.

最初に

国際協力を長くやっていると経験するのは、「本当の最貧国では、医療とか教育とかは必要とされていない」ということ。彼ら・彼女らにとっての最大の問題は、「飢え」と「渇き」。だから必要とされるものは、「食糧」と「水」。中村哲医師もそれに気付き、アフガニスタンで、「井戸を掘る医師」となった

・・・

略歴

中村哲。1946年生。医師。福岡出身。クリスチャン。73年九州大学医学部卒。78年社会人山岳会の付き添い医としてアフガニスタンへ。84年キリスト教団体でペシャワールのハンセン病患者支援。86年日本アフガン医療サービス(JMAS)設立。98年ペシャワール会医療サービス(PMS)設立

・・・

きっかけ

「とにかく昆虫と山が好きでした」。 中村哲。アフガンで井戸を掘る医師。「福岡にある、社会人の山岳会から、ひょんなきっかけで私に、付き添い医としてアフガンスタンに同行して欲しい、という打診がありまして。快諾したのは、危険を恐れる気持ちより、珍しい昆虫への興味が勝ったからです(笑)」

アフガニスタンへ社会人山岳会の付き添い医として同行した際、中村哲は政府の観光省から住民に対しての診療拒否をしないよう言われた。このため診療をしながらキャラバンを続けたが進めば進むほど患者は増加。薬品は日本人のためにとっておき処方箋だけを渡したのだが貧しい彼らに買えるはずがなく苦悩

・・・

マグサイサイ賞

「余りの不平等という不条理に対する復讐」。 中村哲。1946年生。医師。1984年からアフガニスタンで医療を含めた様々な支援活動を行う。『井戸を掘る医師』として有名。ペシャワール会医療サービス(PMS)総院長。1988年、外務大臣賞受賞。2003年マグサイサイ賞受賞。 著書多数。

マグサイサイ賞とはラモン・マグサイサイ賞 (Ramon Magsaysay Award) のこと。フィリピン大統領を記念して創設された賞。別名、『アジアのノーベル賞』。毎年アジア地域で社会貢献などに功績を果たした個人や団体に贈られる。日本人受賞者は、若月俊一、緒方貞子、中村哲など

・・・

ペシャワール、アフガニスタンとパキスタンの国境線

「ペシャワールをアフガニスタンにある町だと思っている方もいますが、国境から50km離れた所にあるパキスタンの町です。とえいえ、アフガニスタン東部とペシャワール周辺は、民族も文化も同じで、事実上一体なんです。そのせいで、ソ連が侵攻してきた時、アフガン難民がペシャワールに。」 中村哲

アフガニスタンの国境線は1893〜95年にかけてイギリスとロシア帝国が勝手に決めたもの。特にアフガンとイギリス領インド(後のパキスタンとなる地域)の国境の線引きは、「パシュトウン人」(アフガニスタンの民族の最大多数派)が住む地域の真ん中に勝手に線を引いたため、後世に禍根を残した。

・・・

難民の本当の原因

「私は村が、まさに『消えていく』様子を何度も見ました」 中村哲。井戸を掘る医師。「アフガニスタンで発生する難民の大多数は『政治難民』ではなく『干ばつ難民』(環境難民)です。ほとんど知られていませんが2000年頃に大干ばつが顕在化、農地が砂漠化し住民はどんどん難民化していきました」

地球温暖化による気候変動(気候変化)の影響で、世界各地の降水量が変化している可能性が指摘されている。最も降水量が減少するのは、地中海沿岸の北アフリカや南ヨーロッパ。次に降水量が減る地域が、中東のアフガニスタン周辺。降水量だけでなく、山に降る降雪量も減るため、川を作る水が全く無い。

アフガニスタンでは1978年以降、断続的に続いた紛争と旱魃のため、無数の難民が周辺国に流出した。しかし2002年以降「緒方イニシアティブ」に代表される日本の支援によって約500万の難民が帰還。日本の支援はUNHCRを通じて過去10年間で1億2千万ドル。帰還だけでなく生活再建に貢献

地球上にいる「難民」及び「国内避難民」は4200万人。それらの人々が集中しているのが、1)「危機の狐」と呼ばれるアフガニスタン・パキスタンの周辺領域と、2)「アフリカの角」の周辺にあるソマリア・スーダンの領域。難民問題は、気候変動による水・食糧不足、難民の都市化、などにより複雑に

アフガニスタンやスリランカからくる難民「ボート・ピープル」。船でオーストラリアを目指す人が今年3500人以上。オーストラリアのギラード首相は北にある東ティモールで(密航でないか)難民を審査し収容施設を設置する提案。密航船ビジネスを取り締まるためというが、東ティモールがOKするか?

