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日本政府の外務省の下にある、
独立行政法人・国際協力機構(JICA)の中に
緊急援助隊(JDR)という部署がある。

JICA 国際緊急援助隊 ホームページ
JDR : Japan Disaster Relief
http://www.jica.go.jp/jdr/index.html

地震・津波などの自然災害が海外で起こった場合、
そこに行って緊急援助を行う。

私も一応、このメンバーに入っている。

で、この緊急援助隊の中には、以下の4つのチームがある。

1.救助チーム
消防庁・警察庁などのスタッフが被災者の捜索・救出をする。

2.医療チーム
医師・看護師・調整員などが被災者の診療をする。

3.専門家チーム
地震や耐震などの技術者が復旧活動などの指導をする。

4.自衛隊部隊
自衛隊によって構成され緊急援助活動や物資の輸送活動を行う。

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今回、上記の中で、医療チームが活動を行う上での

1.ロジスティック(物資の運搬・調達)のポイントと、

2.(医療関係者でない人(調整員)が)
医者や看護師が被災地で医療行為をする時に
どのようにサポートするべきか、ということを記述しておく。

なんで、そんなことを書くのかというと、
以下の二つの理由による。

1.
緊急援助隊の医療チームのメンバーは、
通常、23名が派遣されるが、
その約半分は、医療関係者ではないこと。

2.
医療活動を行う際でも、
物資の調達・運搬や、安全管理・スタッフの生活管理などを
常に気にかけておかねばならないこと。

で、私は、
JICA系の仕事以外に、
自分のNPO法人(宇宙船地球号)も持っているし、
また過去に、
国境なき医師団などの様々なNGOにいた経験もあるため、
以下に書く記載は、必ずしも、
JICAの緊急援助隊に限った話ではなく、
良くも悪くも、いくつかの団体および私個人の考え方が
いりまじったものになっていると思うが、

それはともかく、
緊急医療援助をやってみたいと思う、
個人や団体の人にとって、
以下の情報を公開することは有益であると思われるので、
その詳細をここに綴る(つづる)。

(医療関係者にも、非医療関係者にも、
 ともに有用な情報を記載するつもり。)

(本日から4回連続で詳述。)

要するに、何を言いたいかというと、
医者や看護師じゃなくても、
「医療援助」を行うチームのメンバーになれる、
ということを言いたいのである。

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・・・

まず、日本政府の緊急援助隊の医療チームの特徴を
以下に列挙しておく。

1.原則として、2週間だけ、被災地へ行く。

 そしてすぐ日本に帰る。
 その後もまだプロジェクトが必要な場合、
 二次隊を要請し、別な(23名の)メンバーが出動する。

2.GO(政府機関)なので、
 相手国(途上国)政府からの依頼(要請)があってから行く。

 このため、(勝手に行く)NGO(非政府組織)よりも
 出足が遅く、24時間以内に入れることはまずない。
 72時間以内に入れたらいい方。

 よって行った時には、支援をするのに最も良い場所
 (最も必要とされる場所)は、NGOにとられている。

3.被災国(途上国)の政府が協力してくれる。

 相手国政府からの依頼の元に活動しているので、
 その国の警察・軍隊・地方自治体・病院などが、
 (可能な範囲で)協力してくれる。

 例えば、宿舎を提供してもらったり、
 被災地に近い病院や診療所の一室など、
 「場所」を(無料で)貸してもらえたり、
 自分たちでは診られないほど重症な患者が来た場合、
 その国の中の、大きな病院に転送すること、などができる。

4.当然ながら、完全に無料で、被災地の患者を診療をする。

 一方、派遣される医療スタッフや調整員の
 旅費、食費、宿泊費、その他全ての経費は、
 日本政府か、被災国の政府が保障する。

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・・・

被災国の空港に着いてから、サイト(活動場所)付近まで

日本から持っていく携行機材は、通常、
217梱包で、4693kg(4.7トン)。

始めから大量の荷物になっているため、
派遣されるスタッフのための食糧や水は、
初日から三日目までの分しかない。
このため、食糧・水を始めとして、
その他、様々なものを現地調達することが、
後日、派遣期間中に、必ず必要になる。

水・食糧以外に、現地調達に必要になるものとしては、
発電機(ジェネレーター)用のガソリン、
(足りなくなった場合の)医薬品、
トイレットペーパー、電池類、
蚊取り線香、蚊帳、など。

・・・

重要なのは、飛行機からおろした機材を、
(診療するサイト(被災地)まで運ぶための)
トラックに積む時に、以下のことに配慮して積むこと。

1)当日、宿舎に移動するだけの場合、
 宿舎での生活にまず必要なものを
 真っ先に降ろせるように
 トラックの荷台の手前に積む。

2)ついで、翌朝、診療所を立ち上げるサイトに移動し、
 診療時を立ち上げる時に、まず必要になるものを
 (トラックの荷台の)出しやすい位置に置く。

このようなことを考えて、
飛行場でトラックに積み込む。

(細かいことだが、ものすごく重要なことである。)

