/pdf_files/EB126/B126_33Add1-en.pdf

EB126/39
Confirmation of amendments to the Staff Regulations and Staff Rules
http://apps.who.int/gb/ebwha/pdf_files/EB126/B126_39-en.pdf


国連オンライン
http://www.unic.or.jp/

国際情報誌SUN 
http://www.issue.net/~sun/

クラブJPO
http://homepage3.nifty.com/clubjpo/


AE/JPO制度、採用ミッション、ロスター登録
http://www.mofa-irc.go.jp/

UNV(国連ボランティア)
http://www.unv.or.jp/

国連インターン
http://www.unic.or.jp/

国連職員採用競争試験(国連で働く)|国連広報センター
http://www.unic.or.jp/opportunities/employment_examination/

国連競争試験
http://www.un.org/depts/OHRM/examin/exam.htm

空席募集
http://www.reliefweb.int/vacancies/