・・・

イランのアフガン難民

核開発問題を巡って国際社会から経済制裁を受け財政が悪化しているイラン政府が大規模な補助金削減を実施。イランでは生活に必須なパンや砂糖、電気料金などに国の補助金が投入されて価格が抑えられ、低収入の市民や難民でも生活が可能だった。イラン国内にはアフガニスタンからの難民300万人がいる

・・・

日本からのボランティア医師

「日本から(アフガニスタンにボランティアで)来た若い医師は、CTスキャンがなく超音波エコーもないと病気を診断できない。電気がないと何もできない。これには困りました(笑)。であれば、アフガニスタンの医学部を卒業した現地の若い医師を教育した方が早いし、将来的にも有意義です」 中村哲

国際協力は途上国に行ってやるものだと思っている人がいるが、必ずしもそうではない。例えばJICA等のやっている「本邦研修」というものは、途上国の官僚や農民などを、日本に呼び寄せ寄宿舎に滞在させ(その経費は日本が負担し)、必要な技術を教え込んだ後、自国に返すというもの。この方が効率的

・・・

紛争地帯で活動する人生哲学、安全管理、危険回避

「アフガニスタンは確かに危険。でも人間関係が本当に濃い。銃弾が飛んできた時に『ドクター危ない!』と言って自ら弾よけになってくれる人々に囲まれて生きるのは無上の喜びです。医師である私が生き残れば、自分一人が死すとも多くの命が救われる。とっさにそんな判断をしてくれる仲間たち」 中村哲

「人は順応するものなのです。危険が日常的になると慣れてくる。怖がっていたら仕事になりませんし。いつの間にか『死ぬ時は死ぬのさ』という気分に。まわりの仲間を見ていても同じです。危険な場面では犠牲者が出てくるのはやむをえないと。もちろん犠牲者の中に自分が入るかもしれないとも」 中村哲

「以前は『俺の目の黒いうちは』なんて言えましたが、今はもう(老人性白内障で)目は白くなってきています(笑)。でもまあ、それなりに『落とし前』はつけなきゃいけないと思っています。(アフガニスタンで支援をしている地域に)水はきたけれど、まだ農地になっていない。これからは開拓」 中村哲

国際協力で緊急援助を行う場合、自身の安全管理を事前に学習すること。以下のいずれかを受講するべし。eセンター(UNHCRが主催) http://www.unhcr.or.jp/protect/e_center Red.R(北米のNGOが主催) http://www.redr.org

紛争地帯の人を救うために自分がそこへ行くことの是非。特に援助や開発を行う場合について 「国際協力と安全管理 4,867字 (国際協力、開発学)」 http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/51544522.html

2008年8月、アフガニスタンで人道支援を行うペシャワール会の伊藤和也が拘束され殺害された。犯人は「金目当てで犯行を決意した。この非政府組織が住民の役に立っていたことは知っている。しかし住民に西洋文化を植え付けようとするスパイだ。全ての外国人がアフガニスタンを出るまで殺し続ける」

伊藤和也とは、アフガニスタンで支援活動を続けているNGO、「ペシャワール会」のスタッフだった人。2008年8月タリバーン(?)と称する武装組織の犯行により拉致され射殺された。アフガン現地での彼の評判はすこぶるよく、地元の村民は彼を助けようとし、その武装組織と交戦。その戦闘中に死亡

アフガニスタン北東部でキリスト教系NGO「国際支援ミッション」(IAM)の関係者10人がタリバーンの襲撃を受け死亡。同NGOはアフガンで40年以上にわたって医療支援を行っていた優良な団体。キリスト教の布教だと誤解されないよう細心の注意を払ってきたがそれでも布教をしていたと誤解され

アフガニスタン北東部バダクシャンで米国人2人・ドイツ人6人(うち女性3人)など11人の医師がタリバーンの襲撃を受け十人が死亡。アフガンで活動するキリスト教系のNGOインターナショナル・アシスタンス・ミッション(IAM)所属。タリバーンによるとキリスト教を布教しようとしたスパイだと

