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2010年1月26日、
今年もユニセフの国際協力講座で講師をしたのだが、
国家公務員の女性の方が、受講されていた。

普通は大学生・大学院生・若い会社員の方が多いのだが、
ちょっと変わった経歴だった。

(自主研究として、上司の許可をもらって、日本が主導して行われた
 アフガニスタンのDDR(武装解除)の研究をしていた。)


どうして国際協力に興味があるのか、また、
今後どういうことをやりたいのか、インタビューさせて頂いた。

・・・

インタビューをした日時:
2010年6月2日、午後2時。

・・・

生い立ち


山本 まず、お名前ですが、
   もし、ご希望があれば、匿名にします。
   匿名の場合、本名とかけ離れたニックネームをお願いします。

ベア では、テディベアでお願いします。

山本 では、お生まれは何県ですか?

ベア 北海道です。

山本 中学校くらいまでは北海道の地元にいたんですね。
   高校は何県に行きましたか?

ベア 高校・大学と北海道にいました。

山本 それは、国立ですか私立ですか?

ベア 私立です。

山本 何学部ですか?

ベア 英文学科です。

山本 そのころまでに、
   公務員になることは固まっていたのですか?

ベア 当時は英文学に専念していて、
   現職の事をあまり知りませんでした。
   漠然と英語が使える仕事がしたいと思っていました。
   例えば、学校の先生になろうと思っていましたが、
   教員試験はハードルが高くて、
   ここに入るまでは塾の講師をしていました。

山本 公務員になる前は塾の講師をしていたという訳ですね。
   塾の講師は常勤ですか、
   あるいは、バイトのような非常勤ですか?

ベア 非常勤です。

山本 大学時代の話に戻りますが、
   その頃までに国際協力をしたいと思っていましたか?

ベア 当時は本当に関心が無かったです。
   学校がミッション系だったものですから、
   クリスチャンや神父さんが
   中東の危険な所に行ってきた話は、
   チャペルや授業で聞いたりはしていたのですが、
   なにせ文学部ですから、
   国際情勢とは無縁の生活をしていました。

山本 ミッション系だったのは大学時代?

ベア はい。

山本 高校時代までは関係なかった?

ベア はい、道立の高校でした。

山本 卒業後は、すぐに塾に就職されたのですか?

ベア はい、塾の先生をしていましたが、
   「早く結婚してくれればいいな」という感じだったと思います。

山本 それは、誰が?

ベア 両親は、そう思っていた、と思います。

山本 その塾の講師は何年くらい続けたのですか?

ベア 公務員になるまで塾の講師をしていましたので、
   7、8年ほど勤めていました。
   平成5年に公務員になりましたので。

山本 そうですか、一つの会社に勤めていたという訳ですか?

ベア 塾の講師は途中、場所も変わりました。
   勤務が昼から夜10、12時まで働いて、
   不規則な生活になるので、体の方も大変でした。
   非常勤で週に3、4コマに減らしましたが、
   それでは、食べていけませんでした。

・・・

省庁へ就職

ベア その時、国家公務員の採用試験があり、
   年齢制限ぎりぎりでしたが、受けたらたまたま合格したのです。
   語学を使う部署が北海道ではなく、東京にあったのです。
   (だから、東京に移動しました。)
   それで、平成5年4月に現職に就きました。
   試験場は、お役所の様な雰囲気の場所でした。

山本 塾の講師をされていたのが8年でしたっけ?

ベア はい。

・・・

国家公務員になった理由は?

山本 現職に就いた理由は何でしたか?

ベア 塾の生徒さんに公務員のお子さんが多かったのです。
   また、その中には、
   個人教師もしていたお子さんもいました。

山本 英語を教えていたのですか?

ベア 英語と、小学生は全科目、中高生は英語を教えていましたね。
   たまたま、ご縁があって、
   採用試験のパンフレットをいただきました。

   塾の講師の仕事は、身体もきついし、大変ですから、
   昼間に英語を使える仕事をということで、
   公務員試験を受けました。

   あと、父親が公務員でしたので、安定した仕事だと知っていた、
   ということもありました。
   全てが、ご縁あってのことでした。

山本 教えているお子さんに公務員のお子さんが多かったのと、
   公務員だと収入が安定するだろうと思ったこと、
   あとは成り行きでなったという、
   この三つという感じですね。

ベア そうですね。一生食べてける仕事で、
   英語が使える仕事をしたかった。

・・・

国家脅鏈陵兒邯海鳳募

山本 その募集は、
   広報で英語が堪能な方を募集しているという事が書いてある内容で、

   募集のチラシの紙か、インターネットの情報か、
   職安か、ハローワークでしたか?

