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このブログは、前回の続きです。まず以下からお読み下さい。

最強の感染症が復活 XDR-TB(超多剤耐性結核)その1 6005字
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65339093.html


今回は、結核対策における、
国際機関などの動きを中心とした話です。


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1980年代、
HIV/エイズの流行とともに、その復活が危惧された
結核に対応するため、

WHO(世界保健機構)は、
1991年の、WHO総会(WHA)において、
結核に対し、次のような目標を立てた。


「2000年までに患者発見数70%治療成功率85%を達成」


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1998年、「第一回結核に関するロンドン会議」で
ストップ結核イニシアティブ」というものが結成された。
国連や各国政府などの協力体制が確認された。


ところが、
2000年、WHO総会において、
上記の目標が達成不可能であることが判明し、

このため、同じものを、
2005年までの目標として再設定した。


この時、
ストップ結核パートナーシップ」が結成され、
上述のイニシアティブが、かなり強化された。

国際機関、政府機関、NGO(非政府組織)、研究者、
患者団体などからなる、広大なネットワークが創設される。


ストップ結核パートナーシップホームページ
http://www.stoptb.org/stop_tb_initiative


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同時に、
(世界が2015年までに達成するべき目標としている)
国連の「ミレニアム開発目標」(MDGs)の中に、

(目標6のターゲット8として)
「結核」という言葉を明確に入れることになった。

(注: MDGsの、目標6のターゲット8とは、
 マラリア及びその他の主要な疾病の発生を2015年までに食い止め、
 その後、発生率を減少させる、こと。

 で、上記の「主要な疾病」の中に、
 結核(の有病率死亡率の減少など)が入れられた。)


ミレニアム開発目標(MDGs) 外務省の訳
http://www.mofa.go.jp/Mofaj/gaiko/oda/doukou/mdgs.html


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2001年、上記の、
ストップ結核パートナーシップのプロジェクトとして、

世界抗結核薬基金」(GDF)
が創設され、途上国に、無償で抗結核を配布する
枠組みなどが作られる。


世界抗結核薬基金(GDF)Global Drug Facility
http://www.results.jp/japanese/pdf/financial%20demand%20gdf.pdf


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2002年、
世界エイズ・結核・マラリア対策基金
(通称、グローバルファンド)
が創設され、
3大感染症の撲滅のための、巨大な財源が生まれた。


The Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria
http://www.theglobalfund.org/en/

世界エイズ・結核・マラリア対策基金 外務省の訳
http://www.mofa.go.jp/Mofaj/gaiko/kansen/kikin/index.html


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しかし、
2005年までに、結局、最初の目標であった、結核の
「患者発見数70%、治療成功率85%」は
達成できなかったが、

2006年
治療成功率85%」のほうは、達成した。
しかし、
患者発見数70%」のほうが、達成できず
61%にとどまった。


(この患者発見数が低いことは、現在でも問題になっている。)

(というか、そもそも「本当は何人の結核患者が社会にいるか?」が、
 わかりようがないのだから、これを目標とするのが適切か?、
 という問題もある。)


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この同じ2006年、
アメリカ国立疾病予防センター(CDC)より、

多剤耐性結核」(MDR-TB)
multiple drug-resistance tuberculosis
から生じた
超多剤耐性結核」(XDR-TB)
Extensively drug-resistance tuberculosis
の問題が指摘される。

(昨日のブログ参照)


2007年、
WHO総会において、2つの大きな問題、すなわち、

1.HIV/エイズによる影響(免疫力の低下による結核の発症)と、
2.「超多剤耐性結核」(XDR-TB)の問題

が憂慮(ゆうりょ)され、
「結核に対する長期計画」が立てられる。


この時、日本政府は、
DOTS」を結核対策の中心とすることを主張した。

DOTSとは、
Directly Observed Treatment, Short course
(直視監視下短期化学療法)のこと。

要するに、
結核患者が薬を飲み忘れないように、
医療従事者等の前で内服すること、である。

(家庭で飲む場合、村の(訓練された)ヘルス・ワーカー等の前で飲む。)