・・・

アフガニスタンは親日家が多かったが、変化

「アフガニスタンの国民は多くが大変な親日家なのです。彼らが口をそろえて言うことが二つ。1)日露戦争。アフガンもロシアに狙われていた。両国とも、ロシアを撃退した。2)広島・長崎。戦後、驚異的な経済発展で大国になり、かつ戦後60年、出兵していないこと。その象徴が、広島・長崎」 中村哲

「アフガニスタンは親日家が多かったが『湾岸戦争』あたりから状況が変わった。直接でないにしても、自分たちの仲間を殺し村々を焼き払う部隊が、沖縄の軍事基地から来ているのですから仕方ないでしょう。日本はいったい何のために沖縄をアメリカに貸しているのか。見過ごすべきでない問題が」 中村哲

・・・
・・・

以下、自衛隊の海外派遣の是非など

・・・

自衛隊の国際貢献、海外派遣、海外派兵の問題

防衛大学生が「国際協力をやりたいんですが、どのような方法が?」 1)国連からの要請に自衛隊が協力するPKO(平和維持活動)。2)自然災害に対するJDR(緊急援助隊)、3)テロ特措法関係、4)自衛隊退役後に地雷除去NGO、5)退役後にアフガニスタンDDR(武装解除)に協力するNPO

自衛隊が行う国際協力的活動は基本二つ。地震など自然災害にたいする国際緊急援助隊(JDR:Japan Disaster Relief team)と紛争地帯への派遣となる国連平和維持活動(PKO:Peacekeeping Operations)。最近はテロ対策特別措置法に基づく活動も

2003年、日本主導のもと、アフガニスタンで、武装解除(DDR : Disarmament, Demobilization, Reintegration : 武装解除・軍隊解散・社会復帰)が行われた。伊勢崎賢治が指揮。自衛隊OBのNPO・日本地雷処理を支援する会(JMAS)が協力

自衛隊は、1980年代までは「専守防衛」が原則だとして「海外派遣」は行われなかった。1989年の冷静終結、1991年のソ連崩壊、同年の湾岸戦争勃発により、日本の軍事同盟国アメリカが中東諸国と敵対する情勢に。以後、主に中東方面に対して、自衛隊が何度も派遣されている。が、議論も多い。

自衛隊の海外派遣については、1991年、湾岸戦争の時のペルシャ湾派遣が最初。機雷除去を実施。2003年のイラク戦争で物資輸送。名目は難民救済。2004年から2008年までイラク特措法による戦後の復興支援。2009年、ソマリア沖の海賊に対し、海上・航空・陸上自衛隊(戦闘部隊)を派兵

在日米軍とは、日米安全保障条約第6条により日本に駐留するアメリカ軍のこと。総兵力5万。普天間飛行場(沖縄)、嘉手納飛行場(沖縄)、佐世保基地(長崎)、岩国飛行場(山口)、厚木海軍飛行場(神奈川)、横須賀海軍施設(神奈川)、横田飛行場(東京)、三沢飛行場(青森)。沖縄は面積の18%

在日米軍からの、アメリカ軍の中東方面への出撃。1991年の湾岸戦争で横須賀と沖縄から出兵。2001年の米軍のアフガニスタン侵攻で、沖縄・横須賀・佐世保・岩国・三沢から派兵。2003年のイラク戦争に、普天間基地の海兵隊が派兵。このあたりの情報は乱れ飛んでおり、正確でないので後日確認

・・・

日本の自衛隊と、集団的自衛権

2010年10月、訪米中の自民党の安倍晋三・元首相は、ワシントン市内で講演し、東シナ海での中国の海洋進出の動きに関し、「実践を伴う断固としたメッセージを送らなければならない」と述べた。具体的には、1)集団的自衛権行使を禁じた憲法解釈の変更や、2)武器輸出三原則の見直しを主張した。

自衛権(self-defense right)。1)個別的自衛権(right to individual self-defense、自国に対する侵害を排除する権利)と、2)集団的自衛権(right to collective defense、同盟関係の他国への侵害を排除する権利)

自衛権は、1)国連憲章51条に、「武力攻撃が発生した場合、個別的又は集団的自衛の(各国の)「固有の権利」を発動可。ただし安全保障理事会が必要な措置をとるまでの間と記載。2)日本国憲法第九条に「戦力を保持しない」とあるが政府解釈及び最高裁は「自衛のための必要最小限度の武力行使」は可

