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A国の仕事、契約の内容


山本 最初は一か月くらいの
   いわゆる短期契約だったと思うんですけど、
   それが「芋づる式に」というとアレですけども、
   徐々に伸びることになったという感じなんですか?

S子 そうですね。
   G社とJICA自体の契約が
   2010年の三月までだったんですね。

   プロジェクト自体は
   当初から2年の契約で結んでいるんですけども、
   そもそものプロジェクトを開始するときに、

   時間がなくてとりあえず初年度の分しか
   契約していなかったらしいんですよ。

   なので、私とそのG社との契約も
   2010年4月いっぱいまでにしているんですけども、
   当然また(契約が)伸びるという前提でお話をしています。

山本 そうですか。じゃあ勤務的に1年ですか?

S子 はい。
   そのプロジェクト自体が、
   現時点でのスケジュールだと、
   2011年の4月までなので、
   コンプリートして1年と半年ですね。

・・・

カイゼン(改善)・プロジェクトの内容

山本 トヨタの”5S”については
   私の本等に書いてあるので
   たぶん知っている人も多いと思うんですけども、
   ”カイゼン”について簡単にご説明いただけますか。

注:
トヨタの『5S』(ゴエス)とは、
整理・整頓・清潔・清掃・躾(しつけ)のこと。
工場などで機能的に仕事をさせる手法の一つ。
要するに、物がどこにあるかきちんと分類し、
それを把握し、それから効率的に仕事を行うこと。
日本の企業発の途上国の開発として知られている。

S子 日本の戦後復興を支えた日本の製造業で、
   主に自動車産業だと思いますけれども、
   製造現場で用いられた、
   工程というかマネジメントの手法、
   と言ってしまったらいいんでしょうか。

   トヨタでもいわゆる”カンバン方式”
   とかいろいろあるかと思うのですが、

注:
『カンバン方式』とは、トヨタの生産方式の一つ。
無駄な在庫などを持たないこと、を言う。
7つの無駄という考えがあり、それらは、
「作り過ぎのムダ、手待ちのムダ、運搬のムダ。
加工のムダ、在庫のムダ、動作のムダ、不良をつくるムダ」
である。これらを、「帳票」を使って管理するのだが、
帳票のことを「カンバン」とも言うことから、
カンバン方式、と言われている。

   カイゼンという名が示すように、
   現場の問題点を現場の方々が見つけ出して、
   現場の方々が(自分たちの)中で話し合って、
   改善する道筋をつけて、
   その改善活動に取り組み、
   生産性と品質を上げよう、というマネジメント……

   と言ったらちょっと言葉のあやがあると思うんですけど、
   日本の製造現場の生産下でのやり方ですね。

山本 まあPDCA的な側面もありますよね。

注:
PDCAとは、プロジェクトの途中で管理する手法。
最初に作った計画をそのまま続けるのではなく、
フィードバック(助言・批判)を受けながら、
プロジェクトを修正してゆくこと。
Plan(計画), Do(実施),
Check(監査), Action(改善するための行動)
の4つの頭文字をとって、PDACという。
この4つを回し続けながらプロジェクトを管理する。

S子 そうそう。
   で、A国では外貨がないということで、
   製造業を発展させて輸出をして外貨を得ようと
   なさってるんですね。

山本 はい。

S子 そのために、各国の進んだ国、
   まあアメリカですとかドイツですとか日本から、
   各々の国の発展を促した、
   製造業におけるノウハウというのをとりこもうとしているんですが、
   A国というのは社会主義の統治を経てきた国なので、
   あまり競争という概念はそぐわないんですね。

   で、アメリカっていうのはバリバリ競争的じゃないですか。

山本 はい。

S子 で、ドイツってのもまた、
   現場の工程管理がきっちりしすぎていて
   ちょっとA国に合わないんですね。
   
山本 はぁ。

S子 んで、”カイゼン”っていうのは
   ご存じさっきおっしゃたような
   ”5S”とか”整理整頓”とかそのくらいなので、
   非常に取り組みやすいと。

   ということで、
   メレス首相が、
   ぜひ”カイゼン”を取り入れよう! 
   ということで盛り上がっておりまして、

   日本政府との間で
   A国の首都・アディスアベバの製造業に特化して
   日本の”カイゼン”をインプリメント(設置)しよう
   というプロジェクトが

   このA国の『カイゼンプロジェクト』、正式名称が
   「A国国生産性及び品質改善向上調査」
   という案件です。

   具体的には何をしようとしているかというと、
   当初の予定から、先方の期待がすごく盛り上がっているので、
   当初の目標とこれから作っていく2年次の計画と
   またちょっとずれるかと思うんですが、

   そもそもの話をすると、
   まずアディスアベバの30社の企業をピックアップして、
   その企業に対して診断指導と
   コンサルテーションを行いましょうと。
   それが一点。

