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最近、国際協力師と国際協力士について
動きがあったので報告しておく。

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まず、この二つの概念の説明と、これまでの歴史について。

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「国際協力師」とは、
NPO法人・宇宙船地球号の山本敏晴が、
2005年頃から提唱した概念(造語、キャッチコピー)で、
プロとして(有給で)国際協力を行っている人々の総称のこと。

具体的には、
国連職員などの国際公務員、
JICA職員などの政府機関職員、
民間の開発コンサルタント会社社員、
民間のNGOの有給職員、
などを言う。

この「国際協力師」は
2006年に書籍
「世界と恋するおしごと」(小学館、山本敏晴)で明文化され、
NHKや毎日新聞により、この言葉が報道された。

2007年には、文部科学省との連携事業で
公立の小中学校の希望校で
「国際協力師という新しい職業があること」
を、学童や生徒たちに紹介する授業を行った。
(総合学習の枠などで実施。)

同年
「国際協力師になるために」(白水社、山本敏晴)
を発売。
ベストセラーとなり現在第8刷り。

(「国際協力師になるために」は、
 アマゾン等のインターネット上の書籍で、
 『国際協力』というキーワードで書籍を検索した場合、
 常に上位にランクインしている状態が、
 なんと3年間以上、続いている。)

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一方、
「国際協力士」とは、
1999年の第145回国会・外務委員会において、
社団法人・青年海外協力協会・理事長・貝塚光宗が
「国際協力士(仮称)の資格制度導入」を提案した。

この提案がされた理由は、
青年海外協力隊から帰国した人が、
日本に帰国した後、
就職先で苦労する現状があったため、である。

より具体的に言えば、
青年海外協力隊からの帰国後、
会社等への就職をしようとしても、採用されず、
引きこもり・ニート等になったり、
よくてフリーター(アルバイト勤務)になる例が多く、
その数(人数)が多いことから、
社会問題化していた。

ちなみに、JICAの正式統計によると、
青年海外協力隊後も国際協力を続けている人は、
わずか、8%、である。

このような状況のため、
青年海外協力隊のOBたちが作っている団体である、
「社団法人・青年海外協力協会」は、
後輩たちの帰国後の待遇を改善するために、

1)日本の国際協力・開発の分野に、彼らの就職先を、より多く作ろうとした。

  ちなみに、
  JICA職員の募集などは(年によって異なるが)
  1000人受験して40人採用など、倍率は25倍ぐらいで、
  そう簡単には採用されず、またそもそも募集人数が少ない。

2)国際協力士という国家資格を作れば、
  そういう人を雇うための枠組み(組織)を、
  政府が作ってくれやすいんじゃないか。

3)その「国際協力士」の『資格試験を実施』するための
  財団法人等も作ることになるが、
  そこも(帰国後の)一つの就職先になる。
  (仮に、天下り先の一つになってもいいから。)

4)また、仮に、「国際協力士」という資格を持っていれば、
  国際協力・開発分野への就職に漏れてしまっても、
  それを評価してくれて、
  日本の一般企業が、雇ってくれやすくなるのではないか、
  ということ。

実は、この、4)の部分が、最大の理由であった。

背景としては、以下がある。

青年海外協力隊は、大学卒業の新卒などで行く人が多いが、
通常、社会人になって、日本の一般常識・マナーを覚えるべき、
最も大事な時期に、途上国にいって
よくわからない「ボランティア活動」(?)を行い、
日本社会での適応性は低くなってしまっているかもしれない人材を
雇おうという企業は少ない、ということである。

実際、青年海外協力隊の2年間に行った人で、
満足な活動ができた人は、全体の2割もおらず、
「自分のやったことが意味がなかった」、
または、
「やってもやらなくても良かったのではないか」、
という回答をしている人が、8割を占め続けている現状では、
企業への就職面接の時に、
自分のやってきた活動をアピールできる人も少ないと思われ、
上述の就職難の状況を、さらに悪化させていた。

よって、
(青年海外協力隊のOB会である)
社団法人・青年海外協力協会としては、
青年海外協力隊からの帰国後、
ある一定の、講習・研修等を受けさせた後、
資格試験を行い、
国家資格「国際協力士」を与えることにより、
その後、
1)日本の国際協力系組織(JICA等)への就職や、
2)日本の一般企業への就職を
後押ししよう、という側面が強かった、
と考えられる。