集団的自衛権とは、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力を持って阻止する権利」。密接な関係の国とは協定や条約を締結した他国。日本とアメリカは安全保障条約を結び軍事同盟の関係。2001年の9.11テロ以来、集団的自衛権が議論に

・・・

軍隊が国際協力的活動をすることの是非

昔、援助団体が紛争地で自分のスタッフを守る方法は二つあった。1)国連・政府系は軍隊を使って「武装」。2)NGOは住民と「親密」になることで攻撃されないように。しかしアフガンで米軍が援助をしだしたため「国際協力団体は全て米軍の一味だ」と思われ、NGOがタリバーン等に攻撃されることに

国際協力団体は、政府による自国の外交的利益も考慮しながら行うものと、民間NGOの純粋に人道的意思による援助の2種類がある。仮にアフガニスタンの人々に「日米軍事同盟」(に基づく行動)が嫌われた場合、民衆は政府系とNGO系の違いを知らないため、政府と関係ないNGOの人々まで攻撃される

日本政府が嫌われると、アフガニスタンの人から、「お前も同じ日本人だろう」、ということで、日本政府と全く関係ないNGOの人々まで攻撃される。この状況を知りたい方は、ご一読を。 「アフガニスタンに住む彼女からあなたへ―望まれる国際協力の形」 http://amzn.to/ckSr0I

アフガニスタンの米軍が「養鶏」の支援を始めた。地元住民からの評判をよくするため。しかし軍隊が国際協力をやることには議論があり、これを行ってしまうと、軍隊ではなく、普通に国際協力をやっているNGOの人々も「あいつらもきっとアメリカ軍の仲間だ」と誤解されてタリバーン等から攻撃を受ける

中東のテレビ局アルジャジーラは2010年10月「国際テロ組織アルカイダを率いるオサマ・ビンラディンがニジェールでのフランス人拉致を認めたうえ、フランスのベール禁止法を批判し仏軍のアフガニスタン撤退を求める音声での声明を出した」、と伝えた。 ニジェールでは9月にフランス人5人が拉致

・・・

紛争地帯とNGO

国際協力には二つある。1)紛争地帯で行う「緊急援助」と 2)紛争が終わり政府が確立してからの「開発援助」。1)緊急援助は「外国人が」食糧をあげ、医療などをしてあげる、「あげる」援助。2)開発援助は「住民が」主体となり、持続可能な開発を目指す「あげない」援助。この場合、外国人は脇役

UNHCRと協同で事業を実施する日本のNGOは、難民支援協会(JAR)、日本国際社会事業団(ISSJ)、アジア医師連絡協議会(AMDA)、ブリッジエーシアジャパン(BAJ),日本国際ボランティアセンター(JVC),ジェン(JEN)、ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)、シャンティ等

外務省がアフガン・パキスタン支援のためNPO法人ジャパン・プラットフォーム(JPF)に15億円を拠出。政府のJICAは(紛争が終わった後の)開発援助しかやらない。(紛争中の)緊急援助を行っているのはNGO。JPFは緊急援助をするNGOたちのために大量の資金を渡せるようにした枠組み

NGO「希望の学校」によるとアフガニスタンの首都カブールでは高層ビルが建設され発展してるが、貧富の差が激しく人口の60%以上が1日1〜2ドルで生活。失業率は50%以上。子どもの4人に1人が学校に行かず働いている。子どもたちの仕事は、絨毯作り、煉瓦作り、麻薬の販売、爆発物の運搬など

「国際協力NGOダイレクトリー」とは、開発・環境・人権・平和などの分野で国境を越えて活動する日本の国際協力NGOの概要を収録したデータベース。289団体について、組織概要、活動状況など。自分に合ったNGOを探すために http://www.janic.org/directory/

・・・

伊勢崎賢治とアフガニスタン

2003年、日本主導のもと、アフガニスタンで、武装解除(DDR : Disarmament, Demobilization, Reintegration : 武装解除・軍隊解散・社会復帰)が行われた。伊勢崎賢治が指揮。自衛隊OBのNPO・日本地雷処理を支援する会(JMAS)が協力

