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2004年3月30日に、
テレビ朝日「徹子の部屋」に出演した。

同番組が、35周年記念を迎えたそうなので、当時を振りかえってみる。


・・・

黒柳 ちょうど春休みということもあり、
   これから将来どうしようかな、と考えていらっしゃる
   (お若い)方もいらっしゃると思います。

   ですから、直接ではないにしても、
   国際貢献というのは、どういうことであるのか、
   ということを、お話し頂くために、
   今日は、山本敏晴さんにお出で頂きました。

   この方は、国境なき医師団の派遣医師であった
   大変、勇敢で元気な方でいらっしゃいます。
   
   お年(とし)は?

山本 38歳です。

黒柳 働き盛りということで、
   今日は、お話をよく伺いたいと思います。

   あたくしが、初めて読ませて頂いたこの方の本は、
   「世界で一番いのちの短い国」というものでした。

   ちょうどあたくしが、シエラレオネに行く直前だったので、
   よく読ませて頂いたのですが。

   あそこに書いてあったことは、大変なことでしたよねー?

山本 ま、そうですね。やっぱり平均寿命が非常に短くて・・(うんぬん)

   (シエラレオネでの医療・教育活動などの話。15分ぐらい)



・・・(中略)・・・


黒柳 と、いう活動をなさってきた方なんですけれども、
   今日は、春休みということもあって、
   若い方の多くも、この番組を見てらっしゃると思うんですが、
   その中のいく人かの方が、
   「国際貢献とかしたいな」
   って思っていると思うんですね。

   国境なき医師団とかに参加して行ってみたい、
   お医者さまになりたい、
   って思ってる方も多いと思いますが、
   でも、なれない方もいる。

   そうした方のために、
   どんな国際貢献ができるのかを
   お聞きしたいと思います。

山本 ・・あ、はい。
   みなさんにお話しする機会がある時に、
   必ずお話することは・・

   もし、国際協力に興味があるのであれば、
   五つのことができるんですよ、ということを
   話さして頂いております。


・・・テロップ・・・

1.発展途上国に行ってみる

2.国際協力のための勉強

3.募金をするなら、次の三つ

   継続する
   ニュースを見る
   団体の信用性のチェック

4.国際貢献の方法はたくさんある(特に環境問題)

5.世界に目を向けた子どもたちを育てる


・・・

山本 一つ目は、開発途上国に行ってみる、
   ということです。

   初心者向けには、東南アジアがいいと思います。

   観光旅行でもいいですから、現地にいって、
   ストリートチルドレン、つまり、
   家もなく学校にも行けない子どもが
   世界にはまだたくさんいる、ということを
   自分の目で見てくる、とういうことです。

   または、
   いきなり、青年海外協力隊などに行く方法もあります。
   青年海外協力隊には、100以上の職種の応募がありまして、
   医師や教師などに、なんらかの専門性をもっていなくても、
   だれでも、応募できるものが、いくつかあります。
   そうしたものに応募するのもいいと思います。

(注:村落開発、青少年活動、環境教育、エイズ対策(予防啓発)など。)

   あと、
   国境なき医師団などの医療系の国際協力団体でも、
   全員が医師や看護師、というわけでは
   ありません。
   薬の運搬をする係りの人や、
   現地で、地方自治体などと交渉をする人などは、
   文系の方なども多いです。
   コーディネーター、というのですが、
   プロジェクトを行う上で、とても重要な仕事をしています。

   そうした形で、いきなり現場に行くことも・・

黒柳 できます。はい。

山本 ・・二番目が、ですね、勉強するってこと、です。

   まず、英語とかフランス語が、できたほうがいいですし、

   あと実は、国際協力の世界というのは、
   一つの列記とした学問の世界で、
   
   「なんとなく良いことをしたい」
   と思った人が、のこのこ出かけて行っても・・

   ・・申し訳ないんですけれども、
   あんまり役に立たない、世界なんです。
 
   例えば、医療の世界でも、
   「国際保健医療学」とか「熱帯医学」とかを
   ある程度勉強してからいかないと、

   日本の医者がいきなりアフリカとかにいっても、
   実はあまり役に立たない、ということもあります。

   ・・あと、貧困の改善をよくしたいのであれば、
   開発経済学とかが、必要になります。

   そうした、なんでもいいんですが、
   自分の専門を身につける、ということが
   最終的には必要になると思います。

黒柳 なるほど。

山本 で、3番目が・・

   そんなこと言われても、私は、
   日本に家族もいて、子どももいて、
   会社いかなきゃいけなくて、
   途上国にいくことはできない、
   直接、国際協力をすることができない、
   という方の場合には、

   やっぱり、一つは、募金をする、
   という方法が、あります。

黒柳 はい。

山本 募金をする時に、
   知っておかなければならないのが、

   例えば、
   カンボジアに学校を建てます、
   アフリカに病院を建てます、
   というのは、
   だいたい300万円から500万円あれば
   建てることができるんですが、

