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日々の診療と、そのための補助

ゲート・コントロール(受付の前の群衆の整理)
がなんで必要なのか?

1.「日本人を見たい」という野次馬的な一般群衆と
患者を区別するのが重要。

2.患者と最低限の人員(付き添いの家族もう一人だけ)
を入れることで、診療所内の混乱を防止する。

3.診療スタッフのストレスを軽減する効果がある。
人が多いと、それだけで人間は(精神的に)疲れる。
外国人からじろじろ見られていると、
日本人の医師や看護師は疲弊する。

4.入口を作っても、途上国の人は、
そこに1列で整然に並ぶ習慣はないことが多い。
このため、
ゲート(門)を作り、
また、そこから1列に、一人ずつ入ってくるように、
コントロールする人が、最低一人、必要。

常に、1、2名の人員を割(さ)いて、これを行う。
最初、日本人スタッフと(現地語を話せる)現地スタッフの
2名で行い、慣れてきたら、
現地スタッフ一人でやらせる。

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ゲートを作る際の留意点

1.診療サイトの縄張りを明確化し、
 ゲート(入口)の場所を明確化する。
 これにより、関係ない人が中に入りにくくする。

2.ゲート・コントローラーの配置。
 常に最低一人、門番として置く。

 勝手にゲートから人が入ってこれないようにする。

3.ゲートは、(患者さんの)待合場所や受付から
 離れた場所が望ましい。
 人混みで混乱するのを防ぐため。

 いっぱい人がいると医療スタッフに精神的ストレスがかかる。
 本当は、そんなに忙しくないはずなのに、
 動いている人が見えるだけでプレッシャーになる。
 スタッフが、不必要に疲れるのを防ぐ。

4。独歩以外で来訪する患者への対応を考慮した開口部の設置。
 (足の骨折などで)戸板に乗せられて運ばれてくる人もいるので、
 (普段は狭い)ゲートを、場合によっては、
 大きく広げられるように考慮しておく。

5.門扉(もんぴ)の工夫をする。
 基本的に、ゲート(入口)は狭いほうがいい。
 そのほうが、群衆をコントロールしやすい。

 現地のボランティアなどを雇う。
 (雇った現地の)ドライバーに頼むこともある。
 基本は、
 本当の患者と、付き添いの家族一人だけを入れる。
 よけいな人をいれない。

 壁や扉がない場合、ヒモ(ロープ)をはって縄張りを示し、
 その一部を開口して、ゲートとする。

 ともかく、野次馬が勝手に入って来ないようにする。
 余計な労力(体力・精神力)を消費しないように。

6.群衆が暴徒化する可能性がある場合、
 警察などに警護を依頼する。
 状況にもよるが、2〜6名。

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ゲートコントロールの留意点

1.「災害弱者」を優先する。
 老人、女性、幼児、など。

 これを行えるように、緊急性の高い人を優先すると、
 周囲に告知する。そうでないと
 「俺の方が、先に並んでいた!」
 などと、不満がでる。

2.本当の患者は、野次馬の中にうもれている。
 元気のいい野次馬のほうが目立ち、
 その後ろにいて、地面にうずくまっている患者は見えない。

 元気に立っていられる人の後ろや足元で、
 子どもが死にかかっている。
 小さい子どもは見えにくい。
 緊急性のある人はどこにいるか、探す。

3.現地のボランティアを活用する。
 言葉の問題があるので、非常に有用。

 一方、現地スタッフ・現地ボランティアは、
 「日本政府に俺は協力してやっているんだ」
 と思って、
 (群衆や患者に対して)高圧的になる人もいる。
 その場合、それをたしなめることも必要。

 現地の群衆や患者に対し、
 高圧的な態度をとり続けると、
 (群衆が)怒りから行動(暴動)にいく可能性。
 だから、やんわりとやってもらう。

4.活動していると、他の国際協力団体が来る。
 必ず来る。
 この時、ゲートキーパーが、
 例えば「赤十字が来ました」なとど隊長に報告に行くために
 持ち場を離れると、ゲートコントロールをする人がいなくなる。
 すると、入口から群衆が殺到し、めちゃくちゃになる。

 だから、持ち場を離れないように、
 ゲート・コントロールをやる人にも、
 無線機(トランシーバー等)をもたせる。

5.地元の権力者が、我儘を言うことは多い。
 例えば、その地域の「村長の息子」がやってきて、
 「俺は地元の実力者だから、他の患者よりも先にみろ!」
 と言うケース。
 状況によっては優遇すべき人物がいる。
 もし、これを断ると、
 「ここで診療できなくしてやる!」
 と、捨てゼリフを言って去っていき、
 後日、本当にいやがらせをしてくる、
 ということもあるので、なんとかうまくやる。

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トリアージ

患者の優先順位づけ。
ナース(看護師)か、調整員が
患者の重症度に応じて、優先順位を決める。
(わからなければ、チーフ・ナースを呼ぶ。)