2003年、日本の主導でアフガニスタンで「包括的な武装解除」(DDR、武装解除・動員解除・社会復帰)が行われ大型武器などの回収に成功。しかし2011年撤退する米軍は、アフガン政府に今度は各地の住民に武器を配り自衛することを指示。全く逆の流れで、何をやっているのか、と叱責したくなる

シエラレオネやアフガニスタンでDDR(武装解除)の指揮をとった伊勢崎賢治さんの話を聞いてきました。ブログにアップしましたので興味のある方はどうぞ http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65480818.html

・・・

緒方貞子とアフガニスタン

「国境を越えようと超えまいと、私たちは被害者の傍(かたわ)らにいるべきなのです。」 緒方貞子。1937年生まれ、東京出身。国連難民高等弁務官(UNHCR)時代、国境を越えた「難民」に対する保護制度はあったが、国境を超えていない「国内避難民」を救済する制度が無かったため、改革を実施

緒方イニシアティブとは、2001年アフガニスタン支援政府特別代表となった緒方貞子が提唱した「地域総合開発支援計画」。1)地方における難民・国内避難民の再定住、2)これを受入れる地域共同体の能力強化、3)長期的な開発。以上を見据え、緊急人道支援、復興、開発と続く、つなぎ目のない支援

「人間の安全保障」は1994年に国連開発計画(UNDP)が打ち出した概念でノーベル賞・経済学者アマルティア・センや、緒方貞子JICA理事長(元国連難民高等弁務官)が主導して広めた。日本人の緒方が関わったため日本政府・外務省は当初からこの普及に尽力し「人間の安全保障基金」も作った。

国際連合難民高等弁務官は1970年代国内避難民に対する取り組みを始めたが、実際に注目されたのは1991年にイラクでクルド人の国内避難民が大量発生した時。当時、国際連合難民高等弁務官だった緒方貞子は、その保護や支援のための法的な枠組みを整備した。世界の国内避難民の総数は2600万人

国際連合難民高等弁務官事務所(Office of the United Nations High Commissioner for Refugees : UNHCR)とは1950年に設立された国連の機関。本部はスイスのジュネーブ。第8代(1990-2000年)高等弁務官は緒方貞子

女性の社会進出は、1946年衆院総選挙で初の女性参政権。1960年初の大臣(厚生大臣、中山マサ)。1976年初の公吏(国連代表部、緒方貞子)、1995年初の最高裁判事(高橋久子)、1997年初の事務次官(労働省、松原亘子)、2000年初の知事(大阪府・太田房江、熊本県・潮谷義子)

「人間の安全保障」を日本政府・外務省が普及している理由は緒方貞子JICA理事長が関係していたからだが実際は日本の国益のためではないかという批判が強い。日本の「プレゼンス」(国際社会への影響力)を保つため国連にこの概念の普及を目指している。つまり日本が国連の常任理事国になるのが目的

・・・

アフガニスタンの歴史、政治、軍事

アフガニスタン近代史。19世紀、南下してきたロシアを警戒し、イギリスが先手を打ち、1838年から英ア戦争。その結果、アフガニスタンはイギリスの保護領に。1979年、ソ連の軍事介入により社会主義政権化。1996年タリバーンが全土を掌握。2001年、9.11テロの報復にアメリカが侵攻

「第二のベトナム」と呼ばれている「米軍が駐留するアフガニスタン」。米政府の方針に文句を言った前司令官が更迭され、ペトレアス新司令官が就任。「米軍がアフガン市民を守るのだとタリバーンに示す」と言っているが市民はそんなこと望んでいないかも。(治安回復に失敗しても)米軍は来年7月に撤退

2010年7月アフガニスタン復興支援会議がカブールで開催。70の国と国際機関が参加。2014年末までに治安維持管理の権限をアフガン政府に移すことに合意。背景はタリバーンが勢力を拡大しており各国の軍隊の被害が増加、各国は来年撤収する方向。しかしアフガン警察は不正が多く武器をタリバーンに横流し

2010年7月のアフガニスタン復興会議を終えて各国は言うことを少し変えた。アメリカは2010年夏に撤退を明言していたが治安の状況が悪すぎ近日中に撤退すると内戦状態に突入することを恐れ、含みを残した。混乱に陥ってはアメリカの失敗が明確になるため。イギリスは2015年までには全面撤収

