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検査ができない、電気もない、という問題


山本 今の話し、もうちょっと突っ込んどきましょうかねぇ。
   まだ時間が有るので。

サクラ はい。

山本 前者のー、その検査が出来ないって話ですけれども、

   (その詳細を聞く前に、まず)
   先生がスーパーバイズ(監督)していた病院は、
   あのー、

   診療所クラスの「一次医療」の小さい病院を
   一個、スーパーバイズしていたのか、

   二次医療のー、ちょっとはー(検査のできる)
   少なくとも血算
   (けっさん、赤血球や白血球の数を数える検査)とかが出来る
   二次医療の病院みたいなのをやっていたのか、

   それとも、
   そのー、(それらの)システムで、
   一次医療位と二次医療の一つ二つ位を全部まとめて
   スーパーバイズしてたのか、どこをやってたんですか?

サクラ えーっとー、後者の方ですね。

    村の診療所と、あとはその
    リファラル病院(小さい病院からの患者の転送を受け入れる二次病院)、
    郡病院なんですけど、
    その一つを、スーパーバイズしていました。

山本 なるほど。

   リファラル病院というのは、小さい診療所から、
   えーっと重症患者や手術の必要な患者が
   転送されてきた時に、それらを受けとる病院、
   を、リファラル病院と先生は言っている、
   ということでよろしいでしょうか?

サクラ はい、はい。
    電気も中々通らないのでー、
    あの勿論診療所ではマラリアの検査と、
    後は血糖位しか(検査は)出来ないですが、
    あと検温か。

    病院も…、余り、あのー機能してないので、
    あんまり検査出来なかったですね、

    電気が通って(無いので)、
    そのレントゲンも駄目ですし、あのー、
    酸素を入れても、電気が繋がってないので駄目だったり。

    確実に出来るのはマラリアと血糖、尿検査、と
    ヘモグロビン
    (赤血球中の酸素を運ぶタンパク質の量の検査)ですね。

山本 マラリアと血糖は、患者の血を
   (検査用の細長い)テープ(試験紙)に垂らして、
   ぐさっと機械に刺せば、1〜2分待てば結果出るやつですよね?

サクラ あ、そうです。
    マラリアはマイクロスコープなんで。

山本 あ、マイクロスコープ(顕微鏡)ですか。

サクラ はい、はい。それでやってました。

山本 分かりました。
   えっとあのー、普通その
   二次医療の病院の方はですねー、

   「ジェネレーター」いわゆる発電機をですね、
   ガソリンか、えー軽油で動くジェネレーターをですね、
   あのー他国から輸入、
   まぁまたは(途上国の)首都から買って持ってくる
   とかやるんですけど、それは無かったんですか?

サクラ ジェネレーターはありました。

    ただその、あれが無いんですよね。
    (ガソリンや軽油などの)燃料が無くて、
    で(燃料の)補充も
    政府が来れないので、補充が出来ない。

山本 なるほどー。

サクラ で、たまに私達にリクエストがあって、
    私達があのー持って行ったりはしましたけど、
    それもいつも出来る事ではないしー、

    逆にそれを私達がやってしまうっていうのは
    余り良くないって事で、基本的にはやらない…
    (の)でしたけれども。

山本 (外国人の)私達が(その燃料の運搬を)やってしまうっていうのは、
   要するに、サステナビリティー、
   (我々、国際協力団体が撤退した後の、地元の人々だけでの)
   「持続可能性」が、かえって確保出来なくなるから、
   (なるべく、やらないほうがよい、ということですね。)

   あまりまー
   「近代文明を持ち込まない」っていう
   (途上国の田舎における国際協力の)原則がありますからねー。

サクラ えー。

山本 なるほどー。

サクラ まー、難しいですねー。

山本 そうですねー、なるほどー。
   まーその辺も、また別なジレンマってやつですね、
   分かりました。

   でー2番目ですが、
   あれ?何て言いましたっけねー?
   えーっと。

・・・

医療だけでは解決しない、途上国の問題


サクラ えー、そのー、色んな問題があって、
    それは医療だけではなく、
    その他の色んな問題も解決しないと、
    そこの人達の「健康の向上」には結びつかない。

