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少女A うちに来る男の人は
    ろくでなしばかり。

    酔っぱらって入ってきて、
    汚い言葉でわめくの。

    その男の人が、わたしにきくの。

    「いつから客をとるのか?」って。

    あたしは
    「もうじきね」って言うの。


・・・

写真家 赤線地帯(red light district: 性風俗街)の
    撮影は難しい。
    みんな警察に摘発されるのを怖がってるから。
    売春は、違法行為だから。

    だから、私は、
    この町で暮らし始めた。
    そうでないと、彼女たちの生活は撮影できないから。

    インドのカルカッタの、売春街で。


    ここで暮らすようになって
    最初に目についたのは、子どもたち、だった。

    売春街は、子どもたちでいっぱい。
    白人の女性の私に、まとわりついてきた。
    多分、おもしろがって。

    しゃべったり、遊んだり、
    写真の撮りっこをしたりした。

    子どもたちは、カメラに興味しんしんだった。

    それを見て、この子たちに、
    この町の写真を撮らせてみたい、
    と、思うようになったの。


    私は、数人の子どもたちを誘って、
    写真教室を始めることにしたわ。

    この売春窟(くつ)の中で。


・・・

少女A 家の中には、カーテンがあるの。
    お母さんの部屋を囲んでるの。

    お母さんが、「お仕事」をする間、
    私は、家の屋根の上に登って、遊んでるの。

    ううん。もう慣れてるわ。

    私も、多分、もう2年ぐらいしたら、
    同じ「お仕事」をするんだと思う。


    ・・お裁縫と写真を、仕事にできたらいいな。
    お金を稼いで、妹を養わなくちゃ。

    お金もちになりたいとは思わないわ。
    貧乏でも、幸せになれると思ってるから。   


・・・

写真家 カメラを構えても
    いきなり撮っちゃダメよ。

    いろいろ向きを変えて、
    いい構図が見つかってからシャッターを押すの。

    時間をかけて、ゆっくり見てね。

   
・・・

少女A 写真を撮るのは、おもしろいわ。
    なんか、エキサイトするの。

    あたしが、ちょっと違う自分になってるみたい。


    こないだ、男の人の写真を撮ってたら
    怒られたわ。
    でも、平気。慣れてるから。

    練習のために、いっぱい撮らなきゃ。


・・・

写真家 子どもたちの中の一人は、天才、だった。
    素晴らしい構図の感覚をもっていた。

    私は、こんな子どもたちを、
    みんな救いたいと思った。


・・・

少女A:ふふふ。
    こないだは、こう言われたの。

    「ガキが写真を撮ってるぜ。
     どこで手に入れたカメラか
     わかりゃしないけどよ。」

    うふふ。


・・・

写真家 お金が必要だったの。

    寄宿舎のある学校に
    子どもたちを入れれば、
    教育を受けさせることができる。

    寄宿舎がない学校ではダメなの。
    すぐに、元の生活に逆戻りしてしまうから。

    だから、だからニューヨークにいったの。


    NGOのアムネスティーが、
    子どもたちの撮った写真を、
    カレンダーに使ってくれたわ。

    企業のサザビーズが、
    写真の展示即売会をやってくれた。


    あと、
    写真エージェント会社の社長にみせたら、
    やっぱり、あの子の写真は、本物だって言ったわ。

    オランダにある、ワールド・プレス・フォトが、
    毎年、9人の子どもをまねいて、
    世界子どもフォトグラファー選手権を行うの。
    そのインド代表として、
    あの子を、アムステルダムに呼びたいって!


    私は、教師でもなく、なんでもないけど、
    なんとかして、助けたい。

    なんとかして、救い出したい。
    あの子たちを、この売春窟から。



    そう思ってたの。

    でも、でも、結果は・・



    

    













未来を写した子どもたち
http://www.youtube.com/watch?v=vIv7vpM6gtw










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補足:

未来を写した子どもたち
は、
2002〜2004年の映画。

英語の題名は、
Born into Brothels
(売春宿の中に入るべく生まれたこと)

第77回アカデミー賞・長編ドキュメンタリー賞受賞作品


2002年に、
この映画の監督であるザナ・ブリスキ(女性写真家)が、
カルカッタの子どもたちにカメラを教えながら、
なんとか子どもたちを救おうとして
ドキュメンタリー映画。



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未来を写した子どもたち Born into Brothels

公式ホームページ:
未来を写した子どもたち
http://www.mirai-kodomo.net/

Kids with Cameras
http://www.kids-with-cameras.org/home/


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それでも生きる子供たちへ (書籍・映画レビュー)
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65015071.html