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最近、医者じゃない人が、国際協力をやるための方法の
最右翼の一つである、「青年海外協力隊」を中心とした内容の
ブログを書いてきたが、

(私は、自分が医者であるにも関わらず)
医師が国際協力をやるためのキャリア(経歴)作成に関する
内容が少ないことに気付いた。

で、
先日、N大学のT教授(医師・医学博士・WHO勤務)と話しをし、
この件(医師が国際協力をする方法)について聞いてみたのだが、
彼は、以下のように言っていた。


「WHO(国連の世界保健機関)に入りたいなら、
 日本政府の医系技官(医療系の国家公務員)になって、
 厚労省(厚生労働省)に就職するのがいいと思います。

 厚労省からは、定期的に、WHOに出向する人事があり、
 で、その出向されている間に、その人がWHOを気に行った場合、
 (WHOの)採用試験を受けて、もし受かれば、
 厚労省をやめて、そのままWHOに就職してしまう、
 という方法があります。

 ともかく、一度でも、WHOに就職して仕事をしたいならば、
 確率がいいのは、絶対、政府の医系技官になることだと思います。」


たしかに、厚労省からWHOに定期的に出向されるルートは
確立されている。

一方で、私がよく勧めている、
外務省・国際機関人事センターのJPO試験
(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー試験)は、
倍率が15倍もあるので、
なかなか通らないかもしれない。

http://www.mofa-irc.go.jp/


してみると、WHOにいきたいなら、医系技官を目指す、
というのは、ありではないか??


・・・

で、調べてみたら、
医系技官になるためには、なんと!、

(医師になった後の)
2年間の研修を修了した後で、
かつ、
医師免許取得後5年未満の間まで、
しか
就職できないようなのであるっ!(驚)

http://www.mhlw.go.jp/general/saiyo/boshu.html


(つまり、チャンスは、その時期だけっ!(汗))
(ただし、例外あり。中途採用などもあるらしい。)


と、いうわけで、
是非、このルートに進みたいと思っている人は、
学生時代から、そのつもりで計画をたて、
2年間の研修医時代(と、その後の3年間の間)に、
(それがほぼ唯一の、臨床医としての経験になるのだから)
悔いのない経験を得ておいて頂きたい。


(WHOの仕事は、各国の(保健に関する)
 外交政策(利害)の調整(コーディネート)であり、
 完全に、役人(国際公務員)としての仕事である。
 いわゆる、
 直接自分で、患者さんを診療するような、
 普通の医師の仕事は、いっさいしなくなる。
 しかし、
 世界全体の、各国の医療政策を動かしてゆく、
 もっとも重要な仕事である、とも言える。)


そうであるからこそ、
このルートに進もうと思っている医師や医学生の方は、
是非、以下のような研修医時代を送って欲しい。

・・・

候補1:
ゼネラル・ドクターを目指す。

2年間の研修医(と、その後の3年間)の間に、
内科・外科・小児科・産婦人科、という
最も重要な4つの科(医学では、メジャーという)を
全てまわっておくことを勧める。

この4つの科を経験しておけば、
人の命に関わる病気の、8割にあたる病気を
上っ面(うわっつら)程度とはいえ、経験できる。


(ちなみに私は、上記を研修時代に経験した。)


・・・

候補2:
地域医療に貢献する。

医療というのは、
病院で医師が患者を治す、などというのは、
実は、
全ての医療(保健)の中の、
10分の1ぐらいの役割しかない。

実際は、

学校教育で子どもに衛生概念を教える、
学校や会社で、健康診断をする、

女性が妊娠したら、妊婦健診をする、
子どもが生まれたら、ワクチンをうつ、

水や食品が安全か、検査をする、
上水道と下水道の完備、

急な病気になった時の救急病院の当番体制、
(およびそれらの情報を住民に伝えること)

小さい診療所で診られない病気を、大きな二次医療の病院へ
(患者を紹介・転送するシステムの構築)