この、国際協力士は、その後も動きがあり、
2008年6月4日東京新聞にて、JICAと外務省が
「国際協力士制度の創設を検討」している、と報道された。

が、この頃から、
上記の青年海外協力隊OBの救援策、としてだけではなく、
「グローバルな活動ができる人材の育成」という観点も
含まれるようになったようだ。

一方で、一部のマスコミは、
「また一つ、その(国際協力士という国家資格の)資格試験をするための
 天下り先の財団法人を作るだけではないのか?」
と批判をしていた。


で、最近、
2010年9月1日、
JICAが国際協力士(仮称)の実現可能性調査を公示した。

参考:
「国際協力士」(仮称)の資格、実現可能性(フィージビリティー)調査。
グローバルな国際協力人材の養成確保へ
(JICA公示)
 http://www.jica.go.jp/chotatsu/consul/koji2010/pdf/20100901_g_01.pdf


これに関連して、以下の背景が世界であった。


途上国の貧困撲滅などを目指す
ミレニアム開発目標(MDGs)の首脳会合が
2010年9月20日から3日間の日程で開幕したが、

2015年がミレニアム開発目標の期限で
母子保健分野で遅れが目立ち、目標達成が困難な状況だった。
よって、
先進国がより踏み込んだ追加援助を打ち出せるかが会合の焦点で、
最終日に具体的な行動指針を盛り込んだ成果文書を採択する方向だった。

で、この会合で、
2010年9月22日、

菅首相は、国連ミレニアム開発目標(MDGs)サミットで、
いわゆる「管イニシアティブ」を発表。
財政的な支援以外に、以下の二つを提案した。

1)保健分野では妊産婦の定期健診や新生児ケアを行う病院の整備、
  ワクチン接種など妊産婦と乳幼児の死亡率削減のための
  『保健支援モデル』、

2)教育面では学校やコミュニティー、
  行政が一体となり学習環境改善に取り組む
  『基礎教育支援モデル』

を提案した。

このすぐ後の、
2010年9月24日、

外務省は「新・国際保健政策」(2011-2015)において
「政策に携わる人材の育成と成果の発信能力を強化することにより
 日本国内の国際保健体制を強化し
 それにより国際的な保健分野の取組体制を強化」
すると公示。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/doukou/mdgs/shinseisaku.html

同様に「教育協力新政策」も公示された。

すなわち、政策の提言・作成に関われるような、
高い専門性を持つ人材を、まず国内で産み出し、
その人物が、将来、国際的な活躍をすることに期待する、
という主旨の声明が出された。


これが、
9月頭に公示された
「国際協力士の実現可能性調査」と関連しているかどうかは、
わからないが、
関係あるような気もする。

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以上をまとめると、
「国際協力士」と「国際協力師」の違いは、

「国際協力士」は、
政府(外務省とJICA)において
元々は、
青年海外協力隊の帰国後の就職難を改善するための救済策
としてその創設が検討されたものだったが、
現在は、
(特に政策提言に関わる)グローバルな人材養成の推進を目指すもの。

「国際協力師」は、
民間のNPO法人・宇宙船地球号が提唱した
『有給で国際協力を行う人々の総称』
を言う。


よって、この二つは、直接的には、全く関係ないと
考えられる。


ただし、
拙著
「世界と恋するおしごと」

「国際協力師になるために」
は、
発売当時、
JICA事務所があった、
新宿マインズタワーというビルの
すぐ近くにある、
紀伊国屋書店(新宿本店・新宿南口店)において、
(その二つの本屋だけで)
一か月に200冊以上売れるなど、
爆発的な売れ行きを見せた。

つまり、
多くのJICA職員・JICA関係者が、
上記の書籍を読んでいたようで
(実際、JICA内の友人から
 『読んだよ』というメールも多数頂いており)
多少なり、
国家資格「国際協力士」の概念の「変遷」に
影響した可能性もある。

要するに、
青年海外協力隊OBの単なる救済事業(かつ天下り先)から、
グローバルに活動できる政策提言のできる人材の育成に、
変化していったことに、
多少、影響(貢献)したかもしれない、
という程度の関係である。


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ともかく、
今後、政府が、
「国際協力士」を国家資格化する場合、
「国際協力師」の言いだしっぺの、私としては、
なんらかの適切なコメント(批判・助言?)を
しなければならない立場にあるのではないか、
と考えている。

と、いうわけで、
今後も、それなりに、がんばります。



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ついでに、
ツイッターで、最近つぶやいた、
「国際協力」に関する記述を、以下にアップしておく。

