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概況

イラク共和国。人口、約2,710万人。首都バグダッド。面積約43.74万平方km(日本の1.2倍)。民族は、アラブ人(イスラム教・シーア派が約6割、スンニー派が約2割)、クルド人(約2割)、トルクメン人、アッシリア人等。一人あたりGDPは2,245ドル。確認石油埋蔵量が世界第3位

イラクは、西のサウジアラビア(イスラム教スンニ派)と東のイラン(シーア派)の間にある国。シーア派はイラク国内では(イランに近い)南東部に多く人口の60%、最大多数を占める。スンニ派は全域で20%。クルド人等は北部で20%。サダム・フセイン(1937-2006年)は、スンニ派だった


イラク戦争

国際連合とアメリカ。1945年にサンフランシスコで設立。1950年の朝鮮戦争では、アメリカ軍が国連軍の主力として北朝鮮と戦闘。2003年イラク戦争の時は、UNMOVIC(国際連合監視検証査察委員会)が「大量破壊兵器の決定的証拠は発見されず」として慎重な姿勢をとったのに、米英は侵攻

2003年にイラク戦争をしかけたのは、アメリカのチェイニー副大統領などの「ネオコン」(新保守主義、タカ派)だったのだが、このチェイニーが経営陣にいた アメリカの石油会社・ハリバートン社等がイラク戦争後の石油利権を独占した。イラク軍が油田に放火した後の消火とその再建事業の大半を受注

ブッシュ前米大統領が8年間の在任期間を振り返った著書「決断のとき」が、2010年11月、全米で発売。1)大量破壊兵器があるという誤情報に基づいてイラク戦争に踏み切ったことについて、「米国民に謝罪する必要はない」。2)2003年5月に戦闘終結を宣言したことについては、「誤りだった」

2010年の参議院選挙・埼玉で大野元裕(もとひろ)が当選。彼は中東情勢に詳しい数少ない人物。2002年イラク戦争の前に国会で「イラクに大量破壊兵器はない」と断言した。が、小泉首相は無視して自衛隊をイラクに派遣、アメリカに追従 http://www.oonomotohiro.jp/

在日米軍からの、アメリカ軍の中東方面への出撃。1991年の湾岸戦争で横須賀と沖縄から出兵。2001年の米軍のアフガニスタン侵攻で、沖縄・横須賀・佐世保・岩国・三沢から派兵。2003年のイラク戦争に、普天間基地の海兵隊が派兵。このあたりの情報は乱れ飛んでおり、正確でないので後日確認


人間の盾

「人間の盾」。1990年8月2日にイラクがクウェートに侵攻したのに対し、国際連合が多国籍軍(連合軍)を派遣、1991年1月17日にイラクを空爆(湾岸戦争)。その前、イラクは8月18日にクウェートから強制的に連行した(日本人を含む)外国人を人間の盾として人質に。国際社会の批判で解放

1990年イラクのクウェート侵攻の時、イラクは「人間の盾」として、クウェートにいた外国人1000人(うち日本人200人)をイラクに連れ去り軍事施設などに監禁。国際社会の批判で解放されるまで4カ月。イラク政府は外国人の安全を保障するために「ゲスト」として移動したのだと説明していた。

「人間の盾」。2003年3月20日アメリカ等が(大量破壊兵器の保有を巡る疑惑を理由に)イラクに侵攻(イラク戦争)。が、国連は「大量破壊兵器の決定的な証拠はない」と。3月25日イラクにいた日本人は74人。平和団体関係は35人、うち16人が 「人間の盾」を 志願。病院などに張りついた

イラク戦争に反対した団体「人間の盾」"Human Shield"は2003年3月に30カ国から300人。日本人も参加。イラク政府は宿と食事を世話してたが態度を変え浄水施設から発電所に入るよう要求。待遇改善を求めた幹部が国外退去処分になり政府と対立。最後は「ただの人質」になる危険性

2003年3月のイラク戦争の時、日本人約20名がイラクで「人間の盾」となったが、NHKは全く報道しなかった。この理由は、1)報道すると「俺も行こう」という人が増えるのを危惧し政府が指示、2)旧共産党的・左翼的活動のプロパガンダに報道が利用されるのを危惧、3)NHKは中立で公平??

