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コミュニティーがエイズ対策をやるための国のガイドラインはあったか?


山本  (一般論としては)
    エイズ関係の活動といっても、やる事はもう100以上あって、

    いわゆる一般的なエイズの知識を(住民に)教える事とかですね、
    具体的に予防(するため)の、
    性行為の(時の)コンドーム(等の使用)関係を教えるとか。

    あとは家族計画とかですね、女性の避妊とか、
    バース・スペーシング、出産間隔を女性が空ける事とかですね、

注:
バース・スペーシング ( birth spacing ) とは、
毎年のように連続して女性が出産をすると、
その母親が貧血・失血から死亡したり、
生まれた乳児も低出生体重児が生まれやすかったりするため、
妊産婦死亡率、乳児死亡率ともに高くなる傾向がある。
よって、女性の出産間隔を空けさせることは重要。
このために、コンドームなどの避妊具を普及させるのだが、
これが二次的に、エイズなどの性病も防ぐことにもつながる。

    あのー(抗HIV)薬の、難しい副作用とかですね。

    栄養、
    「普段はこんな物食べなさいよ」とかいう栄養の説明するとか、

    手を洗えとか、衛生関係、
    ウオーター・アンド・サニテーション、
    水と衛生とかですね。

注:
water and sanitation 水と衛生
国際協力の世界で使われる決まり文句の一つ。
途上国において、まず最初に改善しなければならない分野の一つ。
ワットサン watsan と略される。
エイズでは免疫力が下がるため、下痢などの二次的な感染症で死亡する。
下痢を防ぐためには、
まず、上水道などを作って細菌の入っていない水(安全な水)を供給し、
同時に、手洗いを指導し、トイレを作り、衛生状態を改善することが必要。

    今言ったようなこと(の全体)を、
    国がガイドブックとか作ってるとは思うんですけども。

    国のガイドブック、
    または地方自治体が作ったガイドライン等が(既に)あって、
    それを使って、

    どのグループ(M国の田舎のエイズ予防啓発するコミュニティーたち)
    も似たような事を(もう)やってたんですか?

    それとも全然めちゃくちゃな事を勝手にやってたんですかね?

マック そうですね、(ガイドラインは)あるのはありました。

    県のエイズ対策課に、そのCBOグループが直接つながってて。

    「あなた達をCBOグループとして認めるためには、
     これこれこういう事について活動しなさい」

    と指示する訳です。
    その指示がガイドラインのような物になると思うんです。

    その活動が5、6個あったんですが、
    1)エイズ孤児のケアと、他にも色々あって、
    2)ファンド・レイジング(資金獲得)活動をしているか、
    3)予防啓発、
    4)HIV陽性者のサポート、
    などなどの活動をグループがしていれば、
    「エイズ対策のCBOとして認定」しますよ、という感じなんです。

山本  認めてあげるということは、
    (そうした条件を満たす努力をし、それを達成すれば)
    県から(例えば)年間10万円くらい
    (コミュニティーに、エイズ予防啓発の活動費用として)あげますよ、
    ということなんですよね?

マック そう、そのお金をもらうチャンスをあげますよと。
    
    でも活動してるというだけではもらえないんです。
    一応CBOとして、
    「5つの活動」をする事で県に登録できますよ、と。

    それがある種の
    CBOの活動のガイドラインのような物にはなっている訳です。

    そして、さらに
    実際のもっと細かな活動内容に落とし込まれて行く訳ですが、
    
    例えばエイズ孤児のケアであれば、
    学校へ行けない子供に学費を支援してあげましょうとか、
    具体的なプログラムが出てくると思うんですが、
    まずはガイドライン的なものとして、
    県からCBOへは5つの活動を要求していましたね。

山本  実際10個くらいのCBOがあって、
    10個は10個とも県に認められてたんですか?

マック 認定されていたのは、
    10個のうち、2、3個グループだけでした。

・・・

現地の状況を把握した後、どのような計画を作ったか?


山本  (赴任して最初の数か月、どさまわりをして)
    それで(上記のような)状況は(だいたい)分かったんですね?

マック そうですね、だんだんと分かってきましたね。

山本  で、その他色々な情報を集めた上で、
    (最初の3カ月から半年が終わった頃)
    結局何をしようと思いました?

