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私は、仕事がら、旅行が多い。
だから、東京駅も毎週のように通る。

その東京駅を通り過ぎるたび、
どうしても気になる一角がある。

それは、大丸デパートの地下にある
「ある店」の前、である。


大丸デパートは、優秀な経営戦略をとっており、
その地下と、東京駅との間には、境い目がない。

つまり、
デパ地下の食品街と、東京駅は、
つながっているのである。

このため、東京駅を通りがかった通行人たちは、
花の匂いに吸い寄せられるミツバチのごとく、
大丸デパートの地下食品街に、吸い寄せられてゆく。

で、
私もその、愚かなミツバチの一人・・


・・・

東京駅を歩いている時に、横目で見えてしまう、
そのデパ地下の中に、
つねに、いつ通りがかっても、長蛇の列をなしている
店がある。

その名を、
「ぶどうの木・銀のぶどう」
と言う。

で、列の最後尾に並んでいた、紳士風の男に
「なんのために、並んでいるのですか?」
と質問したところ、

その人は、こう答えた。
「もちろん、「かご盛り 白らら(しらら)」のためだよ。」


その紳士は、そう答えた。
当然のように、そう答えた。
常識のように、そう答えた。

彼と私とのやりとりを聞いていた、
一つ前に並んでいたオバサンは、
「当然よね」
という表情をして、
「にっ」
と笑った。


私は、愚かな質問をしてしまった。

「それ、美味しい(おいしい)んですか?」


紳士は、答えず、壁に貼ってあるポスターを指差した。


・・・

   天空に湧き上がる

   おいしそうな雲を

   スプーンですくってみたら

   ふわっとみずみずしい

   「白らら」(しらら)になりました。


   その雲の味わいは、

   自然に水切りした

   フレッシュチーズ。


   ひと匙(さじ)の柔らかさを

   どうかご賞味ください。


・・・


「て、天空に湧き上がる雲を、スプーンですくう・・」

呆然と声をあげてポスターの文字を読み上げる私を、
ニヤリとした笑顔で見つめる、紳士とオバサン。


ああ、わかりました。

僕の敗北です。

この「白らら」を買います。


ここまで言われて、食べないなんて、
生きてる意味が、なーいじゃ、あーりませんか・・


買いますよ、ええ、買いますとも。

大丸の、ばっかやろぅー



・・・

その夜、
食べました。

ええ、食べました。

「かご盛り 白らら」


絶品です!

こ、これはうまい。

うまいと言うよりは、
食感がすごい。

口当たり(くちあたり)の柔らかさに
感動(カンドー)でしゅ。


なんという食べ物。


例えて言うならば、

チンチラの毛で、舌をなでられたような感触。

あるいは、

ワタアメに、チーズの香りと味を乗せた驚き。


いずれにしても、まさに

天使のキス。




ああ

あああ

ホームページで調べてみたら、
この「白らら」。

(小)と(大)があって、

(小)なら、434キロカロリー、609円。



神様、ありがとう。

約400キロカロリーだから、
私は晩御飯として、ギリギリ食べていい食品だわ。


(注: 現在わたしは、朝食と夕食は400キロカロリー制限の
    ダイエットをしているのです。)



ダイエットの敵になる?

いいえ、いいえ。


これぞまさに、地獄に仏。

神様がくれた、私へのご褒美(ほうび)。


あるいは、

悪魔がくれた、極上の誘惑・・ ウフ














かご盛り 白らら - 銀のぶどう
http://www.ginnobudo.jp/kashi/namakashi.html