国際協力的活動をやりたいと思う人の何割かは「非常に自己実現の欲求が強い人」。とりたてた専門性も経験もない人が、どうやって自分の人生の意味を見出そうとするのか。その場所をみつけようとするのか。その迷いの中にある選択肢の一つがイラク戦争などで自分の命を「人間の盾」に使うことだったのか


自衛隊のイラク派遣

自衛隊の海外派遣については、1991年、湾岸戦争の時のペルシャ湾派遣が最初。機雷除去を実施。2003年のイラク戦争で物資輸送。名目は難民救済。2004年から2008年までイラク特措法による戦後の復興支援。2009年、ソマリア沖の海賊に対し、海上・航空・陸上自衛隊(戦闘部隊)を派兵

先日、自衛隊の職員で国際協力に興味のある方の取材をした。自衛隊も国際協力っぽいことをやっている。1.自然災害に対する国際緊急援助隊(JDR)1998以降、2.国際連合平和維持活動(PKO)1992年以降、3.難民救済(ルワンダ、イラク等)1994年以降。


イラク戦争後の、連立政権

2003年3月、アメリカとイギリスが大量破壊兵器の保有疑惑でイラクに侵攻、5月に勝利。以後イラクはアメリカ国防総省などの統治下へ。 2004年暫定政権、2005年憲法を制定。2010年3月、憲法に基づく選挙が行われたが各派の対立から新政権は発足せず。米軍は2010年に撤退したが

イラクで選挙後も各派の対立が続き新政権が発足しない理由は、1)宗教対立が激しくイスラム教シーア派が国民の50%、スンニ派が45%と僅差。2)民族はアラブ系が80%だが、クルド人が15%。3)イラク内で石油の採れる場所は限られており利権をめぐり民族間・宗教間・地方と連邦政府間の対立

イラク北部の油田の利権をめぐりクルド地方政府とイラク連邦政府が対立。憲法には「『現在の油田』から産出される石油の管理は、連邦政府が、生産する地方政府とともに請け負うものとする」とある。クルドは『現在の油田』を現在産出しているものと定義し、これから開発するものの所有権は地元にあると

イラクでは相変わらずイスラム教シーア派(国内最大多数)、スンニ派(イスラム教主流派)、クルド人が対立。さらに、マリキ首相はシーア派だが多数存在するシーア派各派をまとめきれない。アラウィ元首相はスンニ派のサウジアラビアに影響される。2010年3月の連邦議会選で両者の得票数はほぼ互角

2010年3月の選挙後、連立政権樹立が難航しているイラク。11月、主要政治勢力が集まり協議。しかし議会選で第1勢力となった政党連合「イラキーヤ」を率いるアラウィ元首相が欠席し進展なし。マリキ首相が率いる第2勢力「法治国家連合」や、「クルド同盟」などの間で主要ポストをめぐる綱引きか

政治の混乱と治安の悪化が続くイラクでは連立政権の発足に向け、2010年11月に開かれた国民議会で、1)マリキ首相とタラバニ大統領がそれぞれ続投。2)首相に権限が集中しないよう新たに国家戦略政策評議会を設立、3)そのトップに選挙で最大勢力となった政党連合を率いるアラウィ元首相が就任

ジャラル・タラバニとは、イラクの大統領。2005年から就任。クルド人。1933年バグダード大学法学部の学生時代、仲間と「クルド学生同盟」を結成。クルド民族運動の本流であるクルド民主党(KDP)に参加。1975年KDPを離反し、シリアで、クルド愛国同盟を設立。「クルド政界のキツネ」

2010年11月の国民会議でイラク新体制は、1)マリキ首相(イスラム教シーア派、国内第2勢力の「法治国家連合」を率いる)が続投。2)タラバニ大統領(クルド愛国同盟)も続投。3)国家戦略政策評議会設立。トップに3月の選挙で最大となった「イラキーヤ」を率いるアラウィ元首相(スンニ派)

ノーベル平和賞は極めて政治的な理由で選考されているという批判がある。「民主主義が絶対に正しい」という概念の元、そうでない国を批判する体制が続いており、中国、イランなどが槍玉に。実際はイラク、アフガニスタンをアメリカ型民主主義で統治しようとしてもうまくいかなかったケースがあるのだが


イラクからの米軍撤退

イラクでは2009年6月をもってアメリカ軍が都市部から撤退。しかし再びテロが頻発し治安悪化。8月には政府庁舎が集まるバグダッドのグリーン・ゾーンで爆破テロ。95人が死亡、1200人以上が負傷。イラクのマリキ政権は米軍なしで治安を維持できることを示したかったが失敗。国民の不満は増加

