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宿泊環境

(宿泊先の候補として、いろいろな場所を考える場合)
優先順位としては、

1)できれば、ホテル。

2)なければ、政府や自治体からの紹介で、
 軍や警察の施設等、公共の施設を借りる。
 学校・病院なども可。

3)以上がダメだった場合、野営。
 (地面の上に、テントを張る。)

スタッフの(快適性の)ためには、上記の優先順位。

逆に、
被災者を救うためには、
野営をして、診療サイトに近い方が良い。

どちらをとるか?

なお、
災害直後だと、
その国の政府も、地方自治体も、
バタバタしていて、
いろいろな意味で忙しい。
そこへ、日本の緊急援助隊が、
突然やってきて、
「我々のために宿舎を手配してくれ。
 護衛のために警察をまわしてくれ。
 物資を運ぶために軍隊を使わせてくれ。」
ということが、はたして、どうなのか?
余計、忙しくして、迷惑をかけているだけじゃないのか?
という議論がある。
このため、最近では、
「自己完結型」の援助、と言って、
(地震などの自然災害後の緊急援助の場合は)
なるべくその国の政府や自治体に、
迷惑をかけない方向で活動しよう、
という考え方もある。

さて、話を戻して、
宿舎の設置では、
余震などの二次災害のない場所であることが第一。
安全第一。

なお、セキュリティーの観点から、
盗難などを防ぐため、
宿泊施設の内部は、外から直接見えないように、
窓にシーツや青いビニールシートを張る。

しかし、
これをやると風通しが悪くなり、
宿舎の内部が異常に暑くなることがある。

この二つのバランスをとることが重要。

お金とパスポートなどの貴重品は、
原則として自分で肌身離さず持つ。

ともかく、
スタッフが、安全だ、と感じられることが大事。
安全でないと、寝るに寝れない。

男女の寝る場所は、分ける。
通常、青いブルーシートか白いシーツで分ける。

トイレは上記した通り、
あれば既設のもの。なければ携帯トイレ。
処理は、既に記述した通り。

入浴は、
通常、シャワーなどないので、沐浴。
水道がない場合、
雨水を貯めるなどする。
200リットル入るタンクなどを多数用意。
初心者は、一人あたり、
2リットルのペットボトルを15本で
30リットルぐらい使う。
慣れると、
沐浴(清拭)と(自分の服の)洗濯で、
10リットル未満まで減らせる。
それにしても、最低、
飲料水以外に、こうした水が
一人あたり10リットルは必要。

なお、
スタッフの数は、前述のように、50名弱。
そうした人々が過ごすための宿舎の広さ、
水(飲料水と入浴など)、食糧の確保は、
ともかく大変。

・・・

防虫対策

蚊やダニがいると、ゆっくり寝れない。
翌日の活動に影響する。
蚊取り線香、虫よけスプレー、殺虫剤などは必須。
途上国のもののほうが、日本のものより強力。
ディートという(蚊を防ぐ)成分の濃度が途上国のものの方が高い。
また、日本で使っていない成分も入っている。
安全性はともかく、そっちのほうが効く。

また、窓には、網戸を設置し、
蚊が入ってこないようにする。
蚊帳も必要。
殺虫剤入りの蚊帳が、住友化学で開発されている。

オリセットネット
http://www.sumitomo-chem.co.jp/csr/africa/olysetnet.html

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発電機

宿舎で発電機(ジェネレーター)を
まわしっぱなしにすると、
オーバーヒートで壊れる。

どのくらい使うか?
どのくらい電気が必要か?

時には、発電機を休ませるため、
ろうそくで過ごすことも必要。


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・・・

現地スタッフの管理

ローカルスタッフ(現地スタッフ)の
ローテーション・スケジュールも必要。

エクセルの票を作って
各自の業務内容と業務時間を明確にする。

なお、
ほとんどの部署に通訳が必要。

外国人は23名だが、
ドクターを始め、ほとんどの人が通訳が必要。

買い物に行くには、
通訳と運転手が必要である。

つまり、結論からいうと
日本人23名に対して、
ほぼ同数の現地スタッフが必要。

通訳は、13
運転手は、8
警察官は、、8(後述)
計29人

合計52人の大所帯になる。
このため、
(スタッフのための)大量の水と食料の確保が必要になる。
この調達をどうするのか?