マック 他の2人のエイズ対策隊員とも話し合ったんですが、
    一人一人が個人的にやりたい活動もあって、
    その上で3人の活動として何をしようかと決めたんですが。
    
    CBOとして登録されてないグループが多いので、
    まずは県に登録してもらいましょうと。

    CBOになるための条件を整えて、県に認定してもらうまでを、
    3人の目標にしようということにしました。

    そこに半分くらいの時間を使う、と。

    残りの自分の時間を、
    女性がリーダーのグループがあって、
    そのグループを個人的に支援して、
    お手本になるグループに育てたいな、と。

    女性リーダーの能力を向上させてあげたいなと。
    力を付けてあげたいなと。

山本  女性がリーダーをやってるというのは、

    エイズ対策をやってるCBOの中で、
    単に女性がリーダーやってる場合とですね、

    女性の社会的地位を向上させる事が
    エイズ対策に最も重要であると、
    それも部分的に本当なんですけれども、

    どっちですかね?

注:
女性の社会的地位の向上が、エイズ対策になる理由は多数あるが、
直接的には、性交の時、男性にコンドームの着用を指示すること。
間接的には、女性が学校にいき教養が高まると、
エイズに関する医学的知識を理解し、その予防法等を実践できること等。

マック 私は単純に、確かにそんなような、書籍なんかを読んで、
    女性のエンパワーメントの重要性なんてのも考えましたが、
    そのグループの場合は、
    その女性リーダーを見てて、行動力があるなと思ったんです。

注:
エンパワーメントとは、
その人が、その地域において自分の能力を発揮できるように、
その人に教育を受けられる機会などを与えるのと同時に、
まわりの社会のほうにも、その実現を可能にする状況を作ること。
もともとは、途上国における女性の社会進出のために生まれた概念。

    まあ(その)女性の方が、その地区では、
    他のグループの男性リーダーよりも、
    その女性リーダーのほうが、行動的で、
    考え方も比べてみるとしっかりしているかな、と感じたので、
    この人と活動してみようかな、と。

    そのぐらいの単純な理由ではあったんですが。

山本  なるほど

マック 他のグループの男性リーダーは、
    リーダーという地位に甘んじているというか、
    じゃあどんな活動がしたいのと問いかけても、
    別にリーダーでありさえすればいいというか。

    実際に活動している人は別にいたりして。

    でもその女性リーダーに関しては、
    リーダーであり活動家でありという方でした。

    なので、この人となら活動して面白いかもと感じました。

山本  それは何歳くらいの方ですか?

マック 35歳くらいだったと思います。

山本  結婚されている方ですか?

マック 結婚して、離婚したか、旦那が亡くなったか、一人でした。
    そして子持ちでしたね。

山本  ご本人は、HIVには?

マック 感染していませんでした。

山本  ではない方?

マック ではないんですが、右手が不自由でした。

・・・

HIVに感染していないのに、なぜエイズ予防の活動をしていたのか?


山本  では、肝心な事を聞くのを忘れてました。

    10個のCBO(に参加している人)の、
    ほとんどは、半分以上は、
    「HIVとともに生きる方」(HIV感染者)でしたか?
    それとも関係ない人?

マック ではないです。

山本  関係ない人がやってたんですね?

マック そうです。

山本  関係ないのになんで彼らはやろうと思ったんですかね?

マック その辺りは、
    (2年間が過ぎて)活動も終わりになって見えて来たことで、

    最初は自分もそう思ったんです、
    エイズの感染者がグループを作れば良いじゃないかと。

    今のメンバーたちも当初は感染者を支援する、
    という名目でグループを立ち上げる訳ですね。

    で(HIV)陽性者の集まりはまた別にあって、
    サポートする側とされる側で分かれていて、

    (HIV)陽性者のグループは
    さらに陽性者をサポートするのではなく、
    利益を受け取る側にいるだけ。

山本  へーそれはまた、ずいぶん状況が。
    全然違う国とかもありますけどね。

マック その地区はそうでしたね。

    まあ支援グループの中にも陽性者が入っている事はありますが、
    グループの主なメンバーには陽性者はいませんでした。

山本  彼らは、そのHIVの予防啓発活動をやることによって、
    何らかのメリットがあったんでしょうかね?

マック さっきの話に戻れば、CBOを登録する事で、
    条件付きだけれどお金をもらえる立場に立つ事が出来る。

    活動の企画書を県に提出すれば、
    年間200万円くらいまで支援してくれる可能性がある。

    CBOに登録することで、エントリーする権利が手に入る訳です。

山本  それを自分の給料にしているという事ですか?