140文字だと一つの側面しか書けないので
情報が偏りやすいのですが、
それでも、書いておきます。
以下、あくまで参考に。


「国際協力ってなんですか?」
「三つあります。
1)途上国に行って直接的に教育や医療等をする。
2)先進国側にいて計画を作り予算を獲得し
 各援助団体の分担を決める会議をする。
3)消費者と企業が、
 残り少ない資源を奪い合う戦争が起きないよう、
 気候変動による降水量減少で飢饉がおきなう、
 節約する。

国際協力には二つある。
1)紛争地帯で行う「緊急援助」と 
2)紛争が終わり政府が確立してからの「開発援助」。
1)緊急援助は「外国人が」食糧をあげ、医療などをしてあげる、
 「あげる」援助。
2)開発援助は「住民が」主体となり、
 持続可能な開発を目指す「あげない」援助。
 この場合、外国人は脇役

「国際協力をする人を増やしたいんですか?」
「はい。三段階の啓発をしています。
1)きっかけの提供。
 写真展などでまず知ってもらう。
2)最初の一歩。
 その人が学生でも主婦でも会社員でもできることを紹介。
3)本当の考え方。
 実際の国際協力はどんな方法にも長所と欠点があるので
 それを公平に解説」

国連系の国際協力団体の
長所は、
1)ほぼ二百の国や地域が集合し国際的な決議ができる
 ほぼ唯一の国際機関であること。
短所は、
1)内政干渉できないため
 国連決議に強制力はなくガイドラインに過ぎない、
2)常任理事国五カ国(米・露・中・英・仏)に拒否権があり、
 第二次世界大戦の戦勝国に都合のよい体制

政府系の国際協力の
長所は、
1)二国間の協力により多数の省庁が連携し包括的な活動が可能、
2)ODAという1兆円近い予算を使える、
短所は、
1)先進国の外交上または経済的な利益ために
 途上国を開発しているのが本質。
2)援助した代わりに国連常任理事国になれるよう推薦の依頼、
 資源の獲得、市場の拡大等

NGOの国際協力の
長所は、
1)国の外交政策に影響されず純粋な「人道主義」のもと活動する、
2)スタッフの給与が安いため
 募金されたお金のほとんどがプロジェクトに使用。
短所は、
1)思い込みが激しく偏った思想、
2)予算が乏しくスタッフがすぐ辞める、
3)学問的背景がなく数字で結果を出さない

国際協力をする上で最も良い組織形体はなにか?
それは国連やJICAなどで勤務した経験を持ち、
修士などの専門性を持っている人たちが、
国際機関や政府機関では
「国家の利害」にしばられて正しい活動ができないと悟り、
外に出て作った組織である。
これが「ハイレベル国際NGO」。今後の開発を主導する

途上国の開発をすることが国際協力と考えている人が多いが、
根本的な間違い。
68億人がアメリカ人のような生活をした場合、地球が5個必要。
よって途上国を経済開発するなら、単純に考えると、
世界人口を5分の1に減らす必要。
すなわち残存する資源の量を考え、
それで可能な範囲の人口と経済活動に規制

「国際協力師」を目指す場合、
例えば代表例である国連職員を目指す場合、
JPO試験を受けるのが就職できる確立が高い。
その受験資格は、
1)日本国籍、
2)35歳以下、
3)大学院修士、
4)英語力(TOEFL等)または他の国連公用語(フランス語等)、
5)2年間の勤務経験(必要ない年もある)

精神保健のホープ「天使さん」が
国連JPO試験に合格しました!
本当におめでとう。 
国際精神保健を目指した「天使」 9735字 (国際協力、開発学)
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65256432.html

国際協力で緊急援助を行う場合、
自身の安全管理を事前に学習すること。
以下のいずれかを受講するべし。
eセンター(UNHCRが主催) 
http://www.unhcr.or.jp/protect/e_center 
Red.R(北米のNGOが主催) 
http://www.redr.org

「子ども兵に対する精神的なケアを国際協力としてやりたいんですが?」
「メンタル・ヘルス(精神保健)に関しては
 各国ごとの宗教や文化の影響が強く、
 世界的に標準となる診療方法が確立されていないものが多い。
 一応WHO内にメンタル・ヘルスの部門があるので、まずそこ。
 次いでDSM-IV-TR」