2010年9月18日はアフガニスタンの総選挙。議会下院・249名の議員を選出する。しかし、1)タリバーンによるテロや攻撃により15名以上が死亡、90名以上が怪我。2)各地で大量に偽物の投票資格票が見つかった。このためカルザイ政権の統治能力が問われた。アメリカは2011年7月に撤退

アフガニスタンに展開している治安維持部隊は、NATO(北大西洋条約機構North Atlantic Treaty Organization)の、ISAF(アイザフ、国際治安支援部隊International Security Assistance Force)で46カ国、12万人

アフガニスタン国際治安支援部隊はアメリカ軍7万8420人、イギリス9500人、ドイツ4400人、フランス3750人、イタリア3300人、カナダ2830人、ポーランド2500人、オランダ1955人、トルコ1710人、オーストラリア1550人、スペイン1470人、ルーマニア1140人

アフガニスタンではタリバーンとの抗争が南部と東部で激化。タリバーン数万に対し、アフガン警察は9万、外国人部隊は14万で、計23万。数では上回っているのに劣勢。理由は8万の警察管はここ1年の新規雇用者で外国人部隊に数週間訓練を受けただけ。志望した理由も経済的理由のためで士気が低い。

アフガニスタン東部で北大西洋条約機構(NATO)の国際治安支援部隊(ISAF)と反政府武装勢力タリバーンが交戦し誤爆などで住民21人が死亡。ISAFは市民を巻き込んだことを認めた。洪水で亡くなった人の遺体を運んでいた車をヘリコプターが誤爆し8人が死亡。民家を捜索した際に13人殺害

アメリカ陸軍は去年1年間の兵士の自殺者が160人で過去最悪だったと発表。アフガニスタン等の戦争で多くの兵士が精神的な病を抱えている。2004年以降毎年増え続け、昨年は160人、自殺未遂も1713人。自殺や薬物の過剰摂取など自らの行為で死亡した兵士が戦闘で死亡した兵士の数よりも多い

アフガニスタンに駐留するアメリカ軍兵士の死者数が、今月(7月)現在63。月当たりの死亡者数はこれまでの最悪。先月も60人で最大数を記録したが、二か月連続で更新。死者数は今年に入ってから400人を超えた。米軍は来年撤退する方向だが、タリバーンが攻勢をかけており、状況は悪化する一方。

アフガニスタンに駐留する米軍の司令官が辞任。事実上の更迭。わずか2年の間に司令官の交代は3人め。マクリスタル司令官はアメリカ政府を批判する発言を雑誌記者へ。増派を要求する司令官と、アフガン内戦鎮圧に失敗した場合にそなえ増派させず「自分の保身を図る」政治家との間で、確執が続いていた

アメリカのメリーランド大学などが中東・北アフリカ6カ国で実施した世論調査で、「イランの核兵器保有が中東にとって好ましい」と答えた人が57%と半数を超え、「オバマ政権の中東政策全般について失望した」も63%。理由は、1)アフガニスタンの治安回復の失敗と、2)イスラエル核問題の棚上げ

米フロリダ州のキリスト教会が、同時多発テロ事件から9周年に当たる9月11日にイスラム教のコーランを燃やす行事を計画。アフガニスタンやインドネシアで数百人がデモ。フロリダ州の教会「ダブ・ワールド・アウトリーチ・センター」は「邪悪な宗教であるイスラム教の危険性についての啓発」だと言う

アメリカは2012年までに欧州最大の米軍基地を作る。イラクやアフガニスタンへの派遣のため。しかしイタリアの若者二人がこれに反対するドキュメンタリー映画制作「スタンディング・アーミー」(常備軍)。「第2次世界大戦から60年以上、冷戦終結から20年経過、なぜ国は米兵を居座らせるのか」

トルコとイスラエルは、ともにアメリカと軍事同盟を結んでいる国。しかしパレスチナ支援船の拿捕事件で両国は対立。アメリカにとって両国は、イラク・アフガニスタンの治安を安定化させるための重要な軍事・外交的な拠点のはず。オバマ大統領は、イスラエルのネタニヤフ首相に働きかけ和解をさせる方向

6月19日、来日中のアフガニスタン大統領ハミド・カルザイが広島を訪問した。「残虐な行為を二度とくり返してはならない。どんな理由があっても原爆の使用は正当化できない」などと言ったが、来年軍隊を引き揚げるアメリカよりも、今後も金を出す約束をしている日本に媚びたパフォーマンスだと思う。