   で、その過程で、
   相手側に『カウンターパート』(CP)がいますので、
   まあ『カイゼン・ユニット』と称しているグループなんですが、
   どういった方々かというと、
   A国の通産省に所属していらっしゃる若手官僚さん、
   20代30代かな、その10名くらいの方々に
   日本からいくコンサルタントから
   カイゼンの手法を技術移転する。
   それが二点め。

注:
カウンターパートとは、
国際協力をする際の、途上国側の担当者。
通常は、官僚などの国家公務員で、
関係する省庁の関連部署にいる人のだれか。
相棒的な存在。

   あと三点目は、
   今後の”カイゼン”をA国に普及するに当たっての
   普及構築制度を作る。

   この三つが大きな柱になっています。

山本 なるほど。だいたい概要はわかりました。
   じゃあその30の企業は主に「何造業」なんですか?

   例えばいまA国に自動車会社があったり、
   綿工業とか何かがあるかもしれないんですけど、
   どんな企業が対象になっているんですか?

S子 それはA国の要望と
   日本側とのすりあわせによって
   五つのセクター(産業分野)が決まってまして、

   メタル(金属)、これが一番大きいんですけど、あとは
   アグラ、レザー(皮製品)、テキスタイル(織物)、
   ケミカル(化学工業)。

山本 すいません、アグラって何ですか?

S子 あ、えっとぉ、農産物。 
 
山本 ああ、アグリカルチャーですね。わかりました。

S子 具体的に言うとワイン作ってるんですよ。
   あとは、デイリー(牛乳)だとか、
   あとは小麦ですね、フラワー。

   あとはキャンディー屋さんとかもあったんですけど、
   30社(のうち)に選ばれませんでした。

   あ、その30社選ぶまでの道筋として、
   まず100社を集めてセミナーをしたんですよ。

   最初に、こういうことやりますよって
   プレゼンをしたんですね。

山本 はい。

S子 で、その後に30社になる(絞る)ために
   60何社訪問しているんですね。
 
山本 はい。

S子 で、60何社訪問した結果(その中から)30社を選んで、
   その30社と「カイゼンプロジェクト」との間で、

   その「企業診断」と「コンサルテーションサービス」を
   これこれこの期間の間に10回行いますよ、って契約を結んでます。
   それを去年の末までにやりました。

山本 つまり今言ったことは、
   (普通、日本政府のJICAが、国際協力をやる場合、)

   事前調査をやって、
   次にいわゆるモデルケースというか、モデルプランを組んで、
   (それを、まず小規模に行い、それが成功した場合、)
   最終的にその国全体に広めるというような形が
   普通だと思うんですが、

   その30社の企業に「中小企業診断士」が入って、
   その(自分が)持っている(担当している)役人に
   補佐のやり方を教えて、やらせてみて、
   その持っている役人がもう覚えたかなってところで、
   全国の企業にやらせてみるようなことを
   将来的な展望として考えていくってことですかね?

S子 そうだと思います。
   すでにエジプトとチュニジアでは、
   JICAのカイゼンプロジェクトというのをやっていらして、
   他のコンサルタントがやっていらっしゃるんですけど、
   チュニジアは調査プロジェクトの次に
   技プロ(技術協力プロジェクト)をやっているんですね。

   で、エジプトは技プロを直でやったのかな。
   なので、アフリカに先行事例が二カ国あるんですね。

   で、そのカイゼンユニットは
   エジプトにもチュニジアにもお勉強に行っています。

山本 ちょっと私が経済のこと不勉強でわからないんで
   お聞きしたいんですけども、

   例えば中小企業のカイゼンをするときに
   おそらく少なくとも3つくらいの分野があると思っておりまして、

   一つ目がいわゆるガバナンス(企業の統治)といいますか、
   企業の統治の仕方や会計の部分をどうしているのかという部分と、

   二つ目がトヨタの”5S”のような、
   いわゆる労働者が工場の現場で”整理整頓”やら
   どうのこうのをやってって言うような、
   きれいに整理して情報や商品を管理しろ、という部分と、

   後もう一つが、南米等でJICAが行っているプロジェクトで、
   例えば綿花をそのまま綿のまま外国に輸出して売っても
   大した金にならないから、
   何らかの技術で加工して、付加価値をつけて、
   要するに加工して服とかにしてブランドかなんかにして売ると
   同じ綿が10倍の値段で売れるというのがありますよね。
   商品にさらに付加価値をつける。
   そういう意味での技術を渡して発展させると。

   仮にその三段階があるとすると、
   今やっている仕事はその三段階のどの部分ですかね? 
   全部ですか?