1)で必要になるものは、
(夜到着することも多く、雨が降ることもあるので)
照明、雨具、軍手、
ジェネレーター(発電機)、ガソリン、
燃料給油ポンプ、漏斗、
(トイレがないかもしれないので)簡易トイレ、
アルファ米(まい)(簡単に調理できるご飯)、
ツインバーナー、コンロセット、鍋(なべ)、やかん、
割り箸、スプーン、フォーク、紙コップ、紙皿
水、缶詰各種、フルーツ缶、スープ類、
カロリーメイト、クラッカー類、
蚊取り線香など。

参考:
アルファ米:米飯を炊いた後に乾燥させたもの
http://www.onisifoods.co.jp/aboutalpha/index.html

・・・

荷物を運搬する場合、車両5台などをつかって
「コンボイ」(車両の集団)を組む。

理由は、安全のためや、
パンクなどで1台が動けなくなっても
大丈夫なように。

通常、
前2台に人間が載り、
次の2台で荷物を運ぶ、
最後の1台に人間が乗り、後詰め(しんがり)。

2台のトラックには、荷物を満載にしない。
もし、1台のトラックがパンク等で故障しても、
もう1台のトラックなどで荷物を分散して運べるように
するため。

なお、団長(ボス)や、2名の副団長は、
同じ車に乗らず、分散して登場する。

理由は、不慮の事故があった場合、
3人のボス(クラス)が、
同時に全員、活動不能にならないようにするため。

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ロジライン(物資の輸送ルート)が長い場合、
途中の中継点(拠点)の確保と、
その場所での「キーパーソン」の確保が重要となる。


・・・

なお、
通信機材は、最も重要なものの一つで、
日本との連絡のために、衛星携帯電話を複数持っていく。
これをパソコンについないで、
Eメール(および添付ファイル)も送受信可能。

以前は、インマルサットと、イリジウムだった。
最近は、BGANと、イリジウムにした。

テクノスリー
http://www.tec3.co.jp/

BGAN
http://www.jdc.ne.jp/bgan.html

インマルサット
http://www.kddi.com/business/inmarsat/index.html

スラヤ
http://www.horizon-mobile.co.jp/default.asp?id=303

イリジウム
http://www.jdc.ne.jp/iridium.html

これにより、
その日に来た患者の内訳(どの疾患が多いか?)などを
その日のうちに日本の本部に連絡できる。

(患者数が多い場合など、
 2週間の派遣期間が終わった後に、
 次の二次隊の派遣を検討するなど、
 日本にある本部もやることが多い。)

・・・
・・・

最初に診療所(診療テントなど)を立ち上げる時

大きく、二つのケースに分かれる。

1)国や地方自治体から、ここでやってれ、と言われる場合。
 多くは、病院や診療所の一部を貸してくれる。

2)自分たちでサイト(診療を行う場所)を探し、
 屋外のフィールド(地面の上)に
 テントなどを使って診療所を設置する場合。
 多くは、学校の校庭、広い道の上、など。

緊急援助型のNGOのほうが、行動が速いので、
2)の場合、既に良い場所は、とられていることが多い。
(が、体制上、しかたがない。)

ちなみに良い場所とは、以下を満たすもの

1)被災者の近く(避難民キャンプの近く)
2)自分たちの安全面の確保が可能
3)交通の便がよい(車が入れる、道が近い)
4)衛生面の確保(トイレ等がある)
5)水の確保(治療で使う。自分たちも飲む)

ちなみに、
日本から自分たちのために持っていく食糧と水は、
通常、(重量等の関係で)三日分である。
よって、それ以後は、現地で調達する。

安全面の確保は、最も重要である。

1)(地震などの)二次災害を回避できる
2)治安が安定していること。
(被災者同士が、支援物資(食糧など)の奪い合いをして
 ケンカになることが多く、それに巻き込まれない場所。
 つまり、配給所が近くにないことが重要。)
3)車を使える。車が直接入れるスペースとルートがある。
(暴動などが起こった場合、スタッフがすぐ車で逃げれる。
 また、患者を転送する必要がある場合、
 診療所に車を直接乗り入れられることが重要。)
4)ガードマン(警察)などの配置が可能
5)周囲を壁かロープで区切れる。
6)できれば、施錠(せじょう)ができるようにする。
7)緊急時に、どこへ、どのルートを通って逃げるか、
 事前に決めておき、全スタッフに通知しておく。
8)火の管理(火事の防止)

交通の便は、

1)我々自身の安全のため
(有事の際に、逃げやすいこと)
2)患者の搬送(転送)
3)主要道路に「看板」を出し、
 日本の緊急援助隊が無料で診療をしていることを
 宣伝する。
 このため、できれば主要道路の近くのほうが良い。

衛生面の確保については、

1)トイレの設置が最も重要。
 既存のものを使うか、
 日本から持っていく簡易トイレを使うか。
 日本人スタッフ用と、現地スタッフ用を分ける。
 男性スタッフ用と女性スタッフ用も、できれば分ける。
 患者さんのトイレは、当然、別に用意する。
 (下痢などの感染症にスタッフが感染しないため。)
 診療の合い間に休憩する、休憩場所からトレイは近い方が良い。
2)ゴミ・汚物の処理が可能か?
 基本的に、ゴミも汚物も、すぐに燃やす。
 毎日、こまめに、自分たちで燃やす。(理由は後述)
3)医療器具を煮沸消毒することが可能なスペース
4)雨が降ったとき、水はけが良いこと
 診療テントのまわりに、
 トレンチ"trench"(塹壕(ざんごう)、水はけの溝)を掘る。