病気の重症度だけでなく、
災害弱者(あるいは社会的弱者)と呼ばれる、
女性、乳幼児、高齢者、障害者への配慮。

この時の注意は、
「重症患者や、女性や子どもは優先して先に診療をします」
と大声で宣言をし、かつ、紙に書いて貼っておかないと、
待っている人から不満がでる。
不満がですぎると、暴動が起きたりして危険。

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受付前の留意点
ゲートコントロールの後、患者が受付をするまで

1.順番に流れていることがわかるようにレイアウトする。
 診察の流れを(患者が自分で)認識できることが重要。
 そうしないと待っている人がイライラする。
 そのように、流れるようなレイアウトをする。

2.順番が混乱しないように、
 できれば直線状に(待っている患者の椅子を)レイアウト。

インドネシアの例:
3人がけの椅子をぱらぱら置くのはダメ。
人の流れ(動いていること)が認識できず、
自分の順番がいつなのかもわからない。

椅子は、横に一列に並べる。
空いたら、横にずれてください、と言うだけ。
腰を浮かしてとなりに座るだけ。簡単。

また、椅子の背もたれに番号をふる。
すると、何人待っているかが、すぐわかる。
今日の診療が終わる時間の予測もできる。
最後尾で待っている人に、あとどのくらい待つか通知できる。

患者さんの不満を少なくすることが大切。

3.天候と気候に配慮。
 雨が降ると、ぬかるむ。
 土嚢(どのう)を積んだりして、診療所への水の浸入を防ぐ。
 ダンボールを床(地面)に敷くことも。

4.待合場所で並んでいる患者を、待たせているだけではなく、
 できれば、コミュニケーションをし、人間的交流をする。
 日本人の心象を良くする。

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受付で、カルテの記入

医療記録(カルテ)のうち、
名前、年齢、性別、住所、ワクチン接種歴など、
医師でなくても記入できる部分は、
調整員が記入してしまう。

バイタルサイン(体温、血圧、脈など)も
調整員が測定し、カルテに記入する。

カルテの中で、
医師でなければ記入できないのは、
診断名、検査の指示、処置(治療の内容)だけ。

また、
医師がカルテを書き終わったら、
基本うちこみ事項、をパソコンにすぐ入力する。

年齢
性別
居住地
免疫(ワクチン接種歴)
体温
診断
処置

入力は医師・看護師・調整員で分担。
手の空いている人が診療時間内にやる。
終わらなければ、診療後。

また、医師が、病気を分類して
(あらかじめ定められている)
コード化された数字をカルテに記載している。
この分類も、パソコンに入力する。(後述)

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バイタルサインを測定する時の注意

バイタルサインとは、
心拍数(脈)、血圧、呼吸数、体温、など。

子どもの測定が大変。
泣く、わめく、暴れる。
泣いて興奮すると、
脈(心拍数)は増えて正確な値は測れない。
泣いていると呼吸数は数えられない。
子どもでは、血圧は測らないが、
代わりに、呼吸数が非常に重要。
重症の肺炎の時、呼吸数が60回/分以上に増える。
で、
どうやって子どもを泣きやませるか、というと、
まず、お母さんに抱っこさせたまま、すべて測る。
体温などの測定のしかたを母親に教えて、
母親に測ってもらう。
体重は母親ごと図り、後で母親の体重を引く。
耳式体温計は3秒で測れるが、低めにでやすいので注意。
(現地スタッフの)通訳などから現地語で、「痛くないよ」などを教わり、
ともかく現地語で話かける。
優しそうな女性スタッフが子どもに接近したほうが無難。
(肉食系女子よりは、草食系男子が、まし??)

なお、
途上国では戸籍や住民票がないため、
年齢あたりの体重で、「子どもの栄養失調」
などを判定するのは危険。
3歳だから12kg前後のはず、などと思うのはダメ。
母が3歳といっても、(記録がないので)
実は1歳とか5歳のことが多い。
よって、
子どもは基本的に身長を測り、
身長あたりの体重で、栄養失調などを判定する。
(判定の基準は、団体ごとに異なる。)

一方、
全く逆の考え方もある。
子どものバイタルサインを測定するために
あまりにも時間をかけすぎるのは、得策ではない。
後ろに待っている患者もいるし、
その子自身にとっても、
さっさと医師にまわして、
肺炎用の抗生物質の点滴をしたほうが、
早く治る可能性が高い。
よって、
ある意味、早々に(測定するのを)あきらめて、
とっとと医師にまわしたほうが良い、
という考え方もある。
なお、子どもは急速に状態が悪化することがあるので
ある程度以上、状態がわるい子どもは、
ともかく医師にまわす。
判断基準は、意識レベル低下や、呼吸数が60回以上/分など。
(これに関しては事前に医師に確認。)

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再診カードの問題。

受付の時に、「再診カード」を発行する。

傷口が感染しているケースなど、
その部分を消毒した後、
さらに抗生物資を二日分あたえ、
「あさってまた来てね」などと
医師が言う場合がある。

その場合、
一度診療をした患者だとわかるように
再診カード、と言う名刺状のものを渡しておく。
(その患者の)カルテの番号を書いておき、
一回目に受診した時のカルテを
ひっぱり出せるようにしておく。