S子 それは多岐にわたっていて、
   30社それぞれ事情が違いますし、
   30社に3人の専門家が付いているんですね。
   3人の専門家が一人10社だから30社なんですよ。
   時間の規制があって回れないので。

山本 はい。

S子 その専門家の得意分野等にもよるんですよね。

   なので、例えばメタルとかでしたら、
   その材料管理だとか、実際の製品の作り方、
   どういった製品を作った方がいいかという
   コンサルもやっていますし、

   アグラを担当しているコンサルの方には
   非常にカイゼンの優れたコンサルタントさんっていらっしゃるので、
   会計だとか人事管理等にも入っていらっしゃるんですね。

   あと、A国の製造業のすべての問題なんですけれども、
   そもそもマテリアル(材料)を、、
   何かを作るのに原料って必要じゃないですか。

   でも、外貨がないので原料が買えないんですよ。

山本 あーなるほど。

S子 LC(Letter of Credit:輸入するときにお金の代わりになるもの)
   に六カ月待つんですって。

   「そもそも製造に至るまでの原材料がないんだけどどうすればいいの」
   っていうコンプレイン(不満)もくるんですね。

山本 はい。

S子 それは我々のプロジェクトというか、
   コンサルタントではどうにもならない問題なので、
   そういったことに関しては、
   GRIPSの先生方との意見交換の場がありますので
   そういうところで案件として挙げて、

   GRIPSの先生方からハイレベルフォーラム等で、
   A国の国家の上層部の方々から問題提起をしていただいています。

政策研究大学院大学 GRIPS
http://www.grips.ac.jp/jp/

山本 なるほど。それじゃ、ほんとに
   個別の企業によってやることが全然変わってしまうわけですね。

S子 そうですね。
   30社の中でもやる気のある企業とやる気のない企業って
   あるじゃないですか。

山本 はい。

S子 で、お国がやっているプロジェクトなので
   付き合ってくださっているような企業もありますし、
   かといえば、
   自分のところを選んでもらいたいので
   売り込みに来るような企業もあるので、
   千差万別なんですよ。

   なので、一概にプロジェクト全体として
   さっきおっしゃったような三つのフェーズ(段階)のどこか
   っていう答えはできないですね。

山本 なるほど。
   先程その3人の専門家というのが話に出てきましたけど、
   それはもちろん
   「JICA専門家」、いわゆる「技術協力専門家」が
   あなたと別に3人いらしてるということですね。

S子 はい。

山本 JICA専門家は私の友人にもいろいろいるんですけれども、
   短期専門家から長期、まあ一年の契約
   またはそれ以上の場合もありますけれど、
   先程の3人の方は一年の契約で来ているんですかね?

S子 みなさん退職をなさっている方々ですので、
   平たい言い方をするとお金の心配も時間の心配もないんですよね。

山元 要するに年金ももらっているわけですね、はっきり言えば。

S子 そうそう、そうなんです。
   でスケジュールも自由に合うわけですよ。
   だから、そのプロジェクトをやるとお決めになったので、。
   始めから終りまでおやりになるんだと思います。

山本 なるほど。G社の中からその三人の専門家とあなたなど、
   いっぱい来ているということですか?

S子 総勢5名行っているんですが、
   そのうちG社という名で行っているのは、
   私、総括、副社長兼副総括の3名だけです。
   あと3名は全部、、えーっとなんていうんでしたっけ、、
   JICAの言葉でなんて言うんでしたっけ、、

山本 「調整員」?

S子 いや、違います違います。
   他の団体から呼んできた方々っていう意味なんですけど。

山本 あーなるほど。

S子 ちょっと今ど忘れしましたが、、JICAの言葉で、、
   「補助要員」かなぁ…。
   G社という名前では行ってないんですよ。

山本 でも、G社に、もう一応登録、
   というか所属している方なんですか?

S子 いや、違います。みなさん違う看板で行っています。
   そういうことができるらしくて、
   そのプロジェクト自体に応募(競争入札から落札)したのは
   G社という会社なのですが、
   その補助要員というか助っ人として他の団体さん、
   まあご存じの公営(日本工営)さんから一名と、
   他の団体から二名行っております。

日本工営
http://www.n-koei.co.jp/

山本 なるほど。
   先日、日本工営さんや
   IDCJ(財団法人国際開発センター)さんの方にも
   お会いしたんですけど、

IDCJ - 財団法人 国際開発センター
http://www.idcj.or.jp/

   派遣される時にいわゆる
   「マン・マンス」(人月、にんげつ)と言いまして、
   その人の学歴、職歴等に応じて、
   「まあひと月当たり、この人の学歴、職歴だったらいくらだろう」
   という感じで御社の人々にも
   (JICAから給与等が)支払われる、ということですね。

S子 はい、そうです。

山本 わかりました。


・・・

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