病院に来られれない方のための巡回診療、
介護保険の適切な運用方法の指導、

その他、
無数にあるが、特に、

無医村に近い、田舎にいった場合、
医者の数が十分でないため、
地域住民が主体となって、
上記の全ての医療レベルの最低ラインを
なんとかして、保とうとする取り組みが行われている。

(これは、ある種の、
 プライマリー・ヘルス・ケア、である。)


現在、日本では、医師の都市部への集中化により、
農村部の医療が崩壊しているが、
それはまさに、
途上国の姿、そのものでもある。

つまり、
将来、WHOにいって、
途上国も含めた、世界全体の保健に携わりたい方は、
研修医時代(または、その後の3年間)に、是非、
日本の田舎の、地域医療をみておくことを勧める。


・・・

候補3.
専門性を持つ。

5年間、という短い臨床医の経歴であるが、
その5年間のすべてを、
一つの専門性にそそぐことも考えられる。

例えば、
WHOが力をいれている以下の項目のいずれかに
その全てを投入することも考えられる。

(1)エイズ、結核、マラリア、という世界3大感染症

(2)新型インフルエンザ、などの新興感染症

(3)都市の保健(途上国の首都は人口集中で問題噴出、後述)

(4)母子保健(産婦人科、小児科、周産期医療、ジェンダー)

(5)各種ワクチンの開発と、途上国への公平な分配
   (新型インフルエンザのワクチンも、その他のワクチンも、
    開発されると、まず先進国に配布(供給)される。
    しかし、実際は先進国の人々は栄養満点なので死ぬことは少なく、
    あまり必要ない。
    途上国の人は飢餓で栄養失調なので、インフルエンザ程度で死亡する。
    ところが、ワクチンが届くことは少なく、届いても先進国の後。)

(6)各種ジェネリック医薬品と、先進国の製薬会社の特許権
   (インドがエイズの安い薬を作ってアフリカにばらまくと、
    最初にその薬を開発したアメリカの会社が特許権侵害で怒る。)


その他、課題となる項目は、いっぱいあり、
かつ、年々変化しているので、
時々WHOのウェブをチェックして頂くしかない。

http://www.who.or.jp/

・・・


ともかく、
国連、WHO,国際公務員に興味があるのなら、
上記のようなルートもある、ということ。








・・・

補足1:

そもそも、
WHO(だけでなく、各国連機関)内には、
実際は必要もないのに、
日本人の国連職員を増やすために、

厚労省(などの日本の各省庁)が、
「国連さん、人件費(給料)は日本側で出しますから、
 うちの職員を、国連内の部署におかせてもらえませんかね?」
という交渉をして、
日本人職員を置かせてもらっているのである。

これが、厚労省からの「出向」の基本的な概念である。

(後で、また出てくるが、この職員の給与は、日本政府側が支払っている、
 のが、ポイントの一つ。)


で、この立場(WHO内に出向されるポジション)に
うまく自分が、配置してもらえるかどかは、
厚労省内でも、医系技官のトップである、
(内部で)「大ボス」と呼ばれる人物の一存で決められる。

あらゆる人事は、この大ボスによって決められている。
だから、厚労省の人は、みんなこの人に、ぺこぺこしている。

で、最近この大ボスは、
「国立XXXXXX院」という「天下り組織」に
天下ったのだが、今でも、影響力は衰えていない。

ともかく、いわんとすることは、
あなたが、厚労省の医系技官になって、
次にWHOに出向されたい、と思っても、
実際は、上記の「大ボス」(またはその後任)の一存で、
人事が決定される体制(体質?)だ、ということである。


補足2:
厚生労働省の人事は、通常、2年ぐらい、
それよりも短いこともある。
で、
仮に一度、WHOに派遣されたとしても、
帰国後、国際関係とは全く関係ない
別の部署に配置されることが多い。