   建てただけなら、ただの
   「コンクリートの箱」です。

   その箱を、例えば、病院として機能させるには、
   年間、10倍以上のお金である、
   約5000万円が必要になります。

   アフリカの医師や看護師に給料を支払い、
   必要な薬をヨーロッパから空輸し、
   それを、四輪駆動の車で、地方まで届ける。
   これを毎週毎週、やらないといけない。

   実は、薬を買う金額よりも、
   薬を運ぶ輸送費のほうが、はるかに高いんです。


   ・・と、いうわけで、
   最初に、病院を作るために募金したお金を
   意味のある形で活用するためには、
   その後、ずっと、少なくとも10年ぐらいは、
   募金を続けないと意味がない、
   ということです。


   また、
   あなたが募金をしたその団体からの
   広報誌などをよく読んで、
   募金をしたお金が本当に有効に利用されたのかを
   「いい意味で疑って」
   確認することが必要です。

   その団体の広報誌だけでなく、
   新聞やニュース、インターネット上の情報なども調べて、
   自分が募金したことによって、
   本当に病院や学校が現地にできて、
   しかもそれがずっと「機能している」かどうかを
   確かめることが必要です。

   
   あと、
   募金をする際に、もう一つ必要なのが、
   「あなたが募金している団体が、本当に信用できるか?」
   ということです。

   例えば、有名な国際協力団体の名前をかたって、
   ニセの団体が、例えば暴力団などが、
   資金集めのために、駅前などの街頭で、
   バイトで雇った人に白い箱を持たせて
   「アフリカに学校を作るために募金をお願いしまーす!」
   などと言っていることもあります。

   こうしたケースでは、その団体が本物かどうかは
   わかりませんので、募金をしないほうが賢明です。

   募金をするなら、その団体の
   住所、(固定)電話番号、代表者(責任者)の氏名、

   その団体の「年間予算の収支」が
   ホームページ上に公開されているかどうか、
   などを確認してから、募金をする必要があると思います。

黒柳 ・・以上、三つ、うかがいました。

   ま、簡単に言いますと、

   1.観光でもなんでもいいから、途上国を見に行く、
   2.国際協力をするには勉強が必要、
   3.募金をする、

   だけど、募金をするなら、
   継続する、とか、
   どこに使われているのか確認する、
   また、その国に関心を持つこと、

   と、そこまで伺いましたね?   

山本 はい。

黒柳 4つめが?

山本 4つめが、ですね、実は、
   「日常生活こそが、国際協力になる」
   ということです。

   理由は、
   例えば、日本にいる皆さんが
   直接できる行動として
   もっとも重要なものに
   「環境問題」系の活動があります。

   例えば、
   最近、地球温暖化が問題になっていますが、
   温暖化は世界各国で「ムラ」があるため、
   地球上の水の分布が変わってきています。

   簡単にいうと、
   降水量が非常に増える国と、減る国に
   二極化していっています。

   雨が減った国では、水が足りなくなり、
   農業ができなくなって、飢えに直面したり、
   最悪、水を奪いあうための、戦争や内戦も起きています。

   つまり、
   地球温暖化を起こさないようにすることが
   日本にいる消費者としてできる国際協力の一つだ、
   ということです。

黒柳 はい。

山本 で、最後、五番目なんですけれども・・

   日本にいてできることで、最も重要なことは、
   間違いなく、

   自分のまわりにいる子どもたちを
   「世界に目を向けた子どもたちに育てる」
   ことだと思います。

   なんでかっていうとですね、
   ええと、

   西暦ゼロ年、約2000年前は、
   人類の人口は、3億人だったんですが、
   現在、2004年の人口は、約65億人です。

   人類の数は、爆発的に増えていて、
   しかも、最近特に、そのスピードが上がっています。

   このままでは、近い将来に、
   人類が必要とする、石油などの資源が、
   全部、枯渇してしまうかもしれません。

   残り少ない資源を奪いあうための、戦争や内戦も
   世界各地で起こってくるかもしれません。

   地球温暖化やゴミ問題などの環境問題も、
   世界各国で、そして日本でも起こってくるでしょう。

   そうした理由で、これからの子どもたちには、
   世界に目を向けて、
   世界全体で起きている問題を考えながら、
   育っていって欲しい、と思います。

黒柳 はい。

山本 あと、具体的には、
   欧米だけの情報にかたよらず、
   途上国から発信される情報も、
   見たり読んだりしたようがいいかもしれません。

   例えば、
   いわゆる途上国で作られた絵本とか、
   欧米でない国で作られた映画とかを見る、とか。

黒柳 あ、そうですね。
   わたし、イランの、「アッバス・キアロスタミ」
   っていう映画監督が、すごく好きなんですけど、
   そうした、中東の日常がわかる映画とか、
   とっても素敵ですよね。

山本 はい。そう思います。


・・・


黒柳 ま、あのー、山本さん、
   本も書いてらっしゃるんですが、
   一番新しい本ですが、
   これはどういうことについて、お書きになった・・?