なぜこれが重要かというと、
結核の薬は、4剤も、しかも長期間、
飲み続けなければならないので、
いやになって患者が飲むのを止めてしまうことが多いため、
である。

すると、本人が結核で死亡するだけではなく、
その人の体内にいる結核菌が、
それまで飲んでいた薬への「耐性」を獲得し、
多剤耐性結核、ひいては、超多剤耐性結核を産む、土壌となるからだ。

ともかく、このDOTSの実施は、
ミレニアム開発目標にも、組み入れられた。

(文末のリンク参照)


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また、
この2007年、WHO総会において、
「第二次治療薬」、いわゆる「新薬」の開発の重要性も
指摘された。

「超多剤耐性結核」(XDR-TB)には、
現存する、ほぼ全ての治療薬が
効果がないからである。

このため、たとえば、大塚製薬が、
以下の薬を開発しており、
現在、治験中である。

OPC−67683 (nitroimidazole誘導体)


現在、新規5剤の抗結核薬が臨床試験中。
8剤が、開発中である。


世界における新しい抗結核薬開発の現状
http://www.jata.or.jp/rit/rj/project7-2.pdf


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2008年、日本政府の外務省と厚生労働省は、
ストップ結核ジャパンアクションプラン」を発表した。

これまでの日本の結核対策の経験を生かし、
技術支援や人材育成等をしていくことを表明。


外務省 「ストップ結核ジャパンアクションプラン」の発表について
http://www.mofa.go.jp/MOFAJ/press/release/h20/7/1182056_912.html


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2009年、WHO総会において、
再び、「超多剤耐性結核」(XDR-TB)の予防をするために、
DOTSが重要であることが、再確認される。

DOTSのカバー率70%」の達成が目標とされる。


また、この総会で、問題が指摘されたのが、以下である。

前述の、
「ストップ結核パートナーシップ」
の中に
Green Light Committee」という委員会がある。


The Green Light Committee (GLC) Initiative
http://www.who.int/tb/challenges/mdr/greenlightcommittee/en/


これは、
途上国の「多剤耐性結核」の患者に薬を渡す時に、
それがちゃんと、現場までとどいているかどうかを
検証する組織である。

つまり、ちゃんと薬が届きそうでない場合、
薬をあげない、という判断をする組織なのだ。

ところが、途上国の行政は、一般に、いい加減であり、
現場で行われている活動(患者さんに確実に薬を渡したこと)が、
村から郡(ぐん)、郡から州、州から国へと、
正確な「報告」が届けられていくことは、
ほとんどない。

(だから、途上国と呼ばれるのであるが。)

このため、
「Green Light Committee」の審査を通ることは少なく、
なんと、
実際に必要としている患者の、2%
にしか薬が届いていない、という現状があるのである。

(これは、WHO総会での報告である。)


これを改善するには、
途上国の「保健行政」の仕組みを、
まず改善しなければならない、という側面もある。

(これを、HSS,という。)
"Health System Strengthening"
(保健システム強化)


WHO: health system strengthening (HSS)
http://www.who.int/globalfund/healthsystems/en/


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ストップ結核パートナーシップの中の
世界ラボイニシアティブ委員会」は
結核の「迅速診断」の重要性を訴え、
また、
「多剤耐性結核」の「迅速診断」の重要性を
唱えた。

(臨床的には、病院で、その場で、簡単に、
 診断できることが、何よりも重要。)


このため、
2種類の迅速診断法が、
27か国で運用されている。

これに、「UNITAID」(ユニットエイド)という組織が
が協力している。


UNITAID(ユニットエイド):IDPF(国際医薬品購入ファシリティー)
http://altermonde.jp/pdf/20070530a.pdf


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HIV/エイズと結核の関係において、
重要視されているポイントは、以下。


結核患者に対しては、HIV感染のチェックが比較的よく行われているが、

HIV感染者に対しては、結核感染のチェックがあまり行われていない


また、
HIVと、結核は、
それに対する対策の予算を獲得するために、
「予算の奪い合い」をしている側面があり、
現在、
HIVのほうに多額の予算が流れているため、
結核対策は、手薄になっている傾向がある。