ベア 新聞の小さな覧に載っていました。
   教え子のお父さんにパンフレットをもらったのがきっかけです。
   また、女性の先輩ですけど、千歳に住んでいらして、
   その先輩が一度受けたこともあって、
   先輩が受けた位の所なら堅実なところだろう、
   と思ったのもありました。

山本 その先輩は、塾の先輩、それとも大学時代の先輩ですか?

ベア 大学時代の先輩です。
   そのかたは、最終的に大学の職員になられたのですけど。

山本 わかりました。
   ちなみに、この職場の中で英語を使う仕事というのは、
   具体的にはどういう部署だったのでしょうか?
   また、どういう仕事があるのですか?

ベア 通訳と翻訳ですね。
   職場や仕事の内容は、私が選ぶことはできなくて、
   人事の方が部署をえらんできて、本人に打診をして決めます。

山本 わかりました。
   先ほど擬錙↓脅錙↓啓鏤邯海箸っしゃっていましたが、
   脅錣把未辰燭里任垢諭

ベア そうです。

山本 基本的な所ですが、
   擬錣諒が基本的に難しくて、
   その試験で合格すると、もっと上のポジションに入れて、
   脅錙↓啓錣砲覆襪氾然地位も給料等も下だ、
   ということになるわけですね?

ベア 理解は正しいです。擬錣魯ャリアですから。

山本 キャリアというと、東大出て、「上級なんとか公務員試験」、
   という難しい試験に通った方なのですよね?

ベア ここ(の省庁)は他と違って、独自の採用制度を取っています。

   I種(技術系のみ)は大体、大卒以上、

   脅錣眤臑完幣紊任垢、
   専門職が多く、語学もその中に入っています。

   啓錣蝋眤完幣紊任后
   学歴や能力によって受け入れ側の試験も違ってきます。

山本 擬錣鮗けるには、当然大学を出ていると思いますが、
   大学院は必要ないのですか?

ベア 必要ありません。
   ただ、最近は大学院卒の方も増えていますね。
   また、国公立だけでなく、私立を出ている方もいらっしゃいます。

山本 早稲田、慶応とかですか?

ベア そうですね、いろんな方達が混じっています。

山本 そうですか。
   試験の制度の話を聞くと長くなりそうなので、
   そろそろやめます。

・・・

どんな仕事をしているのか?

山本 ここに平成5年に入って、今平成22年だから、
   もう勤めて17年になるのですね。

ベア そうですね、長く勤務していますね。

山本 その中で、
   英語を使う仕事である通訳や翻訳の仕事を
   いろんな形でされている、という事でよろしいでしょうか?

ベア 私の場合は、翻訳がメインですね。
   現職では、研究に関わる仕事をさせていただいています。

・・・

ユニセフの国際協力講座になぜ来たのか?

山本 私毎年、品川にある日本UNICEF協会の
   「国際協力人材養成プログラム」の講師を務めていまして、
   こちらにあなたが来たので、
   今回このインタビューをすることになったのですけども。

注:日本ユニセフ協会「国際協力人材養成プログラム」
http://www.unicef.or.jp/inter/index.html

山本 UNICEFの国際協力講座を受けに来たという事は、
   あなたが個人で応募されたという事ですよね?
   組織から行けと言われたわけでないですよね?

ベア 個人で受講しています。
   今回ユニセフの国際協力講座は、二回目の応募でしたが、
   一回目は病気をして、受講する機会を逸してしまいました。

   今年は、二回目のチャレンジで入れていただいた経緯があります。

   その病気というのが、ベッドから起き上がれず、
   自分で何もできないような状況でした。

   前々から、人の役に立つボランティアとか、
   国際協力に関わりたいと思っていました。

   入院中に知り合いの女性に三つやりたい事があると言いました。

   一つ目は、ボランティアや国際協力、
   二つ目は、東京大学大学院人間の安全保障学科に行きたいという話、
   そして、三つ目がユニセフ(の国際協力講座)に行きたいという話
   でした。

   国際協力とまでは、行かないのですが、
   入院中におばあさんがいる大部屋で過ごしていました。
   おばあさん達をお手伝いしたりしている内に、
   自分でも何かできるのではと、思い始めました。

   何の専門家でもありませんが、ユニセフと出会えて、
   自分がどこかに関われるのではないかと思いました。

   塾の講師をしていて、子どもが好きだった、
   といったいくつかの要因もあって、自分が何をしたいのかを
   探すことの手掛かりにもなるのでないか、と思いました。

山本 大体の事はわかりました。

・・・

国際協力に資する活動として、具体的に今後、何をやるのか?