アフガニスタンのカルザイ大統領が日本に来ている。タリバーンを始めとする軍閥が群雄割拠する中、国内の治安を安定化させるのは困難。それなのにアメリカは駐留部隊の撤退を来年から開始。しょうがないのでカルザイは、日本からせめて金だけでももらおうとやってきたか。しかし彼の一族には汚職疑惑が

漏洩(ろうえい)文書を公開する民間組織"Wikileaks"が、アフガニスタン戦争に関連する約7万6900の機密ファイルを公開。「Afghan War Diary」 http://bit.ly/bWCXAz

・・・

南南協力、途上国による途上国の支援

カンボジアに、地雷で足を失った人などに、いわゆる「義足」を作ってあげる団体「カンボジア・トラスト」がある。技術力が高く、同じく地雷の多いアフガニスタンから研修生を呼び、人工装具(prostheses)の制作等を教えている。 http://cambodiatrust.org.uk/

・・・

企業のCSR、大学の国際貢献と、アフガニスタン

KOMATU(コマツ)は、アフガニスタン向け対人地雷除去機を開発。JMAS(日本地雷処理を支援する会)とのカンボジア地域復興プロジェクトを実施。http://www.komatsu.co.jp/CompanyInfo/press/2009032317373717317.html

7世紀ごろアフガニスタンで描かれた仏教壁画が、内戦中に海外に流出し欧州から日本へ。その過程で割れるなどかなりの破損。流出文化財保護委員が入手し東京芸大がこれを修復、アフガンへ戻す計画。しかし流出文化財で問題になっているのは、戦時中、朝鮮半島の文化財が大量に日本へ「盗まれた」こと。

・・・

アフガニスタンとジェンダー、妊産婦死亡率

アフガニスタンでは毎年2万5千人の女性が妊娠と出産が原因で亡くなっている。実に27分間に1人が死ぬ計算。妊産婦死亡率は(出生10万あたり)1,900人超。最近シエラレオネを抜いて世界最悪に。特に「バダフシャーン州ラー地区」では6,500人という人類史上最悪の妊産婦死亡率を記録 。

ジェンダー・エンパワーメント指数(GEM)を、計算することすらできない国で、女性の権利低下が、貧困・教育・医療等に影響している可能性のある国は、ジンバブエ、ソマリア、ニジェール、シエラレオネ、中央アフリカ、マリ、ブルキナファソ、コンゴ民主共和国、チャド、ブルンジ、アフガニスタン。

ジェンダー不平等指数(GII、2008、UNDP、計算できた138カ国中)低い順に、138)イエメン、137)コンゴ民主共和国、136)ニジェール、135)マリ、134)アフガニスタン、133)パプアニューギニア、132)中央アフリカ、131)リベリア、130)コートジボワール、

各国の女性の初婚年齢。低年齢で結婚する順 1)コンゴ民主共和国(アフリカ中央、人口6300万、キリスト教90%)16.6歳、2)ニジェール17.6歳、3)サントメ・プリンシペ(ギニア湾の島)17.8歳、4)アフガニスタン17.8歳、5)モザンビーク18.0歳、6)チャド18.0歳

・・・

アフガニスタンの統計指標

国連の「深刻な食糧危機に瀕している国」のリストには22カ国が選出。アフリカの17カ国、アフガニスタン、タジキスタン、北朝鮮、ハイチ、イラク。中でももっとも深刻な状況にあるのが、コンゴ民主共和国。自然災害、紛争、不安定な政権によって、飢餓による死亡者数が世界記録を更新しつづけている

人間開発指数(HDI、2010)、169カ国中、低い順に、ジンバブエ、コンゴ民主共和国、ニジェール、ブルンジ、モザンビーク、ギニアビサウ、チャド、リベリア、ブルキナファソ、マリ中央アフリカ、シエラレオネ、エチオピア、ギニア、アフガニスタン、スーダン、マラウイ、ルワンダ、ガンビア

人間開発指数(HDI、2007)は、182カ国中、低い順に、ニジェール0.340、アフガニスタン0.352、シエラレオネ0.365、中央アフリカ0.369、マリ0.371、ブルキナファソ0.389、コンゴ民主共和国0.389、チャド0.392、ブルンジ0.394、ギニアビサウ0.396