山本 まー、そうですね。

   あのー、まそうなんですけれども、
   具体例を言わないと
   (国際協力を現場でやったことがない)
   聞いてる人(このブログを読んでる人)は分からないと思うので、

   まー私の、その、エイズの本なんかも、
   もろにそういう事が書いてあるんですけれども、
   医療だけやっても
   エイズは絶対に解決出来ないっていう話が
   (具体例として)書いてあるんです。

HIV/エイズとともに生きる子どもたち ケニア
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/409726401X

サクラ えぇ。

山本 例えば先生が体験したのは、えー、
   どんな問題でした?

   つまり、どの側面を解決しないとー、
   根本的に、そのー、地域の医療というか
   保健は守れないっていう、何か具体例があった訳ですか?

サクラ てゆうか、まー普通にもう「道が無い」(笑)。

    インフラ(社会基盤)の道路とか、
    そういう設備はもちろん大事ですしー、

    後はあのー、紛争地だったので、
    私達はそのメインロード(幹線道路)、

    メインロードというか(舗装された)ロードは無くて、
    まー砂利道とか砂漠の道なんですけれども、
    大きな道路があって、そこから逸(そ)れてはいけない。

山本 はい。

サクラ 地雷が埋まってるかもしれないし、
    ゲリラ集団から襲われるかもしれないし。

    なので、
    基本的には村に行くまでの決められた道を通って行き、
    決められた道を帰ってくる。

    で、横道に逸れてはいけない。

山本 ま、地雷等(が)あるからですよね。

サクラ そうですね。

    で、たまに村に行くとですね、
    家族が診療所で待ってて、そのー
    自分の家にすごく重症な家族が居る、と(言うんです)、

    けど村には連れて来れない、
    ここまで距離があるし、
    非常に重症だから連れて来れないから、
    家まで来てくれって言うんですよね。

山本 はい。

サクラ けどー、あのー、それは行けないので…。

山本 何で?

サクラ ちょっと、あの、メインルートから外れるので。

山本 なるほど、はい。

サクラ 彼ら、「ブッシュ」に住んでますのでー。

山本 「ブッシュ」(bush) っていうのは、
   「藪(やぶ)の中のこと」でよろしいでしょうか?

サクラ 藪です、はい。

    そこは危険だから行けないので、
    どうにかしてメインロードまで運んで来てくれ
    って言うんですけれども、

    重症な患者さんを運ぶのは中々大変で、
    なので、そういう患者さんは、あのー、
    診ることが出来なかったんですねぇ。

山本 はい。

サクラ なので、ま一つはそういう意味で、
    紛争というのはすごく大きな、
    あのー医療の障害にはなるなーと思いました。

山本 まー、一番典型的なケース(ですね)。

   要するにあのー、そもそも道路が無くて、
   あっても、そのー、地雷や不発弾が埋まってるから、
   メインルートから逸(そ)れられないと。

   だからもう患者さんは、病院に来ることすら出来ず、
   こちらも仮に巡回診療をやろうにも、
   行くことすら出来ないから、
   どうしようもないって話ですよね。

サクラ はい。

山本 まぁあのー、
   (国際協力をやっている人にとっては)よくある話しですが、
   こう(いう)具体例になると、
   聞いてる人が分かる(理解できる)と思います。

サクラ あとは、干ばつですよね。

    あそこは、砂漠地帯の、もともと雨が少ない、
    降水量が500ml以下なんですけれども、
    最近はひどい干ばつで、
    家畜もどんどん死んでいく。
    で、人達も、必要な食糧とか、水も無いんですよね。