山本 えー、
   アフガニスタンの人が、どんな生活をしているかを
   紹介するような
   「彼女の夢みたアフガニスタン」
   という写真絵本を出版したんですけれども、
   
   ま、実は、そのー、
   数年前に、イランにある
   アフガニスタン難民キャンプを訪れた時に、
   「ザグネ」という女の子に会ったんですが、

   その子が、
   「逃げてくるとき、家族が死んじゃったけど、
    戦争が終わったら、アフガニスタンにもどって、
    あなた(山本)みたいな医者になって、
    母国を救うわ」
   って言ってたんですが、

   その数年後に、
   私がアフガンスタンで医療援助活動をやっていましたら、
   そのザグネが本当にアフガニスタンに戻ってきまして、
   私が支援していたアフガニスタンの医学部に
   入ってきたんです。

   ザグネのほうから、
   「あれ、トシじゃない?」
   と、医学部の廊下で、後ろから声をかけてきまして、

   ・・あの時は本当に、びっくりしました。

黒柳 まあ、そうなんですか!
   アフガニスタンは、優秀な人たちが多いって
   聞いていますが、それはまあ、本当に素晴らしい・・
   ことでしたね。

山本 はい。


・・・

黒柳 最近、国際協力の世界でも、
   いろいろな分野で研究が行われていて、

   外に行けば、アジアでもアフリカでも、
   新しい、蚊帳(かや)の開発をしていて、
   
   昔は、防虫剤をふくませた蚊帳を、
   ユニセフが、配ってたんですが、

   最近は、防虫剤を含ませた繊維で編んだ蚊帳が
   開発されて、それをユニセフが配っています。


参考:
オリセットネット
住友化学が作った防虫剤入りの蚊帳。
WHOが推奨しており、ユニセフが配布している。
http://www.sumitomo-chem.co.jp/csr/africa/olysetnet.html


   今、タンザニアでそれを安く作れるようになって、
   また日本政府も、たくさんそれを送ってるんですが、
   ・・それでたいぶ、たくさんの子どもを
   救えるようになりました。

山本 素晴らしいですね。

黒柳 あたしがユニセフの親善大使になった20年前は、
   地球上で(1年に)
   1400万人の(5歳未満の)子どもが死んでたんですけど、
   今、1100万人まで、減りました。
   この20年で・・  

(注:2010年、最新の統計では、920万人まで減っている。)

山本 それは、素晴らしいですね。

黒柳 内戦とかいろいろあっても、
   (死亡率が)下がってくる、っていうことですので、
   みんなが手をつなげば、なんとかなるんじゃないかと
   思います。

   アフリカでも、アフガニスタンでも、
   山本さんみたいに、お医者さんになりたいっていう
   子どもたちは多かったんじゃないですか?

山本 はい。けっこう多かったです。(笑)


・・・

黒柳 あと、山本さんは、各国の写真も
   撮っていらっしゃるんですよね?

山本 はい。
   各国の、悲しいところ、明るい笑顔のところ、
   それとそれぞれの国にある歴史や文化、という
   三つの部分を撮影するように、気を付けております。

黒柳 そうですね。
   で、今度、写真展もあるんですよね?

山本 はい。

黒柳 ニコンサロン?

山本 ええ。ニコンサロンで、
   (2004年)4月6日から12日まで、やっております。
   「彼女の夢みたアフガニスタン」という題名です。






・・・
・・・

以上のような会話を黒柳さんとしたのだが、
特に記憶に残っているのは、
彼女が以下の部分を強調していたことである。

「あたしがユニセフの親善大使になった20年前は、
 地球上で(1年に)
 1400万人の(5歳未満の)子どもが死んでたんですけど、
 今、1100万人まで、減りました。」

これが、おそらく、
彼女の自信であり、生きる目標であり、
行動原理になっているのだと思う。


個人的には、これに対して、
(本当は)いろいろ言いたいことはあるのが、

20年間、ユニセフの広告塔として、
日本だけで、年間250億円以上の募金を集める、
という、とんでもない仕事を
彼女はやってきた。


これは、ものすごい、と思う。


わたしは、よく、
「お金を集め、それを途上国に送るだけでは、
 世界は決してよくならない」
という主旨のことを、ブログや本に書いているが、

そんな「屁理屈」を、ぶっとばしてしまうほど、
黒柳徹子さんが行ってきた、
この25年間にわたる、ユニセフへの貢献は、
ものすごいものだった。


黒柳徹子さんは、
1933年8月9日生まれの、76歳。

1984年、ユニセフ親善大使に就任した。


テレビ朝日の「徹子の部屋」は、
1976年2月2日に始まり、
つい先日、35周年を迎えた。


6年前、この番組に出演できたのは、
テレビ朝日のプロデューサーの一人が、
私を見出してくれたことに尽きる、のだが、

ともかく、
この番組に出演できたことを誇りに思う。




・・・

参考リンク:

徹子の部屋、バックナンバー、カレンダー
http://up-beat.pos.to/tetsuko/t_calendar.htm


・・・

参考:
余談ですが、ちなみに、
山本敏晴の最新の写真展は、以下。

題名「ルーマニアの記憶・・・大切なものは何?・・」

2010年4月14日(水)〜4月26日(月)
10:30〜18:30
火曜定休、入場無料

新宿西口から徒歩5分
新宿センタービル内
ペンタックスフォーラム

http://www.pentax.jp/forum/