つまり、国際協力系とは、
完全に、切り離されてしまう。
よって、
ずっと、厚労省からWHOの出向というポジションを
自分が続けていけるわけではない。


補足3:
では、
WHOに出向された後、
厚労省をやめる方向で、WHOに願書をだし、WHOに就職し、
いついてしまう、という方法もある。

これは、まず、採用されるかどうか、という問題がある。

(これは、これで、修士をもっているか、などの資格等により、
 P2〜P4などに分類されるので、いろいろ難しい。詳細は以下へ。)


WHOを題材とした「国連職員」の昇進と給料の問題点 3927字
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65335753.html


で、運よくWHOに就職できたとしても、
日本政府の、厚労省からは、「裏切り者」と呼ばれることが多い。

理由は、(最初に書いたように)
そもそも、厚労省からWHOへの出向の枠は、
「厚労省の予算」をつかって、給料を払ってあげていることにより
確保されているのである。

ところが、それを自分のキャリア(経歴作成)に利用し、
WHOに出向されたら、
すぐに、「はい、さようなら」と
厚労省に退職届け(絶縁状)を渡す、というような人は、
(日本政府側からみれば)
基本的に、よく思われるわけがない、という側面もある。


が、こうしたことを気にせず、いわゆる
「つらの皮が厚い」人が、上記のことを実行できる、とも言える。

ちなみに、私の友達にも、これをやった人がいる。
それが誰かは、私のブログを毎日読んでいる人には、
予想がつくはずだ。


補足4:
一般に、一般公募で入った人よりも
厚労省からの出向で来た人は、能力がやや低い可能性がある、と言われている。
英語能力などの問題もある。

また、厚労省の人は、日本の(外交政策の)ために働いており、
(根本的な部分で)
世界全体のために働いているわけではない。

これが、国連内で、問題になることがある。


補足5:
日本政府から(WHOの本部がある)ジュネーブに出向されている、
日本人の数人が、集まってグループを作り、
そこにまた、小さい「ボス」がいる。
ここでも、ヒエラルキー(階層社会、序列)がある。

要するに、厚労省からWHOに出向された、
数人の日本人たちの中でも、お山の大将、がいて、
その人の言うことを、他の人は聞かないといけない。

これもかなり、うざい。

また、余談だが、
海外の(政府系)日本人社会では、

日本の「大使の奥さん」が、えらくて、
(ファースト・レディーのような扱いを受け)
その他の政府系の出向できている人たちの奥さんは、
その大使の奥さんに、ぺこぺこしないといけない。

これもかなり、めんどうくさい人間関係となる。


補足6:
話は変わって、最近の世界の保健課題の一つが、
「都市の健康」であることを、説明する。

上述のN大学のT教授は、
日本にある、WHO神戸センターでも働いている。

この施設のトップは、
インドのクマレサン、という。

ちなみに、4月7日が、世界保健デー、なのだが、
今年(2010年)のテーマは、healthy city、である。

まず、
途上国の都市部では、
スラムなどで、感染症が多い。
communicable disease (人にうつる病気)

これは、昔から知られていた。

ところが、最近は、
non-communicable disease (人に感染しない病気)
も増えている。

いわゆる成人病(生活習慣病)、
なども増えている。

要するに、途上国でも都市部では、
糖尿病等が、急速に増えているのだ。

また、
農村部と違って、都市部では、
コミュニティーが存在しないので、
プライマリー・ヘルス・ケアの手法が使えない。

など、
現在、世界の保健課題の中で、最大の問題の一つが、
途上国の都市部、なのだ。

この背景にあるのは、私がたびたび強調している、
世界の人口増加問題である。

人口増加は、途上国の(農村部よりも)
都市部で、激しくおこっているため、

それによる、
衛生状態の悪化、
人々の接触回数の増加、
性行為感染症の増加、
治安の悪化(暴力による外傷事件の増加)、
交通事故の増加、
高カロリーのジャンクフードの増加、
など、
途上国の都市部こそが、現在、世界最大の問題の一つ、なのである。



参考リンク:

WHO神戸センター
http://www.who.or.jp/indexj.html