山本 はい。

サクラ で、WFP、世界食糧計画が入り込んで、
    あの、食糧を配給はしてるみたいなんですけれども、
    それが十分ではない。

WFP 国連世界食糧計画
http://www.wfp.or.jp/

山本 はい。

サクラ でー、そういう中で、
    ま自分達が診て薬をあげても、

    「薬は要らない、食糧をくれ」
    って言われたり、
    薬あげても、薬飲む水が無いって言われたりするとー、

    やっぱりその人達の健康以前に食糧とか水とか、
    そういう物も充足させないと駄目なんだなーと思います。

    それは私達医療者は、
    食糧持ってこれる訳ではないし、
    水の配給出来る訳ではないし、そのー、
    住民にそう言われても何も出来ない…。

    そういうのはありましたね、はい。

山本 まー、今の非常にあれですよね。
   まー、医療をする以前に、

   いわゆる水と食事の、まぁ栄養ですか、

   ま、飲む水が、いわゆる「安全な水」、きれいな水があって、
   食べる物をバランス良く、
   そのタンパク質だのビタミンだの摂れていれば、
   まぁそもそも病気にはそんなにならないのに、

   まぁそっちをやる方が、
   実は(医療よりも)先じゃないかっていう風に、
   途上国に入った医者や看護師がよく思うんですけれども。

   まぁ先生も、そういった事を御経験されたのかな
   っていう風に思いますけれどもね。

   えっとあのー、それは、ただよくある、
   非常によくある事なので、通常例えば
   国境なき医師団の場合もですね、

   えっとーいわゆる水や食料を配る団体で、
   例えば同じフランス系の団体である
   ACF,アクション・コントラ・フェイムという
   (日本語訳は)世界飢餓撲滅活動、かな、

Action Contre La Faim
http://www.actioncontrelafaim.org/

   というフランスの団体が有りまして、
   それと組んでですねぇ、
   いわゆるWFPの様な事(食糧を配ること)をやってる
   NGOと組むことがあるんですけれども、
   それは先生の地域ではやってました?

サクラ あ、はい。
    特にこう、一緒になってやってる感じでは
    なかったんですが、
    近くに居て、村で何か言われたら、
    一応お伝えはしてましたね。

    あのー、こういう風に言われたんだけど、
    っていう風に言ってましたが…。

    ただ、あちらもあちらで、色んな問題があって
    中々行動に移すのもちょっと難しかったみたいですね。

山本 あ、そうですか。

サクラ はい。

山本 どんな問題があったんですか?

サクラ あのー、私の派遣された国で働くって
    実はそこ(NGOの活動許可など)も難しくって、
    政府がすごく厳しいんですよね、NGOに対して。

    で、労働許可を取るのが非常に難しくて、でー、
    私達は(医療活動がしたいと言ったので)何とか取れたんですが、
    彼らは中々労働許可が取れなくて、
    活動そのものがかなり制限をされていたんですよね。

山本 はい。

サクラ で、(ACFは)その許可は最終的には、
    貰えてやってたみたいなんですが、
    色々あの活動にも制限があったみたいで、
    (そのアフリカの政府から活動制限をされたみたいで)
    かなり大変だったみたいですね。

    というのは、
    これ、あんまり話していいのか分からないんですが、
    私達が居た国では、そうでした。

山本 なるほど。

サクラ はい。
    あのー、私達が行ったB地方は、
    この国の東側の国境の近くだったんんですが、

    ゲリラ活動が盛んで、
    基本的に反政府の人達の地方なので、
    この国の政府は、そのー
    ゲリラの撲滅計画を立てたので、
    あのーいわゆる
    「兵糧攻め」(ひょうろうぜめ)にしてるんですよね。

注:
兵糧攻めとは、その地域に、
水も食糧も送らず、飢えと渇きで苦しめ、降伏させる戦法。

山本 なるほど。

サクラ 住民もそのゲリラの一味とみなされてるので、
    食糧や水なんかも、あの配給しないっていう、

    あのー物資の流通の阻止をしているので、
    基本的にそこで、
    ウォーター・トラッキング(水の輸送)している、
    水の配給をしている
    ACFをありがたく思ってないので。

山本 は、は。

サクラ そういう意味で労働許可が非常にとりにくかったです。
    で、
    (医療活動をしたいと言っていた)私達も
    余り初めは良い顔されなかったんですが、
    ま、医療っていうことで
    何とか労働許可もらってやってたんですけど。

山本 まー、政府から見ればそのー
   ACFという、その、水や食料を配るNGOが、
   ま反乱軍にも水を渡してる可能性がある(と思う)
   ということですよね。