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以上、いろいろな問題があるが、
ストップ結核パートナーシップ」は

もともとあった目標であった
「2000年までに患者発見数70%、治療成功率85%を達成」
では、不十分だとし、


まず、7つの作業部会を作り、

1.DOTS(直視監視下短期化学療法)拡大
2.HIV合併結核
3.多剤耐性結核(MDR-TB)と超多剤耐性結核(XDR-TB)
4.新しい、抗結核薬開発
5.新しい、結核ワクチン開発
6.新しい、結核診断技術開発
7.アドボカシー(啓発)


さらに、
ミレニアム開発目標に記載された内容を補足する形で、
以下の事項などを目標とする、としている。


「2015年までに、結核死亡数と結核有病率とが1990年における数値を半減」

2050年までに、世界の結核罹患率が100万人人口対1人以下(=結核制圧)」



こうして、人類と結核との「勝負」は、まだまだ続いてゆく。
















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参考リンク:

WHO Tuberculosis
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs104/en/index.html

WHO Global tuberculosis control - epidemiology, strategy, financing
http://www.who.int/tb/publications/global_report/2009/en/index.html

WHO: health system strengthening (HSS)
http://www.who.int/globalfund/healthsystems/en/

WHO Documentation
http://apps.who.int/gb/

WHO EB 126/14 (Executive Board 126/14) 18-23 January 2010
http://apps.who.int/gb/ebwha/pdf_files/EB126/B126_14-en.pdf

The Green Light Committee (GLC) Initiative
http://www.who.int/tb/challenges/mdr/greenlightcommittee/en/

結核予防会
http://www.jatahq.org/

(財)結核予防会結核研究所ホームページ
http://www.jata.or.jp/

新結核用語辞典
http://www.jata.or.jp/terminology/new_tb_terminology.htm

財団法人結核予防会結核研究所 疫学情報センター
http://jata.or.jp/rit/ekigaku/

第58回結核予防全国大会より、「超多剤耐性結核」(XDR-TB)
http://www.jatahq.org/siryoukan/kikanshi/pdf/315.pdf

結核の質問と回答、DOTS(Directly Observed Treatment, Short course)
(直視監視下短期化学療法)
http://homepage3.nifty.com/mickeym/No.201_300/279tb.html

CDC: Centers for Disease Control and Prevention
アメリカ国立疾病予防センター
http://www.cdc.gov/

Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR)
http://www.cdc.gov/mmwr/

ストップ結核パートナーシップホームページ
http://www.stoptb.org/stop_tb_initiative

外務省 「ストップ結核ジャパンアクションプラン」の発表について
http://www.mofa.go.jp/MOFAJ/press/release/h20/7/1182056_912.html

世界抗結核薬基金(GDF)
http://www.results.jp/japanese/pdf/financial%20demand%20gdf.pdf

The Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria
http://www.theglobalfund.org/en/

世界エイズ・結核・マラリア対策基金 外務省の訳
http://www.mofa.go.jp/Mofaj/gaiko/kansen/kikin/index.html

UNITAID(ユニットエイド):IDPF(国際医薬品購入ファシリティー)
http://altermonde.jp/pdf/20070530a.pdf

United Nations Millennium Development Goals ( UN MDGs )
http://www.un.org/millenniumgoals/

ミレニアム開発目標(MDGs) 外務省
http://www.mofa.go.jp/Mofaj/gaiko/oda/doukou/mdgs.html

古代エジプトの有名ミイラ、死因は「結核」 英大学調査
http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2647902/4692775

New York Times -Albert Schatz-
http://kusuri-jouhou.com/iyaku-news/schatz.html

世界における新しい抗結核薬開発の現状
http://www.jata.or.jp/rit/rj/project7-2.pdf

薬が効かない超多剤耐性結核(XDR-TB)
http://medical-today.seesaa.net/article/30239313.html