山本 それで、今後の事を聞くのですけども、
   知っている範囲でお答えいただければなと思いまして。

ベア そうですね、私が今お答できるのは、
   アフガンのことぐらいしかありません。
   自分でその関係のインタビュー調査を
   一生懸命やってところですので。

山本 そうですか。

ベア 私は当初、(政府系が発行している)公刊資料を基に
   NATOとかアフガンの情勢を調査していましたが、
   ここ1、2年、
   ISAF NEWS等の公刊資料を見て、
   どうも腑に落ちない事があると、気付きました。

山本 すみません、アイザッフ(ISAF)ってなんでしたっけ?
ベア NATOが出している多国籍軍です。

注:NATOとは、北大西洋条約機構(North Atlantic Treaty Organization)
北アメリカと西側ヨーロッパ諸国で構成される軍事同盟。

注:国際治安支援部隊(ISAF:International Security Assistance Force)
アフガニスタンの治安維持を目的として、
2001年国連安保理の決議で設立された軍隊。
当初は、有志の国家たちからなっていたが、
現在は、NATOが統轄し、指揮権を持っている。

山本 あ、そうですか。
ベア たまたま、UNICEFの国際協力講座で
   伊勢崎賢治先生のアフガンの話を聞いて、やっとわかった、
   と思いました。

   というのも、現地の声は、
   公開されている資料では分らないからです。

   それで、私は現在、アフガンに行った関係者の方達に
   インタビューをしています。

注:伊勢崎賢治とは、
2001年、シエラレオネのDDR(武装解除)に関与。
2003年、日本主導で行われたアフガニスタンDDRを指揮。
余談だが、奇遇なことに、
伊勢崎賢治と山本敏晴は、ほぼ同じ時期に
シエラレオネとアフガニスタンにいたが、会うことはなかった。

山本 あなたが、自分で色々な組織に?

ベア アフガンDDRに関係した関係者の方達に、です。

注:DDRとは、武装解除・動員解除・社会復帰
(Disarmament, Demobilization, Reintegration)のこと。
通常は、国連などが主体となって行う国際平和活動の一つ。
武器を取り上げ、反乱軍を解散させるだけでなく、
新しい職業を与える所までやるのがポイント。
ここまでしないと将来また反乱軍に戻ってしまうため。

山本 DDRとは、1)武装解除だけじゃなく、2)軍隊を解散し、
   3)その後、人々が反乱軍に戻らないように
   (新しい)就職の斡旋(あっせん)や住宅の提供など、
   全部を包括的に行う事をおっしゃっているのですよね?

ベア そうですね。
   その他に、国際監視団のメンバーになって活躍されたので、
   JMASという地雷処理のNPOの方達にインタビューをしました。
   また、自衛隊の駐在武官の方にもインタビューしました。
   ただし、NPO、NGOとの繋がりが、私には無いので、
   その辺の事は分かりません。

   DDR全体像が分らないので、
   自分で試行錯誤しながら、インタビューを続けました。

   過去に行われたDDRの「アフガンモデル」が
   何かの役に立てればと思い、「自主命題研究」をやっているのです。

注: JMASとは、
日本地雷処理を支援する会(Japan Mine Action Service)。
自衛隊OBを主体としたNPO法人。
2002年より、地雷処理、不発弾処理をはじめ、
井戸掘りなどの活動をカンボジア、ラオス、アフガニスタン
各政府機関と協同で実施している。
http://www.jmas-ngo.jp/ja/

・・・

官庁の広報誌に記事が掲載予定

ベア (所属する省庁の)広報誌に
   (DDRのアフガニスタンモデルに関する)
   インタビューを載せる予定があります。

   まだ3人しかインタビューしていませんが、
   7人インタビューし終えたら、
   短めの記事を載せたいと思っています。

山本 一般の人向けに発行していますので、
   わたしも将来的に読もうと思えば読めるわけですね?

ベア そうですね。

山本 では、記事掲載後に一部郵送していただければ幸いでございます。

・・・

アフガンのDDRは、うまくいったのか?

山本 不勉強なので初歩の所から質問しますけど、
   日本人の中ではDDRの第一人者の伊勢崎さんを中心として、
   アフガニスタンのDDRを
   日本が積極的に関わって「成功させた」というふうに、
   話から聴き取れるのですが、
   そういうことだった、ということでしょうか?