マック それは出来ない事にはなってました。

    一応監査が入って、入金と出金がチェックされますし、
    そもそもCBOは無償ボランティアが前提だったので。

    出張時の食事代とかには使えますけど。

山本  じゃあ金銭的なメリットはほとんどないんですか?
    (それでもやってるなんて)不思議ですね。

マック 私が赴任する前には、
    県からグループにお金が入る事もあったそうです。

    で、村人のほとんどは仕事がなくて、現金収入もなく、
    農民の自給自足の生活で。

    教師とか、医師とか、村にいる公務員とかだけが
    現金収入があるけれど、
    それ以外の人はお金がない訳です。

    エイズ対策活動の一環で、
    近くの町まで行くとか、首都まで上がるという事、
    それ自体が彼らにとって
    インセンティブ(目的意識)になっていたように
    個人的には感じました。

    ホテルに泊まって、ベッドで寝て、
    そんな事さえも出来ない人たちばかりなので、
    CBOの経費を使ってそんな事ができるだけでも、
    彼らにとっては、
    グループを作るメリットになってたのかなと。

山本  「俺は、県の仕事で、県の金使って、こんな事やってんだぞ」と。

マック そんな感じですかね。

    あともう一つは、「Allowance(手当)文化」があって、
    例えば、私、協力隊の人間が
    「これこれの(エイズ予防に関する)ワークショップを開きますよ」
    という場合に、

    日本的に考えた場合は、
    参加者がお金を払って知識を得るのが普通かなと思うんですが、
    M国では、逆なんです。
    
    「参加してくれたら○○円差し上げますから、参加してください」と。

    そんな機会が得られるのも、CBOに登録しているからこそで、
    登録していないと情報も入ってこないし、参加できない訳です。

注:
ワークショップとは、講義を聞くだけではなく、
自分も積極的に発言をするなどができる会合。勉強会。

    ワークショップがあって、都市部に出かけて、
    よくわからないけど話を聞いて、
    ホテルに泊まって、
    その上現金で2000円くらいもらえるという事になると、
    相当な収入になる訳です。

    楽しかったんだろうなと、思いますね。

山本  エイズの研修とかに行くと、
    500円とか1000円貰えますよ、と。
    仮に寝てて聞いてなくても金はもらえる訳ですね。

マック で、研修を受ければ、さらに次のチャンスにも恵まれる訳です。
    お前この研修を受けたから、次はこの(上位)研修を受けろと。

山本  それがメリットと。

マック そうですね、メリットかなと思いましたね。

    実際、私が家の警備員に払ってた給料が、
    月に4000円強なんですよ。

    なので一回出席するだけで2000円とか貰えるなら
    凄いじゃないですか?

注:
アフリカなどの途上国では、月給が数千円なのは、普通。

    あー、「研修とかで払い過ぎやなあ」って思いましたけどね。
    なんでそんな金払うんやろうと思いましたね。

    でもその慣習がM国に根付いてしまってて、
    公務員とかもそんな感じで生活を支えてましたね。

山本  それでは平均収入の話に少し触れますけれど、
    まあ途上国と言ってもですね、
    首都と地方で物価が全然違うのは知ってるんですけれども。

    例えばですね、カンボジアの場合は、
    一般的な収入は月1万円弱と言われてまして、
    まあ地方自治体のちょっと上の人で8000円くらいで、
    田舎に行くともう3、4000円くらいの月収とかっていうのが、
    まあ東南アジアのカンボジアって国ですね。

    でその(アフリカの)M国は、あなたが居た北部は田舎ですよね?

マック はい。

山本  月給がですね、まあ地方公務員と、
    農民ではだいぶ違うと思うんですけども、
    基本的には数千円ですか?

マック 聞いた話では、小学校の先生で、
    15000円から20000円くらいですね。

山本  そうですか、結構いいですね。

マック 私自身は、金銭の話とかはあまりしなかったんですよ。
    でも、M国の最低賃金は自分にも関係あって、
    それが時給で10円とか12円とかですね。

    1日頑張って働いてもらって、150円くらいですかね。

    私は家を警備してもらってて、
    そのガードマンに1日120円?・・
    150円くらい払ってました。

山本  その20倍が月収として、
    2000〜3000円ってことですよね。

マック それが法律上は最低賃金でした。
    まあそこから推測してもいただけるかと。

山本  まあ数千円から、1万数千円の間ってことでしょうか。

マック そうですね。
    他の職業、例えば医師とかは聞かなかったんですが。

山本  で、10個あるCBOを県に登録(できるように指導)して、
    まあ最低のスタンダードというか、
    県が要求するもの(内容)を、活動してもらうように
    3人(の協力隊員)で努力する、ということ。

    そしてその内の一つの(女性リーダーのいる)地域を
    「モデル地区」として、
    立派にちゃんと活動するように仕上げて、
    うまくいったら周りに広げていこうという活動ですよね。

    これはまあ、どっかで聞いたような話で、
    割と、あの、最初の案としては、
    これで大筋で良いんじゃないかと、個人的には思います。

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