パキスタンの大洪水に対して国際協力機構は「緊急援助隊」を派遣。
緊急援助隊が、普段どんな活動をしているか知りたい方は以下へ。
ブログに4回連続で詳述。
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65481174.html

防衛大学生が
「国際協力をやりたいんですが、どのような方法が?」 
1)国連からの要請に自衛隊が協力するPKO(平和維持活動)。
2)自然災害に対するJDR(緊急援助隊)、
3)テロ特措法関係、
4)自衛隊退役後に地雷除去NGO、
5)退役後にアフガニスタンDDR(武装解除)に協力するNPO

・・・

国際協力・開発をする理由


「日本には多額の赤字国債があり経済も不況なのに、
 なぜ途上国を援助するのですか?」

1.
「途上国では、
 今まさに戦争で殺される人や、
 今まさに食べ物がなく死んでゆく人や、
 今まさに教育を受ける機会がなく貧困におちいってゆく人がたくさんいます。
 日本の状況はそれに比べると、だいぶましだからです。」

2.
「自分の夢として『国際協力をやってみたい』という人が
 国民の一定数いるからです。
 理由は、
 1)純粋に人道的な理由、2)自分探しのため、3)昔から憧れていた、
 など様々ですが、ともかくやりたい人がいるのです」

3.
「日本外交の基本は国連を中心とした国際協調路線。
 国連が要請してくる途上国への人道的な援助に協力。
 これは日本にとって困ったこと(国境問題や他国からの攻撃など)
 が起こった時、国連に助けてもらうためです。」

4.
「岡田外務大臣も発言している通り
 ODA(政府開発援助)の最大の目的は
 途上国への支援ではなく
 日本企業が経済活動する場所を途上国まで広げることです。
 原料調達、安い人件費での生産、商品の販売など全てが有益」

5.
「日本政府の昔からの念願が国連安保理の常任理事国になることです。
 国際的な発言力が強くなれば我が国に有利な条約を作ったり、
 不利な条約を締結させなくすることができます。
 経済活動にとっても有利になります。」

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国際協力の求人・人材募集

国際連合や世界銀行などの国際機関の職員(いわゆる、国際公務員)になりたい(就職したい)場合、その「空席情報」の入手が必要である。外部に公開されているものは、ここで閲覧可能。外務省・国際機関人事センター http://www.mofa-irc.go.jp/link/link.htm

「パートナー」は、政府系の国際協力機構(JICA)と関連している、国際協力関係へ就職するための求人情報ページ。国際機関、政府期間、開発コンサル、民間NGO、教育機関など、全ての分野の求人を紹介しているが、やはり政府系が強い印象 http://partner.jica.go.jp/

ピースコー(Peace Corps)とは、アメリカの青年海外協力隊。まず大学院に1年間行き、次に途上国へ2年間派遣されて現地で実践。その後、再びまた大学院に戻って1年勉強。合計4年のプログラムとなるが、理論と実践の両方を包含。 http://www.peacecorps.gov/

「国際協力NGOダイレクトリー」とは、開発・環境・人権・平和などの分野で国境を越えて活動する日本の国際協力NGOの概要を収録したデータベース。289団体について、組織概要、活動状況など。自分に合ったNGOを探すために http://www.janic.org/directory/

NGOの人材募集を知りたいならここへ。ボランティア、インターン、アルバイト、契約社員・嘱託社員、正社員などの募集情報。大学生、大学院生、子育てが終わった主婦の方、退職後の方も。JANICの情報掲示板 http://www.janic.org/janicboard/recruit/


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拙著の紹介

国際協力を行うための専門知識をもち
生活するのに十分な給料をもらい
持続的にプロとして国際協力を行う職業人、
すなわち国際協力師たちを一人でも多く育てたい 
「国際協力師になるために」 
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4560031630

国際協力の現場で働く30人のインタビュー集。
国連職員、JICA職員、開発コンサル、NGO、CSR、
スポーツや芸術で行う国際協力も紹介 
「世界と恋するおしごと 国際協力のトビラ」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4093876401/

拙著
「アフガニスタンに住む彼女からあなたへ 望まれる国際協力の形」
(白水社、山本敏晴)は、2005年に毎日新聞社主催の
「高校生・読書感想文・夏休み課題図書」に指定された本。  
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4560049688/


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なお、私のツイッター上での「つぶやき」(ツイート)は、
以下のサイトで、ツイッターに加入していない人でも読むことができます。
140文字をふるに使った、かなり内容のある記事を連載しています。
http://twilog.org/yamamoto1208