ところが、問題が生じることがある。

この再診カードをもらった人が、
その(本人だけのための)カードを、
近所の隣りのおじさんに渡すことがある。
「これがあれば日本人がタダで診察してくれるよ」と。
で、翌日、その
となりのおじさんがやってくる。

カルテには15歳女性、と書いてあるのに、
40歳ぐらいの、おっさんがやってくる。

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カルテ(医療記録)の記載

(医療スタッフでない)調整員が記入できる部分が半分以上ある。
この部分は、調整員が書いてしまう。
残りの部分(診断・検査指示・治療)を医師が記入する。

カルテの内容は以下。

まず、(医療スタッフでない)調整員が記入できる部分

ID番号 01-05-056
(三つに分けられた数字の意味は、以下。)
(場所の情報、診療開始してから何日目か、今日何人目か)
(診療所は複数、設置する場合があり、ID化のため番号を付ける)
Date dd/mm/yy 日付
Reception sign 誰が受付したか
Name 患者の名前
Sex M of F ( male or female )
Age 11m or 3y (11カ月、3歳を略した記載)
Present Residence
1.own house
2.relative/friends house 友達か親戚の家に今住んでいるか?
3.camp(被災民キャンプ)
4.other
address 途上国では大体しかわからないことが多い
pregnancy y (yes) / n (no) / unknown
(女性とみたら妊娠と思え、が医療の基本。)
(妊娠した女性はX線検査ができない。)
Vaccination(ワクチンを打ったか?)
measles y / n / unknown 麻疹(はしか)
tetanus y / n / unknown 破傷風
Allergy アレルギーの既往
y ( drug / food / other )
n
Chief complaints 主訴(主な訴え)
pain site 痛い場所はどこか?
head, chest, abdomen, others
trauma 外傷
fever ( days ) 発熱
diarrhea ( days )下痢
watery, bloody 水様性、血便(血便の下痢はアウトブレイクする)
nausea 吐き気
vomit 嘔吐
sore throat 咽頭痛(のどの痛み)
cough 咳
dyspnea 呼吸困難
skin problem
eye problem
ear problem
appetite loss 食欲低下
sleepless 不眠
dizziness めまい
others
Past History 既往歴
y
HT(hypertension) 高血圧
DM(diabetes mellitus) 糖尿病
BA(bbronchial asthma) 気管支喘息
 other
n
unknown
Medication 現在、内服などの処方をされているか?
y
HT(hypertension) 高血圧
DM(diabetes mellitus) 糖尿病
BA(bronchial asthma) 気管支喘息
 other
n
unknown
Vital Signs バイタル・サイン
BT ( body temperature ) 体温
PR ( pulse rate ) 心拍数(脈拍)
Wt. kg 体重
BP ( blood pressure ) 血圧
RR ( respiratory rate ) 呼吸数
Ht. cm 身長

以上までが、調整員が記入する項目。

以下が、医師が記入する項目。

Dx No 診断した病名のコード番号
Dianosis(Dx): 診断した病名
Drug No 処方した薬のコード番号
Dose: 一回何錠、一日何回、何日間飲むか
Treatment 治療
1.wound care(minor) 軽度外傷の処置
2.wound care(deep) 重度外傷の処置
3.injection 注射
4.infusion 点滴
5.other
6.n (none)
Follow-up Needs また来てもらう必要あるか?
y (physical, mental, sanitation, other)
 肉体的、精神的、衛生、他
n
Relation to disaster 災害と関係ある病気だったか?
y( new, bocome worse, both )
  災害で新規に起こった病気、持病が増悪、両方、のいずれか?
n 災害と関係なく発生した
unknown わからない
Outcome 転帰(治療をした結果、どうなったか?)
1.Go home 完治し帰宅
2.refer ( )紹介・転送した
3.admission 入院
4.dead 死亡
Doctor sign 医師のサイン

Drug sign 最後に薬局で薬を渡した人のサイン

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疾患分類

外傷(骨折、怪我)
熱性疾患(マラリア、デング、チフス熱)
消化器(急性胃腸炎、胃潰瘍など。肝炎もここ)
呼吸器(感冒、気管支炎、肺炎など)
栄養不全、脱水
皮膚疾患(麻疹もここ)
目耳鼻疾患(眼科・耳鼻科的疾患)
神経疾患(髄膜炎など)
筋骨格系(腰痛など、整形外科的疾患)
精神疾患(不安、うつ、PTSDなど)
生活習慣病(高血圧、糖尿病などで薬なくなった人)
泌尿器(膀胱炎など)
産婦人科(不正性器出血など)
その他

以上の患者のデータを、なるべく診療時間内に
パソコンに調整員が入力する。
そして、その日のうちに、
衛星携帯電話を使って、日本の本部にEメールで送る。

すると、本部は、
現地の状況(患者数の多さ、どんな疾患が多いか)などを把握でき、
二次隊を派遣するか、
足りなくなりそうな薬や物資の手配、などを検討しだす。

また、安全に関する状況も伝え、
日本(などの先進国)にある本部と現地は、
綿密な情報交換を行う。


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