アメリカ国防総省によるとゲーツ国防長官は2010年11月、2011年末に設定されているイラク駐留米軍の完全撤退期限について「イラク政府の要請があれば、延長の協議に応じる用意がある」との考えを示した。イラクでは3月の国民議会選後の連立政権協議が難航し治安悪化の懸念が再び強まっている

トルコとイスラエルは、ともにアメリカと軍事同盟を結んでいる国。しかしパレスチナ支援船の拿捕事件で両国は対立。アメリカにとって両国は、イラク・アフガニスタンの治安を安定化させるための重要な軍事・外交的な拠点のはず。オバマ大統領は、イスラエルのネタニヤフ首相に働きかけ和解をさせる方向


世界の軍事費

世界の軍事費(2007年)。1)アメリカ5526億ドル、2)イギリス633億ドル、3)フランス607億ドル、4)中国462億ドル、5)ドイツ421億ドル、6)日本410億ドル、7)イタリア378億ドル、8)サウジアラビア354億ドル、9)ロシア322億ドル、10)韓国266億ドル

兵器の輸出2008。1)アメリカ61.6億ドル、2)ロシア59.5億ドル、3)ドイツ28.4億ドル、4)フランス15.9億ドル、5)イギリス10.8億ドル、6)スペイン6.2億ドル、7)オランダ5.5億ドル、8)イタリア4.8億ドル、9)中国4.3億ドル、10)イスラエル4.1億

兵器の輸入2008。1)韓国19.0億ドル、2)インド18.5億ドル、3)アルジェリア15.9億ドル、4)中国12.4億ドル、5)パキスタン10.9億ドル、6)シンガポール10.1億ドル、7)アメリカ9.0億ドル、8)ベネズエラ7.3億ドル、9)トルコ7.2億ドル、10)UAE


在外米軍の再編

在外米軍の再編とは、1989年にアメリカとソ連の冷戦が終結し2001年にソ連が崩壊した一方で同年のアメリカ同時多発テロに始まった「テロ組織という実体の見えない組織」との戦いや、アメリカが「ならず者国家(悪の枢軸)」と呼ぶ国々が大量破壊兵器を開発する問題などと対峙するための軍事再編

アメリカは2012年までに欧州最大の米軍基地を作る。イラクやアフガニスタンへの派遣のため。しかしイタリアの若者二人がこれに反対するドキュメンタリー映画制作「スタンディング・アーミー」(常備軍)。「第2次世界大戦から60年以上、冷戦終結から20年経過、なぜ国は米兵を居座らせるのか」


悪の枢軸

悪の枢軸(axis of evil) とは、2001年にアメリカのブッシュ大統領が、北朝鮮、イラン、イラク。2005年ライス国務長官が、イラン、北朝鮮、キューバ、ミャンマー、ベラルーシ、ジンバブエ。2008年イスラエルのオルメルト首相が、北朝鮮、イラン、シリア、ヒズボラ、ハマース

ベラルーシ共和国とは、1990年にソ連から独立した東欧に位置する国。2005年ブッシュ政権の時、ライス国務長官が、イラン、北朝鮮、キューバ、ミャンマー、ベラルーシ、ジンバブエを「悪の枢軸」に指定。1994年以後アレクサンドル・ルカシェンコ大統領が独裁政権を続けおり国際社会から孤立

南アフリカ共和国の北東にある隣国ジンバブエは経済が崩壊。政府が財政赤字を建て直すため「無制限に」紙幣を刷りまくり、なんと2008年のインフレ率が2億%以上に。(100円で買えたパンが1年で2億円以上になった。)失業率は90%以上。このため人々は雇用を求め、お隣りの南アフリカへ流入

戦略兵器削減条約(STrategic Arms Reduction Treaty:START)とは、アメリカとソ連/ロシアの間で結ばれた軍縮条約。1982年交渉開始、91年(第一次)START Iが調印。核弾頭数に上限設定。94年(第二次)START IIが発行し2009年に失効


テロ

2010年7月、BBCによると、ノルウェーで3人がテロ容疑で逮捕。3人は、中国人(ウイグル人)、イラク人、ウズベク人。アルカイダ'al-Qaeda' と関係する疑い。アメリカとイギリスで爆弾テロを画策。 http://bbc.in/9nQC6Y

イラクの首都バグダッドのキリスト教会で、2010年10月、武装集団が信徒らを人質に取った事件は、イラク治安部隊の強行突入作戦で解決したが、人質や治安部隊員ら52人が死亡、60人が負傷。近年、迫害のためキリスト教徒がイラクから大量に脱出。2003年キリスト教人口は3%だったが今1%