5歳未満子ども死亡率(出生千当たりWHO2008)高い順。アフガニスタン257、アンゴラ220、チャド209、ソマリア200、コンゴ民主共和国199、ギニアビサウ195、シエラレオネ194、マリ194、ナイジェリア186、中央アフリカ173、ブルキナファソ169、ニジェール167

UNICEFによると2008年「5歳未満の子どもの死亡率」が高いのは、アフガニスタン(234/1000出生)、チャド(210)、アンゴラ(203)、コンゴ民主共和国(196)、ギニアビサウ(195)。低いのは、アイスランド、フィンランドなどの北欧諸国で、おおよそ、4/1000出生

成人識字率(UNDP、2007年)は、低い順に、マリ26.2%、アフガニスタン28.0%、ニジェール28.7%、ブルキナファソ28.7%、ギニア29.5%、チャド31.8%、エチオピア35.9%、シエラレオネ38.1%、ベナン40.5%、セネガル41.9%、モザンビーク44.4%

出生時平均余命(平均寿命、2007年)は低い順に、ジンバブエ43.4、アフガニスタン43.6、ザンビア44.5、レソト44.9、スワジランド45.3、アンゴラ46.5、中央アフリカ46.7、シエラレオネ47.3、ギニアビサウ47.5、コンゴ民主共和国47.6、ナイジェリア47.7

・・・

アフガニスタンと、資源、生物資源

アフガニスタンの首都カブールの南西に「ガズニ州」というのがある。最近アメリカ国防総省の調査で、リチウムなどの希少金属(レアメタル)を発見。リチウムは携帯電話や電気自動車の電池などにつかわれるため貴重。100兆円規模の資源らしい。資源があるとその奪い合いの内戦と戦争が起こりやすい。

アフガニスタンで1〜3兆ドルに匹敵する金、鉄鋼、リチウムなどの資源が見つかった。カルザイは日本を訪れ(麻薬にかわる)産業開発のため投資を呼びかけた。日本は2600億円の支援をこれまでしてきたが、今後さらに5000億円の資金援助を約束している。しかしカルザイの一族は汚職で有名で微妙

先日、アメリカがアフガニスタンに1兆ドル規模の鉱山があると発表した。それに反応したか中国の銅生産会社2社が共同でアフガニスタンのアイナック(Aynak)銅鉱の開発に、43億米ドルの投資すると発表。おそらくアメリカは泥沼化し解決できそうもないアフガン内戦に他国を巻き込み責任を回避?

内科医が入院患者に頻繁に使用する薬の一つが、「強力ネオミノファーゲンシー」という注射薬。略して『強ミノ』という。肝障害およびアレルギー関連疾患の際に使用するので用途が広い。成分のグリチルリチンの原料が、甘草(カンゾウ)という植物。中国、旧ソ連諸国、アフガニスタンから輸入している。

・・・

アフガニスタンと麻薬

アフガニスタンの15歳から65歳までの人の8%が麻薬中毒。NHKは長く続いた戦乱に対する精神的苦痛のため麻薬を使うと言っていたがそれだけではない。産業がないため、てっとりばやく収益をあげられる麻薬栽培に手を出しやすいことと、どんな病気にでも効く万能薬として麻薬が使われていることも

私がアフガニスタンで医療支援をしていたのが北部の大都市マザリシャリフ近郊にあるバルフ州。ここは大麻の栽培と加工で知られている土地だが、ケシ(麻薬の原料)の栽培も行われている。政府や国際機関がケシの栽培撲滅運動を展開しているが住民は反発。それを取り上げられたら他にできる産業がないと

アフガニスタンで問題になっていることの一つが、農業の荒廃。長く続いた戦乱で農地が荒れ農業ができない。だから人々は生計を立てるためケシの花を栽培、そこから麻薬を作る。これがタリバーンなどの軍閥やテロ組織の資金源になっている。だから農業復興こそが、アフガニスタンに行うべき最大の援助。

先日オバマ大統領がアフガニスタンを電撃訪問したが、最大の懸念の一つが麻薬の取り引き。長期間にわたった内戦と戦争のため、産業が崩壊。唯一の収入源は麻薬の生産。その一部がタリバーンやアルカイダなどのアメリカの敵対勢力の資金源になっている。同盟国である日本のJICAは農業支援をする方向