水の確保は、死活問題。

1)スタッフの飲料水の確保。
 生水は絶対に飲まない。
 最低でも、(水道水・井戸水等を)煮沸したもの、
 できればそれをさらにフィルターで濾過したものを飲む。
 可能なら、現地でミネラルウォーターを購入する。
 しかし、上記のいずれの場合も、
 被災地では水の供給量が限られている場合が多く、
 いきなり入ってきた外国人が、
 水を独占(買い占め)してはならない。
 現地(被災地)の人にとって最も必要なのは、水と食糧。
 (極端に言えば)医療など、なくてもよい。
 水と食料がなければ、100%(餓死で)死亡するが、
 医療はなくても、自力で治る可能性がある。
 よって、医療をするために、
 現地の住民から(外国人が)水と食料を奪ってはならない。
 だから可能な範囲で、
 水と食糧は、被災地からなるべく遠くの町から
 入手するべき。そうした配慮・努力が必要。
 しかしこれを行うには、ロジスティックが大変になる。
 時間も、お金も、ガソリンもかかる。
 車の入手、ドライバーの雇用、輸送経路の安全確認も必要。
 で、
 いろいろな理由から、遠くから調達することが難しい場合、
 被災地付近で購入せざるを得ないことも多い。
 その場合は、いきなり行って買い占めるのではなく、
 事前に、小売店などの商店に行き、
 「明日の何時にいくから、
  我々のために、別に、このくらいの量を用意しておいてね」
 と話をつけておく(依頼しておく)。
 そうすれば、他の被災者に渡す分がなくなることを
 防げることもある。
2)患者が薬を飲む時などに使う水の確保。
 これも必要。入手方法は、上記と同じ。
3)他団体との連携。
 赤十字は被災地に(ほぼ)必ず来ている。
 水キットを置いてくれて、使用させてくれることが多い。

その他

1)診療所は、なるべく日陰に設置する。
 日なただと、正午ごろテント内が異常に高温になる。
2)通気性が良いほうがいい。
 日中、暑くなることが多いため。
3)貴重品(お金、パスポート)は、
 基本的に本人が肌身はなさず持つ。

診療所の配置

 患者の流れを「動線」(または導線)という。
 次の順番で患者が移動する時に、
 できれば患者の移動する線が、
 交差しないように診療所を設置する。

1)ゲートコントロール(患者と家族一人だけを中へ)
2)トリアージエリア(重症度から優先順位をつける)
3)待合室(並んでいる順番がわかるように椅子を並べる)
4)受付(名前、年齢、性別、住所など)
5)診察(医者が診断・治療)
6)処置(外傷の処置、点滴するためのベッド)
7)投薬(薬局で薬を渡し、帰ってもらう)
この過程で、患者の移動が交差せず、混乱しないこと。

一方、
スタッフが休憩(食事等)するための一角も
この流れにぶつからない場所に作る。
通常、シーツかビニールシートなどで
まわりを覆って隠す。
また、煮沸消毒するための場所や、
衛生資器材(ストック)をどこに置くかなども考える。

さらに
問題になるのが、ジェネレーター(発電機)の配置。
ガソリンか灯油で動かすのだが、うるさい。
これが診療所の近くにあると、うるさくて
医師が聴診できない。
(肺炎の音が聞こえず、診断できない。)
だから、なるべく診療所から離す。
あるいは、地面に穴を掘って、
その中に置くと、騒音がやや減る。
しかし、雨が降った場合、(雨水が流れ込むと)壊れる。

一方で、電気は必要。
X線撮影に使用したり、その他の検査にも使用。

また、
外傷患者が多数いることが予想される場合、
破傷風トキソイドなどのワクチン系のために
冷蔵庫を始めとした「コールド・チェイン」が
必要になる。
町からワクチンを輸送して、診療所で保管するまでの間、
ずっと、持続的に温度を一定以下に保つことを
「コールド・チェイン」という。
その途中で、一回でも高温になると、
ワクチンが失活する(効果がなくなる)可能性がある。
理想は4度C前後に保つことだが、
途上国の、しかも緊急状態の場合、
10度以下ぐらいに保てていれば、恩の字。
ともかく、冷蔵庫も、木の陰など日陰に置く。
なお
冷蔵庫は、ガス(プロパンガス)で動作するもの、
電気で作動するもの、電池で作動するもの、
ソーラーシステムで作動するものなど、動力源は多様。

・・・

導線(動線)が重要。

1)患者の導線(受付、診療、処置、薬局、帰宅)
2)スタッフの導線(働くために移動する流れ)
3)物の導線(搬入、保管、使用、破棄)
4)情報の導線(ボスから下へ。下からボスへ。)




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