米軍の情報漏洩

ウェブサイト「ウィキリークス」が2010年10月、イラク戦争を巡るアメリカ軍などの機密文書約40万件(2004〜9年)を公表。1)イラク戦争の死者は10万9千人で、6万6千人が民間人。2)米軍がイラク当局による拷問を黙認していた http://www.wikileaks.org/

ウィキリークスが公開して、イラク戦争でのアメリカ軍の非人道的行為は、1)イラク民間人の虐殺が6万6千人。2)米軍がイラク警察と軍による何百件もの虐待、拷問、強姦、殺人を調査しなかった。手足を縛られ、殴打やムチ打ち、電気ショックなどで6人の囚人が死亡。(なお個人名は削除されている)

ウィキリークスの創設者・ジュリアン・アサンジュは2010年10月、ロンドンで記者会見し、「民主国家は戦争を始める際に常にウソをつく。イラクでもそうだった。そのウソを暴いていく」と述べ、さらなる米軍の機密公開に踏み切る考え。彼自身は天才的なハッカーで米政府機関内に何度も侵入している


劣化ウラン弾

湾岸戦争やイラク戦争でアメリカ軍が使用した「劣化ウラン弾」による放射能汚染で、現地の小児の白血病や癌が増えているかどうかの問題。これまでWHO(世界保健機関)は、証拠となる科学論文がないため根拠がない、としてきた。しかしマスコミやNGOが報じたため2010年春から疫学的調査を開始

イラクで、劣化ウラン弾のため小児の白血病が増えているかどうかは、なんとも言えない。「核のゴミ」を使っているので放射能を含んでいるのは本当だが、自然界にも元々放射能があり、それと比較すると明らかに多いほどの量ではない。また「油田の火災で生じた化学物質」の影響で白血病が生じた可能性も

今井紀明君などが2004年にイラクで拘束された事件について、考察をブログに書いた。 「イラクで人質になった、あの「今井」君のその後 6527字」 http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65337614.html


開発

人間開発指数(HDI、2010年)が計算できたのは169カ国。HDIを計算することができない国や地域は25。HDIの4要素のうち、一人当たりGNIが計算できない国や地域は、キューバ、イラク、北朝鮮、マーシャル諸島、モナコ、ナウル、パレスチナ、パラウ、サンマリノ、ソマリア、ツバル

国連の「深刻な食糧危機に瀕している国」のリストには22カ国が選出。アフリカの17カ国、アフガニスタン、タジキスタン、北朝鮮、ハイチ、イラク。中でももっとも深刻な状況にあるのが、コンゴ民主共和国。自然災害、紛争、不安定な政権によって、飢餓による死亡者数が世界記録を更新しつづけている

イラクでは川に住む鯉の伝統料理があった。イラク戦争で壊滅していた養殖が、ようやく復活。6年ぶり。しかし、養殖には水ポンプを動かすための電気が必要。しかしインフラの破壊で電気が来ない。だから発電機を使って、自家発電している。が、鯉料理は一食2千円と高級料理で元がとれる、という。


難民と国内避難民

国際連合難民高等弁務官(UNHCR)が支援している対象は、1)難民が1100万人前後で、ここ数年横ばい。2)国内避難民は、2005年から急増して1400万人超に。理由は、A)新たな発生(イラク、東ティモール等)、B)クラスターアプローチで活動地域拡大(コンゴ民主共和国、ウガンダ)

国際連合難民高等弁務官は1970年代国内避難民に対する取り組みを始めたが、実際に注目されたのは1991年にイラクでクルド人の国内避難民が大量発生した時。当時、国際連合難民高等弁務官だった緒方貞子は、その保護や支援のための法的な枠組みを整備した。世界の国内避難民の総数は2600万人


イスラム教

イスラム教スンニ派は、イスラム教最大の教派で主流派。二番目に大きなシーア派との違いは、イマーム(イスラム共同体の指導者)が(預言者ムハンマドの)血縁者であることにこだわらないこと。スンニとはムハンマドの言行に従う「慣行」のことで、それに従うこと。このためシーア派より戒律が厳しい。

イスラム教シーア派とはイスラム教の中で二番目に大きな派閥。イラン、イラク、レバノン等に信徒が多い。イスラム教の開祖ムハンマド(モハメッド)の従弟で(かつ娘婿の)アリーと、その子孫のみがイマーム(指導者)になれる、という考えの教派。偶像崇拝の禁止に厳しくなく、シーア派のモスクは綺麗