現地(被災地)の食糧や水を、自分たちのために
買い占めてはいけない。
これをやってしまうと、
被災地の被災民が食べたり飲んだりする分の
水や食料を奪ってしまうことになる。
(援助じゃなくて略奪をしていることになり、本末転倒になる。)

だから、もしも
水や食料を調達するのならば、
被災地からなるべく遠い町から買ってくる。
しかし、それだと時間とガソリン代金がかかる。
車の数とドライバーの数も必要。
(道が危険な場合)安全状の問題も生じる。
このバランスが難しい。

一方、
日本から大量の水と食料を持っていくのは無理。
既に、4.5トンぐらいの重量の携行機材があり、
通常持っていける食糧は、最初の三日分程度のみ。
輸送機が運べる、重量・体積・個数の問題。
(現地に着いてからトラック2台で
 余裕をもって運べる量が望ましい。)

ともかく、買い物は大変な仕事。

診療所と宿舎の警備は、(治安の状況にもよるが)
地元の警察に頼む。
通常、2〜6名を雇う。
(診療所と宿舎にそれぞれ。
 だから4名x2ヶ所としても合計8名前後。)

結局、トータルで、現地スタッフは、
25名近く雇う。

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通訳

この現地スタッフの、
通訳を雇う時のポイントは、
その人の英語・日本語のレベルを把握すること。

買い物ができる程度か、
(自治体や他団体との)難しい交渉ができるか?

女性通訳も必要。
女性の診察室には、女性の通訳がいたほうがいい。

(イスラム圏では、できれば、
 男性の診察室と女性の診察室を分ける。
 医師に女性がいれば、女性の患者は女性が診た方が良い。)

通訳は固定業務としたほうがいい
ローテートしないで(その仕事の)専属に。
逆に、ドライバーなどは、
仕事の負担が偏らないように、ローテートした方が良い。

地域によっては、通訳の(社会的)階層、階級が問題になる。
インド、ネパールなど、カースト制度などがあると、
階級の低いものが、上のものに話すことは許されない。
(だから、階級の低い人を通訳として雇うと、
 この問題が発生することがある。)

通訳の身贔屓(みびいき)。
つまり、主観の入った通訳に注意が必要。
 
また、現地スタッフが、それぞれ、
どの言語が話せるかをわかるワッペンを胸にはる。

例えば、ハイチ(地震)の場合、
以下の五つの要素がわかるワッペンを作り
それぞれの現地スタッフの胸に貼る。

  E 英語
  F フランス語
  C クレオール(現地語)

  名前、日本語(カタカナ)で
  名前、英語で

(どの言葉から、どの言葉への通訳ができるのか、明確にする。
 途上国は、多民族国家(多言語)のことが多く、
 またかつてヨーロッパの植民地であったため、
 一人の人が複数の言葉を話すことが多い。
 また逆に、その国の全ての言葉を話せるわけでもないので、
 一人一人の現地スタッフが、どの言語とどの言語を話せるのかを
 明確にする(一目瞭然にする)ことが必要。)

なお、
通訳さんの勤務表を作り、
業務時間を明確にする。

現地スタッフの通訳を使う時の最大の注意点は、
本人の暴走。
こちらが話していないことを、
自分で勝手に判断して、べらべら話す人がいる。
こちらが10秒しか話していないのに、
(自分で思ったこと、判断したことを)
5分ぐらいずっと話しているとか。
逆に、
こちらが、5分ぐらい話して説明したのに、
10秒しか話をせず
「えっ、それだけ?」
と思ってしまうほど、勝手に話を簡略化する人、など。
ともかく、いずれにしても、
最初に、通訳を集めて、きっちりオリエンテーションが必要。
1)主観を絶対に入れないこと。
2)自分で判断しないこと。
3)こちらの言ったことを正確に、そのまま訳すこと。
4)時間を守って行動すること。
5)当組織の概略と目的は何かを説明。
6)勤務に不満があったら誰に言うかを最初に通知。
など。

通訳を雇う方法は、いろいろなケースがあり、
被災国の日本大使館から紹介される場合や、
被災国の政府や地方自治体から紹介される場合、
被災地のサイト(診療する場所)で、直接雇う場合、
他の国際協力団体から紹介してもらう場合、
など多様。

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ドライバー

 通訳は、学校に行っていることが多く。
 学問がある程度できる。
 ドライバーは運転できるだけ。
 学校に全くいってない可能性もあり、
 知的レベルが低い可能性も考慮。

 安全運転ができない。
 基本的に、飛ばす(スピードを出す)。

 疲労が蓄積すると、いねむりをしがち。
 交代要員が必要。

 何を頼んでも、NOとはいわない。
 「俺にまかしとけ」みたいな。

 よって、スケジュール管理はこちらでやる。

 安全配慮、言語能力、地域把握、車両整備、
 これらに大きなばらつき(運転手の能力の個人差)。

 被災地外からの雇用の場合、
 地元の地理を知らない可能性も高い。
 (買い物をしにいっても、店を知らない。道も知らない。)

 逆に、地元の運転手を雇うと、物資調達に便利なことも。
 (しかし、学校を出ておらず、知的レベルが低いことも。)