サクラ そうです、はい。

山本 それは、まぁ…(しょうがないというか)。

サクラ フフフ(笑)

山本 政府から見れば、それはまぁ当然だと思いますね。
   なるほどー、分かりました。
   ま、その位でいいですかね。

   その位喋れば、聞いてる人も
   (国際医療協力の)難しさが分かると思います。

サクラ はい。

・・・

アフリカでの医療援助活動を終えて


山本 で、まー、半年間が終りまして、
   まぁ日本に帰ってきましたけれども、
   結局あのー、帰ってきてどうでした?
   国際協力を一回やってみて。

サクラ あーやっぱり、問題が山積みだなと思いましたね(笑)。

    まぁ自分の経験としてもすごく良かったですし、

    じゃぁああいう場所で、あのー
    医療を良くしていくのには、
    色々解決していかないといけない問題があって、

    だけど自分は医療者なので、
    とりあえず医療の事しか、
    とりあえずは出来ないだろうっていうこと…。
    ていうのを思いましたね。

山本 は、は。

サクラ じゃぁその医療者として
    今後どういう風にやっていこうかなって
    思ったんですけど、
    やっぱり自分が小児科なので、
    子供の医療に携(たずさわ)りたいって思って。

山本 はい。

サクラ もうちょっと自分の、
    あのースキルも磨きたいな…
    っていうのがあったんですよね。

    アフリカの子供達でー、色々診ましたけれども、
    栄養失調の子供が非常に多くて、

    でー、私やっぱり日本で
    栄養失調の子供診なかったので、
    最初非常に戸惑ってんですよね。

    どういう風に、治療していけばいいのかっていうのが。

    でー、そういうのを経験して、
    もうちょっと栄養について勉強するのは、
    あのー面白いかもしれないですし、逆にあのー、
    どこの途上国行っても、
    割と使える分野じゃないかなっていうことで。

山本 はい。

サクラ ちょっと栄養について勉強したいなって思って、
    大学の先生達に、
    栄養の勉強をしたいので、
    留学をさせてほしいとお願いをしました(笑)。

山本 どこの大学の先生に相談したの?

サクラ あ、長崎大学の、はい。

山本 修士を取った、長崎大学の先生の所に戻って
   相談をしたということですか?

サクラ 実はですね、私修士卒業して、
    博士課程にそのまま進学をしたので、
    博士課程の学生でありながら、
    アフリカ某国に行ってたんですよ。

山本 なるほど。

サクラ なので、帰ってきたら、引き続き博士課程の、

山本 えーっと、そのー、いやそれは良い(です)、
   はっきり言うと(良い)アイデアでー、

   例えば別に先生の事をいう訳じゃなくて、
   よくあるのがですね、

   ま例えば、修士論文や博士論文を書く時に、
   あの(大学院に)在籍しながら、途中で
   例えば青年海外協力隊やー、NGOに行って、

   自分がその途上国でやった事を、
   はっきり言って
   (修士論文や博士論文の)「学位論文のネタにする」
   という(目的で)、
   あのー、まー、ある意味で、したたかな、
   ある意味で、賢いやり方をとってる方は非常に多いのでー。

サクラ あ、そうですかー、へぇー。

山本 先生も、そういう感じではなかったんですかね?

サクラ いや、私もそうですね。

    そこで、データを取れるとは思ってなかったんですが、
    やっぱり患者さんと接する中で、
    何だかんだ、
    そのリサーチ(研究)のテーマは、見えてくるかもしれないって。

    実際、そのー、紛争地だったので、
    データの持ち出しは出来ないので、はい。
    何かリサーチのテーマの
    きっかけになればいいかなーと思ってたんですが。

山本 分かりました。

   で、(長崎大学の)博士課程にいたので、
   日本に帰った後、長崎の先生に相談して…。
   それはEメールですか? それとも直接会ったんですか?

サクラ あのー、帰りました、はい、長崎に。

山本 あ、そうですか。

サクラ はい。

山本 で、何て言われました?

サクラ ま、勉強したかったらいいですよ、と(笑)。


・・・
・・・

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