ベア 初期の頃は、いったん成功しました。
   伊勢崎さんのインタビューでは、
   初期の頃の成功した時期の話しか聞いておりません。

山本 では、その後、
   現在のアフガニスタンは再び、ボロボロになっていますので…。 
   要するに、2003年頃のDDRは、
   一時的に成功したかもしれないけれども、
   結局、アフガニスタンの治安は悪化した、
   という認識でよろしいでしょうか?

ベア そうですね。
   武装解除といっても、戦車や重火器を集めるのが精一杯で、
   実際は、一家に何丁もある小銃まで回収できなかったと、
   伊勢崎さんは言っていました。

   それも大きな課題であるし、
   武装解除しても軍に戻ってしまった人もいます。

   やはり一時的なものであったのは確かです。

   武装解除については、
   大きな兵器を集めて部隊を解体する、という点で成功しました。

山本 私も先ほどから言っていたように、
   DDRというのは、武装解除だけではなくて、
   軍隊を解散し、さらに、
   軍隊を辞めた人に新しい職業つけさせて、
   しかも安定した、「持続可能な生活を与え続ける」
   という事ですから。

   伊勢崎さんの行ったのは、DDRではなくて、
   要するに、DD(武装解除、動員解除)までだった、
   ということですよね?
   要するに、R(社会復帰)がなかった、と?

ベア そうですね。
   R(社会復帰)は、国際社会が分担しながら、
   続ける必要がありますから。

   伊勢崎さんは、アフガンの将来を心配していました。

山本 そうですか、わかりました。

・・・

今後の国際協力への関わり方

山本 あなたは、公務員という立場で
   国際協力に興味があるようになりましたけれども、
   最大のポイントは、

   あなたは、国際協力講座などに参加し、
   (アフガニスタンのDDR関係者などに)
   個人的にインタビューする活動をしていらっしゃいますが、

   1)そういう(勉強した)事を
   (現在の省庁内の)職場で活かそうとしているのか、

   2)それとも、スパッと辞めて、
   国際協力の、ユニセフなり、NGOの団体なりに
   行こう(就職しよう)と思っていますか?

   どちらですか?

ベア 私は、現在の仕事を続けながら、
   国際協力に関係したいと思っています。

山本 そうですよね。話の流れ的にそうだと思いました。

(注:彼女の省庁内の立場は、ご本人などの校正により削除しました。)

ベア そうですね。

山本 さらに何か考えていますか?

ベア 日本赤十字がボランティア翻訳者を募集しています。
   公務員でもできますので、
   土日を使ってボランティアをしたいと思っています。

   現在は、国連人口基金・所長・池上清子が主催している
   「お母さんを助けるキャンペーン」に入ったりしております。

注:国連人口基金
http://www.unfpa.or.jp/

注:池上清子
http://www.unforum.org/unstaff/25.html

山本 それって、UNFPA?

ベア UNFPAです。

山本 UNFPA、国連人口基金の
   「お母さんの命を守るキャンペーン」ですね。
   そのメーリングリスト、私も入っております。
   わかりました。

ベア 自分にできる範囲でやってみます。
   仕事を辞めて、国際協力活動に踏み切れませんので。

   定年後もやろうと思えば、
   外に出かけることもできますし、
   身体が健康であれば、
   多少でも国際貢献はできると、思います。

山本 なるほど。
   国際協力をやりたい人に、その人に合った形で、
   「世界のためにあなたができること」を紹介する事業を
   私は一貫して続けていますけれども。

ベア 伊勢崎さんもおっしゃっていましたが、
   国際貢献をしたいという若い人は、沢山いても、
   受け皿がないそうです。
   どうにかしないといけませんね。

山本 はい、そうです。
   わかりました。今日は、本当にありがとうございました。

ベア とんでもないです、こちらこそ何もお役に立てなくてすみません。

山本 いえ、状況が分りましたので。



・・・




補足:
通常、省庁に勤務すると、
2年ごとなどに、転々と、いろいろな課に配属される。

その省庁の中に、
国際協力部、または、国際協力課、などがある場合、
(一度は)そこに2年間、勤務することも多い。

外務省だけでなく、他の多くの省庁にも、
そうした国際協力に関係する部署があり、
一生の間に、国際協力に関わる「2年間」がある可能性がある。

(また、そうした省庁内の国際協力課に配属されていると、
 そこから、国連内にある関係する国際機関などに出向になる可能性もある。)
 


で、今回、インタビューをさせて頂いたベアさんの省庁にも
国際協力に関係する部署はあることはあるのだが、
ちょっと書けない事情で、
彼女は、そこに配属されることはない、
ということである。