 なお、最大の注意点は、
 ドライバーがどこにいるか(常に)わかっていること。

 診療所で医療活動をしているときに、
 なんらかの緊急事態が起こる場合がある。

 (例えば、地震の二次災害、群衆の暴徒化、火事など。)

 この場合、スタッフが、車に飛び乗って、
 すぐに宿舎等に移動する(逃げる)必要がある。

 ところが、途上国の現地スタッフの、ドライバーは、
 診療中、どこかに遊びに行っていて、
 探しても見つからないことがある。

 原則として途上国では、日本人スタッフの運転は
 (仮に運転免許を持っていても)禁止なので
 そうすると、逃げるに逃げられない、ということになる。

 つまり、ポイントは、
 診療中に、ドライバーが、どこか他の場所に
 遊びにいかないように、見張っておくか、
 または、遊びにいかなくてもすむような
 環境を作ってやることが必要。

 具体的には、
 どこかの木の日陰の、涼しいところに、
 居場所を作ってやる。
 水とお菓子もそこに置く。話し相手も置く。
 「ここにいろよ」、と命令する。
 いないと、我々の安全が危険。有事の際に。

 なお、車を停車する時は、
 頭から駐車場に突っ込まず、
 必ず、ケツから入れて、頭を道路側に向かせる。
 このほうが、有事の際に、すぐ脱出できる。

 なお、日本人が運転をしてはいけない理由は、以下。
 1)国際協力の現場で、日本人が死亡する最も多い理由は、
  交通事故であるため。
  病気でも、戦争に巻き込まれることでもない。
 2)もし、自分で運転している時に交通事故を起こし、
  そして現地人を殺してしまった場合、
  裁判等で相当、めんどうくさいことになるため。

運転手はローテーションを作って働かせるので、
勤務表は絶対に必要。
疲れて、居眠り運転をしないように。

残業があると、後で不満がでて問題になることも。

また、
どのぐらい各ドライバーが走ったか、
(勤務時間の長さだけでなく)距離でもみる。
車の(走行距離の)メーターで見る。
これでも管理し、各ドライバーの仕事量を平均化し、
不満がでないようにする。

Aというドライバーは毎日300km
Bは、毎日50km。
これでは不満がでる。

ドライバーのローテーションをうまく組むことが
我々の安全につながる。

・・・

ローカル・スタッフ(現地スタッフ)への配慮

宗教・文化・習慣に注意。
イスラム教の場合、豚を喰わない。
ヒンズー教の場合、牛を喰わない。

基本的には、日本人スタッフと同じものを食べ、
格差をなくすようにする。
生活環境を同じにし、(我々が彼らを)下にみない。

ローカル・スタッフも、(診療所付近で雇った場合は)
被災者だ、ということを忘れない。

また、彼らは災害援助のプロではないので、
日本側から派遣されてきているスタッフと
同じ量(と質)の仕事を期待してはいけない。

逆に、なれ合いになりすぎるのもダメ。
一線を画し、仕事の上の付き合いに徹する。

また、彼らなりに、
日本の緊急援助隊のことを
「勝手に」理解し、
それを周りに吹聴してまわるようになる。
これが、間違った情報であることが多いので
注意が必要。

なお
ローカルスタッフも被災者であるため、
下痢などの病気にかかっていることがある。
すると、
トイレを共用した場合、
日本人スタッフにそれが感染する恐れ。
食事などをいっしょにした場合、
食器などを通して、それが感染する危険も。
こうしたことにも注意。

イスラム教やヒンズー教の風習には注意。
注意事項はいっぱいあるが、例えば、
左手は、「不浄な手」、とされる。
これでお金を渡したり、握手をしたりしてはならない。

ともかく、
その国の宗教・文化を理解し、
それを患者の診療に生かすため、
ある程度、仲好くする。

注:
イスラム教関係の注意事項
1.1日5回、メッカに向かって礼拝する。
 その間、仕事を中断する。これを怒ってはならない。
2.11,12月のラマザーンという断食月がある。
 この間は、力がでないので、仕事量が半分以下に減る。
3.イスラム教を冒涜(ぼうとく)する人間は、許さない。
 (宗教を尊重しないと、殺される可能性もある。)

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撤退をする時の注意

撤退をする時、
物品を3つに分ける。

1)持って帰るもの。
2)相手国政府か自治体に渡す(無料で贈呈する)もの
3)破棄するもの

これを最終日に一気にやろうとしても無理。
バタバタしており、忙しくて不可能。

日頃から、毎日整理しておくことが大切。
(詳細は、既に書いた。)

持ち帰り機材のリストと、
供与物品リストを作成する。

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まとめ

1.
緊急援助におけるロジスティック・マネージメントは、
人・物・時間・情報・安全
という五つの分野を管理することにある。

2.
最大の目的は、
派遣された全員が、無事、帰国すること。